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中・東欧、ロシア、大学教育、美術展、映画鑑賞などなど


by chekosan

タグ:本、読書、図書館 ( 334 ) タグの人気記事

広島修道大学のテキストとして編まれた本です。

1巻は2005年、2巻は2013年に、いずれも法律文化社から発行されました。

タイトルどおり、映画を通して国際関係学、歴史や社会に関心を持つことを促す本です。

同大学の数人の教員が、それぞれの専攻分野に関係する作品を取り上げて解説をしています。そのため、扱う作品のラインナップが幅広いのが魅力です。(1巻と2巻で傾向が違いますが)

あらすじはもちろん、時代背景や考察ポイントや参考文献が見開き2枚(4ページ)程度にまとめられているので、どこかの国の歴史や、世界史の大きな転換点を知るのに、まずはとっつきやすい映画から入ってみようというときに便利です。

映画を読んでから、さらに作品理解を深めるために時代背景を知る、その国や時代の専門家の見方や分析の仕方を知るという使い方も。

読書メーターやAmazonのレビューは極端に少ないので惜しく思います。Amazonでは、なか見!検索で目次が見れるので、どのような作品が取り上げられているかをチェックできます。

東欧やロシア、ホロコーストものも多数あって、まだ見ていないものも半分くらいあるので、残らず見ようと思っています。

それ以外でも参考になる作品ばかりなので、手元に持っておこうと思いましたが、手に入りにくくなっているようです。

Amazonマーケットプレイスには複数冊出ていて、そちらで2冊とも買うことができました(2019年6月現在)。新品レベルの状態のものが届いて大満足。

D大図書館にも所蔵しているのですが、目次に書き込みがけっこうあって… 借りた人が、自分が観た作品をチェックしていったんでしょうね。目次をコピーしてやりなさい!って話です。

ということで、もう現物が手元にあるのですが、検索できるように、中・東欧、ロシア、ドイツあたりに関係するタイトルを挙げておくとします。

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『映画で学ぶ国際関係』

・戦艦ポチョムキン ー第一次ロシア革命と日露戦争
・西部戦線異状なし -限りなく命が軽い戦争の中で
・チャップリンの独裁者 ーヒトラーに対する<挑戦状>
・生きるべきか死すべきか ーナチス・ドイツのポーランド侵攻
・戦場のピアニスト ーゲットーと抵抗のワルシャワを見たユダヤ人
・この素晴らしき世界 -戦時占領下という日々の非日常
・存在の耐えられない軽さ -人間の顔をした社会主義の顛末
・グッバイ・レーニン! -国が必要とした「壁」と母に捧げる「壁」
・名もなきアフリカの地で -ナチス期におけるユーラフリカとユダヤ人
・コーリャ 愛のプラハ -黄昏ゆく社会主義体制を生きた仮の父子
・黒猫・白猫 -ロマの国境に縛られない生き方
・サウンド・オブ・ミュージック -実話をもとにした難民の物語
・ホワイト・ナイツ:白夜 -今なお発生する亡命 ※バリシニコフ主演
・シンドラーのリスト -ユダヤ人問題とホロコーストを考える
・スペシャリスト 自覚なき殺戮者 -ホロコーストと個人の責任、そして自律
・博士の異常な愛情 -冷戦と核軍備競争

『映画で学ぶ国際関係Ⅱ』
・ヒトラーの贋札 -生き抜くことと悪魔への荷担との葛藤
・厳重に監視された列車 -ありふれた個人史と激戦の時代の間に
・善き人のためのソナタ -旧東ドイツ、監視国家体制下における個々の人生と良心
・サラエボの花 -戦乱後に遺る傷跡を見つめるまなざし
・オーケストラ! -国際政治に翻弄された音楽家たち




by chekosan | 2019-06-15 18:21 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
先週から同志社の授業でホロコーストの話をしています。そのため、映画を立て続けに観たりして強化しています。

例年、感心するのですが、ポーランドやドイツの強制収容所跡に行ったことがあったり、関心を持っていたりする学生が少なからずいます。先週は、2月にアウシュビッツ強制収容所跡に行った学生が発表してくれました。

さて、映画「戦場のピアニスト」は、鑑賞したことがあるという学生も多い作品です。

ホロコースト映画のなかでは、いまだ「シンドラーのリスト」と双璧をなす作品だと思います。どちらも実話に基づいていますし、映画としても非常に丁寧につくりこんであり、圧倒的な迫力があります。

映画「戦場のピアニスト」のシナリオ本についてはアップ済みですが、今回ようやく原作を読みました。

戦前からポーランドで活躍していた実在のピアニスト(作曲家としても活躍)であり、ドイツのユダヤ人に対する苛烈な弾圧や「選別」を生き抜いたシュピルマン氏が戦後すぐに執筆し、すぐに絶版にさせられた本です。


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驚きました。ポランスキ監督は、原作に相当忠実に映画を作ったのですね。

映画のなかに出てくるさまざまなエピソードは、当時に起こったことを集めてつくったのかと思ったら、すべてシュピルマン氏が実際に体験したこと、目撃したことなのですね。

映画のなかでもっともショッキングだった、あのシーンやあのシーンも…



感動的なのが、ヤヌシュ・コルチャック=コルチャック先生に関する記述です。コルチャック先生は、ポーランドの医師で作家で、孤児院を運営し、非常に尊敬されていた著名な人物です。

☞コルチャック先生に関する本はこちら


シュピルマン氏は、コルチャック先生に関して、「これまでに私が出会った最高に立派な人物」で、「コルチャックの真価は、書かれた作品にあるのではなくて、書いたように生きた事実の中にある」として、最大級の賛辞を送っています。

ちょうど真ん中あたりには、ワルシャワ・ゲットーからコルチャック先生と孤児たちが整然と並んで、「笑みを浮かべながらみんなで歌をうたい、小さなヴァイオリニストがそれに伴奏をつけ」ながら、移送のための集合場所に進んでいく様子が書かれています。

同時期にワルシャワ・ゲットーに閉じ込められていたユダヤ人同士、著名人同士なので、知り合いなのは不思議ではないのですが、あらためて実際にあったこと、実際にいた人なのだと思わせられます。

シュピルマン氏は生き延びて、戦後も音楽家として活躍されたので、比較的最近の映像も残っていますが、コルチャック先生は当時ですでに60歳代、子どもたちとトレブリンカに連れていかれて亡くなっているので、伝説の人物のような感じがしていたのです。

ーーー

映画が原作と違うのは、ドイツ軍将校と出会ったときにシュピルマン氏が弾いた曲です。映画ではショパンのバラード1番ですが、実際にはノクターン嬰ハ短調なのですね。

この曲は、ドイツ軍の攻撃で中断するときに弾いていた曲でもあり、戦後にワルシャワ放送に復帰したときに弾いた一曲目でもあるそうです。

シュピルマン氏によるノクターン嬰ハ短調の演奏は、DVDの特典映像にも入っていますし、YouTubeでも見ることができます。




ーーー

本書の巻末には、シュピルマン氏を助けたドイツ将校ホーゼンフェルト大尉の日記からの抜粋と、ドイツの詩人ヴォルフ・ビールマン(ビーアマン)によるエピローグが掲載されています。これがまた読み応えのある内容です。

ホーゼンフェルト大尉の日記には、ナチ批判、ポーランド人やユダヤ人に対する虐殺行為への怒りが明確に書かれています。シュピルマン氏と併せて読むことで、状況が立体的になって見えてきます。

ビーアマンの書いた後日談には、大尉がシュピルマン氏以外にも何人ものユダヤ人やポーランド人の命を救っていることが明らかにされています。


なお、本書がすぐに発禁に近い扱いを受けたのは、ドイツ将校に助けられたという事実や、ウクライナ兵、リトアニア兵がドイツ兵以上にポーランドの人々に酷いふるまいをしたことが書かれてあるからのようです。


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今年の夏は、ワルシャワに行ってきます。シュピルマン氏の、コルチャック先生の足跡を辿ってみようと思います。





by chekosan | 2019-06-11 23:36 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)

月イチ連載書評、6月分が公開されました。


今月は『舟を編む』をはじめとするお仕事小説の達人ならではの面白くてタメになる博物館案内です。


王道博物館から、こんなテーマの博物館が!?というところまで。


ニヤニヤ楽しく博物館の世界に浸れますよ。


私はこれを読んで、そう遠くないうちに雲仙に行こうと思いました!


本文はこちら


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by chekosan | 2019-06-08 10:51 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
楽しくインプットに励んだ5月。

今期は、「ロシア・東欧地域研究」の授業で、本や論文を読むのはもちろんだけど、いろんな作品や展示や現場を見ようという指導を強化していて、読んだもの、観たもの、見たことを、次々、発表してもらっている。

授業方針と具体的な発表の指示を出して一本目の小レポートが提出された4月最終週以降、毎週2名くらいずつ、任意で、誰かしらがなにがしか発表してくれている。

90数名規模の講義科目としては、なかなか面白い取り組みができているのではないかと思っている。

私自身も、案内した催しに足を運んだり、学生の発表の補足説明のために新たなテーマを勉強したりで、授業ネタを一新することができている。(もちろん、これまでの材料も適宜、織り交ぜ)

学生が取り上げたテーマを補強するための勉強というのは、たいへん楽しく面白く取り組める。授業というタイムリミットがあるのも効果を上げているような気がする。

全国でもトップクラスの公立図書館が近くにあるので、週末ごとに、関連する本を根こそぎ借りては勉強して返すというサイクルがうまく回っている。

これはある意味、非常に恵まれた、贅沢な状況ではないか。


5月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:2555
ナイス数:346

銀いろの記章 わたしの少年時代 (ジュニア・ライブラリー)銀いろの記章 わたしの少年時代 (ジュニア・ライブラリー)感想
チュコフスキー(1882 - 1969)は、その名を冠した文学賞もあるソ連を代表する児童文学作家。このお話は、その少年時代を書いた自伝。銀いろの記章とは中学のバッジのこと。彼は優秀な子どもであったが貧しい母子家庭の子であったために無実の罪を着せられて退学処分にあう。彼を大学生にするためにお金持ちの洗濯を請け負って働きづめだった母との約束を果たすべく、彼は友達と励ましあって自学し、遂には…と書くと重い苦労話のようだが、ユーモアがあって読みやすい。当時の風俗や生活がわかって面白い。
読了日:05月04日 著者:コルネイ・チュコフスキー


ユダヤ人の歴史と職業: 文学で読むユダヤ人の歴史と職業: 文学で読む感想
「ユダヤ文化とビジネス」という授業内容をまとめたもの。著者はユダヤ系亡命作家の研究者。アメリカに渡ったユダヤ人の興した産業(音楽、映画、化粧品、不動産など)の発展や、イスラエルのハイテク農業、ハイテク産業などを文学の中の記述を引いて紹介。時々なぜここでこれがと首を捻る比較や記述があるのと推測の文と重複が多いのが気になるが、興味を持てる人物や作品、実例がたくさん出てきたので、とっかかりにしよう。
読了日:05月07日 著者:佐川 和茂


段ボールはたからもの 偶然のアップサイクル段ボールはたからもの 偶然のアップサイクル感想
書店の旅のコーナーの「女子旅」とか「○○のおいしいカフェめぐり」といったお洒落な本のなかに、段ボールの本? これが大当たり。著者の島津冬樹さんは、拾ったり譲り受けたりして集めた世界各国の段ボールを使って財布をつくり、販売している。段ボールからはさまざまなことが見えてくる。商慣習、経済力、モノの流れなどなど。普段見過ごしているものを観察することの面白さに目覚めること請け合い。月イチ書評で詳しく紹介。https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=201540
読了日:05月11日 著者:島津 冬樹


片想い (文春文庫)片想い (文春文庫)感想
ふんふんとまあまあ面白く読んだ。わりと最初の方にヒント(伏線)が出てきていたので、真犯人と最後の結末はわかってしまったけど、そこに至るまでの「性」に関する逡巡の部分が面白い。ただ、東野氏の小説の登場人物には、どうも魅力を感じない。今回は特にセリフが下手な芝居みたいだったのと、主人公がイマイチなのとで、まったく感情が動かされず。作品ごとに面白いテーマを取り上げているし、どれもさらっと一気に読めるので気分転換にはいいのだけど。
読了日:05月11日 著者:東野 圭吾


むかし僕が死んだ家むかし僕が死んだ家感想
夫氏が借りたのを読み始めたら止まらず。元カップルが、女性の幼児時代の記憶を取り戻すカギとなりそうな家に行き、遺留品から謎を解く話。死体発見?犯人登場!?と思わせる展開、ホラーっぽいゾクゾク感。家族が寝に行って静かになっていく深夜の自宅で、柱か梁のピシッという音、風が雨戸を揺らす音にビクビクしながら読んだ。残された日記や手紙といった少ない手がかりから真相を推理するのは研究と通じるものがあって楽しめた。ところが他の読者の評判はイマイチのよう。どうも東野作品に関しては多くの読者と私の評価は逆転するようだ(笑)
読了日:05月14日 著者:東野 圭吾


戦艦ポチョムキン (1978年) (国民文庫―現代の教養)戦艦ポチョムキン (1978年) (国民文庫―現代の教養)感想
ここのところ映画「戦艦ポチョムキン」に軽めにはまっている。これ笑いとろうとしてる?みたいなお茶目なシーンもあるし。「戦艦ポチョムキン」に言及している本は何冊もあるが、山田氏のこの本は、エイゼンシュテインの生い立ちから映画の解説、映画の広がりなど、広くていねいに記述している。先を読みたくなる文章で、とても面白く一気読みした。映画の感想はブログに(小ネタ集っぽいが…)。https://chekosan.exblog.jp/29429900/ いつかオデッサ行って、あの階段で写真撮ろうっと。
読了日:05月19日 著者:山田 和夫


戦艦ポチョムキンの生涯 1900‐1925戦艦ポチョムキンの生涯 1900‐1925感想
戦艦ポチョムキン号の建造前から廃船までの流れを追っている。ポチョムキン号の反乱がロシア革命にもたらした影響や、映画「戦艦ポチョムキン」に対する著者の評価は低い。著者は外資系企業に勤務したのちウクライナに語学留学。露語や英語文献も参照、それらの記述の比較と、著者独自の視点や見解を展開している。ただ、出典の示しようにバラツキがあることと、著者の想像による記述が少なくないことには注意が必要。なお、想像部分は本文中に想像であると明記されているし、著者自身、「真実」ではなく「解釈」であると、あとがきで書いている。
読了日:05月23日 著者:寺 畔彦


新装版 レモンをお金にかえる法新装版 レモンをお金にかえる法感想
商業大学に勤めだした頃に、初学者(自分含む)にいいかもと思って買ったのだったか。ミクロ経済学の超入門書。商売を始める、人を雇う、競争が起こる、合併するといった流れをわかりやすく教えてくれる。中1息子にもすすめてみたら、さっそく隣で読み始めた。5分とかからず読める。原書なら、英語の経済用語を知るのにいいかも。巻末の訳者、佐和隆光先生のあとがきも良かった。NHKの「課外授業 ようこそ先輩」でこれをアレンジした授業をされたとか。見たいなあ。
読了日:05月27日 著者:ルイズ・アームストロング


新装版 続・レモンをお金にかえる法新装版 続・レモンをお金にかえる法感想
何年も前に買っていたのを発掘。インフレ→不況→景気回復の巻。巻末の佐和隆光先生の解説によれば、本書はマクロ経済の「仕組み」について理解するための「事始め」。ケインズ経済学にもとづいて書かれているが、ケインズ主義的政策が効くのは、経済をからだに例えると「青年期」の体までで、「中高年期」を迎えた日本経済の病気には効き目はなさそうとのこと(2005年新装版あとがき)。とはいえ、マクロ経済学の「基本中のキホン」を、5分か10分ほどで読める絵本にぎゅっと凝縮してあって、エッセンスをつかむにはとてもよい。おすすめ。
読了日:05月27日 著者:ルイズ・アームストロング


歯みがきつくって億万長者―やさしくわかる経済の話 (チア・ブックス)歯みがきつくって億万長者―やさしくわかる経済の話 (チア・ブックス)感想
何かで紹介されていて知ったのだったか。発掘して読んでみたら、とても面白い! 小学生たちが安全な歯みがきを作って、正直な商売を広げて大成功するというお話。児童向けに単純化し、極端にして、商売ってどういうものか、経済ってどういうものかを楽しく読みながら学べるようになっている。アメリカだったら本当にこういう子ども、いそうだなあ! いや、日本でもアイディアと工夫で起業して成功している子どもや若者が出てきているか。起業する気もないし、その才もないことはわかっているが、なぜか起業ものを読むのは好きなので面白かった。
読了日:05月27日 著者:ジーン メリル


アウシュビッツの沈黙アウシュビッツの沈黙感想
アウシュヴィッツその他の収容所を体験した人々の証言集。1997年に映像で収録し、1時間半の作品にしたものをあらためて書き起こしたものだそう。映像で納めきれなかった分も再現したということ。ユダヤ人だけでなくポーランド人も含む。人体実験された人、解放後アウシュヴィッツ博物館で働いていてヘス元所長の処刑も目撃した女性も登場する。収録時にはアウシュヴィッツ=ビルケナウにはあまり人が訪れていなかったよう。すこし廃れた感じだった様子が文字からでも伝わる。訳が良いのか、証言者が目の前で話している臨場感がある。
読了日:05月30日 著者:米田 周


青野原俘虜収容所の世界―第一次世界大戦とオーストリア捕虜兵 (historia)青野原俘虜収容所の世界―第一次世界大戦とオーストリア捕虜兵 (historia)感想
松山や徳島の板東俘虜収容所は映画にもなっているが、日露、第一次大戦時には、ほかにもたくさんの捕虜収容所がつくられた。兵庫県小野市と加西市にまたがる青野原もその一つ。第一次大戦までは、日本はハーグ条約にもとづき、自国の軍隊と同等の処遇を維持するよう努めた。そのため、所内では娯楽やスポーツ(体操、テニス、サッカーなど)、文化、生産活動も行われた。地元民との交流もはかられた。青野原に収容された捕虜は技術者が多く、様々なものを作って販売もした。今は納屋と井戸くらいしか残っていないが、一度訪ねてみたい。
読了日:05月30日 著者:大津留 厚

読書メーター

by chekosan | 2019-06-06 13:40 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
このところ、エイゼンシュテイン監督の映画「戦艦ポチョムキン」にはまっています。

これまでにもインターネットで切れ切れに観ていたのですが、買ってあった淀川長治さんの解説付きのディスクであらためて通して観なおしたら、面白いなあと。当たり前のことですが、一つの作品は、まずはやはり通して一つの作品として鑑賞しないといけませんね。

私が買ったのは、ショスタコーヴィチの曲が使われている版です。別の曲が使われているものを評価する声もありますが、ショスタコ版も画面に音楽がよく合わせてあるなあと思いました。



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有名な作品なので、たくさんの方が書籍やインターネット上に、あらすじや解説や感想を書いています。映画の技術の点で細かく解説しているものが多いかなという印象です。

内容に関しては、「プロバガンダ映画」という一言で済ましているものが多いように感じます。

たしかに1905年の第一次ロシア革命20周年を記念するためにつくられた作品ですし、エイゼンシュテインも革命を支持し、評価しようとしてつくっています。

あらすじとしては、日露戦争で国力の低さが露呈するロシア帝国の最新鋭戦艦ポチョムキン号の水兵たちが、専制政治に抵抗しようと反乱を起こす。リーダーが亡くなり、寄港したオデッサの市民の哀悼と支持を得るが、コサック兵による市民への無差別弾圧が開始される。ポチョムキン号は帝国の艦隊と抗戦も辞さない覚悟を決めるが、艦隊はポチョムキン号への攻撃を行わず、ポチョムキン号に合流する…  ただし、史実とは違うところもあるそうです。

タイトルが戦艦の名前で、よく取り上げられる場面もなにやら痛くて怖そうな感じのものばかりなので、「戦争映画か、時代遅れで面白くなさそう」と避ける人も多そうな気がします

でも、細かいところで、ほほうと思える表現や、意外にも笑えるシーンがあって、「技法はすごいけど、話はプロバガンダ」みたいな言われ方も残念な気がします。


笑えるシーンは、例えば、エイゼンシュテイン自身が扮した従軍司祭が水兵と争って頭を打って気絶したふりをするところとか。

ちろっと目を開けて、またすぐ目を閉じて難を逃れようとしています↓ ここはどう見ても笑いを狙っていますよね。


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ほほうと印象に残ったのは、革命の主体を男性だけにしないで描いているところです。

反乱のきっかけをつくるのは、実在の水兵ですが、彼だけがヒーローというようには描いていません。というか、彼はすぐ死んでしまいます。

群衆が主役、群衆の団結が主たるテーマです。そのため、さまざまな階層、階級の老若男女の表情や動きをたくさん捕らえていきます。

そのなかで、群衆を先導して、亡くなった水兵を悼み、団結して決起しようとする女性たちの活躍が目立つのです。


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この白ブラウスにリボンの女性は、髪の毛も短くて、新しいタイプの女性という感じですね。

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サイレント(無声映画)なので、字幕で出てくるセリフも絞りに絞っていて、とても印象に残ります。

「一人はみんなのために、みんなは一人のために」というセリフは、2~3度出てきます。まさにこの映画のテーマですね。


と思ったら、群衆が次第に高揚していくなかに、その様子をバカにしたように冷笑し、「ユダヤ人を殺せ!」と叫ぶ男性が出てきます。ギョッとする場面です。



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実際、オデッサにはユダヤ人が多く住んでいて、虐殺されたという事実もあるのですが、映画のなかでは、このようなことを口にした男性を周囲の人たちが睨みつけ、迫っていきます。

睨みつけられた男性は、帽子を目深に引き下げて顔を隠します。ここも、なんとなく笑える感じ。


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男性はたくさんの人に取り囲まれてボコボコにされるのですが、でもそのシーンもなんとなく滑稽なテイストを残しています。



そのあと、集まった群衆が兵に殺されていくという有名なオデッサの階段のシーンでは、さすがに笑う要素はありません。


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でも、さらにそのあとに、「モンタージュ」技法の例として有名なライオンのシーンがありまして、

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どう見てもかわいい。



一瞬ずつでパパパッと切り替わるので、「ライオン、起きた!?」「石のライオンが動いた!?」と思わせます。

ここは、アハハと笑わせようとしているわけではないかもしれないですが、その手前の弾圧シーンの残虐さのショックから、次の展開に向けて観るひとの感覚を切り替える効果があると思うのです。


というように、まじめ一本やりでも、重くて暗いばかりでもなく、案外お茶目といいますか、明るくて若々しい感性があらわれているように思います。


エイゼンシュテインはこの映画を撮ったとき、27歳の青年なんですもんね。


エイゼンシュテインを紹介し、研究されてきた山田和夫氏の著作『戦艦ポチョムキン』のなかにエイゼンシュテインが若いころに描いたイラストが載っていて、それなどもやはりユーモラスで、生き生きした感じでした。


山田和夫氏の『戦艦ポチョムキン』は写真の下段真ん中の文庫で読みました。

「戦艦ポチョムキン」に言及している本は何冊もありますが、山田氏のこの本は、エイゼンシュテインの生い立ちから映画の解説、映画の広がりなど、広くていねいに記述してあり、先を読みたくなる文章で、とても面白かったです。


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というわけで、オデッサに行きたい熱が高まっています。行きたいところだらけです!


ポチョムキンネタはもしかしたらつづく、かも。






by chekosan | 2019-05-19 22:43 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)

今月の書評が公開されました。(^▽^)/


『段ボールはたからもの』@関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊


本屋さんの旅のコーナーを何とはなしに見ていると、一冊の本が目に止まりました。

「女子旅」とか、「○○のおいしいカフェめぐり」といったお洒落な本のなかに、段ボールの本?

これは私を呼んでいる!

大当たりでした。

普段見過ごしているものを観察することの面白さに目覚めること請け合いです。





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by chekosan | 2019-05-11 17:47 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
チュコフスキー(1882 - 1969)は、その名を冠した文学賞もあるソ連を代表する児童文学作家です。


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が、この作家の少年時代を書いた自伝を読んだのは、彼自身よりも、彼の代表作『アいたた先生』のモデルとされるドクター・シャバドに関心があったからです。

シャバド先生というのは、今のリトアニアのヴィリニュスで活躍したユダヤ系の医師で社会活動家です。人びとにたいへん慕われ、尊敬された人物ということで、ヴィリニュスに銅像が立っています。



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チュコフスキーはシャバド先生に実際に会ったことがあるとの記述をインターネットでみつけたため、彼の少年時代を書いた作品にシャバド先生に関する言及がないかと思って読んでみました。

結局そのような記述はなかったのですが、この作品自体とても面白くて、チュコフスキーにも関心が高まりました。

銀いろの記章」とは中学のバッジのことです。彼は優秀な子どもだったのですが、貧しい母子家庭の子であったために無実の罪を着せられて退学処分にあいます。そうした貧しい家庭の子どもを中学に入れないようにする布告が出されていたからです。

彼を大学生にするためにお金持ちの洗濯を請け負って働きづめだった母との約束を果たすべく、彼は友達と励ましあって自学し、遂には…

と書くと重い苦労話のようですが、ユーモアがあって読みやすいお話です。当時の風俗や生活がわかって、たいへん面白いです。


チュコフスキーが使っていた別荘が博物館として公開されているようです。いいですね。いつか行ってみたいです。




by chekosan | 2019-05-05 21:32 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
新年度が始まった4月。今年はいつまでも寒いせいか、息子らが相次いで高熱の風邪。私も月末にうつったか、喉→熱→鼻→咳の風邪をひいてしまった。

それでも、3月と同じくらい、読書、映画鑑賞、コンサート等のインプットができたので、まあ良しとしよう。

読んだ本の数:11
読んだページ数:2198
ナイス数:404

里海資本論  日本社会は「共生の原理」で動く (角川新書)里海資本論 日本社会は「共生の原理」で動く (角川新書)感想
面白かった。「里海」は里山ほどは耳慣れないが国際的な学会でも使われているとのこと。人が手を入れることで、消滅しそうな生態系や生物多様性が復活し、産物や廃棄物(牡蠣の殻とか木の枝など)の循環がうまく回り始めた事例を紹介。主に瀬戸内海。夏に広島の博物館で牡蠣の養殖の仕組みの変遷を見てきたので、より興味が持てた。他の方の感想を見ると、里海資本論という言葉を援用するにはやや対象を広げすぎかなという説明や観察例が本書の評価を下げている感じか。個々の実例はとても興味深いので、掘り下げた後日談を知りたい。
読了日:04月01日 著者:井上 恭介,NHK「里海」取材班


自分のなかに歴史をよむ (ちくま文庫)自分のなかに歴史をよむ (ちくま文庫)感想
それなしに生きることはできないと思えることを追求すること、そうしながらも自分と、自分が追っている対象を客観視すること。著者・阿部謹也氏が師から学んだ姿勢は、学問に限らず当てはまることではないかと思う。月イチ連載の書評で取り上げました。
読了日:04月05日 著者:阿部 謹也








Amazonプライムで映画を観て。ナチスがらみなのかなと予告編を見たらプラハが出てくる!絵画とプラハが出てくるミステリーとなれば逃す手はない! 結果、歴史的背景などは関係のない、現代のフィクションだったが、とても面白くて。見終わったあとものすごく引きずってしまい、あれはどう解釈すればいいの? 他の人はどう受け止めたのだろう?とネットで感想を読みまわり、パンフや書籍も入手して、どっぷり浸った次第。ブログにネタバレなしで記録
読了日:04月13日 著者:ジュゼッペ トルナトーレ


地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門感想
教育研究仲間のおすすめ。へええ~!え~!?ほおお~~!と一気読み。小説仕立ての部分はもう少しつくりこんであればとも思うが、欄外のアドバイス(解説)やコラムがそれを補っている。それにしても事業が回りだすとあんなに急速に展開、拡大していくものなのか。あのスピード感、採算や効率や成果の追求、責任の所在を明確にする姿勢。補助金の悪弊には相当お怒りのご様子。ここまでビシバシ書かれるとは! 詳細な感想や連想からの個人的愚痴wをブログに。
読了日:04月13日 著者:木下 斉


チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1感想
1986年4月26日はチェルノブイリ原発事故が起こった日。この日が近づけば、当然、日本の新聞でもいろいろ報道されるだろうと思いきや案外少ない。そこで今日の授業では、本書に載っている日本の新聞で取り上げられた記事件数の推移も交えて、最近のチェルノブイリ関連の動きを紹介した。このところよく取り上げられているのは、なんと激増する観光客がポイ捨てしていくゴミの問題😠 嘆かわしい。詳しくはブログに記録



フォトジャーナリストの視点フォトジャーナリストの視点感想
2018年のノーベル平和賞を授賞したムラドさんに関する報道で知ったフォトジャーナリスト。写真を始めたきっかけが面白い。与えられるのを待っているのではなく、つきつめたいことがあれば自分で手段やルートを開拓していけばいい/いかないといけないのだなあと感心した。文章部分は説明が足りないところや、逆に重複した記述があったりもするけど、フォトジャーナリストとはどういう仕事をしているのかをさらっと知ることができる。もちろん写真もたっぷり。
読了日:04月17日 著者:林典子


むずかしい年ごろむずかしい年ごろ感想
寝る前に少しずつ読んでいたこともあって、なかなか終わらず。なんとか読んだ感じ。幻想ホラー短編集。筋が通っている必要のないジャンルではあるのだろうが、にしても狙ってなのか失敗なのかがわからない、習作のような、あるいは創作メモみたいな作品が多い気がした。デビュー作だから? 表題作はその点、筋や文体の工夫(技巧)がわかりやすいが、『アルジャーノンに花束を』みたいで先が読めてしまった。新聞の書評で見て購入したが、親しみのないジャンルは、書評だけでは合うか合わないか、面白いと思うかどうかが見抜けないものだなあ…
読了日:04月18日 著者:アンナ スタロビネツ


おいしいロシア (コミックエッセイの森)おいしいロシア (コミックエッセイの森)感想
届いて速攻で読んで、思い出をえんえん綴った土曜の午後。 クワス、ブリヌイ、イクラ(キャビア)… あの○○をもう一度! いつかあそこに!は、自分のなかの機が熟せば実現する! というわけで、ロシアもまた行くぞ。今年じゃない気はするけど。そのときはこの本を持って行ってアパートホテルに泊まってスーパーで食材調達してロシア料理を作ろうっと!
読了日:04月20日 著者:シベリカ子


旅行が200%楽しくなる! スーツケース収納術旅行が200%楽しくなる! スーツケース収納術感想
旅の経験が少ない人、海外旅行初心者かつ行先やテーマがまだ決まっていない人で、バッグ類を新調しよういう人のとっかかりには使えるか? ただし旅のバッグ類は進化が激しいので賞味期限は短い。肝心の収納術がもっと濃ければ… 南極や砂漠旅行の持ち物リストまであるが、南極は未踏だとのこと。旅の経験はそこそこあって、初めての場所やジャンルに行くという人なら、実際にそこに行った人で自分と年齢や感性、習慣、体力、滞在期間が近い人の発信した情報を見て回ると楽しくて参考になる。持ち物は同性でも結構違うので、結局は自分次第だけど。
読了日:04月20日 著者:三田村 蕗子


ルポ チェルノブイリ28年目の子どもたち――ウクライナの取り組みに学ぶ (岩波ブックレット)ルポ チェルノブイリ28年目の子どもたち――ウクライナの取り組みに学ぶ (岩波ブックレット)感想
薄いブックレットだが参考になる情報がたくさん載っている。ブログにメモを記録。最終章、日本の状況に愕然とする。 本書を読みながら、先日大阪で開催されたトークイベントでの話を思い出していた。胎内被曝されたウクライナ出身のマリアさん。何が原因なのかわからない体調不良、真っ暗なトンネルを手探りで歩いているような少女時代。19歳で甲状腺疾患だとわかって「嬉しかった」と言う。24歳で甲状腺の摘出手術を受けて生まれ変わったと繰り返されていた。

読了日:04月29日 著者:白石 草


夜と灯りと (新潮クレスト・ブックス)夜と灯りと (新潮クレスト・ブックス)感想
読了していないが記録。ドイツの映画「希望の灯り」を観たあと、原作「通路にて」を読みたくて図書館へ。原作は驚くくらい短かい。原作者が映画の脚本も書いたとのことで、映画はより深く厚みのある物語になっていた。ほかの短編もいくつか読んだが、う~ん… 失敗作?途中で終わってる?みたいなのが多くて全部読むのは放棄しようかな(^_^;) 脚本の方がいいんじゃないだろうか、この作家さん。映画と合わせてブログに記録
読了日:04月30日 著者:クレメンス マイヤー

読書メーター

by chekosan | 2019-05-02 23:59 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
今年の4月26日でチェルノブイリ原発事故から33年が経ちました。

ここ数年、ダークツーリズムに関心を持つようになって、チェルノブイリも一般人が観光で行けるようになっていると知ってからは、近い将来、訪ねることも視野に入れるようになりました。

この本は28年目のウクライナの取り組みを取材してまとめたものです。薄いブックレットですが、参考になる情報がたくさん載っています。

これを読みながら、先日大阪で開催されたトークイベントでのお話を思い出していました。

何が原因なのかわからない体調不良、真っ暗なトンネルを手探りで歩いているような少女時代。19歳で病名がわかって「嬉しかった」と言うマリアさん。手術を受けて生まれ変わったと繰り返されていました。


1986年に起きたチェルノブイリ事故によって母胎内で被爆したマリア。今年で33歳を迎える彼女は19歳の時に慢性甲状腺炎(橋本病)と診断されるまで精神疾患と誤診され続け、24歳の時に甲状腺を全摘出する手術を行いました。指の震え、髪が抜け落ちる、爪が剥がれる。首の腫れ、眼球の突出。幼い頃から様々な症状を抱える中で、幼いマリアは親の期待に応えられなかったことが何よりも辛かったと語ります。さらに、手術後は自身の障害が見えないものであるが故に、他者からそれを理解してもらえないことに苦しみ続けました。首の手術跡は消え、表面的には何も障害を抱えないマリア。そんな彼女は、1日、10〜20錠の薬を飲み、体と心の調子を整えなければいけません。現在は、夫のサーシャとともに支え合い、また画家としての道を歩み始めました。




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by chekosan | 2019-04-30 15:42 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
旧東ドイツの巨大スーパーマーケットを舞台にした映画「希望の灯り」を観てきました。

主人公はほとんどセリフを口にしない無口な青年。なんだか顔色が悪くて表情も乏しくて、大丈夫かいな、そんなんでスーパーで働けるの?と思わせる始まりです。

夜間の在庫管理担当で、お客さんとそんなに頻繁にやりとりするわけではないようですが、それにしてもしゃべらないなあ~。

でも礼儀知らずというわけではなく、最低限の会釈や返事はするし、休憩ばかりしているベテランのおじさんたちよりも真面目そう?(^_^;)

周りの従業員も、仕事やサボり方を伝授しながら、やわらかく見守ってくれています。



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物語としては、この青年が、一目ぼれした人妻との関係が進むようで進まないようで悶々としながら日々を過ごし、それを諫めるでも焚きつけるでもなく優しく応援してくれている周囲の人たちとのかかわりで少しずつ自分の人生を意味のあるものにしていく、というようなくらいなものです。

仕事の合間や前後のちょっとした会話から、旧東ドイツの人たちの現状や心情がちらちらと見えますが、大きな動きはほぼありません。ほぼ、ですが。

映画にドラマティックな展開を期待する人、人生が今も先も光に満ち満ちているように感じている人には面白く感じられないかもしれないです。

でも、人生って、生活って、こういうものよね、というしみじみ感。

この映画は、ベルリンの壁崩壊、ドイツ再統一の躍動と高揚のあとの反動と陰の部分、ごく普通の日常を生きる人々のパッとしないけど小さな楽しみもある人生を淡々と映したものですが、80年代末からの日本も、享楽の時代から沈滞の時代へと移っていき、現在も浮かれた日常と陰の日常が同時に存在しているのを感じながら生活していくような時代が続いています。そういう大きな流れでは共通するものがあることを感じました。

ーーー

ということで、大きな感動とか衝撃というのはなかったのですが、原作があるとわかったので、映画鑑賞のあとすぐに図書館に行って借りてきました。

クレメンス・マイヤーの短編集『夜と灯りと』(新潮社 2010年)所収の「通路にて」です。「通路にて」は、ごくごく短いお話です。あっというまに読めてしまいます。

私が映画を先に観たからということを抜きにしても、原作よりも映画の方が断然いいと思います。

映画の脚本も原作者マイヤーが手掛けているということなので、原作者の意図を変えているわけでもないですし、短編から映画にするにあたって、より深み、厚みが増して、よい作品に発展したという感じがしました。

マイヤーさん、短編書くよりも、脚本の方がいいんじゃないかしら。

同じ本の他の作品もいくつか読みましたが、なんかわからん話やなあ~というものが多くて。新しいスタイルを作り出そうと実験的に書いているのでしょうけど、失敗?途中で終わってる?という感じが… 

登場人物も、映画の方が人間としての現実味、魅力が出ていたと思います。

ーーー

そういえば、映画の主演男優さん、先日観た映画「未来を乗り換えた男」の主演もしていたんですね。パンフレット見るまでまったく気が付きませんでした。こちらの方が、演技のうまさを感じました。(というか「未来を乗り換えた男」は、断然、原作「トランジット」の方が良いです。映画の脚本、ひどいと思う…)

うまいんだけど、、2本とも、なんというか死んだ人みたいな雰囲気で、あまり魅力的なキャラクターではなくて。

でも、そういうキャラクター(なり俳優)を主役に据えるヨーロッパの映画のチャラくなさ、華やぎのなさが好きです(笑)

周りの俳優さんたちも、そこらの普通のおっちゃん、おばちゃんぼさが良かったです。












by chekosan | 2019-04-30 11:55 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)