中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan
いまや大学、そして高校にも導入せよと要請される「アクティブラーニング」。

定義や目的、効果などをきちんと把握・理解されないまま、
抵抗されたり形だけのものになっていたりすることも多いという状況を受けて、
アクティブラーニングとは、いつごろから、どのような背景で、
何を目的として提唱されるようになったのか、
そもそも「アクティブラーニング」とは何かを理論的に再検討する。

溝上氏のアクティブラーニングの定義は次のとおり。

一方的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う。

後半はアクティブラーニング型授業の実践例とその理論的検証を通して、
アクティブラーニングの必要性を説いている。

実践例とはいっても、ハウトゥーを指南するためではないので、
とりあえず何かアクティブラーニングを取り入れた授業をせねば、
という人は、別の指南書をあわせて読むとよい。

背景と経緯、定義と目的が書かれた第1章、第2章が最重要パートではあるが、
第5章で著者が数々のシンポジウムなどの質疑応答で寄せられた質問に対して
答えている部分が本音満載、筆が乗っているというのだろうか、面白い。

b0066960_140714.jpg


本書のなかでも紹介されている安永悟先生が推進されている
LTD話し合い学習法のワークショップは2度ほど出ましたが、
非常に知的な興奮を覚えました。関連書籍、たくさん出ています。
[PR]
# by chekosan | 2015-09-23 14:05 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)

以前さらっと読んだ気もするが再読。

東大の教養演習テキスト『知の技法』を編んだ一人である、
船曳健夫氏の大学&大学教員生態録的エッセイ。

ユーモアと愛情に満ちた軽妙な文章で、
大学の教員ってどんな人たちなんだろう、
大学のゼミってどんなところなんだろう、と気になる人には楽しい読み物。

ただ、船曳氏が1948年生まれ、東大卒の東大教授、
本書の刊行が2005年であることを前提として読む必要がある。

b0066960_14462826.jpg


この10年の間に大学に求められるものはずいぶん変わった。
大学に集う人、ー学生も教員も、ずいぶん変わってきている。

なのにやっぱり変わらないところもあって、現場は右往左往している。

社会や国からはもっと教育に力を入れろと要請されているが、
依然として、研究>教育な教員が大多数だし、
それだから要請通り教育に力を入れても評価には結びつかない。

研究>家庭な教員もいまだ多い。
一人ですべてをこなそうとする人、こなせる人もいるが、
まっとうな家庭人、社会人として生きようと思うと、
男女問わず、まだまだなかなか大変である。


そういう実態に翻弄されている者には、
「古き良き時代」の記述のように感じられた。

おそらく前回にパラパラと読んだときから、
自分自身の状況が激変したこともあるのだと思う。


でもまあ楽しく面白く知的な雰囲気を味わえる本です。
[PR]
# by chekosan | 2015-09-22 14:57 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
こんなものを発見!
博士課程のときに大学院の新入生に向けて書いたものです。
こんな親切なことしてたんですねえ。今でも発行しているのかな?

確か、これより前に「参考にならないであろう修論体験記」
というのも書いたような書かなかったような?
見当たらないので、持っている方、ご連絡ください☆
b0066960_121516.jpg

このときの外国文献の入手方法は今では参考にならない点も多いですが、
同世代には懐かしいと思います。^^


ーーーーー

外国文献との格闘 ~私の経験から~

政治学専攻(博士後期課程) 橋本信子

新入生のみなさんに研究生活についてのアドバイスを、と幹事さんから原稿の依頼がありました。私はチェコとスロヴァキアの現代政治を研究していますので、外国文献の入手方法について簡単に述べたいと思います。


外国文献は入手に時間がかかるので、自分の研究に少しでも関連があると思ったら早めに手にいれることが大切です。まずは学内で探しましょう。図書館、大学院共同図書室(以下院図書)、光塩館などにあるコンピュータを使ってください。同志社所蔵の文献はDOORSでわかります。院生なら他研究科所蔵の本でもほとんどの場合貸し出し(もしくはコピー)ができます。文献が学内にない場合、インターネットを使い、NACSISで検索しましょう。これでほぼ日本中の研究機関の所蔵の有無がわかります。他大学や国会図書館等にあれば図書館を通じて取り寄せたり、コピーを依頼したり、あるいは直接閲覧に行ったりできます。ただし、NACSISに加入していない大学もあるので、最終的には図書館のレファレンスカウンターに問い合わせた方がよいと思います。


雑誌論文・新聞記事などはインターネットのホームページ、CD-ROM、CDサーバー、光塩館のLEXIS・NEXISを使って検索するのが便利です。国内・海外の資料が検索できます。印刷して読むのもいいですが、ダウンロードして自分のコンピュータに入れておくとあとあと便利です。


探し求める文献が国内にない場合、図書館を通じて米議会図書館やイギリスのサービス会社にコピーを依頼する方法もあります。ただし時間とお金がかかります。


購入する場合、私は取り次ぎ書店のカタログを見て院図書を通じて買いますが、丸善など大型書店で実物を手にとって判断するのもいいでしょう。最近はインターネットで直接海外に発注する方法(生協でもやっています)もあるようです。


現地に行くこともおすすめします。いまその国でどのような問題に関心が集まっているのかを肌で感じることが出来るからです。また外国の本屋さんは探している本が店頭にない場合に、ほかの専門書店を紹介してくれたりします。費用も日本で買うより安くつきます。つい先日私もチェコに行って書籍約50冊を買いましたが、航空便(24kg)の送料も含めても6万円ほどで済みました。また図書館や公文書館・研究機関を訪ねることができます。私も国立の研究所を訪ね、そこが発行している雑誌が興味深かったので定期購読の手続きをしてきました。


洋書は発行されて何年かたつと入手するのが困難になります。そういうとき、あなどれないのは友人・先輩・先生方からの口コミ?です。あなたがどんなことに興味を持ち、研究しようとしているのかを、折に触れまわりの人々にささやいておきましょう。貴重な情報をいただくことが出来るかもしれません。同様にあなたからも惜しまず情報を差し上げましょう。


日頃から文献を入手するための努力をすることが大切です。でも、それよりももっと大切で困難なことがあります。それは入手した文献を読むことです! 健闘をお祈りします。

(初出:同志社大学法学研究科 法学研究科院生会発行『VERITAS LIBRABIT VOS 1998』)

b0066960_1232320.jpg

[PR]
# by chekosan | 2015-09-21 12:04 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
インターネットの契約変更に伴い、
かつて作っていたホームページが消滅すると思われるので、
一部をちょっとずつこちらに移動させていきます。
以下は、20年前のエッセー。国際親善の団体の機関誌に寄稿したものです。
懐かしい…!


ーーー

プラハを訪れて、その美しさに感動しない人っているかしら、と思う。

近頃、新聞広告や旅行社のパンフレットで、「東欧周遊の旅」「プラハ・ブダペスト・ウィーン8日間」なんていうのがよく目につく。私がチェコに関心をもっているからということもあるだろうが、実際日本からの観光客は年々増えているようだ。


初めてチェコスロヴァキア(当時)を訪れたのは1992年の冬。大学の卒業旅行に、「若いうちでないと行けないところへ」と友人と二人、決死の覚悟で行ったのはほんの数年前のこと。当時は東欧方面のパックツアーなんてほとんど見当たらなかったし、どうせ行くなら自由旅行で、と自分達で色々手配することにした。在日チェコスロヴァキア大使館に電話でビザの書き方を尋ねて、「こんなこと聞いてくるの初めてですよ。忙しいんだから、まったく。」と怒られて憤慨したのも今は昔。最近では日本語の「記入例」がちゃんともれなくついてくる。個人旅行者がそれだけ増えたのだろう。隔世の感がある。おおげさか。


ビザの一件で、やっぱりチェコって不安かも、と思ったのは事実だ。案の定、パリからの飛行機は最終便だというのに遅れる。プラハの空港に着いたら、とっぷりと日が暮れ、バスがない。無謀にもそこらへんのおっちゃんの車で予約していたホテルへ連れていってもらう。無事ホテルに着いてほっとしたら、スーツケースの中の現金4万円が抜き取られていた…。さんざんだ。(ちなみに、車のおっちゃんの名誉のために、彼には盗むヒマはなかった。おそらくどこかの空港でだろう。貴重品は手から放さず、という大原則は必ず守りましょうね、皆さん。)


こんな旅の始まりだったが、それでもプラハの美しさには一瞬で魅了されることになった。真冬で、一日の間に晴れたり曇ったり、と気象条件も悪かったのに、青空のもと、雪のなか、夕暮れ、月夜、どんなシチュエーションでもプラハは似合うのだ。夕暮れのカレル橋から見るライトアップされたお城、群青色の夜空にぽっかりと浮かぶ金色のお月さまとティーン教会…。ほんとに現実なのか…。そのあと訪れたブラチスラバ、ブダペスト、ウィーンも美しい街だったが、私の頭のなかはすっかりプラハでいっぱいになってしまった。


帰国して早速、これら中欧の国々に関する本を色々読みあさった。加藤雅彦『ドナウ河紀行』、ブラスタ・チハーコヴァー『プラハ幻景』、宮本輝『ドナウの旅人』、高橋芳夫のプラハものミステリーや有名無名の紀行文…。どれにも共通して感じたのは、中欧を訪れた人はその魅力に抗えないということ。私もそれからずっと、チェコとスロヴァキアに関わることになったのだ。


大学を卒業して大学院へ。もともとはソ連政治を研究するつもりで進学したのが、チェコ&スロヴァキアへの関心は高まるばかり。で、研究対象はちょっとばかり西へ移動することになった。マイナーなものに取り組むには苦労を伴う。チェコ語にしても、修士論文にしても。だが卒業旅行からちょうど1年、再び訪れたプラハはやはり尽きることのない魅力にあふれていて、チェコに関わることのできる幸せを再認識させてくれたのであった。


この2度目の訪問はチェコ語研修が目的。プラハの中心街にある国立語学学校のチェコ語コースに参加した。本来は1年とか長期にわたって中級程度の人が参加するコースなのだが、私は1ヶ月半しか参加できない上に一言も喋れない。授業の流れを止めることもしばしばだった。言葉を喋れないというのはこんなに無力を感じるのか。大きなショックであった。


しかし、ホームステイをしながら通っているうちに、まさに砂地に水がしみていくようにチェコ語がわかっていった。それも日常生活の中でホストマザーが忍耐強くチェコ語で語りかけてくれたお陰だ。使う言葉や文例は最初は少なくて単純だけど、それらを何度も使っていくうちに言葉を体得していく過程を実体験したかのようだった。


このときのホストマザー宅に、翌年の夏(94年)もお世話になった。日本で水不足が深刻だったこの夏、ヨーロッパも異常気象で連日30度を超える猛暑。普段涼しいチェコには、冷房どころか扇風機さえない。暑さに気が遠くなりながらのカレル大学でのチェコ語研修は、だが、楽しい思い出となった。


夏休みを利用しての日本からの参加者も多い。前回は日本語が使えない状況でチェコ語にどっぷり浸かるという貴重な経験をしたが、今回のようにチェコ語を学ぶ日本の友人を得られたというのも大きな収穫だと思う。コースは午前中語学、午後には多様なプラグラムが用意されていた。なかでも市内の歴史的建造物の見物のあと友人と飲む一杯のビールは格別で、土曜日の日帰りバス旅行とともにしっかりと記憶に残っている。
b0066960_11313598.jpg


ところで、夏のチェコの風物詩といえば「ハタ」と呼ばれる山の別荘でのバケーション。プラハの人達は多くが別荘をもっているといわれる。私のホストマザーも娘さん家族と毎年山の別荘に避暑に行っているそうだ。今回、前年の冬の研修でお世話になった先生のハタを訪問する機会を得た。ゆったりとしたお庭にはテーブルセットが置かれ、チェコのお菓子と紅茶をいただきながら、お話をし、歌を歌う…。そんな映画のひとコマのような午後であった。


ホストマザーや学校の先生達を通して見るチェコの家庭は暖かくて、結びつきが強い。好奇心旺盛な子供達、きちんとそれに答えるお父さん、お母さん。おばあちゃんの存在も大きい。個々の家族の独立性と縦の世代のつながりとのバランスがとてもうまくとれているように感じた。


友人とのお付き合いもチェコの生活の大切な一部だ。冬の週末は決まって誰かが訪ねてきたり、行ったりする。特別なご馳走を用意するわけではないが、手作りのケーキでおしゃべりに花が咲く。季節季節には「友達の誰それさんのお母さんの庭でなった果物のジャム」やなんかが食卓に登場する。チェコの生活の豊かさを感じるひとときだ。


街も、そこに住む人々も、知れば知るほど好きになっていくものかもしれない。何度訪ねても飽きることはなさそうだ。時にはプラハを離れ、チェコの各地を訪れる。それぞれに魅力に富んだ街がまだまだあって、これからも少しずつ訪問していくつもりだ。スロヴァキアにも久しぶりに足を向けたいし、他にも訪ねたい国や街がいっぱいある。いつ、どこに行こうかな、なんて計画をたてていると時間を忘れてしまう。


でも、きっとどこに行っても、私はやっぱりチェコが一番好きだろうな、という予感がする。

(初出『JICインフォメーション』関西版 第62号 1995年9月10日発行)
---

ホストマザー宅には、その後も2回ホームステイさせていただきました。
一度は夫と、一度は友人と。
「3人目の娘」とかわいがっていただきましたが10数年前に亡くなられました。
今年こそお墓参りに行きたいと毎年思いつつ、長らくチェコに行けていません。
[PR]
# by chekosan | 2015-09-21 10:42 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
痛快な本です。

子育てや少子化に関する巷の誤解(三歳児神話など)を解き、
社会全体で子どもたちを支え、
子どもたちみんなが良い環境で良い教育を受けられるよう国を挙げて投資した方が、
結局自分たちも社会も豊かに幸せになれるということを
研究データを用いて主張しています。

刺激的なタイトルは、幼稚園を否定するものでも、
完全に乳児のころから終日保育園に通わせるべしという意味でもありません。

子どもを預けて働いたり、子育て以外のことを楽しもうとする母親に
人でなしみたいに言わんばかりの非難が寄せられる現状で、
就学前教育を「義務」と定めると預けやすくなるからという発想です。


誰にでも読みやすくするため
軽い文体で面白おかしく書くのは古市氏のいつものパターンだが、
この本は他の本よりも目指すものが明快。

興味深い事例が出てきたので、少し調べてあらためて書評を書こうと思います。

b0066960_1331472.jpg

[PR]
# by chekosan | 2015-09-19 13:32 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
ナチス・ドイツ占領下のポーランドが舞台の映画です。

8歳で家族と生き別れ、孤児になったユダヤ人少年が、
ユダヤ人狩りから逃れるため、森や農村を移り歩きながら
なんとか生きのびたという実話を基にしています。

原作は、国際アンデルセン賞も受賞している
ウーリー・オルレブの『走れ、走って逃げろ』。
映画化を機に、岩波少年文庫から刊行されています。

原作者のオルレブもポーランド生まれのユダヤ人。
隠れ家生活や強制収容所を体験しています。
b0066960_17294472.jpg

主人公の少年は、名前を変え、「過去」を創作し、カトリック教徒を装います。
そうして食事や仕事を求めて農家を訪ね歩きます。

決して余裕はないのに少年を保護し、愛情を注いでくれる人たちもいますが、
そこにもゲシュタポはやってきます。

10歳に満たない少年には過酷すぎる逃亡生活が続きます。

終盤、ソ連軍がやってきてドイツ軍を撃退するのを少年は歓迎するのですが、
終戦を迎えて村の人たちが喜ぶ場面で、
ある男性が「ドイツもソ連も一緒だ」と冷めた言葉を放ちます。
この人物もユダヤ系なのでしょうか。
その後のポーランドや東欧の歴史の展開を的確に表しています。


主演の少年はポーランドの双子だそう。
どの場面が、どちらの子役かわかりません。

少年らしく泣きじゃくる場面、
SS(ナチス親衛隊)の将校に毅然と対峙する場面、
難しいシーンばかりだと思うのですが、
2人はとても達者な演技を見せてくれます。

賢くて愛らしくて勇気があって、
でもやっぱり子どもらしくて、愛おしくなります。

ポーランドの森や平原の美しさも特筆ものです。

おすすめです。
[PR]
# by chekosan | 2015-09-14 18:29 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
「関西ウーマン」に先月から書評を連載しています。

今月は『読書狂(ビブリオマニア)の冒険は終わらない!』。
大の読書好き、本好きの人気作家おふたりの対談集です。

本をめぐってあれこれ話すのは、とても楽しい!
いろんな本を読みたい、そのことをいろんな人と語り合いたい、
とウキウキしてくる楽しい本です。

画像は「関西ウーマン」Facebookページ。

書評はこちらからお読みいただけます。

b0066960_15314112.png

[PR]
# by chekosan | 2015-09-12 15:37 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
学生のおすすめの一冊より。

タイトルと帯から想像されるFacebook批判は一部。
「便利さ」がもたらす負の側面や危険性について考える本。

b0066960_1233103.jpg

技術革新が進むと我々の生活は便利になるが、
その陰には一気に廃れる産業がある。
では新しい産業や企業が大きな雇用を生むかというとそんなことはなく、
むしろ人手は減らされる一方だ、という話が前半を占める。

例えば写真。
デジタルカメラの普及でフィルムが使われなくなり、
家庭用プリンタで質のいい写真がプリントできるようになると、
まちのDPEの売り上げが激減した。
スマートフォンが普及するとデジカメが売れなくなっていく。
さらにSNSなどに撮った写真をアップロードするようになると、
写真を印刷すること自体がすっかりなくなった。

この間せいぜい10数年のことである。

我が家もまったくこのとおりをたどった。
フィルム代と現像代、プリント代が家計をおおいに圧迫していた10数年前。
いまは複数の場所にデジタルデータで保管するだけ。
CDに焼いたりもしていない。
撮影枚数はフィルム時代の何倍もに膨らんでいるが、
機械以外のコストはほとんどかかっていない。


あるいはインターネット通販の拡大。
Amazonの拡大と並行して町の書店が消えていく。
家電量販店はネットで買い物する人たちが
現物を確認するためのショールームと化していく。

しかしいまどきの新しいサービスや物流システムは人を必要としない。
人件費は、コストとして不安定要素として、究極まで削られていく。


後半では、グーグルやFacebookやLINEに
あらゆる情報が吸い上げられることの危険性を訴える。

SNS等の利用を始めるときには、
供給側の提示した条件に「同意する」ことが求められる。

これは、無料のサービスを受けるかわりに、
利用者はさまざまな情報を差し出すという取り決めにほかならない。

それらの情報を結びつければ、
企業や政府は我々のあらゆる情報を把握することが可能になる。

当然、それは貴重な情報として商売のネタになっていく。
タダほど高いものはないのである。


個人の情報が垂れ流され、収集蓄積されるだけではない。
創造的な知的生産物、アイディアやデザインは、
ごくごく簡単に複製され、拡散されていく。

そこにプロの仕事への尊重はない。
そんな世界が望ましいのか、と著者はいう。


雑誌連載のエッセーをまとめた本なので、さらっと読める。
前半の方が著者の経験も豊富に語られていて説得力があるかな。
[PR]
# by chekosan | 2015-09-05 15:06 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
7日まで授業や成績付け、そのあとは原稿で、旅行も行けずじまいな8月でしたが、
学生のおすすめの一冊を中心に本はたくさん読めました。^^

2015年8月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5032ページ
ナイス数:515ナイス



悪童日記 (ハヤカワepi文庫)
悪童日記 (ハヤカワepi文庫)感想
学生の「おすすめの一冊」。文中には時代も人名も地名も一切出てこないが、第二次大戦中のハンガリーが舞台なのはまちがいない。今の常識や感覚からすれば異常とされるような生と性と死に関わる残酷で生々しいシーンが満載だが、戦後しばらくまでは日本でもどこでも同じようなことは起こっていただろう。この作品の主人公である双子のように、子どもだって生きるためにはなんでもしていた。続編があるようなので読みたい。映画も見たい。浦沢直樹『MONSTER』が好きな人、中・東欧の歴史が好きな人、美少年ものが好きな人におすすめ。
読了日:8月1日 著者:アゴタクリストフ


ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)感想
学生の「おすすめの一冊」。タイトルで予想がつくうえに、学生の書評の草稿が思いっきりネタバレで、すっかり話がわかってしまっていました。^^; だから泣くまでには至らなかったけど、「2度目もキュンキュンするんですよ、先生!」というのは、うん、わかるわかる。舞台が京都なので、よく知った地名や大学名が出てくるのが楽しい。主人公が通う「木野美術大学」はもちろん京都精華大ですよね。私、教えに行っていました。造形大もです。京産も聴講に行ってました。懐かしい。読み終えて、いま、宝ヶ池に無性に行きたくなってます。^ー^ 
読了日:8月2日 著者:七月隆文


植物図鑑 (幻冬舎文庫)植物図鑑 (幻冬舎文庫)感想
学生の「おすすめの一冊」。有川さんの本はこれまで何冊か読んで、どれも面白かったのだが、本作はなんとなく避けていた。「甘く」て、「キュンキュンする」という評をちらちら見聞きして、甘いだけならいらないかなあと。でも読んでみるとさほどではなく、むしろ、「雑草」と呼ばれるような草花の魅力を通じて日々の生活を大切にしたいと思わせてくれる爽やか小説だった。出てくるお料理、美味しそうだし! 買ってきたお弁当やパンやお惣菜で済ませることが続いたここ数か月。家ごはんって有難くて美味しいもんなあ。ああ、ていねいに生活しよ。
読了日:8月3日 著者:有川浩


虚像の道化師 ガリレオ 7虚像の道化師 ガリレオ 7感想
短編集。原稿で頭を使って疲れたので、気分転換に一話、二話ずつ、さらさらっと読んだ。これはちょっと気の毒かもという事件では人情味を感じさせるおちだったのは良かった。
読了日:8月10日 著者:東野圭吾


ギャラリーフェイク (4) (ビッグコミックス)ギャラリーフェイク (4) (ビッグコミックス)感想
ムソルグスキー「展覧会の絵」にインスピレーションを与えた画家ガルトマンの話を収録。好きなピアニストさんが「展覧会の絵」を十八番にされていて、ガルトマンの作品も含めて研究されているので面白く読んだ。個人が苦労して守っているお城の話も良かった。鏡の話はラストシーンがちょっとなあ… フジタさん、ちょっと知り合っただけでそういうことしちゃうんだ… 青年誌に連載していたから読者サービス? そこだけ違和感ありの4巻でした。
読了日:8月10日 著者:細野不二彦


人を動かす 新装版人を動かす 新装版感想
学生のおすすめの一冊。どう接すれば人は動いてくれるかを説く本。著名人らの言葉も多数出てくるが、それよりもカーネギーの講習会に出て「人を動かす原則」を実践した普通の人たちの事例が面白い。通底しているのは、「人は自己が重要と思いたいもの」を意識するということ。その上で、心からほめる、相手の言うことを認める、先に誤りを指摘しない、相手が求めていることをくみとることを勧める。ただし、この原則が効果を発揮するには、リーダーや上の立場にある人自身もちゃんと動き、生み出し、人に尽くしていることが前提だと思う。
読了日:8月11日 著者:デールカーネギー,DaleCarnegie,山口博


DIVE!!〈上〉 (角川文庫)DIVE!!〈上〉 (角川文庫)感想
学生のおすすめの一冊。あさのあつこ『バッテリー』佐藤多佳子『一瞬の風になれ』とともに学生に人気のスポーツものだが、なんとなく後回しにしていた。はじめのうちは主人公と思われる中2少年のキャラが立っていなくて、なんとなく甘ったるい感じ。野生児として強烈な個性をもって出現したはずの高校生も途中からちょっと半端になるし… 飛び込みの説明部分が妙に説明くさい文体なのも若干興ざめな。でも下巻からは俄然話が動き出して登場人物たちも生き生きしてくるので、これから読む方、上巻でやめずに下巻までいっちゃってください。
読了日:8月16日 著者:森絵都


DIVE!!〈下〉 (角川文庫)DIVE!!〈下〉 (角川文庫)感想
学生のおすすめの一冊。下巻は勢いがある。文章もこなれて、登場人物もいい感じにとんがっていく。サラブレッド君の努力と気高さと苦悩と脱皮が良かった。話が出来過ぎな気もするが、実際のスポーツの世界も競技によっては中高生くらいのときに大化けしたり開花したりするもんなあ。で、そういう選手たちは小説以上の、血を吐くような練習を積んでいるんですよね。個人競技は自分との闘いとはいえ、ライバルや超えたいと思う選手がいる方が踏ん張れたり目標が高くなったりするんですよね。クライマックスの試合、爽やかでスカッとしました。
読了日:8月16日 著者:森絵都


読書イベントアイデア集―中・高校生編 (はじめよう学校図書館)読書イベントアイデア集―中・高校生編 (はじめよう学校図書館)感想
岡山の県立高校で図書館を担当されたきた国語の先生の実践。朝の一斉読書から始まり、年間~3年計画で、本や新聞を読み、感想や意見を学内外に発信し、共有するための指導方法。薄いが内容は濃い。読書ノートや展示の例も写真で掲載。これだけの読書指導を中学・高校でみっちり受けてきてくれたら、大学の初年次ではさらに深い、次元の高い演習ができるのだけど… でもこれを実践するには教員の努力や力量がものをいうなぁ。一学期だけで教員が38冊のブックレビューというのは一人であっても、複数の教員に呼びかけてのことだとしてもすごい。
読了日:8月17日 著者:高見京子


夏の庭―The Friends (新潮文庫)夏の庭―The Friends (新潮文庫)感想
学生のおすすめの一冊。「新潮文庫の100冊」に値すると思う。まだまだ子どもだけどいろいろなことがわかりだす小6男児3人組と近所のおじいさんとのひと夏の交流。登場人物が抱える過去と現在の問題が少しずつほぐれていく。何がしたいかわからなかった主人公がラストで父親に将来について話す場面がいい。ストーリーはすぐに見えるが細部の描写がいい。ノスタルジックな日本の夏の情景がやわらかく描かれる。梨木香歩『西の魔女が死んだ』と通じるものがある。作者は音大の作曲科出身。天はニ物も三物も与えるなぁ。
読了日:8月18日 著者:湯本香樹実


公開処刑人 森のくまさん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)公開処刑人 森のくまさん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
学生のおすすめの一冊。うーむ。学生の書評の草稿で、明確なネタバレではなかったが登場人物のラインナップを見ればそれしかないなと犯人に見当がついてしまっていたので、意外性はなかった。ほかの方のレビューを拝見しても、やはり早い段階で犯人はわかったという方が多数。^^; クライマックスのはずの場面は暴力シーンがくどくて冗長かな。脇役だった女子高生2人たちの変化はちょっとコワイかも。とりあえずやたらと残忍なんだけど軽い文体で場面転換が速いのでサラッと読み終わる。
読了日:8月19日 著者:堀内公太郎


いじめられっ子のチャンピオンベルトいじめられっ子のチャンピオンベルト感想
学生のおすすめの一冊。内藤氏が世界チャンピオンになって注目されだしたころ、プロボクサーにもこういう常識的な人のよさそうな人が現れたかという印象をもった。彼は業界のイメージアップに貢献したと思う。関係者に配慮してか、中学時代のいじめや、ボクシングを続けるなかでの苦労についてはさらっとした記述。自分に自信のない子、いじめをうけて苦しんでいる子が読めば勇気をもらえるかも。努力はその分野では必ずしも報われないかもしれないが、どこかで必ずなにかの力になるという趣旨のあとがきがいい。
読了日:8月19日 著者:内藤大助


ひゃくはちひゃくはち感想
学生のおすすめの一冊。「ひゃくはち」とは煩悩の数と野球のボールの縫い目の数を掛けている。タイトル通り煩悩の塊な高校球児の青春物語。激戦区神奈川の強豪校で進学校の球児たちが毎週合コン、飲酒喫煙、女の子とすぐにどうこうなんてあるのかな? 恋人一筋という主人公の親友も二度も「失敗」しているし。と突っ込みどころは満載だが、テンポがいいので一気に読めた。読みながら、学生たちが高校の頃の話を目をキラキラさせて話してくれるときの様子が浮かんできた。またそんな話、聞かせてもらおう。飲酒喫煙不純異性交遊話は抜きで。^^
読了日:8月21日 著者:早見和真


図書館からの贈り物図書館からの贈り物感想
滋賀県を全国一の図書館先進県に押し上げた立役者のお一人。成功の要因は、図書館長と職員が専門職であることにこだわり質の高い図書館運営を続けたこと。今では珍しくないが、図書館で音楽会や展覧会、講演会を催すなど、広い意味での資料提供、文化交流の場を創られた。最近、図書館のビジネス支援が話題になっているが、甲西町立図書館では開館当初から役所内で滞留しがちな情報を広く公開し、その効果を知った役所の各課から協力要請の相談が相次いだという。その他、図書館をめぐる様々な経験や主張や提言、利用者との交流などを多数紹介。
読了日:8月24日 著者:梅澤幸平


キャッチャー・イン・ザ・トイレット!  (双葉文庫)キャッチャー・イン・ザ・トイレット! (双葉文庫)感想
学生のおすすめの一冊。でなければ手に取ることはまずなかった本(笑)。この本を選んだ学生がとても読ませる書評を書いたので、彼が薦めるならと読んでみたら、原稿の締め切り目前にも関わらず一気読みしてしまった。^^; はじめは中3男子の妄想爆発に笑えるけど、そのうち胸が苦しくなる青春もの。文章はけっこう好きかも。でもまあ、、、女性のなかには本気で嫌悪感持つ人もいると思うのでおすすめはしません。^^;
読了日:8月24日 著者:伊瀬勝良


そうだ、葉っぱを売ろう!  過疎の町、どん底からの再生そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生感想
高齢化が進み、すっかりジリ貧だった町に農協の営農指導員として赴任した著者は、女性や高齢者でも現金収入が得られるものを探すうちに「つまもの」(葉っぱ)を売ることを思いつく。成功の秘訣は現場を大事にすること、女性と高齢者が主役にすること、やる気を育てること、そのための仕組みをつくること。何もない山間部の町だからこそできることに着目したことで、上勝町は今や農業以外でも注目される町となっている。過疎の町、村の農業活性化の成功例としてだけでなく、いろいろな組織運営、ビジネス手法の参考になる。おすすめ。
読了日:8月25日 著者:横石知二


黒猫の遊歩あるいは美学講義 (ハヤカワ文庫JA)黒猫の遊歩あるいは美学講義 (ハヤカワ文庫JA)感想
学生のおすすめの一冊。ポオの作品をモチーフにした、美学を用いた謎解き短編連作小説。雰囲気はあるが、24歳で大学教授の美青年が探偵役というのはありえなさすぎかな。ほかの登場人物の造形もやや定まっていない印象。ポオは子どもの頃に2,3編読んだきりなので、この作品の売りである美学的な解釈が果たして適切なのか、オリジナリティがあるのかまったくわからないのだけど、高3のとき担任の国語の先生にあなたは文学部は合わないと言われたのは当たっていたなあと実感した。テキスト解釈の部分は気持ちが入っていかなかったです。^^;
読了日:8月28日 著者:森晶麿



読書メーター

[PR]
# by chekosan | 2015-09-01 07:04 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
原稿絶賛執筆中です。

今、書いているのは授業と図書館とのコラボレーションについてなので、
この夏は図書館関係の雑誌記事をたくさん読みました。

図書館ってやっぱりいいですね。
いろんなところを見に行きたい、
図書館のいろんな取り組みを知りたい・したいと思いが膨らみます。

最近は購入することが多くなりましたが、本は図書館で借りる派でした。

前任校・大阪商業大学の図書館報にも
図書館をめぐる思い出、図書館への愛を寄稿しています

原稿を書き終わったら、各地の図書館を訪ねたいと思います。

b0066960_10455355.jpg

[PR]
# by chekosan | 2015-08-29 10:53 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)