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中・東欧、ロシア、大学教育、美術展、映画鑑賞などなど


by chekosan

タグ:チェコ ( 35 ) タグの人気記事

ロシア(ソ連)や東欧の文献を読む輪読ゼミ、最後の2回は、各自が読んだり観たりした作品を紹介する持ち寄り企画でした。


みんな力を入れて丁寧に紹介してくれたので、私もぜひ読ませてもらおうと少しずつ入手しています。

こちらもその一冊。ラジスラフ・フクス『火葬人』(松籟社 2014年)。


以下、ネタバレあります。


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ナチに支配されたプラハでドイツ系の主人公がそれまでの寛容な態度をあっさり翻して周囲の人々をクビにしたり消していったりする、ああ恐ろしい全体主義…という感想が多いようです。

もちろんそのように読めるのでしょうが、それ以上に、このおっちゃん、穏やかで、品性を保って、誰にでも丁寧な物腰の紳士としてふるまっていたけど、実はもともとすごくルサンチマン的な人で、それが高じていって、どんどん狂っていったんじゃあないの? 妻が元気がないという近所の医師の指摘も、夫の言動が常軌を逸している(いく)ことに対する恐怖感からだったんじゃ? というのが最大の感想です。


というのも、おっちゃんは金や名誉や地位に執着していないようで実はすごく欲してるのがせりふに表れているのです。

自宅のインテリアに悦に入ってるけど、買ってくる額縁の中の絵は複製で、しかもセレクトがちょっとおかしい。


妻だけを愛しているとか言いながら、実は二級の娼館に通ってて、階上の開業医にこっそり性病の検査をしてもらっている。


その医師(ユダヤ系)は自家用車を持っているし息子もよく出来ていると繰り返す。自分の息子はどうも頼りなくてフラフラしているのを気に病んでいる。


おっちゃん自身は「純血」ではなく、パッとしない仕事に就いている(だからこそ必要以上にその職の意義を強調する)。車も持っていない。

でも自分は美しい音楽を愛する教養ある人物だし、美しい妻や妻に似た娘もいて幸せこの上ない(と思おうとしている)。だから「不幸な」人のことを蔑んだりしないし、むしろ憐憫の情を過剰に示すのです。

ところがその最大の自慢の黒髪美人妻が実はユダヤ人だったとわかって、一気に拠りどころが自分が「ドイツ系」であることだけになってしまった。


娘の友達や、ドイツ人向けサロンの美女たちの見事なブロンドにうっとりするのも、おっちゃんの劣等感の表れかと思えるのです。

おっちゃん、何かと遺伝にこだわりを見せます。もらいもののハエの標本を壁に飾ります。

娘の誕生パーティの席で、新聞で見つけた二重結合児に関するニュースを家族に読み聞かせながら、一緒に焼けば灰は混ざってわからなくなるとか、頭が二つあったら異なる二つのことができて、異なる二つの感情を同時に抱くことができるとか語ったりもします。


そして、その席で、娘に「亡き子をしのぶ歌」をピアノ演奏させようとします。


いろいろお誕生日のパーティにそぐわなさすぎる。

そこここに、おっちゃんの偏執的なところや、その後の行動を暗示するエピソードが散りばめられているんですね。


ところで、最後に列車から見かけた「見たことのある女性」とは誰のことだろう。ロープと角砂糖は何の暗喩か。おっちゃんは、第一次世界大戦で馬が苦しんだことをやたら嘆いていた。馬は角砂糖が好きというから、それと繋がるのかな。(先日観た映画「ヒトラーと戦った22日間」でもそういうシーンがあった) 精神病院に連れて行かれた患者がロープを入手できるのか疑問だが… 

などと、読んでいる間は、おかしいんちゃうん、このおっちゃん、ひっきりなしにヘンなこと一人でしゃべって… あ、やっぱりおかしかったんだ、怖いよ… という感じですが、読後、細かいところを振り返るとなかなか面白い発見が次々出てくる小説です。


まあホラー系(?)小説で、しかも主人公は狂っているわけなので、どこからどこまでが本当かとか、アレはコレを示すのか、なんて、読者のご想像にお任せします、なのでしょうけどね。

映画にもなっているそうで、カバー写真はその映画からとっているそうです。









by chekosan | 2019-02-19 13:59 | ロシア・東欧に関する授業@同志社 | Trackback | Comments(0)
年が明け、年度が終わっていく1月。舞台鑑賞、読書、映画鑑賞といったインプットが順調だった1月でした。勢いがついて、娯楽としての読書もできたくらいでした。

1月の読書メーター
読んだ本の数:16
読んだページ数:4559
ナイス数:504

コルチャック先生 (岩波ジュニア新書 (256))コルチャック先生 (岩波ジュニア新書 (256))感想
輪読ゼミで取り上げるので再読。あらためて濃い内容をわかりやすくまとめているなあと。平凡社ライブラリーの近藤二郎『コルチャック先生』の子ども向けという感じだが、お二人はご夫婦だった。康子氏はフランス語版からコルチャックの作品を翻訳している。
読了日:01月03日 著者:近藤 康子



決定版 コルチャック先生 (平凡社ライブラリー)決定版 コルチャック先生 (平凡社ライブラリー)感想
輪読ゼミで近藤康子(二郎氏とはご夫婦)『コルチャック先生』を取り上げるにあたって、コルチャック先生関連本をいくつか続けて読んでいる。本書では、歴史的背景や、コルチャックが影響を受けた教育者や文学者に関しても詳しく紹介されている。トルストイ、チェーホフ、プラトン『国家』を愛読していたらしい。それにしてもコルチャック先生の教育実践、教育思想は興味深い。強く惹かれる。2019年は「子どもの権利条約」ができて30年。重点的に若者たちに紹介したい。ワルシャワやトレブリンカにコルチャック先生詣でもしたいなあ。
読了日:01月03日 著者:近藤 二郎



荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)感想
ジョジョはほぼ読んでいないのだが、「ルーブルNo.9展」で多少興味を持つようになり、先日は子らと原画展にも行った。創作理論コーナーが面白かったので、早速、古書を取り寄せた。そうしたら帯が無くて残念(笑) 内容は意外な驚きの連続。デビューするため、他の漫画家のヒット作を丹念に研究したこと、ジョジョは異彩を放っているようでいて、実は少年漫画の王道・鉄則に沿って作っていること、映画や西洋美術、彫刻から学び反映させていること、事前に綿密にリサーチしていることなど、創作をしない者にも学ぶ点がたくさんあった。 
読了日:01月04日 著者:荒木 飛呂彦

荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟 (集英社新書)荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟 (集英社新書)感想
ジョジョ展で、荒木氏の創作は西洋美術や映画に影響を受けているということだったので、同氏の新書をまとめて購入。本書はさらっとだけ目を通した。中古を買ったのは失敗。やはり帯も欲しかった(笑) 私の関心のある領域では、『存在の耐えられない軽さ』が「アイテムに関して絶品」とのこと。インテリアやファッションなどに注目だそう。買ってあるDVD、いいかげんに観るとしよう。『嵐の中で輝いて』がWW2前夜のドイツが舞台とのことで、余力があったらこちらも観てみよう。
読了日:01月06日 著者:荒木 飛呂彦

荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)感想
ジョジョ展で、荒木氏が映画から創作のヒントを得ているということを知って。ホラー映画への愛がムンムン感じられて面白かった。ホラー映画を観ている意識はなかったが、意外と知っている作品があった。昔はテレビでしょっちゅう洋画を放送してくれていたからなあ。『エクソシスト』『オーメン』『キャリー』『エイリアン』『13日の金曜日』『ジョーズ』『羊たちの沈黙』etc. 『es』『ウェイヴ』といった心理実験ものも紹介している。岸辺露伴のモデルとなった古書探偵が出てくる『ナインスゲート』は観てみたいかも。
読了日:01月08日 著者:荒木 飛呂彦


教育問題はなぜまちがって語られるのか?―「わかったつもり」からの脱却 (どう考える?ニッポンの教育問題)教育問題はなぜまちがって語られるのか?―「わかったつもり」からの脱却 (どう考える?ニッポンの教育問題)感想
おもしろかった。おすすめ。 2010年の本だが古びていない。教育問題が核だが、社会問題一般に関する情報リテラシー、クリティカルシンキングの入門書として有効。サブタイトル〈「わかったつもり」からの脱却〉に言い尽くされている。教育者を目指す若者に向けて書かれたそうだが、大人にも読んでほしい一冊。
読了日:01月11日 著者:広田 照幸,伊藤 茂樹


ハンナのかばん―アウシュビッツからのメッセージハンナのかばん―アウシュビッツからのメッセージ感想
ホロコーストの犠牲になった13歳の少女の遺品のスーツケースをアウシュヴィッツ博物館から教育用展示品として貸借した日本人女性が、持ち主を特定し、カナダにいた兄を見つけ出したという実話。兄妹の体験と、兄ジョージさんと子どもたちとの交流は児童書となり、映画化されて世界中に知られることとなった。かばんは各地を巡回している。ジョージさんは、2019年1月12日、トロントで90歳で亡くなられた。詳しい記録はブログに。https://chekosan.exblog.jp/29184719/
読了日:01月12日 著者:カレン レビン

亡命者の古書店: 続・私のイギリス物語 (新潮文庫)亡命者の古書店: 続・私のイギリス物語 (新潮文庫)感想
輪読ゼミの持ち寄り企画で学生が紹介してくれた。チェコ好きでなくても面白く読めるのではないかと思うが、ちょっとでもチェコ好きなら、とても面白く読める。それにしても記述が細かい。詳細な日記をつけているのかなあ。紹介してくれた学生君が、これを読んで「スリボビツェ」というチェコのお酒を飲みたくなって飲もうと試みた話もしてくれた。ロシアや東欧のお酒を出すお店が京都にあるそう。みんなで行きたいねえと言っている。内容についてはブログに。https://chekosan.exblog.jp/29191199/
読了日:01月16日 著者:佐藤 優

無知無知感想
『存在の〜〜』ほどの読み応えはないが、クンデラらしい生々しい人間洞察がいい。亡命者の祖国への帰還をテーマにしているが、先日読んだ佐藤優『亡命者の古書店』に出てくる亡命者が悲哀や使命感に満ちているのとは対照的なのが面白い。クンデラの描き出す普通の男女は実にリアル。ちょっと滑稽で、ちょっとずるくて、ちょっと痛々しい。
読了日:01月18日 著者:ミラン・クンデラ


富豪刑事 (新潮文庫)富豪刑事 (新潮文庫)感想
気分転換に。深田恭子主演のドラマ「富豪刑事」は、バカバカしくも面白かった。原作では男性が主人公というのが今一つ想像しがたかったが、小説ならではのさまざまな技法を駆使して書かれていて原作は原作でやはり面白かった。作者が出てきて解説し始めたり、登場人物が読者に向かって話しかける場面があったり。映画の演出手法を取り入れているのかな。映画作品のキャラや映画俳優似の登場人物がたくさん出てきているし。いつでもどこでもタバコやら葉巻を吸っているのは時代を感じさせるけど、30年以上経っていても案外違和感なく読めた。
読了日:01月19日 著者:筒井 康隆

祈りの幕が下りる時祈りの幕が下りる時感想
気分転換に。家族が図書館で借りてきた本をパラパラ見たら、我が滋賀県が出てきたので、そのまま先に読んだ😜 東野氏の本は学生にも人気なので数冊は読んでいるが、私自身は特にファンというわけではない。が、サラサラ読める文体には毎度感心する。しかしまぁ、あまり衝撃とか感動はなかった。気分の切り替えにはなったので良しとする。
読了日:01月25日 著者:東野 圭吾




世界の文学〈42〉ゼーガース.ノサック―新集 (1971年)トランジット 死者への手向け 配電盤 標柱世界の文学〈42〉ゼーガース.ノサック―新集 (1971年)トランジット 死者への手向け 配電盤 標柱感想
面白い! 映画「未来を乗り換えた男」を観る前に原作「トランジット」をと図書館経由で取り寄せて読んだら、映画がイマイチでがっかり… 断然、原作!復刊を強く希望! 戦争中に外国へ逃げるということはそう簡単なことではないということがよくわかる。滑稽なほどの官僚主義が生むカオス。悲喜劇というかなんというか。ある男の独白という形をとっているが、独白にしては長い(笑) でも読ませるのです! 詳しくはブログに。https://chekosan.exblog.jp/29218587/ かなりおすすめ。
読了日:01月26日 著者:ゼーガーズ,ノサック


紙つなげ!  彼らが本の紙を造っている紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている感想
ずいぶん前に買っていた本。機が熟したような感じがあって開いた。東日本大震災における石巻の日本有数の製紙工場とその周辺の被災状況および復興の過程を当事者から聞き取って記録したもの。避難の誘導、工場再開のための復旧作業、流れ出た製品の回収など、社員がそれぞれの持ち場や職務に責任を使命を持って当たった様子に感銘を受けた。一方で、悲惨な被害の実態(亡くなられ方や遺体の散乱状況など)や火事場泥棒の様子といったことは、直後の報道では詳細には伝わってこなかったので、あらためてショックを受けた。
読了日:01月27日 著者:佐々 涼子


スターリンの葬送狂騒曲 (ShoPro Books)スターリンの葬送狂騒曲 (ShoPro Books)感想
映画がとても面白かったので原作も取り寄せ。原作はシリアス。ていねいに作られているけど、映画の方がエピソードが多くて、キャラが立っていて濃い。どちらも史実通りではないとのことなのでそこは気をつけたい。映画の感想中心にブログに記録。https://chekosan.exblog.jp/29224874/
読了日:01月27日 著者:ファビアン・ニュリ



気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社感想
積読本だったが機が熟して一気読み。立ち上げの頃から報道で見聞きしていたが、初商品カーディガン一着15万円に予約が殺到したとは! 糸井重里の「ほぼ日」のプロジェクトのPR力はすごい…そんな高価な商品を注文するのは都市の富裕層かといえばそういうわけではなく、むしろ県庁所在地以外からが比較的多いらしい。そうした地域にも高くても良いものを求める人はいるが機会を提供できていないのではないかという分析は面白い。同社が編み手を大勢確保できるのは柔軟な働き方を許容し、決算等の経営状況も共有しているからという点も興味深い。
読了日:01月27日 著者:御手洗 瑞子

チェコ語の隙間―東欧のいろんなことばの話チェコ語の隙間―東欧のいろんなことばの話感想
スラブ系の言葉同士は似ているけど、それだけにこんがらがったりするというのは、そのとおりだなあ。全然レベルは違うが、ワタクシもかつてロシア語、チェコ語、ポーランド語、スロヴァキア語の文章を読んでいたが、しばらくそのあたりの研究から離れたら、すっかりサビサビに。先日映画を観ていたときも、あるセリフを聞き取れたのに、ロシア語なのかポーランド語なのかがわからないという瞬間が。どこまで錆びついているんだか…(~_~;) なのに、こういう楽しい本を読むと、うっかり新しいことばを学びたくなるので困るのです(笑)
読了日:01月31日 著者:黒田 龍之助

読書メーター

by chekosan | 2019-02-03 15:52 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
たくさんの言語を研究されている黒田龍之助さんの『チェコ語の隙間』を読みました。言葉や文化にまつわる楽しいエッセー集です。

「東欧のいろんなことばの話」というサブタイトルどおり、ポーランド語、チェコ語、スロヴァキア語、スロヴェニア語、クロアチア語、セルビア語、ブルガリア語、マケドニア語、ソルブ語などの習得にまつわる話や、それらを使う国を訪問したときのエピソードなどが短く紹介されます。

スラブ系の言葉同士は似ているけど、それだけにこんがらがったりすることもあるので要注意というのは、そのとおりだなあと思います。

いえ全然レベルは違うのですが、ワタクシもかつて、ロシア語、チェコ語、ポーランド語の順に習ったことがあり、スロヴァキア語の文章も辞書を引き引き、強引に読んだりしたこともありました。が、諸事情からそのあたりの研究から離れていた時期があって、すっかりサビサビになってしまいました。

先日映画を観ていたときも、あるセリフを聞き取れたのに、ロシア語なのかポーランド語なのかがわからないという瞬間がありました。どこまで錆びついているんだか…(~_~;)

と、そんな酷いことになっているのに、こういう楽しい本を読むと、うっかり新しいことばを学びたくなってきて困るんですよね(笑)

ブルガリア語はロシア語をやったことがある人には親しみやすい、しかもブルガリアはなんでもおいしいなんてことを読んだりしたら、じゃあブルガリア語を!とか思ってしまいました。


でも、この本でも書かれているのですが、現地のことばを発すると、やはり現地の方が喜ばれるんですよね。バルト諸国に行ったときは一語も使わずに済ませてしまいましたが、そういう態度はやはりよろしくないですよね。

そこで、リトアニア語はちょびっとくらいわかるようになりたいな、とテキストを買ってあるのですが、全然勉強していません… リトアニア語はスラブ系の言語でもないし、一から独学で勉強するのはやはりきつい。いっそ、日本におられるリトアニアの方に習おうかなあ。 




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by chekosan | 2019-01-31 21:28 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
ロシア(ソ連)や東欧の文献を読む授業で、各自が読んだり観たりした作品を持ち寄る企画をしたときに、受講生が紹介してくれた本です。

佐藤優氏の著作は何冊か読んでいますし、この本も買っていて、積読本の山の中にありました。人に紹介してもらうと俄然、読みたくなりますね。で、読み始めると止まらず。ほかのことを置いて、一気に読んでしまいました。

佐藤氏が外務省の研修生として、イギリスの陸軍語学学校でロシア語研修を受けている一年余りの間の話です。

ロンドンで古書店を営む亡命チェコ人や、語学学校のクラスメイトとその恋人とのやりとりから、小国の人々や先住民族のアイデンティティ、思想、行動を浮かび上がらせる構成になっていて面白いです。

佐藤氏のライフワークであるチェコの現代神学者フロマートカの思想も引用、紹介されていて、こちらも長すぎず難しすぎずで興味深く読みました。

サブタイトルに「イギリス物語」とありますが、舞台はイギリスですが、内容的にはチェコの話が中心です。ドイツやロシア(ソ連)といった大国に挟まれた小国チェコのとった(とらざるを得なかった)道や、それを背負ってイギリスに亡命した(せざるを得なかった)知識人の悲哀と葛藤が迫ってきます。

佐藤氏が師と仰いだ亡命チェコ人古書店主は、イギリスにおいて、共産圏では残すことができないような書籍を西側に救出するという使命(キリスト教の言葉では召命)=ミッションを見出します。さらには佐藤氏という「弟子」に自分の知識や思考を伝えることで生きた証を残せたと佐藤氏に伝えています。

その影響を受けて、佐藤氏も、若者たちを育てることに尽力されているとのこと。他の著作で、ちょっと驚くくらい丁寧というか突っ込んで受験指導や学術面での指導をされているのは読んでいましたが、なるほどと思いました。

クラスメイトの恋人の話(アメリカの先住民族ナバホ族の苦難の歴史)は初めて知りましたが、その部分も面白かったので、チェコの歴史を知らない、興味がない人にもきっと面白く読めるのではないかと思います。






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by chekosan | 2019-01-16 18:37 | ロシア・東欧に関する授業@同志社 | Trackback | Comments(0)
ホロコーストの犠牲になった13歳の少女の遺品のスーツケースを、2000年、アウシュヴィッツ博物館から教育用展示品として貸借した日本人女性が、持ち主を特定し、カナダにいた兄を見つけ出したという実話です。

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ホロコースト教育資料センターの代表である石岡史子さん(本書では「ふみ子」)は、遺品を貸し出してくれたアウシュヴィッツ博物館はもとより、イスラエルやアメリカの博物館にも問い合わせて、遺品のかばんの持ち主を探します。

当時は連絡は手紙なので、返事も数週間単位でかかります。やっと届いた手紙には、手がかりなしとの返事が続きました。

ようやくチェコのテレジン収容所からアウシュヴィッツに移送された女の子であることがわかり、石岡さんは出張の寸暇を縫って、テレジン収容所を訪問します。

そうして調査を重ねて、かばんの持ち主ハンナの兄のジョージさんが、やはりテレジン収容所からアウシュヴィッツ収容所へと移送され、生き抜いてカナダに暮らしていることを突き止めます。

ジョージさんは、50年を経て妹の遺品と対面するため日本を訪問し、同センターのボランティアグループの子どもたちと交流します。

のちに、このかばんは、1984年にイギリスでの展示に貸し出した際に火事で焼失し、作り直された複製だったということが判明しますが、ハンナとジョージのきょうだいの体験と、ジョージさんと子どもたちとの交流は児童書となり、映画化されて世界中に知られることとなりました。


かばんが実物であればより良かったのでしょうが、しかし、複製がつくられたことでジョージさんと子どもたちの交流が生まれたともいえるでしょう。

かばんは、2015年にアウシュヴィッツ博物館からホロコースト教育資料センターに寄贈され、各地を巡回しています。

ジョージさんは、2019年1月12日、トロントで90歳で亡くなられました。








by chekosan | 2019-01-13 16:08 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
同志社で担当している「特殊講義」。今まで法学部の科目だとばかり思っていたら、どの学部でも履修できるのだと初めて知った3年目。そして実際、今年は文学部哲学科からも数名受講!学際科目だ!(?)

昨年度の講義科目受講生や春の講義科目受講生も数名受講しています。これって、とっても嬉しい☆(´∀`*) 

結果、初年度2人、2年目5人、そして今年は10人と、倍々ゲームで、とうとう二桁です(笑) 

今年は、科目のサブタイトルを「文学で学ぶ東欧・ドイツ・ロシア」と題しました。ずっとアシスタントをしてくれている院生君、科目名を見て、「どんどん範囲が広がっている! どこまでいくんだろう!」と思ったそうです。

形式上、科目の設置の条件としてサブタイトルを変える必要があったということもあるのですが、こうして範囲をゆるくしておくと読む本の選択肢が広がるからいいかなと思ったのです。( ̄▽ ̄) 

ということで、今年は過去2年、あまり読めていなかったロシアものからスタートしました。

しかし、あえて日本人作家の作品。米原万里さんの『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』『オリガ・モリソヴナの反語法』です。

いずれも米原さん自身の少女時代の経験をベースに書かれています。チェコやロシアを舞台としたノンフィクションとフィクションです。


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関連本なども読み直して予習するの図。右にあるお菓子は米原さんの『旅行者の朝食』に出てくるハルヴァ。昨年、リトアニアで見つけ、今年はエストニアで見つけました。エストニアで買ったノートにメモをとっていきました。このノート、ロシア語練習帳のようなページが入っていて、この本のノートにぴったりです。

※『旅行者の朝食』は関西ウーマンの書評コーナーで取り上げました。




『嘘つきアーニャ』は以前に読んでいたと思ったのですが、第1部を読み始めて、あれ??

もしかしたらNHKのドキュメンタリーで見ただけだったかも? 

おませな少女の下ネタ満載で、授業で使って大丈夫だったかと苦笑。でも、もちろんそれで終わりではなくて、社会主義期のプラハの学校に集った4人の少女たちの学校生活を通して、社会情勢、国際情勢を鮮やかに描き出しています。

米原さんと3人の友人たちは長く音信不通になっていたのですが、30数年ぶりにNHKの企画で再会を果たします。

番組の方では会えた良かったで終わるのですが、『嘘つきアーニャ』の方では、過去のエピソードに加え、再会に至るまでの調査の過程や、そこでわかってきた友人たちの人生、それに対する米原さんの思いが詳しく語られます。



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『オリガ・モリソヴナの反語法』はフィクションの小説です。少女時代にプラハのソビエト学校に通っていた日本人の主人公が、ソ連の崩壊、情報公開を機に、異彩を放っていた女性教師たちの謎を解いていくという話です。

フィクションですが、歴史的事実を巧みに織り込んだリアル感たっぷりの話になっています。

主人公が謎解きをする今の時点(1992年のモスクワ)、主人公たちがプラハのソビエト学校に通っていた1960年代、女性教師たちの過去(1930年代から50年代)と、3つの時代を行き来する構成で、主人公の回想もあれば証言者の話、手記による説明などを行ったり来たりするので、一読ではわかりづらいところもあります。

そこで、『オリガ・モリソヴナの反語法』年表を手分けして作りました! 

歴史的事実と、作品中の登場人物たちの動きとをピックアップしていくと、A3で2枚分になりました。
私も最後の3章をやってみましたが、これはなかなか面白い作業でした。

細部の修正や補足などをして、クラスのみんなの共有財産にしようと思います。

で、『オリガ』、文庫本で500ページほどあるのですが、みんな一気に読めたようです。

謎解きも面白いけど、歴史とからめたリアルな描写がとても面白かったという感想や、

日本人作家の目と体験を通して書かれた作品であることで、かえって理解や親しみを深められたように思うという感想、

ヨーロッパが舞台だけど宗教がからんでこないのは日本人でソビエト学校に通っていた米原さんだからこそではないかという感想(なるほど!)、

歴史を知るということは、政治家や戦争の名前を覚えるということではなく、個人の物語を見つめることが重要なのだということをあらためて感じたという感想、

何度も読むべき本だと思った、人間の一生ってすごい、人が生きるために必要なことってなんだろう、、、

などなど、それぞれいろいろと考えてくれたようです。

まだ緊張感がみなぎっていて、わーわーしゃべって盛り上がるというのではないのですが、全員が同じ作品をじっくり(しかし一気に)読んでくるというのがなにより貴重な経験だと思っています。

全員が同じ読み方、感じ方をする必要はないと思っています。誰かが取り上げた箇所に、そうそう、そこ面白いよねと思ったり、そんなとこあったっけと思ったり。

そういう時間をゆるゆる共有することで、じんわりとなにかが効いてくると思っています。


次の共通テキストは、『オリガ』における重要テーマからのつながりで、ソルジェニーツィン『イワン・デニーソヴィチの一日』です。

でもその前にインターバルで、次回は持ち寄り企画。旅行の報告や本や映画の紹介など、全員になにがしか発表してもらいます! とっても楽しみです!






by chekosan | 2018-10-18 21:05 | ロシア・東欧に関する授業@同志社 | Trackback | Comments(0)
嬉しい嬉しい連休です!

一日目は、佐川美術館(滋賀県守山市)で開催中の
「神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展」に行ってきました。


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ルドルフ2世は、プラハに都を移して、芸術や科学の発展に力を入れた皇帝。

世界中から、動植物や鉱物や、その他さまざまなものを蒐集し、
今でいう博物館のような空間をつくりました。

↓↓ 今回のグッズ売り場でゲットしたクリアファイルから ↓↓

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ルドルフ2世は、お抱えの画家や錬金術師に腕を振るわせました。
それによって、自然科学、化学、薬学が飛躍的に発展しました。

プラハのお城のなかにある黄金小路というこじんまりしたお家が並ぶ人気スポットは、
そんな錬金術師たちが住んでいたところだったとか。

お気に入りの画家のひとりが、今回の呼び物でもあったアルチンボルドです。
野菜や花などで構成された人物画でおなじみ。

彼は、ルドルフ2世の肖像画(?)も描いています。
下の写真は今回の展覧会のチラシ。

手前のフリフリを着ている男性がルドルフ2世。
真ん中の野菜人間は、ルドルフ2世を古代ローマの神ウェルトゥムヌスになぞらえた絵です。

ウェルトゥムヌスは、果物と果樹、季節の移ろいをつかさどる神様だそうで、
主題としては失礼ではないでしょうし、ルドルフ2世もこの絵を気に入ったとのことですが、
喜ぶんだコレ…とかちょっと思っちゃいますね(笑)


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アルチンボルドは、同時代や後の時代の芸術家にも大きな影響を与えました。
今回も、アルチンボルド風の絵画が何点か展示されていました。
が、やはり本家からすると、、、かなり違いますね。

現代作家による立体化作品も展示されていました。
ここは撮影&拡散大歓迎コーナーだったので、私も息子に何枚か撮ってもらいました。

ここには、春夏秋冬揃いぶみ写真をアップしておきます♪


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入り口にあったのも、アルチンボルド風の造形作品です。
実は今回一番気に入りました。

ジブリのアニメに出てきそうですよね。


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展覧会のお楽しみ、ミュージアムグッズ。

Tシャツの柄は、ドードー鳥。珍奇な動物として当時の絵画に描かれています。
いまは絶滅したと言われていますが、当時は元気に愛嬌ある姿を見れたのですね。

花の絵は、ヤン・ブリューゲル(父)「陶製の花瓶に生けられた小さな花束」(1607年頃)。
花瓶に生けた花を描くというのは、実はこの頃に編み出された表現方法なのだとか。

この花束も、かなり多様な花が描き込まれています。
単に、きれいなお花、というのではなく、植物コレクション的な意味を持っているのですね。

なのですが、サイズ的にはかなり小さな絵だったのも、へえ~、でした。

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手前の手回しオルゴールは、小6の息子が選んだ、ブリューゲルのバベルの塔柄です。
ウィーンの美術史美術館に所蔵されている作品です。今回は展示されていません。

バベルの塔を主題にした絵は、2点ほどありました。
いずれも似たような構造、構図になるのが面白いですね。

聖書にそこまで詳しく、塔の構造が書いてあったかは覚えていませんが、
もしその頃に超高層ビルを建てるとしたら、
当然こうなっただろうという共通理解で描かれているということでしょうか。

小6息子が、「バベルの塔って、ほんまにあったん?」と訊いてきたので、
「そやで~、あってんけどな、潰されてもてん」と答えました(笑)
もちろん、直後にちゃんと解説しましたよ!

佐川美術館、アクセスは大変不便なのですが、建物自体も一見の価値ありです。
まわりには何もないですが、館内におしゃれなカフェもあります。

湖周道路は琵琶湖と山を望め、休憩場所もあり、ドライブに最適です。
琵琶湖博物館と組み合わせれば、わざわざ感も薄れるかと思います(笑)
ゴールデンウイークのお出かけにいかがでしょう。

「ルドルフ2世の驚異の世界展」は、5月27日まで開催しています。

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by chekosan | 2018-04-29 11:04 | 美術 | Trackback | Comments(0)

関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊コーナー、4月分が公開されました。

今月は、1942年にチェコのプラハで実際に起こったナチス幹部暗殺事件を素材にした小説です。
この書評コーナーで初めて小説を取り上げました。

歴史小説なのですが、「ハイドリヒ暗殺事件を小説に描こうとする作者ビネを小説で描いた」ような小説です。チェコスロヴァキア愛に満ち満ちています。

研究者は、このテーマは面白い、この人物は魅力的だ、この国が好きだ、
もっと知りたい、他の人にも知って欲しいと思いながら調査を進めているので、
その過程はとてもエキサイティングで、本当は披露したくなるところなんですよね。
だから本書をとても羨ましく思いながら読みました。


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by chekosan | 2018-04-15 11:18 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所見学を主目的とするポーランド行きからのつながりの本一色の3月でした。

「サウンド・オブ・ミュージック」は舞台はオーストリアですが、ナチスドイツとの併合時代の話なので繋がっています。こちらは関西ウーマン「信子先生のおすすめの一冊」で紹介しました。


3月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2216
ナイス数:260

『サウンド・オブ・ミュージック』で学ぶ欧米文化『サウンド・オブ・ミュージック』で学ぶ欧米文化感想
映画「サウンド・オブ・ミュージック」の歌と音楽、せりふ、視覚・聴覚的演出を6人の専門家がやさしく読み解いた本。映画を観るだけでも十分楽しめるが、背景にある文化や歴史を知ることによって、もっと作品を味わうことができるということを教えてくれる。月イチ連載の書評で詳しく紹介。https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=201287 書評を書くにあたって、久々に映画も鑑賞。監督の音声解説も。以来、親子でずっと歌いっぱなし。ザルツブルクに行きたくてうずうず♪
読了日:03月03日 著者:野口 祐子,山口 美知代,浅井 学,青地 伯水,出口 菜摘,横道 誠


展示の政治学展示の政治学感想
「展示」という行為のなかにある政治的行為について、複数の専門家がそれぞれの観点や事例から考察する論集。硬派な本だが一気に読んだ。いずれの論稿も勉強になった。見る、みせる、秘匿するという行為のなかにある権力関係、それを一方的でなくすにはどうするか、展示の形態や捉え方の変遷、展示をどう読み解くか、どう教育に生かすかなどなど。19c末以降の美術展示は、国や貴族、富裕層による富や権力の誇示から、知識とセンスの誇示に変わり、誰にでも開かれているようで実は大衆や下層階級を排除しているのではないかという考察が面白い。
読了日:03月09日 著者:宮下 規久朗


他者の苦痛へのまなざし他者の苦痛へのまなざし感想
戦争や刑罰の写真を撮ること、見ること、その力の効果や限界に関する考察。前史としての絵画や版画における残酷なシーンの表現についても。例示がたくさん出てくるが、本書の中には図版は一切ないので、その度にインターネットで画像を確認するなどしていたら、なかなか進まず。そして、文章から想像したのと実際の写真がかなり違っていて、やはり写真のもつ力は大きいと再認識したり。ソンタグの考察をしっかり咀嚼、検討するよりも、例示や細かい事実に、ほぉおー、へえぇ〜、と唸って、寄り道して、終わってしまった感じ…
読了日:03月11日 著者:スーザン ソンタグ


HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)感想
クンデラのように、というかクンデラ以上に、作者が作品中に顔を出し口を出す小説。むしろほぼドキュメンタリー。プラハを治めるSS幹部の暗殺事件について、作者が知ったきっかけから、調べを進めていく過程が盛り込まれている。そこがとても面白い。我々の業界では研究対象への愛をあからさまに文字で示すことは通常できない。小説ならでは。羨ましく思いながら読んだ。映画との比較など詳しくはブログに記録。https://chekosan.exblog.jp/28205007/ 今年の夏はハイドリヒ暗殺関連現場めぐりをしよう。
読了日:03月21日 著者:ローラン・ビネ


ワルシャワの日本人形―戦争を記憶し,伝える (岩波ジュニア新書 636)ワルシャワの日本人形―戦争を記憶し,伝える (岩波ジュニア新書 636)感想
著者はポーランド語の翻訳者。ドイツ占領下のワルシャワで抵抗運動に携わった人々や、彼らを記念する博物館などについて、わかりやすく語るように紹介する本。パヴィヤク監獄に収容された地下運動家の女性が少しずつ少しずつ仕入れた材料で作った日本人形にまつわる話や、そのエピソードを日本のアーティストがパフォーマンスにした話、日本の援助でシベリアから救出され、のちに「孤児部隊」を率いてワルシャワ蜂起に参加した青年の話など、興味深い事実が続く。コルチャック先生やコルベ神父の記述も。本書で紹介されたところをぜひ巡りたい。
読了日:03月22日 著者:田村 和子


生きのびる―クラクフとユダヤ人 (母と子でみる)生きのびる―クラクフとユダヤ人 (母と子でみる)感想
クラクフのゲットーや強制収容所を生き延びた人たちの体験を聞き取ったり、体験記から要旨をまとめたりしたもの。『シンドラーのリスト』に出てくる女性や、クラクフで証言活動を行っている男性、イスラエルに渡り回想記や小説を著した女性たちの体験はたいへん過酷でショッキングである。写真も大判なので臨場感がある。この本のために撮られた写真でも、先月(2018年2月)見てきたクラクフとかなり雰囲気が違うことに驚く。この間にクラクフはずいぶん変わったようだ。もっと見ておきたかったと臍を噛んだ。

読了日:03月24日 著者:田村 和子,山本 耕二

『ワルシャワの日本人形』と『生きのびる』についてはブログにも詳細


戦争を記憶する 広島・ホロコーストと現在 (講談社現代新書)戦争を記憶する 広島・ホロコーストと現在 (講談社現代新書)感想
このところ、歴史がどう記憶されるか、伝えられるか、それは何がどう影響するかといったことを扱った諸分野の文献を読んでいるのだが、やはり私は政治学の視点が合うと思いながら本書を読み進めた。参考になる事実、分析、表現がたくさんあって、付箋がニョキニョキ。なのに、なぜか全体をまとめられない本。。。
読了日:03月26日 著者:藤原 帰一




ワルシャワの春―わたしが出会ったポーランドの女たち (母と子でみる)ワルシャワの春―わたしが出会ったポーランドの女たち (母と子でみる)感想
ここ数日で同じ著者の本を続けて3冊読んだ。本書では、著者自身が出会ったポーランドの女性たちを紹介。戦争、社会主義体制、戒厳令、民主化と、激しく変化する社会で、それぞれの人生を切り拓いてきた人たち。最後に、ポーランドにおける女性の地位や扱われ方、その変化についてもまとめてある。詳細はブログに。https://chekosan.exblog.jp/28214759/  2003年発行の本なので、その後、さらにポーランド社会と女性の状況は変わっているはず。同じようなコンセプトの本を書いてもらいたいなあ。

読了日:03月27日 著者:田村 和子


鳥のいない空―シンドラーに救われた少女鳥のいない空―シンドラーに救われた少女感想
ホロコーストを生きのびた女性の回想記。人間はどこまで残虐になれるのか。夜を徹して読んでいたら、収容所の夢を見た。こういう状況で果たして自分たちは気を強く持って耐え抜けるだろうか…生ぬるく育った我が子らなど一日も持たないかもしれない…などと思うと悲しくなって下息子の細い体を抱きしめてヨシヨシしたのであった… 著者ステラさんのその後については田村和子氏の著作『生きのびる』『ワルシャワの春』で紹介されている。詳しくはブログに。https://chekosan.exblog.jp/28215997/

読了日:03月28日 著者:ステラ ミュラー‐マデイ

読書メーター

by chekosan | 2018-04-01 23:53 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
面白かったです。じっくりと読みました。

ナチスドイツに占領されたプラハで決行されたSS幹部ハイドリヒ暗殺作戦をめぐる小説です。

小説といっても、半分以上は作者ローラン・ビネの資料調査の経緯や、この話を書くにあたって参照した作品への批判や、この史実を記述するにあたってどういうスタンスで臨むべきか、などなどの記述に費やされています。そこが最大の特徴です。

ミラン・クンデラに影響を受けている感じかな。作品のなかにもクンデラに関する記述がちょこちょこ出てきています。



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作者ビネは、チェコスロヴァキア愛、暗殺実行犯に同化したいという想いを臆面もなく提示します。それはもう「愛が伝わる」というレベルではなく、「僕が世界で一番愛するチェコスロヴァキア」というように言葉で明確に表すのです。

そのような、作者が顔を出す部分が鬱陶しい、小説部分だけでいい、と思う読者も多いようです。読書メーターやアマゾンのレビューでは賛否がパッキリと分かれています。

まあ、それも理解できなくはないです。特に、この時代のチェコのことを知らない人にはさっぱり話がわからないのではないかなと思います。

さらに、この作者は、実在の人物や事実を勝手な想像で脚色したり創作したりしないことに徹しているので、登場人物たちの「キャラが立って」はいません。だから評価が分かれるんですね。


でも、こういう書き方ができるのは小説ならでは。

調査の過程や、対象への愛を率直に文章中に盛り込むということは、我々の業界では通常はやりません。対象を愛しているから書くんだ、とは書けません。そのかわりに、こんな意義があるんだとか、こんな新しい視点があるんだとか、誰それのなんとか説を援用したら説明できる、とかいった意味づけ、箔付けをします。

だけど、面白そう、好きだ、もっと知りたい、他の人にも知って欲しい、と調査を進めていく過程こそがエキサイティングで、披露したくなるところなんですよね、本当は。だから、かなり羨ましく思いながら読みました。


◇◇◇

ハイドリヒ暗殺作戦をドラマティック、ロマンティックに追いたければ、映画「ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦」の方がわかりやすいと思います。

この映画、劇場公開しているのを見たときは、B級感がにじむサブタイトルや、実行犯と協力者の女性たちとのロマンス部分など、いかにもなところにちょっと萎えたのですが、今回『HHhH』を読みながら、映像には映像の強みがあるなと再評価しました。

街や服装や襲撃の仕方、最後の銃撃戦の攻防などは、映像の方がわかりやすいですね。

ただ、『HHhH』は、暗殺されたハイドリヒや周辺の人物、ナチスドイツが占領した国々で行った残虐な行為、ハイドリヒ暗殺の報復として全滅させられたリディツェ村やレジャーキ村のことなどをていねいに調べて紹介していて、単純なヒーローものになっていないところが良かったです。


◇◇◇

このところ、ドイツ、リトアニア、ポーランドなどの負の歴史の現場めぐりを続けてしてきました。次の夏はチェコにしようかなと思っていたので、『HHhH』の舞台めぐりも組み合わせようかなと思います。






by chekosan | 2018-03-22 16:15 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)