中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan

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ホロコーストの犠牲になった13歳の少女の遺品のスーツケースを、2000年、アウシュヴィッツ博物館から教育用展示品として貸借した日本人女性が、持ち主を特定し、カナダにいた兄を見つけ出したという実話です。

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ホロコースト教育資料センターの代表である石岡史子さん(本書では「ふみ子」)は、遺品を貸し出してくれたアウシュヴィッツ博物館はもとより、イスラエルやアメリカの博物館にも問い合わせて、遺品のかばんの持ち主を探します。

当時は連絡は手紙なので、返事も数週間単位でかかります。やっと届いた手紙には、手がかりなしとの返事が続きました。

ようやくチェコのテレジン収容所からアウシュヴィッツに移送された女の子であることがわかり、石岡さんは出張の寸暇を縫って、テレジン収容所を訪問します。

そうして調査を重ねて、かばんの持ち主ハンナの兄のジョージさんが、やはりテレジン収容所からアウシュヴィッツ収容所へと移送され、生き抜いてカナダに暮らしていることを突き止めます。

ジョージさんは、50年を経て妹の遺品と対面するため日本を訪問し、同センターのボランティアグループの子どもたちと交流します。

のちに、このかばんは、1984年にイギリスでの展示に貸し出した際に火事で焼失し、作り直された複製だったということが判明しますが、ハンナとジョージのきょうだいの体験と、ジョージさんと子どもたちとの交流は児童書となり、映画化されて世界中に知られることとなりました。


かばんが実物であればより良かったのでしょうが、しかし、複製がつくられたことでジョージさんと子どもたちの交流が生まれたともいえるでしょう。

かばんは、2015年にアウシュヴィッツ博物館からホロコースト教育資料センターに寄贈され、各地を巡回しています。

ジョージさんは、2019年1月12日、トロントで90歳で亡くなられました。








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by chekosan | 2019-01-13 16:08 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
2018年、攻めの姿勢で猛進しました。ちょっとお出かけ系インプットを詰め込み過ぎて、アウトプットが追い付かなかったことが反省点です。

大きなものでは、2月に大学からの親友とポーランドへ。アウシュヴィッツ博物館を見てきました。アウシュヴィッツ関連は膨大な先行研究があるので、オリジナルな何かを書く予定はしていなかったのですが、同志社、関大、滋賀大、流科大の授業でたくさんの学生たちに話して考えてもらっています。

8月には上の息子とバルト3国へ。たくさん歩いて、たくさん見て、たくさん学んできたのですが、こちらはいまだブログへの記録すらまとめられていません…。しかしバルト3国は今後も勉強したいと思っています。

杉原千畝にゆかりのある土地を訪ねる旅も断続的に続けています。岐阜や横浜(氷川丸)、訪問先では貴重な出会いが得られました。細くても長いおつきあいをさせていただければと思います。

今年は、春休みに名古屋に行く予定です。天候不良や体調不良で何度も行き損ねている敦賀も絶対に行きます。

大学関係でも、手を緩めず、学生たちを外へ連れ出すプロジェクトを進めました。近隣の展覧会、広島、横浜。学生たちの真剣な目、見たもの聞いたことを素直に吸収してくれている様子に非常に心打たれました。やはり若いうちにたくさん経験を積んでほしいと強く思いました。






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2018年の読書メーター
読んだ本の数:124
読んだページ数:30063
ナイス数:3671

2018年の読書記録から、特に印象に残ったものをピックアップします。


みんなの道徳解体新書 (ちくまプリマー新書)みんなの道徳解体新書 (ちくまプリマー新書)感想
中高生向け新書のせいか、マッツァリーノ節はやや抑え気味な気もするが、なかなか刺激的で面白い。モラルが崩壊しているとか日本人に道徳心がなくなったとか若者が凶悪化したとか、巷に溢れる言説がいかに根拠なく発せられているかを資料や論理にもとづき、痛快に、辛辣に批判する。道徳の副読本の「名作」解説の章は吹き出す箇所多数。最終章、道徳教育はどうあるべきかという結論は簡潔で明快。おすすめ。ブログにもう少し詳しく記録。http://chekosan.exblog.jp/27965509/
読了日:01月03日 著者:パオロ マッツァリーノ


否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い (ハーパーBOOKS)否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い (ハーパーBOOKS)感想
映画を観てからの原作。本文543ページとたっぷりだが非常に面白い。イギリスの裁判の進め方、被告側の徹底したリサーチなど勉強になった。ホロコーストをめぐる実際にあった裁判の回想録だが、まるで小説のよう。原作の方が裁判での争点をよく理解できるが、映画は映画でイギリスの法廷の様子が絵でわかるので、併せて見ると良いかも。別の人によるあとがきに要確認事項あり。詳しくはブログに記録。http://chekosan.exblog.jp/28024809/
読了日:01月21日 著者:デボラ・E リップシュタット


ええ、政治ですが、それが何か?――自分のアタマで考える政治学入門ええ、政治ですが、それが何か?――自分のアタマで考える政治学入門感想
とても面白かった。政治学の授業では、言葉を尽くして他者と対話せよと学生に言っているので、おおいに賛同。詳細はブログに記録。http://chekosan.exblog.jp/28046989/ ところで「政治学やってますというと、政治家になるんですかと訊かれる」というのは聞く話だけど、私は言われたためしがない。ジェンダーよね。あ、親戚から一回だけ言われたか。あと初対面の人に日本の政治についてどう思いますか!?と聞かれて困惑したことがある。そんな大問題を大雑把に繰り出して返答を迫るのも乱暴な気がする。
読了日:01月27日 著者:岡田憲治


シンドラーズ・リスト―1200人のユダヤ人を救ったドイツ人 (新潮文庫)シンドラーズ・リスト―1200人のユダヤ人を救ったドイツ人 (新潮文庫)感想
アウシュヴィッツ&シンドラーの足跡を訪ねる旅の途中から読んで、ポーランド風邪に伏せっている間にちょっとずつ読んだ。原作には映画には盛り込めなかったエピソードがたっぷり書かれていて、とても面白い。例の「赤い服の少女」、実在の人物だったんだ! 映画の方がわかりやすいところもあり、原作を読んでああそういうことかとわかるところもあり。ということで、映画も原作もおすすめ。詳しくはブログに記録。http://chekosan.exblog.jp/28148158/
読了日:02月13日 著者:トマス・キニーリー


HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)感想
クンデラのように、というかクンデラ以上に、作者が作品中に顔を出し口を出す小説。むしろほぼドキュメンタリー。プラハを治めるSS幹部の暗殺事件について、作者が知ったきっかけから、調べを進めていく過程が盛り込まれている。そこがとても面白い。我々の業界では研究対象への愛をあからさまに文字で示すことは通常できない。小説ならでは。羨ましく思いながら読んだ。映画との比較など詳しくはブログに記録。https://chekosan.exblog.jp/28205007/ 今年の夏はハイドリヒ暗殺関連現場めぐりをしよう。
読了日:03月21日 著者:ローラン・ビネ


ホロコースト 女性6人の語り部ホロコースト 女性6人の語り部感想
ホロコーストの生存者、博物館の責任者、歴史家など、さまざまな形でホロコーストの伝承や研究に関わっている人など、女性6人を取材した本。A5判よりも縦が短く、字も大きくて読みやすい小さな本だけど、ここにも行きたい、こんな本もあるのか読みたい、とたくさんの刺激をもらった。特にドイツのオスナブリュックという街にある、ユダヤ人画家フェリックス・ヌスバウムの絵を集めた美術館に行きたい! 詳しい記録はブログに。https://chekosan.exblog.jp/28277479/

読了日:04月30日 著者:大内田わこ


ガス室に消えた画家 ヌスバウムへの旅 母と子でみる A 40ガス室に消えた画家 ヌスバウムへの旅 母と子でみる A 40感想
同じ著者の『ホロコースト 女性6人の語り部』で、本書の表紙にもなっている自画像を見て強烈に惹かれた。ナチスのユダヤ人迫害で外国を転々とし、密告によって捕らえられて収容所で殺された画家。友人たちに預けた作品が戦後ずいぶん経って親戚の手に移り、故郷オスナブリュックで展覧会が開かれた。それをきっかけに残りの作品の所在も判明し、オスナブリュックに集結。市民が寄付を集めて常設の美術館もできた。ぜひ行って、作品を生で見たい。詳しくはブログに。https://chekosan.exblog.jp/28304919/
読了日:05月10日 著者:大内田 わこ


石の花(5)解放編 (講談社漫画文庫)石の花(5)解放編 (講談社漫画文庫)感想
うぉ~~っと一気に。何年も前にある先生に教えていただいて購入したものの、戦争戦争した話なので読み進められなかった作品。機が熟したのだろう、今回は一気に読めました。第二次世界大戦中のユーゴの話。ていねいに描かれていて面白かった。こういう緻密につくられた漫画を子らも読めるようになってほしいなぁ。まぁこの作品自体は関心を抱く人は少ないテーマと思うが。感想はまとめてブログに。https://chekosan.exblog.jp/28323051/

読了日:05月19日 著者:坂口 尚

サラの鍵 (新潮クレスト・ブックス)サラの鍵 (新潮クレスト・ブックス)感想
映画を観て原作を読んだ。キツいシーンが続く。小さな子どもが苦しむのを観るのは辛い。この作品がクローズアップするヴェル・ディヴ事件に象徴されるフランスの対独協力、ホロコーストへの積極的関与の事実、それが長くタブーになっていたことにショックを受ける。ドランシー収容所に至っては、いまも集合住宅として使われている。フィクションだが歴史的事実と現在を繋げてくれる作品。詳しくはブログに。https://chekosan.exblog.jp/28393898/
読了日:06月18日 著者:タチアナ・ド ロネ


綾瀬はるか 「戦争」を聞く (岩波ジュニア新書)綾瀬はるか 「戦争」を聞く (岩波ジュニア新書)感想
毎月「関西ウーマン」に連載させていただいている書評コーナーで2巻同時に取り上げました。夏だけ思い出せばよいということではありませんが、やはり夏は振り返り語り継ぎたい。綾瀬はるかさんの傾聴と寄り添いが貴重な証言を引き出しています。今年は学生たちと広島を訪ねたいと思っています。https://www.kansai-woman.net/Review_s.php?id=201374
読了日:07月08日 著者:
綾瀬はるか 「戦争」を聞く II (岩波ジュニア新書)綾瀬はるか 「戦争」を聞く II (岩波ジュニア新書)感想
戦争終結から70余年が経ち、戦争を経験した人びとが高齢化するなかで、いま伝えておかなくては、あの惨禍が忘れられてしまうという切迫感から、つらい記憶を出して語られました。証言者の方々の「これが最後」「いま残しておかねば」という覚悟と思いが胸に迫る証言集です。「関西ウーマン」信子先生のおすすめの一冊コーナーで1巻と共に取り上げました。https://www.kansai-woman.net/Review_s.php?id=201374
読了日:07月09日 著者:


広島の木に会いにいく広島の木に会いにいく感想
原爆の爆心地から半径2キロ圏内で生き残った被爆樹木と、樹木を調査し、守り、伝える人々をドキュメンタリー映画監督が訪ねる。その場を動けないにもかかわらず熱線や爆風に耐えて生きのびた植物の強さに感銘を受ける。生きているだけに、挿し木をして子孫を残すにも非常に繊細に扱わなくてはいけない。また、木の内部を研究するのは現在の科学ではなかなか難しいとのこと。学生と広島スタディツアーに行くので、ぜひとも一緒に何本か見てきたい。小学高学年から読めるようルビつき。イラストもいい。年齢を問わずおすすめ。
読了日:08月10日 著者:石田 優子


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)感想
文学やノンフィクション作品を通してロシアソ連東欧を知る輪読の授業で読むので再読。もしかして読んでなかったか? NHKのドキュメンタリーで見ただけだったか? 1本目読みだして、あれ? おませな少女の下ネタ満載で、授業で使って大丈夫だったかと苦笑。でももちろんそれで終わりではなくて、社会主義期のプラハの学校に集った4人の少女たちの学校生活を通して、社会情勢、国際情勢を鮮やかに描き出す。授業終えたら学生の反応や感想交えて、詳しく記録しようと思う。とりあえず選んで間違いではなかった。
読了日:09月13日 著者:米原 万里

オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)感想
『嘘つきアーニャ』に続いて輪読ゼミで読む本。事実と体験を巧みに盛り込んだフィクション。1960年代にプラハのソビエト学校で出会った女性教師オリガ・モリソヴナたちの謎を、主人公が旧友と共に90年代初頭に解いていくなかで明らかになるスターリン時代の人権抑圧の実態。限られた日数で資料を探し関係者を訪ね歩く過程も非常にリアル。いくつかのどんでん返しもうまい。謎解き小説として読むだけでもスリリングで面白いが、革命からのソ連東欧の激動と悲劇と人々の生き様を感じとれる作品としておすすめ。
読了日:09月28日 著者:米原 万里


暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン感想
中・東欧史、ホロコースト史家で、『ブラック・アース』『ブラッド・ランド』の著者、ティモシー・スナイダー氏が緊急出版した小さな本。強権的、独裁的な政治を支え、助長するのは普通の人々の日常のふるまいや言動であることを歴史の事例からわかりやすい言葉で解説。第一条が「忖度による服従はするな」。いろんなところで紹介していこう。力強くおすすめ。まずは書評連載で取りあげました。https://www.kansai-woman.net/Review_s.php?id=201450
読了日:12月01日 著者:ティモシー・スナイダー,Timothy Snyder


なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか ピース・コミュニケーションという試み (光文社新書)なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか ピース・コミュニケーションという試み (光文社新書)感想
大変興味深かった。著者はメディアやコミュニケーションのプロ。戦争や平和に関する情報の伝わりかた、受け止めかた、伝え方について知り、考えるのに良い一冊。事例と理論の割合もよく、読みやすい。平和教育のあり方を考えるのにも参考になる。先日読んだティモシー・スナイダー『暴政』と併せておすすめしたい。
読了日:12月12日 著者:伊藤 剛


【改訂完全版】アウシュヴィッツは終わらない これが人間か (朝日選書)【改訂完全版】アウシュヴィッツは終わらない これが人間か (朝日選書)感想
輪読ゼミで改訂版を再読。二回目なので衝撃は減ったが、別のところで発見などあり。読んできた学生たちもそれぞれ深く受け止めて、言葉を絞り出して、過去を知ることを今に結びつけて考えようとしてくれていた。アウシュヴィッツの体験ものは他にもあるが、そのなかでも良いと思う。特に若い人たちに向けた質疑応答の部分は強くおすすめ。
読了日:12月20日 著者:プリーモ・レーヴィ



読書メーター

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by chekosan | 2019-01-02 13:52 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
通常の授業、助っ人授業、法事、依頼原稿の調査、思いがけない事態の発生など、多方面でいろいろあった12月。でも、寝込んでいる間に終わった10月や大きな行事に駆け回った11月よりも、内容的に良い本に出会えたひと月でした。

特に、ティモシー・スナイダー『暴政』はおすすめ度MAX。スナイダーは東欧史研究者なので、よけいに響くということもあるでしょうが、普遍性のある主張です。若者におおいに勧めたい。

と思って授業で紹介したら、早くも翌週のカードに「購入しました」と書いてくれた学生がいました。そういう学生と学び合える環境があることを嬉しく思った月でもありました。


12月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2308
ナイス数:335

暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン感想
中・東欧史、ホロコースト史家で、『ブラック・アース』『ブラッド・ランド』の著者、ティモシー・スナイダー氏が緊急出版した小さな本。強権的、独裁的な政治を支え、助長するのは普通の人々の日常のふるまいや言動であることを歴史の事例からわかりやすい言葉で解説。第一条が「忖度による服従はするな」。いろんなところで紹介していこう。力強くおすすめ。まずは書評連載で取りあげました。https://www.kansai-woman.net/Review_s.php?id=201450
読了日:12月01日 著者:ティモシー・スナイダー,Timothy Snyder


あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 (520))あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 (520))感想
輪読ゼミで取り上げたので再読。短いエピソードを重ねていくことで、ユダヤ人への迫害が次第に深刻になっていう様子が読者にもヒシヒシと迫る。当時の様子や生活習慣、法律や社会の変化を実にうまく盛り込んであるなと再確認した。再読でも細部にまだまだ発見があったので、また取り上げたいなと思う一冊。そしてこの年末こそ続編も読もう。授業では、ティモシー・スナイダー『暴政』も紹介。同時に読むとより考察が深まると思う。
読了日:12月04日 著者:ハンス・ペーター・リヒター


その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く――その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く――感想
岡檀氏の自殺希少地域の研究に感銘を受けた精神科医が、それらの地域を訪ねる。見出したのは、そうした地域では助けるという行為がごく自然に行われているということ。相手の意向を汲みすぎず、必要な手立てを講じようとする。なるほどその方が物事は解決するだろうなと感じ入る。その他参考になる点多々あり。岡檀氏の本も読みたい。
読了日:12月07日 著者:森川すいめい



なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか ピース・コミュニケーションという試み (光文社新書)なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか ピース・コミュニケーションという試み (光文社新書)感想
大変興味深かった。著者はメディアやコミュニケーションのプロ。戦争や平和に関する情報の伝わりかた、受け止めかた、伝え方について知り、考えるのに良い一冊。事例と理論の割合もよく、読みやすい。平和教育のあり方を考えるのにも参考になる。先日読んだティモシー・スナイダー『暴政』と併せておすすめしたい。
読了日:12月12日 著者:伊藤 剛



実戦!  海外で活かせる人材力実戦! 海外で活かせる人材力感想
著者よりご恵贈あずかりました。
読了日:12月14日 著者:今井 市郎





【改訂完全版】アウシュヴィッツは終わらない これが人間か (朝日選書)【改訂完全版】アウシュヴィッツは終わらない これが人間か (朝日選書)感想
輪読ゼミで改訂版を再読。二回目なので衝撃は減ったが、別のところで発見などあり。読んできた学生たちもそれぞれ深く受け止めて、言葉を絞り出して、過去を知ることを今に結びつけて考えようとしてくれていた。アウシュヴィッツの体験ものは他にもあるが、そのなかでも良いと思う。特に若い人たちに向けた質疑応答の部分は強くおすすめ。
読了日:12月20日 著者:プリーモ・レーヴィ



生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある感想
面白かった。統計データとインタビュー調査を組み合わせ、徳島県旧海部町の自殺率の低さの原因を探った研究を一般向けにまとめたもの。人々の生の声や日常のふるまいを重視して分析した結果、当該地域では公平水平な人間関係、弾力性の高い合意形成のプロセス、日常的に使う公共の施設やサロン的な場に住民たちがいつでも自分が行きたいときに自分の力で行けていること、拘束しすぎない、でも他人に無関心でない、程よいつながりが保たれていることが明らかになった。自殺予防のみならず、コミュニティや人間関係のありかたを考える参考になる。
読了日:12月22日 著者:岡 檀



コルチャック先生―子どもの権利を求めて (伝記絵本 世界を動かした人びと)コルチャック先生―子どもの権利を求めて (伝記絵本 世界を動かした人びと)感想
輪読ゼミでコルチャック先生を取り上げるので、関連本をたくさん図書館で借りてきた。絵本や児童書は侮れない。簡潔にまとめてくれているので全体像をつかみやすい。本書の巻末には写真や解説があるので、さらにわかりやすい。子どもの顔がちょっと怖くて親しめないけど… 栄養失調な感じが出ているといえばそうか。(^-^; 
読了日:12月24日 著者:フィリップ メリュ


コルチャック先生 子どもの権利条約の父 (講談社の翻訳絵本)コルチャック先生 子どもの権利条約の父 (講談社の翻訳絵本)感想
輪読ゼミでコルチャック先生を取り上げるので、関連本を集中して読もうとたくさん借りてきた。こういう絵本は、当時の様子をちゃんと調べて描き込んでいるのだなあ。コルチャック先生の建てた孤児院や、その内部、夏のキャンプなどは別の絵本(汐文社の伝記絵本)の巻末に載っている写真どおり。本書は訳がいいのか、最後の方ではぐっと涙を誘う。
読了日:12月24日 著者:トメク・ボガツキ



ぼくたちもそこにいた (岩波少年文庫)ぼくたちもそこにいた (岩波少年文庫)感想
『あのころはフリードリヒがいた』の続編。1933年(ヒトラーの首相就任)時に8歳だった、まじめで優しいけど中庸な「ぼく」や、みんなの憧れのエリート少年ハインツ、共産党員の父親を持つギュンターたちの数年間を淡々と描く。『フリードリヒ』の「ぼく」と本作の主人公は設定がほぼ同じで、作家自身が投影されていると思われる。ギュンターが体制に順応しようとする姿、父親も組み込まれていく姿が痛ましい。戦闘はかっこよくもなく、兵士は英雄でもなんでもないことを身をもって知るところでブツっと終わる。続いて第3作を読まねば。
読了日:12月27日 著者:ハンス・ペーター リヒター


若い兵士のとき (改版) (岩波少年文庫)若い兵士のとき (改版) (岩波少年文庫)感想
『あのころはフリードリヒがいた』第3作目。若くして志願兵となり、すぐに左腕を失った「ぼく」。人手不足で除隊にはならず、10代後半にして少尉としてポーランド、フランス、デンマークと移動する。理不尽なしごき、絶対服従、支配、復讐、略奪、死の恐怖、屈辱的な経験が綴られていく。『フリードリヒ』のように練りに練って書かれた作品ではなく、忘れられない強烈な記憶を残すべく書き留めた感じ。凄惨な場面も多い。より作家の体験が強く反映されているもよう。この作家の作品をもっと読みたかったが、これ以上書けなかったのも理解できる。
読了日:12月28日 著者:ハンス・ペーター・リヒター

読書メーター



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by chekosan | 2019-01-02 12:45 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
年の瀬ですが、家事も仕事も山積みですが、あえて!映画を観に行きました。(^^ゞ

今年は月3~5本くらい研究関心に近いものや授業の素材になるような作品を観るぞと年頭に目標を立てたのですが、そしてたくさん観たい映画はあったのですが、なんだかちっとも振るわずで、ちょっともやもやしていたのです。

で、観たのは「家(うち)へ帰ろう」。だらだら泣けました。クリスマスイブにあえて一人で行った甲斐がありました(笑)

88歳、家も財産も娘たちに譲り、老人ホームに入ることになったアブラハムは、体調も芳しくなく、右足は医者から切断を宣告されているような状態ですが、命の恩人である友人との70年前の約束を果たすべく、アルゼンチンからスペイン、パリを経由してポーランドに会いに行きます。

アブラハムはユダヤ人で、アウシュヴィッツに収容されていました。そのため、「ポーランド」という言葉を口にすることすら嫌います。家族を死に追いやったドイツも通過したくない。

ところが、娘たちに黙って家を飛び出てきたため、ワルシャワへの直行便でなくマドリッドに降り立つことになります。そのため、スペインからは鉄道で北上するしかありません。

なのにお金を盗まれてしまい… どうなるアブラハム!


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このお話、ホロコーストものであり、親子の物語であり、強く優しい女性たちの物語でもあり、ユーモアもあって、いかにもフィクションの感動もののようにみえるのですが、実は監督の祖父がモデルの一人になっています。

監督の祖父もポーランド出身ですが、親戚の集まりでは「ポーランド」という言葉を口にすることはタブーだったとのこと。祖父は過去については一切語らず、監督の父母も知らされていなかったそうです。

監督は祖父たちの世代の体験を忘れないよう、多くの資料を読み、遠縁の親戚を探し出して何百ものエピソードを聞き取り、10年かけて6ー7通りのプロットを書き、ようやくこの作品をつくりました。

主人公がかつて住んでいた界隈は、監督の祖父が実際に住んでいた地区で、建物も同じ建築家の設計によるものなのだそうです。

…というパンフレットのインタビューを読んで、さらに感動は深まりました。



主人公の末娘が、父親の腕の入れ墨と同じ数字(アウシュヴィッツで付けられた番号)を腕に彫っているシーンが出てきます。これも、実際にそうして親や先祖の経験を忘れまいとする若い人たちがいるのだとか。

戦後70年経って、ホロコーストや戦争体験者は減り、生きている方もかなりの高齢になっています。そのうち生の証言を聞くことはできなくなります。そのため、アウシュヴィッツや広島では、歴史を伝承する役割は、直接の体験者から継承者へ代替わりをはかっています。

ホロコーストを扱った映画も、孫の世代が祖父母の世代の経験を伝えるという視点や目的で作られる時期になっているのでしょう。


舞台やテイストはかなり違いますが、「サウルの息子」(メネシュ・ラースロー監督)も祖父母をガス室でなくしています。





ちなみに、本作の監督は、好きな映画作品を訊かれて、ロマンスキー監督の「戦場のピアニスト」を挙げています。ロマンスキー監督は、少年時代にクラクフ・ゲットーから脱出して生きのびた人です。






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by chekosan | 2018-12-24 19:11 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
「関西ウーマン」で毎月連載している書評、今月は真面目一徹です。いや、いつも真面目に紹介していますが。

ティモシー・スナイダー『暴政 20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン』。

中・東欧史、ホロコースト史家で、『ブラック・アース』『ブラッド・ランド』の著者、ティモシー・スナイダー氏が緊急出版した小さな本です。

強権的、独裁的な政治を支え、助長するのは普通の人々の日常のふるまいや言動であることを歴史の事例からわかりやすい言葉で解説しています。

第一条が「忖度による服従はするな」。


いろんなところで紹介していこうと思っています。力強くおすすめ。



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by chekosan | 2018-12-08 13:34 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
ポーランドのユダヤ人でアウシュヴィッツに収容され、4歳のときに解放された男性の回想録。

マイケル・ボーンスタイン氏は、老人や子どものほとんどが殺されたアウシュヴィッツ収容所で、奇跡的に生き延びて戦後を迎えた。

アウシュヴィッツを解放し、残っていた収容者の看護や帰還の世話をしたソ連軍は、解放直後の記録映像を撮っていた。マイケル氏は、大人になって、あるときこの映像を偶然見て自分が映っていることに驚く。

4歳と小さかったマイケル氏は、当時の記憶があいまいだったり鮮明だったりしたため、自分の体験をほとんど語ってこなかったが、この映像をみたこと、さらには、その映像が、アウシュヴィッツは組織的にユダヤ人を絶滅させようとしていたわけではないとする「歴史修正主義者」の「証拠」にされていることをインターネット閲覧時に知って驚愕する。

そこで、自らの記憶とジャーナリストの娘による資料調査、ホロコーストを生き延びた親族たちの証言によって可能な限り当時の様子を再現し、後世に残すことを決意した。それが本書である。


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マイケルたちの親族はポーランドのジャルキという町に住んでいた。ここはユダヤ人が三分の二、3千人強、暮らしていた。それがナチスドイツの侵攻によって「オープン・ゲットー」化され、強制労働、手当たり次第の暴力や処刑にあう。

マイケルの父は、ゲットーごとにつくらされた「自治組織」であるユダヤ人評議会の長を務め、ユダヤ人家庭から隠し持った財産を寄付してもらい、それを基金にして、逃亡の資金やSS将校への贈賄の元手にして、数百人の命を救った。

ジャルキのユダヤ人が全員、強制移送によって追い立てられた時も、マイケル一家だけは別のまちの軍需工場に送られて助かった。

ユダヤ人評議会に関しては、対独協力というそしりや批判もあるが、コミュニティがしっかりしていて、ユダヤ人住民に有利になるよう働いた評議会があったところでは、比較的長く共同体が存続し、ほかよりは多少ましな生活ができていたようである。

リトアニアでの二人の生存者の証言録でも、ヴィリニュスとカウナスでは評議会の評判やコミュニティの存続の様子がずいぶん違い、興味深い。
→ マーシャの日記―ホロコーストを生きのびた少女 
  リトアニア旅行記(6)カウナス・ゲットーとソリー・ガノール『日本人に救われたユダヤ人の手記』(講談社 1997)




戦後、ジャルキに帰還したユダヤ人はほんの数十人だったという。マイケルも祖母と帰還するが、家はポーランド人住民に占拠され、苦難を強いられる。それでもマイケルたちはまだ親族の多くが生存している方であった。しらばくして叔母や母も帰還し、その後、故郷に残ることを譲らなかった祖母以外の親族は、数年の準備を経てアメリカへと渡った。

なお、戦争前に親族のうちで唯一、欧州を脱出した女性は、杉原千畝の発給したビザで日本を経由してアメリカに渡り、事業を成功させ、親族を呼び寄せたという。ここでも杉原ビザによるサバイバーが!

杉原の書いたビザは公的には2千通ほどだが、これを持って無事第三国に渡った人たちは、今度は欧州に残ったユダヤ人を助ける側に回った。彼ら自身や子孫、彼らが支援した人びとを合わせると、直接、間接的に相当多くの人たちを救ったのだとあらためて思う。




マイケル氏は仕事を引退してから、ときどき子どもたちに向けてホロコースト体験を語っているという。若い世代に読んでもらえるよう、本書は小説的にやさしい言葉で書かれている。

とはいえ、マイケルたちを取り巻いていた状況は悲惨で、さらりと残虐な行為や場面が頻出する。戦闘行為や爆撃による死も悲惨で不幸で許容しがたいことには違いないが、ただ虐め辱めるためだけに人々が殺されていく場面は耐えがたい。

マイケル氏が70代になるまで体験を語らなかったのは、自身が幼くて記憶があいまいだったから控えていたということもあるだろうが、そうした状況で自分たち親族は比較的高い割合生き延びられたということを声高に言えない、言うべきではないという抑制があったのかもしれない。






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by chekosan | 2018-09-11 12:56 | 読書記録 | Trackback | Comments(2)