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by chekosan
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月イチ書評@関西ウーマン、2021年9月は、姫路まさのりさんの『障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。ソーシャルファームという希望』を取り上げました。

障がい者や社会的弱者と雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を保障して、ビジネス的にも成功、高い評価を得ている関西周辺の4事例(舞鶴の本格仏料理店、自然派クッキーが人気の製菓工場、ボーダレスアート美術館、ワイナリーやIT事業を請け負う社会福祉法人)をていねいに紹介した本です。




書評『障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。』@関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊_b0066960_16022803.png






# by chekosan | 2021-09-11 16:05 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)

劇場公開時に見逃した映画「葡萄畑に帰ろう」が無料配信されたので鑑賞しました。

大臣を解任された政治家が故郷に帰るまでのドタバタ、という感じかな。

宣伝系のサイトでは、風刺、批判、という面を強調していますが、予想外に可笑しな場面が多く、ナンセンスというか、突拍子もない、昔っぽいギャグに満ちているというか。 

映画を観た人の感想を見て回っていると、どこが面白いのかわからない、つまらないという意見がけっこう多くて、まあそれもわからなくもないですが、私は、深刻な映画を観ることが多いので、この作品のバカバカしいシーンも、「なにこれ~」とヘラヘラ笑って楽しみました。



ジョージア(グルジア)の風刺コメディ映画「葡萄畑に帰ろう」(2017)_b0066960_11332424.jpg


原題は「椅子」。権力の座を意味していますが、この映画では、特注の高機能な人格?を持ったオフィスチェアーが登場し、空は飛ぶわ、しゃべり出すわ、妙にシュールな役回りです。

椅子はなんでもお見通し、という感じで、主人公の大臣の窮地を救ったりなんかも。


主人公はスラっとしたエリートらしいエリート。「国内避難民追い出し省」の大臣です。紛争から逃れてきた国民を追い返すという役目。なんという設定。(^_^;)

選挙前に、国内避難民を強制排除したことで、与党が選挙に敗北、大臣も座を追われます。

私邸が残るから当分大丈夫だろうと思いきや、不当に(不法に?)安く買い上げたという疑惑(告発)が持ち上がり、今度は主人公たちが強制退去の目に。

そんなこんなの騒動と、新しい妻との出会い、子どもたちとの衝突と和解、亡き先妻の姉の反発や画策、以前の部下や使用人夫妻とのあれこれなどがからんでいくのですが、どのトピックも、パッと出てきて、さっさと次へ進んでいきます。

追われる身となった主人公を受け入れてくれるのが、長らく帰っていなかった故郷。母や古い友人たちは、ジョージアの名産であるワインを大切に作って暮らしています。


一国の大臣になってホクホクで、避難民を追い立てるような職に就いても良心を痛めるわけでもない。かといって、確固としたイデオロギーがあるわけでもない。地位や金の亡者かというと、そこまでではない。率先して悪事を働くとか私腹を肥やそうとするほど、狡く欲深いわけでもない。でももらえるものはもらっておくし、ちょっとケチ。

そういう中途半端に俗物なせいで、大臣の座から降ろされれば、周囲の人にさっさと見限られてしまう。

コミカルな映画なので、そんな主人公に対しても、彼の境遇の変化や話の展開も、さほど深刻には感じられないのですが、こうして文字にしてみると、権力争いとか、組織のありようとか、愛情にもとづかない人間関係の冷たさや信頼のおけなさ、なんかをストレートに描いていますね。

評判は芳しくないですが、俳優も上手だと思うし、とびきりの美人(新しい妻や長女)は出てくるし、強烈な個性が光る義姉のキャラクターも面白いし、故郷の母親や友人たちはいい感じだし、で、私は楽しい1時間半を過ごしました。

ジョージアもいつか行きたいものです。

【ジョージアに関連のある記事】

ジョージアが舞台の映画「みかんの丘」




架空の国が舞台だけど、ジョージアで撮影された映画



ジョージアについても書かれているルポルタージュ本の書評




# by chekosan | 2021-09-10 11:54 | 本、書評、映画、映像 | Trackback | Comments(0)
いや、じわじわといい映画でした。

「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」。フィンランドの映画です。

静かな地味な映画なのに、なぜかすごくドキドキハラハラして、何度も何度も休みを取りながら観ました(笑)

決してサスペンスものではないのですが。

無事見終わって、静かに感動しています。良かったです。( ;∀;) 


映画「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」(2020)とロシア美術館の思い出’89_b0066960_14042912.jpg



劇場公開時に観たいなと思った記憶があったので、無料公開されているのを見つけて、すぐ鑑賞しました。

美術商の話(魅かれるジャンル!)だから観たいと思ったんだったかな。

と思っていたら、監督・脚本が、エストニアを舞台にした映画「こころに剣士を」と同じペアだったのです。

「こころに剣士を」↓は、もう泣きっぱなしだった印象深い映画。なるほど、やっぱり映画は監督、脚本やわ、と再確認した次第です。




「ラスト・ディール」は、フィンランドの首都ヘルシンキで美術商を営む老人が主人公です。

美術品の売買も、どんどん実店舗での商売が斜陽になってきています。

主人公は、最後に名画の売買をして、有終の美を飾りたいと思っていました。

ある日、オークションに、作者不明、書名なし、でもとても惹きつけられる肖像画が出品されます。

どこかの老婦人の遺品整理のようで、来歴もよくわかりません。

そんなとき、疎遠になっているシングルマザーの娘から、孫の職業体験を引き受けてくれと頼まれます。

孫息子は、窃盗歴があるとみなされていて(あとで本人の口から事実が説明される)、引き受けてくれるところがないのです。

孫とも長く付き合いがなかった老人は、そんな面倒は避けたかったのですが、例の肖像画の特定をするために、美術館の資料室?に通わなくてはならず、しぶしぶ職業体験を受け入れます。

この少年に店を任せて大丈夫かいな、と思わせるのですが、これが案外、お役立ちで、機転が利くし、商売上手だし、ネットを操って、決定的な情報を収集します。

知識と審美眼はあるけど、かなりローテクなおじいちゃんと、いいペアになります。

少年のおかげで肖像画の作者も確定し、老人はギリギリのところで、名画を落札できました。


で、ここまででもかなり面白くて、一本の映画になりそうなのですが、実は、ここからまた、何段階か、ハラハラが続くのです。

残り時間の方が多い!? と不思議に思うのですが、なかなかいい展開です。

そこはネタバレすると面白くないので控えます。


さて、そのラスト・ディールとなった名画ですが、ロシアの画家イリヤ・レーピンが書いた「キリスト」ということになっています。

そのことは、映画のわりと早い段階で出てくるのでネタバレではありません。

レーピンといえば、写実的でパワーを感じる絵。大昔、初めての海外、まだサンクトペテルブルクがレニングラードと言われていた頃に、ロシア美術館で「ヴォルガの船曳き」を見て、大きな衝撃を受けました。

1か月くらいレニングラードにいて、いろいろ見て回りましたが、ロシア美術館が一番、印象に残っています。

エルミタージュ美術館よりも感銘を受けた記憶があります。文末に当時の写真を載せておきます。


そのレーピンですが、ロシアの画家だと思っていましたが、出身は今のジョージア、晩年はフィンランドに住んでいたのですね。

亡くなったロシア系と思われる老婦人の遺品から、知られざる肖像画がヒョイと遺品で出てきたという設定なのも、なるほど、でした(フィクションですが)。


バルト諸国やポーランドに行くときに、フィンエアーを使ったことはありますが、ヘルシンキの町には降り立ったことがありませんでした。

この映画で、ヘルシンキにもちょっと行ってみたくなりました。映画にも出てきたアテネウム美術館のサイトを見たら、魅かれる作品がたくさんあるようです。ヘルシンキに行けたら、ここには必ず行きたいと思います。

映画のロケ地をめぐるツアーも企画されていたようです。コロナの関係で、催行されなかったのかな? 再開できるとよいですね。ロケ地マップも作られています。もしヘルシンキに行けたら、これを手に歩こうかな!



最後に、感銘を受けたロシア美術館の写真を。1989年かな。まだソ連の頃です。ちょっと自慢です。

昔はデジタルではなく、フィルムで撮っていたので、今のようには写真は撮っていませんでした。 




映画「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」(2020)とロシア美術館の思い出’89_b0066960_13565581.jpg



映画「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」(2020)とロシア美術館の思い出’89_b0066960_13572493.jpg



あまりうまく撮れなかったレーピン…リベンジしたい

映画「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」(2020)とロシア美術館の思い出’89_b0066960_13583936.jpg



これも感銘を受けた絵 ↓
今回確認したら、イヴァン・アイヴァゾフスキーの作のようです


映画「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」(2020)とロシア美術館の思い出’89_b0066960_13593072.jpg


ロシア美術館では、この2枚しか撮っていませんでした… 

今なら、何でもかんでも撮るんだけど。デジタルなら費用はほぼかからないですからね~(^▽^;)

というわけで、いつかまたサンクトペテルブルクにも再訪したいと思います。

ヘルシンキと組み合わせると良いかも。


【ちょっと似たジャンルの映画の記事】
※このほかにも美術関連の記事も結構書いています。タグ「美術」からどうぞ。(⌒∇⌒)

東欧やロシアに関係ないのですが、すっごく面白くて、かなり引きずった映画。ちょっとだけプラハが出てきます。




こちらはドキュメンタリー映画。ナチが奪い取った作品を追う映画です。関連する記事のリンクも載せています。




アメリカで、贋作を寄贈し続けた男性のドキュメンタリー映画。面白いです!



# by chekosan | 2021-09-08 11:27 | 本、書評、映画、映像 | Trackback | Comments(0)
パッと見、テーマがわかりづらいのですが、ポーランドに関係のある映画「エヴァの告白」を鑑賞しました。

原題は、The Immigrant =正味、「移民」ですね。入ってくる方の。

ポーランドの戦乱で両親を目の前でなくした姉妹が、平凡で穏やかな生活を送るためにアメリカにやってきたというのに、さらに過酷な仕打ちが待ち受けていた。それでも主人公は、妹への愛情と信仰を捨てずに、幸せになるという夢をあきらめない、

という、お話です。

カテゴリー的には、恋愛ものになるのでしょうか。彼女を救うユダヤ系(と思われる)男性(彼自身も移民)と、その従兄弟であるマジシャンとの愛憎をからめています。

派手さや、カタルシスのようなものはあまりないですが、昨年から取り組んでいる共同研究と関連のあるテーマだったので、細部を興味深く見ました(後述)。


1920年代のポーランド移民の悲哀と覚悟 映画「エヴァの告白」(2013)_b0066960_11261257.jpg


あらすじはこんな感じ。

ポーランドからやってきた若く美しい女性エヴァは、ニューヨークに到着しますが、エリス島で入国を却下されます。移民船での素行が悪かったという報告があること、引受人である叔母と叔父の迎えがなく、住所もでたらめであるというのです。

さらに、妹は結核を患っており、病棟に隔離されることになります。

移民を支援しているという男性、ブルーノに助けられて、なんとかエヴァは入国できることになります。

実は、この男性、自身も移民で、エンターテインメント業に携わっているのですが、職や行先のない女性たちの衣食住の面倒を見る代わりに、場末の酒場で踊らせて、売春あっせんをしています。

ブルーノは、エヴァを商売道具として引き取ったのですが、強く惹かれてもいます。なのに、やはり売春を勧めます。彼女が彼の元から去れないようにするためです。

エヴァは、身元を引き受けてくれるはずだった叔母夫婦の家を探します。

しかし、血の繋がらない叔父は、実は入国管理局に迎えに行っていたのですが、エヴァの素行が悪く送還の対象となっていると聞いていたことから、引き揚げていたのです。叔父もまた、移住先での立場を危うくすまいと必死なのでした。

当局に通報されたエヴァは、またしてもブルーノに、送還対象者の施設から出してもらいます。

愛憎なかばする二人の間に、さらにブルーノのいとこの男性が登場し、三角関係のような展開に。

そのゴタゴタが決定打となって、エヴァとブルーノは、にっちもさっちもいかない状況に追い詰められます。

さあ、エヴァは妹と再会できるのか、ブルーノとの関係は!?



以下、注目した細部をメモ。あまりちゃんとまとめていません。後にいくほど、軽いネタバレもあります。ご注意を…


エヴァはイギリスの外交官の看護師をしていたらしい。手に職もあり、英語も話せるので、本当なら、入国は問題なさそうな部類。ところが、入国を拒否されてしまう(それはなぜかは、後の方でわかるのだが)。

そうすると、身元を引き受けてくれた人の言うまま、望まなくても売春に従事するほかなくなる。移民、外国人、そのなかでも女性、という立場の不安定さ、脆弱さを端的に象徴している。

ひとつ前の記事で紹介した、現代のイギリスにおける低賃金労働の現場潜入ルポとも繋がっている問題。




ポーランドはカトリックの信仰が強い地で、アメリカでも信者は熱心にミサに通っているもよう。エヴァもカトリック信者で、教会で懺悔をする。それが邦題に使われている。
戦争ものによくある、めちゃくちゃな邦題ほどは外してないけど、映画全体の内容からいくと、「エヴァの告白」というタイトルにするのは、うーん。ちょっとテーマが変わってしまうように思う。(「告白」という点では、ブルーノのラストの告白の方がインパクト大だし)

原題の「移民」の方が、当然ながら、内容とマッチしている。

エヴァにしろ、ブルーノにしろ、ブルーノが抱える女性ダンサーたちにしろ、従兄弟のマジシャンにしろ、エヴァを通報した叔父にしろ、アメリカで落ち着いた生活をしたい、より良い生活をしたいと思ってやってきたものの、なかなかそうはいかず、いつすべてが取り上げられるかわからない不安を抱えて、よそ者感覚を払拭できずに生きている。

そういう構図が、「エヴァの告白」にしてしまうと、薄まってしまう気がする。

そうはいっても、「移民」では、日本では誰も見ないだろうし、仕方ないんでしょうね。


彼女を救う(ように見せかけて売春させる)ブルーノは、おそらくユダヤ系。イディッシュ語もしゃべれるんだよ、というようなセリフがあるのと、エヴァの後を追って教会に行ったときも、ブルーノは、十字を切るようなしぐさもしていない。

当時、ユダヤ系の移民は、エンターテインメントに携わることが多かった。また、買売春斡旋業に携わることも多かったといわれている。

世紀転換期には、ポーランドから大量の移民がアメリカ大陸に渡っている。そのなかには、より良い生活を求めて移住したつもりが、買売春斡旋業者に騙されていた女性も多かったといわれる。

この映画は、そういう言説を、典型的に、やや単純に描いている気がする。

そのあたりは、先述した共同研究と関連する事柄なので、もう少し、細かく見ていきたいところ。


ブルーノは、自分の店を持っているわけではなく、女性経営者が営む居酒屋で興行している。そのため、立場が弱い。

女性経営者は、ダンス(といっても半裸の女性を見せるようなもの)を見せるようなショーは弱い、いかがわしい出し物は警察に睨まれる、映画に負ける、とブルーノに警告。

隆興しつつある映画産業に負ける、というのは、その一言だけだが、面白い。アメリカに渡ったユダヤ系の人びとは、エンタメ業に進出し、映画産業、化粧業界を発展させることになるのだが、そういう栄枯盛衰を感じさせる。


次の項目は、ちょっとネタバレ気味です。


この映画で描かれるニューヨークは、暗くて、陰鬱な感じ。決してキラキラしていない。ブルーノの従兄弟は、西部へ行こうとエヴァを誘う。

ブルーノも、エヴァと、結核病棟に隔離されている妹を西部へ逃がそうとする。西部は、NYと対照的な明るさを感じる土地として位置づけられている。

そしてブルーノは、大金を使ってエヴァと妹の脱出ルートを確保するのだが、各種証明書類はどうしたのだろう。

いくら州の違いが大きいと言っても、入国許可証的なものとか、身分証明書的なものは、どこの州で暮らすにしても必要なのではないかと思うのだが。

お金で偽造証明書を入手したのだろうが、そういうセリフや映像が出てこないのがちょっと物足りない(見逃しているかもしれないが)。

軽いネタバレ終わり。


主役のマリオン・コティヤールは、ポーランド語で話す場面では早口になって、しっかりものという感じになるのに、英語だとたどたどしいために、頼りなさげに見えます。移民の心もとなさがよく現れていると思いました。

ただ、あまりポーランド人のポーランド語には聞こえないかな。

でも、マリオン・コティヤールは、可愛らしくて魅力的ですね。この映画の時点の容姿は、フィギュアスケートのメドベージェワ選手と重なって見えました。

この映画の翌年には、「サンドラの週末」で主演していますね。こちらも以前に劇場で観たのですが、同じ人物と思えなかったです。

エヴァのような、ただ居てるだけで男性たちが目を奪われて虜になってしまうようなキャラクターとは全然違って、サンドラの方は、ごくごく普通な、化粧っ気のない、解雇されそうになっている女性。

ばっちり演じ分けられているのですね。







# by chekosan | 2021-09-07 12:04 | 本、書評、映画、映像 | Trackback | Comments(0)
イギリスのジャーナリストによる潜入ルポ。

体験したのは、Amazonの倉庫、訪問介護、コールセンター、ウーバーでの仕事だが、介護は人物審査待ちの期間が長く、実際にどれだけ仕事をしたのかよくわからなかった。コールセンターの章は、仕事そのものよりも、ウェールズの炭鉱町の衰退の話の方が多い(それはそれで興味深いが)。

Amazon倉庫とウーバーの記述は比較的詳細。以下、ざっと記録。


ブラッドワース『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した 潜入・最低賃金労働の現場』(光文社 2019)_b0066960_11555085.jpg

Amazonでは実質的な休み時間がほとんど取れなかったり、ゼロ時間契約=週に何時間労働するか保障しないという企業が圧倒的に有利な契約だったりする。

イギリスのAmazon倉庫の場合、ほぼ移民の仕事になっていたよう。著者が出会ったのはルーマニア人が多い。著者は、ルーマニア人労働者から、なぜイギリス人がこんなところでこんな仕事をしているのかと訊ねられたそうだ。

そういえば、大戦時にユダヤ人の子どもを匿ったフランスの町に極右政党の首長が誕生したのだけど、そこもブルガリアからの季節労働者を最低賃金以下で働かせていることへの反発だろうというニュースを読んだなあ… 




Amazon倉庫でのように、監視されながらきつい単純肉体労働を長時間していると、タバコや嗜好品を摂らないと持たなくて、仕事のあとに栄養バランスを考慮した手間のかかる調理をする気力体力が残っていないため、脂分の多い、簡単な食事で済ませることが多くなるという。そのために激務なのに肥満になるという現象も。

やはり低賃金の労働を体験した『ニッケル・アンド・ダイムド』(米)だったか『ハードワーク』(英)だったかでも、賃金が安いと設備の整った住居に住めなくて、自炊がままならず、かえって食費がかさむという話があったなあ…


そしてウーバーの運転手。著者が体験したのは、食べ物を運ぶイーツではなく、アプリを通じて客を乗せるタクシーに類した方。

ウーバーは運転手を雇用しているのではなく、あくまでアプリを提供しているだけで、仕事の保障も、事故の手当も何もない。好きな時間に好きなだけ働けばよいという触れ込みだが、アプリを起動すれば、依頼を断ったり、受けた依頼をキャンセルしたりすればアプリ使用権を止められるなど、実態としては拒否の自由はほぼないという。

その後、裁判が起こったり、組合が結成されたりという動きがあるので注視したい。





# by chekosan | 2021-09-06 11:58 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)