中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan

カテゴリ:読書記録( 161 )

「学者芸人」サンキュータツオ氏が、一見、それ意味あるの?と思うようなテーマを扱った学術論文を、面白おかしく、そして愛をこめて紹介する本です。前作『ヘンな論文』はホントに面白くて、思わず月一回連載している書評でも紹介しました。

「ヘン」といっても、研究者の世界の感覚からすれば、とりたてて変ではありません。テーマがタコツボでピンポイントなだけで、ごくごく真っ当な研究ばかりです。

よくぞ他分野の学術論文に目を通して、中身を理解し、まったくの素人でもわかるようにかみ砕いて紹介されるなあといたく感心しました。

今回の『もっとヘンな論文』は、前作がご本人の予想よりも幅広い層にうけたのか、より素人さん向けになったというか。いろいろ見ていくなかで見つけたというよりも、一般にウケそうなテーマの論文を探して書いたのかな、論文の選び方もタツオさんの解説も若干物足りなくなったかなと思いながら読んでいきました。

が! 最後の「「坊ちゃん」と瀬戸内航路」で本領発揮! 後日談を含めて興奮の渦、感動の嵐でした。

この論文は、夏目漱石が松山に赴任するときのルートを突き止めるという内容。研究を生業とされた方ではなく、在野の研究者の方によるものです。といっても、長年、明治・大正の汽船の研究をされてきた方で、調査にかけた年月やレベルは大変なものです。

タツオさんの熱の入れようも全然違う。著者である山田迪生(みちお)さんに会いたい!と学会を通じてコンタクトをとり、直接お話をするまでに至ります。そこでのお話がまた感動的なのです。

山田さんは、専門家、研究者の使命とは、①調べる ②形にする ③発信する、ことだと言われます。

しかし、日本のドラマや小説などでの船の描かれ方を見ていると、かなり怪しいものが多いそう。映画「タイタニック」では、船の様子が史実とぴったり合っていて、ちゃんと再現されている。それはアメリカの客船史の研究家がスタッフとして考証に参加しているからだったそうなのです。

日本の専門家は、調べたことをもっと発信する必要がある、それが出来ていないから、いい加減な描かれ方をしているという意識を持たれているのです。

そこで、明治・大正期の汽船の存在とその知識を啓蒙できるようなテーマは何かと考えた末に、漱石の足取りを探索するという一般うけしそうな論文を「エンターテインメントとして」書かれたのです。

その目論見は見事、タツオさんという読者を経て、多くの人に広がったわけです。

タツオさんも、科学コミュニケーション(研究が日常世界にどうフィードバックされているか、や、研究の意味を一般の方にもわかるように説明する学問領域)も自分にできることのひとつなのかなと思い、2冊目を出されたとのこと。

なるほど、より「啓蒙」という意識が高まっての2冊目だったわけですね。

本全体としては一冊目の方が良いと思いますが、この2冊目は、山田さんの論文紹介と後日談での盛り上がりがすばらしかったです。

どうやら続編も期待できそうです。そのときは、ぜひ同じイラストレーターさんの挿絵でお願いしたいです☆


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by chekosan | 2018-02-22 17:16 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
第2次大戦時のドイツ占領下のフランスで「対独協力者」であったとみなされた女性たちが、ドイツ撤退後、裏切り者として公衆の前で丸刈りにされるという事態が各地で頻発した。その「被害者」たちの証言を求めて訪ねた記録。

フランスの占領時代~戦後について知識も関心も低かった私には、わかりやすくその時代を解説してくれていて理解の助けになった。

「丸刈り」にされた女性たちの中には、情報提供や経済的な協力をしたものもいれば、駐屯するドイツ兵と恋仲になった者もいて、その「協力」の内容や度合いはそれぞれに違うのだが、概してドイツ兵とねんごろになった女という捉え方をされているという。

丸刈りはいわば集団リンチ、うっぷん晴らしのようなもので、正当な法的処罰などではない。女性たちに恥をかかせ、辱めることが目的である。著者は「被害者」と表現するが、いまでも現地では罪を犯した者というイメージであるという。

そのような現象をフランスの歴史家ファブリス・ヴィルジリは次のように考察している。

・丸刈りは「性的な対独協力への罰」ではなく、「対独協力への性的な罰」である
・フランス社会に男性による秩序を回復するための愛国的な暴力であった
・この一連の暴力に参加した男たちは、自らを浄化された社会の担い手であると認めさせると同時に、彼女たちから女らしさを剥奪することで、女性の権利は拡大しても、性に関する自己決定権は依然として男性が保持していることを示そうとした。


本書の著者は「丸刈りの被害者」にコンタクトをとって証言を得ようとするが、テーマがセンシティブであること、当事者の年齢的な問題などから壁に突き当たる。新聞に広告を打とうとしても掲載を拒否されることが多く、やっと掲載されれば脅迫するような電話が来たこともあったとのこと。

ドイツ兵のその後を調査する専門機関に問い合わせて、そこからの照会(紹介)で、ようやく数名から証言を得る。そうした経緯自体が、こうしたテーマで証言者を得ることの難しさを示している。今後、ますます当事者の声を拾うことは難しくなるだろう。貴重な証言であると思う。


ドイツ占領下のフランスと聞いて私が思い浮かぶのは、映画「フランス組曲」くらいなもので、あの作品などは、まさにドイツ人将校と、彼を間借りさせる家の若奥様との美しい悲恋の物語であった。あの映画のヒロインは意外な方へと人生を展開していくので、戦後まで生き抜いていても丸刈りの目にはあわなかっただろうが…

にしても、女性を丸刈りにしたり、ユダヤ人のもみあげや髭を剃ったり、紳士淑女を地面に這いつくばらせて拭かせたり、あざけりの言葉を書いたプラカードを首からかけさせたりといった辱めを群衆が喜んで見ている光景には心が痛む。殴る蹴るといった暴力以上に残酷に思える。

その現場を目撃したイギリスの記者や、ジャン=ポール・サルトルが「中世的サディズム」であると批判する文章を書きのこしているのは救いか。。。



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by chekosan | 2018-02-20 22:44 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
スピルバーグ監督の名作「シンドラーのリスト」を昨年ようやく観ました。やはり名作と言われる作品は名作だわと感心し、ひとしきり授業で学生にも勧めました。

オスカー・シンドラーはチェコスロヴァキア生まれのドイツ人。ナチス占領下のポーランドのクラクフで、傾いた工場を買い受けてホーロー製品や軍需品を生産して大成功をおさめ、自分の工場で多くのユダヤ人を雇用し、終戦間際には労働者ごと、ごっそり故郷に工場を移転するという方策で彼らの命を守った人物です。

そのあと、友人とアウシュビッツを訪ねる旅の話が具体化したので、シンドラーの経営していた工場(いまは博物館になっている)も訪ねてきました




トマス・キニーリーの原作は旅の途中から読み始め、帰ってから風邪で寝込みながらちょっとずつ読み進めました。ううむ、これも力作。非常に具体的で面白い。なぜこれが絶版になっているのか。まあ、おかげで(?)、中古で1円から入手できるわけですが…

クラクフの街はさほど歩けなかったのですが、それでも、本書に出てくる地名や位置関係がわかるようにはなったので、読みながら臨場感が得られました。

文庫版で600ページを越える大部の著作で、昔の版ゆえ字は小さく行間も狭く、面白いのになかなか終わらないですが、でもページを繰る手は止まらないという本です。

生存者の証言が得られた部分は明確にそう記述し、想像の部分は想像として書き分けているのも良心的です。シンドラーに関しては、肯定的に、魅力ある人物として描いていますが、プレイボーイぶりや賄賂のだしっぷりなども余さず書いています。

プワシュフ強制収容所所長のアーモン・ゲートに関しても、非常に(異常に)サディスティックな人物であることははっきり書いていますが、ある種の魅力も備えていたようにも描いています。

単純に善人、悪人という「キャラ付け」にはしていないのが、ノンフィクション作品としての面白さを増しているように思います。


スピルバーグの映画は、それでも3時間くらいある長い映画ではあるのですが、だいぶ原作を端折っています。印象に残る「赤い服の幼女」も、あんないたいけな女の子が、あああ…(´;ω;`) というイメージで使われているだけですが、原作では名前や出自などがていねいに紹介されています。

シンドラー以外にも、ユダヤ人を守るためにギリギリのところまで頑張った非ユダヤ人の工場経営者や軍人がいた話も、原作にはたっぷり紹介されています。

とはいえ、映画は映画で、ゲットーへ追い立てられるユダヤ人の悲劇、そこからさらに強制収容所に行かされ、理由なく殺される非道さ、シンドラーのダンディーで社交的で大胆な振る舞い、シンドラーとユダヤ人との交流がビジュアル的にわかりやすく描かれているので、やはりあれはあれで名作だと思います。


ところでですね、私が入手した本、カバーはこのように『シンドラーのリスト』となっていますが、


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カバーをめくりますと、あら! 『シンドラーズ・リスト』です。
もともとは『シンドラーズ・リスト』で出版し、映画がヒットしたのでカバーだけ変えたのでしょうね。しかし、ちょっと紛らわしい…


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クラクフのユダヤ人が連れて行かれたプワシュフ強制収容所跡には残念ながら行けませんでしたが、ゲットーだった地区はうろうろできました。ほんの一部だけ残るゲットーの壁も見てきました。その写真はこちらをどうぞ

シンドラーがユダヤ人1200人を連れて移設したチェコの工場跡も、博物館として保存することになりました。整備や公開はまだまだこれからのようですが、公開されたらぜひ行こうと思います。





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by chekosan | 2018-02-19 14:28 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
ポーランド旅行記がちっとも書けていませんが、先に現地で買ったマンガの記録を。
6人のユダヤ人の少年少女たちがホロコーストを辛くも逃れた実話集です。

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ニュルンベルクのハインツ少年は家族とイギリスに逃れますが、英独の開戦によって今度はスパイの疑いをかけられ、逮捕拘留されます。

チェコスロヴァキアの少女トゥルードは、一人でイギリスに疎開、15〜20箇所も預けられ先を転々としました。両親とはその後、再会することはありませんでした。

ドイツからチェコスロヴァキアへ逃げた少女ルースは、母の奔走が奇跡的に実を結び、イギリスに脱出します。リバプールの駅に降り立ったまさにその瞬間、駅の放送で、英独開戦の宣言を聞きます。彼女の一家は幸運なことにのちに皆、合流することができました。

ドイツのマルティン少年は、妹ともに「キンダートランスポート」でイギリスのコベントリーに疎開しましたが、そこでも激しい空爆を経験します。

フランスの少女スザンヌは、パリで文化的な生活を送っていましたが、ユダヤ人狩りにあい、両親は連行されます。スザンヌは隣人がとっさに自分の子だと連れて行って助かります。その後、水道も電気もない田舎に疎開し、農作業に従事します。戦争が終わったことを2年も知らずに過ごします。

ポーランドのアレク少年はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所に連れていかれ、ガス室行きの列から抜け出し、なんとか生き残りますが、シラミや飢餓に苦しみます。

読みやすい英語で、一気に読んでしまいました。

ここに出てきた人々はみな生還者なので、その点は救いがあるのですが、家族や親戚や町の人とは二度と会えなかったという人が多いです。


今回の旅では、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所跡にいってきましたが、建物や物だけ見てもなかなかその悲惨さはわかりません。

証言を残すこと、耳を傾けることが大事だと思います。

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by chekosan | 2018-02-09 03:02 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
大学生協で岩波書店15%オフセールをしていて、ひょいとワゴンで見つけた一冊。最近の私の関心にぴったりなタイトルで即買いです。

岩波ジュニア新書はわかりやすくて優れた本が多いので、図書館や本屋さんで結構チェックしていたつもりでしたが漏れていました。やはりアンテナが立っているかどうかで見えるものが違ってきますね。

ということで、ちょっと前に出版された本なので、情報源の探し方などは古くなっていますが、参考になる事例や引用がたくさん紹介されていました。

はじめの章で紹介されている、大学生のベトナムツアーの部分は、おおいに刺激を受けました。ベトナムには一度は行きたいと思います。

ルソーの『エミール』からの旅に関する考察の引用もたいへん示唆に富むものでした。

◇◇◇

いまはテレビやネットでいくらでも鮮明な映像を見ることができます。

でも現地だからこそわかることもやはりたくさんあります。

私は、空間の感覚(広さ狭さ、立体感など)、史跡と普通の生活空間との位置関係、どれくらいの人が出入りしているか、どういう人が案内しているかなどに目がいきます。

たとえば、ベルリンの旧東独秘密警察拘置所跡を見学したときは、かつては地図上には記されていないくらい秘密だった地区が、いまは普通の住宅街になっていて、スーパーマーケットのチェーン店が建っているとか。

リトアニアで数万人が虐殺された現場が、行ってみると市街からそう遠くはなくて、今はぜんぜん恐ろしげでなくて、むしろ美しい緑の空間だったりして、鎮魂と記念と啓発と伝承の場のありかたを考えさせられたり。

目的をもって行く旅には下調べが大事ですが、現地に行ってから存在を知る場所や施設、事実もあります。

リトアニアへはホロコーストの記憶をどう残しているかを見に行ったのですが、現地のインフォメーションセンターにそうした史跡をピックアップしたわかりやすい地図があって、行ってからずいぶん見るところが増えて充実した旅になりました。

◇◇◇

本書にも書かれているのですが、頭や心の準備をし、研ぎ澄まされた感性で旅に臨むと、長く広く感動が響きわたり、事後の学習の動機づけにもなります。学習意欲が高まって、本を読む量や時間の長さが増えたり、ニュースや人の話を聞いたときにも吸収力が高まったりします。

これはホントそうですね。もう全然違う。あまり準備をせずに行っても行く前とはぜんぜん感度が違ってきます。

ですので、若いうちから、あるいは年をとっても、関心を持って違う土地に行くのはとても意味のあることだと思います。

私も長いインターバルはありましたが、2年前から海外への調査旅行を復活し、そこでの見聞や、そこから調べたこと、考察したことを授業などで折に触れ、紹介しています。学生さんの反応も非常に良いです。

ベルリンやリトアニアへの調査旅行に連れて行った下の息子も、行く前はまったくまっさらの状態でしたが、旅のテーマを理解して、そのあたりの歴史へのアンテナが立つようになりました。

昨年夏には、引率の補佐で香港研修に行きましたが、いつかそう遠くないうちに、家族以外の人や学生さんとのスタディ・ツアーができればなあ、なんて思っています。

その予行演習になるかもしれない(?)ポーランド行きもとうとう出発が明日に迫りました。

今回は、国際理解を研究テーマに大学院で学ぶ現役高校教諭の親友との20数年ぶりの二人旅です!
一人旅とも、子連れ旅とも違う発見や体験ができると思います☆ どきどき…

 

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by chekosan | 2018-02-03 15:32 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
気楽に読める本から始まった2018年。
授業終盤&原稿などこなしつつ、いい感じで途切れず読めました。
2月は1週間ポーランドに行きますが、それ以外はひたすらインプットな日々を送りたいです!

1月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:3862
ナイス数:363

Soliste[ソリスト]おとな女子ヨーロッパひとり歩きSoliste[ソリスト]おとな女子ヨーロッパひとり歩き感想
前作は大人の女性ひとり旅を後押ししてくれる準備中心の本。実用的かつお洒落で、月イチの書評連載にも取り上げた。https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=200932 本作はワイナリー巡りやオペラ鑑賞、地方の小さなまち訪問、プチホテルに泊まる旅など、テーマのある旅の体験談中心。ユーモアがあって粋な文章なので、関心がない分野、あまり興味のない行先でも楽しく読める。前作を書くきっかけとなった女性との出会いや、著者自身の写真を撮影された方との思い出などジンとする話も。
読了日:01月01日 著者:寺田 和代


おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典感想
なぜこんな体をしているのだろう、どうしてこんな生態なのだろうと思うような「いきもの」たちを楽しい文章とイラストで紹介する本。このお正月、小学5年生の息子が祖父母からお年玉にもらい、2人で争うように一気読み。1つの項目を読むたびに、「へえええええ~!!」と騒ぎ、家族に向かって「○○ってこうなんやって!」と内容を解説し、「読んだら!? 面白いで!!」と押しつけている。「関西ウーマン」の書評連載でも取り上げた。読了日:01月01日


みんなの道徳解体新書 (ちくまプリマー新書)みんなの道徳解体新書 (ちくまプリマー新書)感想
中高生向け新書のせいか、マッツァリーノ節はやや抑え気味な気もするが、なかなか刺激的で面白い。モラルが崩壊しているとか日本人に道徳心がなくなったとか若者が凶悪化したとか、巷に溢れる言説がいかに根拠なく発せられているかを資料や論理にもとづき、痛快に、辛辣に批判する。道徳の副読本の「名作」解説の章は吹き出す箇所多数。最終章、道徳教育はどうあるべきかという結論は簡潔で明快。おすすめ。1月4日のブログにもう少し詳しく記録
読了日:01月03日 著者:パオロ マッツァリーノ


おもしろい! 進化のふしぎ 続ざんねんないきもの事典おもしろい! 進化のふしぎ 続ざんねんないきもの事典感想
まずイラストがかわいい。姿そのものは擬人化しているわけではないが、いきものたちがひとことつぶやいていて、それがマンガチックでユーモラス。そして解説文がこれまた面白い。タイトルどおり「あああ、ざんねん」というような特性もあれば、「すっごーーーい!」と感心するような特性もあるが、いずれも「いきもの」たちへの愛が根底にある。そして最後の一文は、いかにも子どもが喜びそうな「オチ」。詳しくは月イチ連載の書評で!
読了日:01月03日



なつかしさの心理学: 思い出と感情 (心理学叢書)なつかしさの心理学: 思い出と感情 (心理学叢書)感想
どれくらい時間が経つと人や社会は、前の時代を懐かしんだり美化したりするのだろう。ノスタルジーには法則があるのだろうかなど、歴史的、政治的な面からの関心があって、心理学系の入門書である本書も手に取ってみた。とても平易にわかりやすく書かれているので、個人への実験、消費者行動との関連、臨床への応用などをこれから学びたい人には良いのでは。読了日:01月09日



生は彼方に (ハヤカワepi文庫)生は彼方に (ハヤカワepi文庫)感想
演習で学生と読んだ。「1ページで、うわぁダメかもと思った」という感想が女子たちから。それもわかる。若くして詩人として頭角を現しながらも、女性との関係をうまく築けないで思い悩む「自尊心は高いが自信がない」少年の生々しくて痛々しい「恥辱にまみれた」話だから。私は主人公の母の妻として女性として母として悩み揺れる、そのリアルさに感心。チェコスロヴァキアの歴史に関心のある人にはそちらと絡めて読める分、より面白いかと思う。詳細は1月11日のブログに記録。読了日:01月11日 著者:ミラン クンデラ



正しいコピペのすすめ――模倣、創造、著作権と私たち (岩波ジュニア新書)正しいコピペのすすめ――模倣、創造、著作権と私たち (岩波ジュニア新書)感想
とてもわかりやすい。非常に勉強になった。身近で具体的な事例を挙げて著作権について解説。教員も授業や研究以外の場面ではもっと厳密、敏感にならねば。ところで、著者が新人記者時代に、お手本になる記事をスクラップしたサンプル帳を持って歩いたというエピソードがものすごく面白い。文章修行のはじめは、やはりまずは型を真似ることなのだなと。記者に採用されるような人でもそうなのだから、文章作成の経験が少ない学生にいきなり書け!は無理。お手本を分析し、真似てみる。それをたくさん反復するのがいいな、うん。読了日:01月11日 著者:宮武 久佳


メダリオン (東欧の想像力)メダリオン (東欧の想像力)感想
ナチス犯罪調査委員会の一員として市民の声を聴き集めた、最初期のホロコースト文学、ナチス犯罪文学。所収の8編はいずれも短いが事実は小説よりの言葉どおり。特に一編目、解剖学研究所の実態は強烈。以下、家畜用車両での移送、列車から脱出し負傷して線路脇で弱っていく女性、収容所でのサディスティックな行為など。訳者解説には、その後の研究成果なども紙幅を割いて記述。一編目で言及される人間の脂肪から作った石鹸の真偽についても言及。詳しくは1月15日のブログに記録。読了日:01月14日 著者:ゾフィア ナウコフスカ


否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い (ハーパーBOOKS)否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い (ハーパーBOOKS)感想
映画を観てからの原作。本文543ページとたっぷりだが非常に面白い。イギリスの裁判の進め方、被告側の徹底したリサーチなど勉強になった。ホロコーストをめぐる実際にあった裁判の回想録だが、まるで小説のよう。原作の方が裁判での争点をよく理解できるが、映画は映画でイギリスの法廷の様子が絵でわかるので、併せて見ると良いかも。別の人によるあとがきに要確認事項あり。詳しくは1月21日のブログに記録。読了日:01月21日 著者:デボラ・E リップシュタット


夫婦の中のよそもの夫婦の中のよそもの感想
学生に教えてもらった本。彼はクストリッツァが映画監督ということは知らずに読んだらしい。私は逆に、映画を観ていなければ、好きな題材ではなかったかも。でもクストリッツァの監督した「オン・ザ・ミルキー・ロード」を観たあとなので、映像が見えるようで、楽しく読めた。「オン・ザ・ミルキー・ロード」の原案となった短編も入っている。独立した短編2編と、連作短編4編からなるが、全体として少年が成長していく話という感じか。社会主義期のボスニア・ヘルツェゴビナの普通の人々のごちゃごちゃした暮らしぶりに触れられて面白かった。読了日:01月24日 著者:エミール・クストリッツァ



ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)
読了日:01月24日 著者:アゴタ クリストフ
輪読ゼミでみんなで読むのに再読。

第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)
読了日:01月24日 著者:アゴタ・クリストフ







ええ、政治ですが、それが何か?――自分のアタマで考える政治学入門ええ、政治ですが、それが何か?――自分のアタマで考える政治学入門感想
とても面白かった。政治学の授業では、言葉を尽くして他者と対話せよと学生に言っているので、おおいに賛同。詳細は1月27日のブログに記録。ところで「政治学やってますというと、政治家になるんですかと訊かれる」というのは聞く話だけど、私は言われたためしがない。ジェンダーよね。あ、親戚から一回だけ言われたか。あと初対面の人に日本の政治についてどう思いますか!?と聞かれて困惑したことがある。そんな大問題を大雑把に繰り出して返答を迫るのも乱暴な気がする。読了日:01月27日 著者:岡田憲治



社会をちょっと変えてみた――ふつうの人が政治を動かした七つの物語社会をちょっと変えてみた――ふつうの人が政治を動かした七つの物語感想
議員や官僚や大金持ちなどではない、市井の人、当事者が地道な活動を続けて、制度改革、法律改正を達成した事例の紹介。「ふつうの人」「政治を動かす」という文句には、政治とは政治家が行うものという前提が見えて引っかかる。しかも「ふつう」という範疇は超えているように思うが、彼らのように、明確に解決したい切実な課題がある人ならばテキストのように使えるかも。議員や自治体や官僚組織はどのように政策、法律、予算を決めるのかを知ることもできる。ただ文章が妙に軽く個人ブログのよう。活動家の見た目についての言及も違和感あり。読了日:01月28日 著者:駒崎 弘樹,秋山 訓子


ぼくはこうして生き残った!7 ナチスとの戦い (ぼくはこうして生き残った! 7)ぼくはこうして生き残った!7 ナチスとの戦い (ぼくはこうして生き残った! 7)感想
小5息子が図書室にこんなんあったで!と借りてきてくれた。優秀なアシスタント君だこと。このシリーズは小学校でも人気らしい。この巻はポーランドのユダヤ人の兄妹がパルチザンと生き延びる話。30分くらいで読める。巻末に解説と年表あり。小5男児はなぜか年表を音読して、イスラエルとパレスチナのことを訊いてきたので、こういう児童書は歴史に関心を持つきっかけになるのだなあと感心した次第。
読了日:01月31日 著者:ローレン,ターシス


読書メーター

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by chekosan | 2018-02-01 14:29 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
帯の文句は、

「身近に転がる不都合(バグ)を自分で解決していく、それが草の根ロビイング。
 選挙でもデモでもない、社会の変え方おしえます!」

著者名は駒崎弘樹さんが先に来ていますが、執筆の量からすれば秋山訓子さん(朝日新聞編集委員)が、7人の「ふつうの人」への取材をまとめたⅠ部が大半を占めます。

最終章では、駒崎さんがロビイングのノウハウを書いています。

サブタイトルの「ふつうの人」が「政治を動かす」という文句には、そもそも政治とは政治家が行うものという前提が見えて、その点は引っかかりますが、議員や官僚や大金持ちなどではない、市井の人、当事者が地道な活動を続けて、制度改革、法律改正を達成した事例の紹介です。

保育園の待機児童問題に取りくむ曽山恵理子さん、性的マイノリティをめぐる問題を政策課題に押し上げた明智カイトさん、災害時の外国人支援や小児がんの患者とその家族のための病院をつくり、東日本の震災後に復興庁参与となった田村太郎さん、障害者の介助支援やバリアフリーの活動を展開する中西正司さん、風営法改正を実現した和田礼さん、病児保育・小規模認可保育所を公的な施策で実現した駒崎弘樹さん、NPO法をつくった松原明さん。

どの人も「ふつう」という範疇は遥かに超えた能力、実行力、行動力、熱意を持つ人びとに思えます。
情報収集、コミュニケーション、行動、発信、粘り強さ、緻密さを併せ持つ人びとです。

そんなに難しいことではないでしょう? これでみなさんもできるでしょう! …というには、ここに出ている事例はハードルが高いと思いますが、明確に解決したい切実な課題がある人ならば、実際に「テキスト」のように使えるかもしれません。

国会対策委員会に出入りして法律制定までもってくなんて無理!という人でも、ここくらいなら私にもできるかもというヒントを得られるでしょう。

あるいは議員や自治体や官僚組織はどのように政策を決めて、法律をつくって、予算を決めるのかということを知ることができます。

政局とかスキャンダルばかりが報道されて、議員や役人が何をしているのか、実際のところはなかなか伝わってきません。そうした代表者の本来の仕事ぶりを垣間見ることのできる本でもあります。


ただ、親しみやすくするためか文章が妙に軽く、一文ごとに改行する個人ブログ的な体裁だったり、女性と性的マイノリティの活動家に関して見た目の雰囲気について言及していたりするのはちょっと違和感がありました。

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by chekosan | 2018-01-28 17:38 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
大変面白く読みました。興味深い、という意味でもありますし、ブフッと吹き出すような例えや表現満載という意味でもです。

感覚が薄れないうちに書き留めておきます。きちんとまとめていません。とりあえず推敲せずに書き連ねておきます。

◇◇◇

サブタイトルが示すとおり、自分のアタマで考え、あくまで「言葉」で人にそれを伝えることがなにより大事なのだということを繰り返し説く、政治学の入門書です。

「政治学って難しそう」「堅苦しそう」「政治って何かよくわからない」「政治は政治家がするもの」「私たちには関係ない」「関わりがない」というような、漠然としたイメージや、忌避感、拒否感、嫌悪感、他人事的な感覚を本書は覆し、払拭してくれます。

著者は「政治」を次のように定義しています。

「こう決めた」と心の中ではなく、他者に向かって言う、表現することを「政治」と呼ぶ。

もうすこし固めに言うと、

「この世の解釈をめぐる選択を、あくまで言葉を通じて不特定複数の他者に示すこと」

もちろん、その濃淡や方法は多様であり得ます。

行動に移す人(移せる人)、支援する人、寄り添う人など、それぞれの状況に応じて可能な範囲でできることをすれば良いのです。

「何もしないこと」「選択をしない」ことも実は「しないという選択をしている」=最悪を避けるための行動を選択できたのにしていないことになるのだという指摘はそのとおりだと思います。

「現実」は実体があるものではなく、解釈である、という説明には強くうなずきました。

「現実的でない」「現実を見なくちゃ」という説得や諦念は、実は、たくさんある事実や、ほかの解釈を見ずに、あるいは無視しているだけかもしれないのです。

誰かが「現実はこうなのだ」ということにしたいイメージが「現実」とされてしまうことに大きな危惧を抱きます。


本書では、わかりやすい事例をたくさん挙げていますが、なかでも福島の原発事故に関する説明が多いです。これに関しては、はじめのうちの、ちょっとおふざけっぽい例示とは違い、切実で、真に迫っていて迫力があります。

中間部には、ソクラテス、プラトンから始まる政治学史もあります。この部分もとてもわかりやすい記述で、かつ、本書全体の意図に沿った切り口で書かれています。

◇◇◇

今年度、「政治学」の授業を久々に担当しました。特にテキストは指定せずに、具体的事例を題材として、自分で考えたあとに他者と対話をする形の授業をしてきました。

そのような形態をとることで学生に伝えたかったことと本書の主張や説明は相当重なっていました。

今年度の受講生にはもう授業の場では直接紹介できませんが、政治とはなにか、私たちには何ができるかを考えるうえでのおすすめの一冊です。





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by chekosan | 2018-01-27 23:21 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
先日観に行った映画「否定と肯定」の原作本を読みました。

面白い。とても読み応えがあって面白いので、読みふけらないように自制しながら読みました。

副題「ホロコーストの真実をめぐる闘い」が示すように、アウシュヴィッツのガス室に象徴されるナチスドイツによるユダヤ人絶滅政策をめぐる実際にあった裁判の話です。


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ホロコーストがヒトラーの命令によって組織的に行われたことを否定するイギリスの歴史家アーヴィングを著書で批判した著者リップシュタットは、その歴史家から名誉毀損で訴えられます。

イギリスでは、訴えられた側が、名誉毀損の事実がないことを立証しなくてはいけません。

そこで、被告であるリップシュタットは、有能弁護団や専門家たちと綿密な調査を重ね、原告アーヴィングが歴史的資料を歪曲して引用していることを証明していきます。

映画も、裁判の様子やリップシュタットと弁護団のヒューマンドラマをわかりやすく描いたと思いますが、原作の方は、イギリスの裁判の進め方や法廷での具体的な争点をていねいに追っていて、それがとにかく面白いです。

裁判開始までに、関連のある資料を開示するよう双方が請求し、それらを元に何年にもわたってリサーチを積み重ねるのですが、開示資料には手紙や日記まで含まれているのです。そうしたプライベートな記録も、請求があれば提出しないといけないのです。

弁護団は、アーヴィングの著作の記述と、彼が出典として示した資料を徹底的に照らし合わせていきます。その一つ一つの立証場面が実に細かくて感心します。

裁判記録や、リップシュタットが詳細につけていた日記をもとに、彼女の心情も隠さず盛り込んで書かれているので、歴史もの・裁判ものでありながら、小説のように読むこともできます。

一部事実関係を確認したい記述があったので、全面的におすすめかは保留ですが、論争的な史実に関していいかげんなことを言ってはいけない、ましてや自説を通すために歪曲したり不適切な抜粋をしたりしてはいけないということを知ることができる本だと思います。






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by chekosan | 2018-01-21 23:14 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
「ナチス・ドイツ占領下のポーランドにおける、ユダヤ系も含むポーランド市民の経験をめぐる証言文学」(訳者解説より)

ナウコフスカは両大戦間期からポーランドの文壇で活躍し、戦後はナチス犯罪調査委員会の一員として市民の声を聴き集めた。それらの一部を証言を主体に編んだのが本書。

本書は最初期のホロコースト文学、ナチス犯罪文学の一つに数えられる。ポーランドでは社会主義期においても学校などで積極的に読み継がれてきたという。

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収められているのは8編。いずれも短いが、事実は小説よりの言葉どおりのエピソードが続く。

特に一編目は強烈である。いまだたくさんの死体が残されたままの解剖学研究所の検分の様子から始まり、その遺体の保存の仕方や、そこで行われていた解剖学実験の実態がさらりと語られる。

以下、家畜用の貨物車両にすし詰めにされての移送、列車から脱出したものの負傷して線路脇でただただ弱っていく女性の話、収容所でのサディスティックな行為の数々など。

こうしたエピソードは、さまざまな自伝や証言集、小説などに頻繁に登場する。誇張でも、もちろん創作でもないことがあらためて確認できる。

訳者解説には、その後、明らかになったことなどもかなりの紙幅を割いて記述している。そのなかで、もっとも強烈な一編目で言及される、人間の脂肪から作った石鹸の話についての調査結果(2006年)も紹介されている。

それによれば、たしかに同解剖学研究所では、石鹸作りを含め人体を使ったさまざまな実験を行なってはいたが、そのために人を殺したり、そこで作られた石鹸が製品として市中に流通したりといった事実はないとのこと。

しかしインターネット上では、いまだ、当時ドイツでは人間の脂肪から作られた石鹸が大量生産品として出回っていたという言説が見つかるという。







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by chekosan | 2018-01-15 10:38 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)