中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan
関西大学博物館で開催中の「博物館実習展」を見てきました。


b0066960_22171463.jpg


授業とランチの約束の間のほんの短い時間しかとれず、頑張って企画運営した学生さんたちには申し訳なかったのですが、でも、企画全体も、個別の展示も、面白かったですよ! アンケートも頑張って書き書きしました!

学芸員をめざす学生さんたちが運営されているとのことでしたが、ポスター、説明、年表など、とてもよくできていると思いました。そのまま通用する出来のものも多かったと思います。

それに、なにしろ展示物がですね、いいんですよ。関大図書館蔵の古い書物であるとか、どこかから借り受けたものだとか、ちゃんとした本物ばかりで。

さすが関大、学内でこれだけのものがあれば、いい展示できるよなあ、関大生、恵まれているよなあと思いました。


「HAKO―20世紀以降における文房具としてのハコ―」
 筆箱や文箱の変遷をたどる展示。懐かしのセルロイドとかデニム地のものとか、昭和以降のものは個人蔵が多くて、学生さんたちが親御さんとかに声をかけて集めたのかしらとか想像しながら見ました。このチームは年表がとても上手でした。


「食いだおれ―近世から現代へ―」
まず、ポスターがすごくいい! 目を引きますね。ほかのチームも上手だと思います。古い文書から、現在売っている食いだおれ太郎グッズまで、変化に富んだ展示物でした。


「畏れの姿―江戸時代の人々の視点」
展示されている妖怪たちが滑稽でかわいい。妖怪セレクトがナイスでした! お気に入り妖怪の総選挙コーナーもあって、愉快な展示になっていました。


「茨木の潜伏キリシタン~ザビエル像発見のエピソード~」
茨城にも潜伏キリシタンが! 他よりも硬派なテーマに取り組まれていました。大黒さんだったかの背中に斜め十字が彫ってある像もあって、おおおお!と静かに感動しました。



どのチームも、とても面白い着眼点で、よい展示をされているのに、時間がなくて、ゆっくり解説を読めなかったのが残念でした…
   

あとで関大Facebookを見たら、「足を運んだ際には、担当学生が丁寧な解説をしてくれますので、ぜひ彼らに声をかけてみてください。展示だけでは伝えきれない展示秘話なども聞けるかもしれません。」との案内がありました。ますます残念。


でも時間があっても、お客さんからはなかなか声をかけないと思いますよ。せっかくなので、担当者からお客さんに積極的に声をかけたらいいんじゃないかなあ。反応が聞けると思いますよ。

予想以上に良かったので、次回は時間をたっぷりとって拝見しますね~。がんばれ、未来の学芸員たち!
                             
開催期間は16日(金)まで。開館時間は10:00~16:00。入館料、事前申込ともに不要。



b0066960_22261726.jpg


[PR]
# by chekosan | 2018-11-13 22:28 | 博物館、資料館 | Trackback | Comments(0)


「関西ウーマン」に毎月連載している「信子先生のおすすめの一冊」、今月の書評が公開されました。

今月は、岡田斗司夫さんの『「世界征服」は可能か?』


あっという間に読めるけど、テキスト解釈、思考実験の面白さ、フィクションをネタに現実世界を考察する面白さに満ちた一冊です!

青少年向け新書ですが、昔懐かしいアニメやマンガが素材になっているので、大人の方がより楽しめるかもしれません。

アニメやヒーローものに登場する「悪の秘密結社」。彼らがもくろむのは世界征服。最後はヒーローによって倒されるのがお約束ですが、なぜ悪者たちは面倒くさい「世界征服」などたくらむのか。その高い科学力を使って、自分たちだけで楽しく豊かな生活を送ればよいではないか。そもそも「世界征服」ってなに? 世界を征服したあとはどうするの?

続きはこちら↓
https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=201426




b0066960_21365850.png




[PR]
# by chekosan | 2018-11-10 21:43 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
次々とアメリカの問題をえぐりだす話題作を生み出しているマイケル・ムーア監督。アメリカ中間選挙に当てて公開したという作品「華氏119」を見に行ってきました。

すでにいろいろな映画評が内容を紹介しているので詳細は省きますが、この作品に関しては予告編と本編がちょっと違うように感じました。本編は、より真面目に、深い洞察や追及の意思をもって編まれていると思いました。

ドナルド・トランプという誰もが予想しなかった人物がアメリカという世界の大国の大統領に選ばれたのは、アメリカの大統領選挙の独特な制度も大きく影響しています。

が、なによりも、有権者の半分近くが棄権したという事実がより深刻な原因であったとムーア監督はとらえています。
なぜ1億もの人が棄権したのか。その事態を招いた責任は民の声を聴こうとしない民主党にもありました。

市民が政治に関与する意思を失えば民主主義は成り立ちません。共和党、民主党の政治家たちの言動に絶望を感じるような場面も次々展開されます。

しかし、そのような事態を打破しようとする草の根民主主義の動きも出てきました。まったく無名の女性たちや選挙権もない高校生たちが、社会や政治を変えようと声を上げ始めたのです。そういうところにアメリカの底力を感じます。

とはいえ、映画は決して楽観的には終わっていません。失望しているだけではだめ、希望をもっているだけでもだめ、動かないと、と背中を押される映画です。


b0066960_00275161.jpg

[PR]
# by chekosan | 2018-11-10 00:40 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
なぜか10月が終わってました。10月、何してた? 10月、あった?という感じ。

18日に「あ、喉がマズいかも…」と自覚があったけど翌日頑張って授業したら、その翌日から悪化。週末休めば大丈夫だろうと思いきや、なぜか3日目に38.7℃まで上昇。結局、丸一週間、休む羽目に。寝たり起きたりしながら、オンラインで月末からの図書館総合展(横浜)の準備を進めて、無事、学生たちと3日間のスタディツアーを完遂した次第。

そんな10月は、ギュンター・グラスとダークツーリズム特集的なラインナップでした。

10月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:2494
ナイス数:294

ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅 (幻冬舎新書)ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅 (幻冬舎新書)感想
悲しみの記憶を巡る旅=ダークツーリズムの考え方や意義、実際のまわり方、発見を紀行の形で紹介。『ダークツーリズム拡張』が海外版で、こちらは国内版。ダークツーリズムという視点でさまざまな場所を巡ることで近代の構造が見えること、考察の対象を理解するのに距離感や空間の大きさを知ることが重要だが日本ではそうした直観的な研究手法が顧みられてこなかったこと、土地の人(当事者)ではないからこそ見えるものもあり媒介となる可能性もあるという大枠には同意。しかし、細部の記述や個々の事例の説明の中には首をひねるものもあった。
読了日:10月05日 著者:井出 明


音楽名曲絵画館 ブルーアイランド氏のピアノ名曲の旅 絵と文 青島広志音楽名曲絵画館 ブルーアイランド氏のピアノ名曲の旅 絵と文 青島広志感想
ブルーアイランドこと青島広志さんのイラストたっぷりピアノ名曲図鑑です。ピアノやってる(やってた)人はもちろん、そうでない人にも。 青島さんの文章はユーモアがあるので肩肘張らずに名曲に親しめます。でも、やはりなんといっても生のステージはもっとおすすめ♪とにかく楽しいです! 詳しくは、月一回掲載していただいている書評コーナー@関西ウーマンに。https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=201411

読了日:10月06日 著者:青島 広志


未来をはじめる: 「人と一緒にいること」の政治学未来をはじめる: 「人と一緒にいること」の政治学感想
政治思想・政治哲学者による女子中高生に向けた講義。時事的な話もあるが、メインは、政治とは人が「人と一緒にいること」に伴うあれこれについてどう決めていくか、どう解決するかを考えることである、それをみんなで考えてみようという話。白黒つけられないこと、絶対的な正解はないことを常に考え続けることはしんどいことである。だからこそ若いうちから思考し他者と対話する訓練を重ねる必要がある。ということを感じさせてくれる本。
読了日:10月10日 著者:宇野 重規



ギュンター・グラス 「渦中」の文学者 (集英社新書)ギュンター・グラス 「渦中」の文学者 (集英社新書)感想
グラスのことは以前から社会的活動や政治的発言等を報道で目にして知った気になっていた。2006年に一時期SS隊員だったと告白したときはショックも受けた。15年に亡くなったときも。のわりには著作を読んでないし「ブリキの太鼓」の映画さえ観ていなかった。今回、本書の著者の講演会に行くことになったので予習。本書はグラスの経歴や生き方と作品解説をまとめた評伝。とても読みやすくて、ほぼ一気読み。また知った気になってしまった(笑) 行動する文学者。今度こそ作品を読む!明日の講演会までに一作読めるかな!?
読了日:10月12日 著者:依岡 隆児


玉ねぎの皮をむきながら玉ねぎの皮をむきながら感想
代表作『ブリキの太鼓』を書くまでの前半生をつづった自伝的作品。玉ねぎの皮を一枚一枚剥いていくように、少年時代から1959年ごろまでを想起していく。かつての自分を「彼」という三人称で語ったり、「私」という一人称で語ったり。浮遊霊のように昔の自分のまわりをふわふわとまわりながら思い出そうとしているような部分もあれば、若かりし自分と今の自分が一体化して生々しい感覚を思い出しているような部分もあり。印象的な部分をブログにメモ。https://chekosan.exblog.jp/28749013/
読了日:10月21日 著者:ギュンター グラス


ブリキの太鼓 1 (集英社文庫 ク 2-2)ブリキの太鼓 1 (集英社文庫 ク 2-2)感想
グラスの評伝(『ギュンター・グラス 「渦中」の文学者』)や、グラス自身が『ブリキの太鼓』を書くまでの前半生をつづった『玉ねぎの皮をむきながら』を先に読んでいたので、本作にグラスの実体験がかなり反映されていることを確認できた。それも影響してか、主人公の設定の特異さよりも、1920年代から38年「水晶の夜」を迎えるまでのダンツィヒの町が不穏さを増していく様子が背景的にうっすらと描かれているところの方が面白く感じた。第一部はまだ本格的に話が進んでいない感じか。二部、三部も読むべく発注中。
読了日:10月22日 著者:ギュンター・グラス


ロボット (岩波文庫)ロボット (岩波文庫)感想
読んだ気になってたシリーズ。大雑把に進んでいくなあ〜というのが一番の感想。ところどころ皮肉や風刺が入りかけるけど、あまり掘り下げずに流されて、あっという間に結末に至った感じ。実際に芝居にしたら、もっと迫ってくるものがあるのだろうか。私が詩や戯曲をじっくり味わえないタチなだけかもしれない。とりあえずチャペックは『園芸家十二ヶ月』みたいな方が好き。
読了日:10月24日 著者:カレル・チャペック


ダークツーリズム拡張 ─近代の再構築ダークツーリズム拡張 ─近代の再構築感想
本書は一般向け紀行書ということもあり、一ヶ所一ヶ所に関しては、まさに見てきた記的な、ざっとした記述になっている。それでも一人でこれだけ世界各地、日本各地を巡るということ自体に驚嘆する。こうして各地をまわることで、比較、参照の対象が増え、見えてくることも増えるのだろう。
読了日:10月27日 著者:井出明




「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)感想
今月の書評の本、何にしよう~と悶えてたら、夫氏が「これ明日の授業で話そうと思っててんけど」と勧めてくれた。これを授業でどのように?と聞いたら、プラトンの『国家』と被る論理が展開されているとのこと。ほぉ? 読み始めるとたしかに面白くて一気読み。アニメの悪者たちの世界征服って何を目的にしてるの?という素朴な疑問から始まり、征服の形態や支配者の類型の試み、征服後はどうするかなど思考実験が面白おかしく進む。パックスアメリカーナというならこうでなきゃと論駁する部分も興味深い。結論は情報化社会と自由主義経済への挑戦。
読了日:10月28日 著者:岡田 斗司夫


チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)感想
読んだ気になってたシリーズ。少女時分、図書館の児童書コーナーで古い挿絵の版を目にしていて、てっきり搾取する資本家の工場に少年が忍び込んで悪を暴く話だと思っていたら、ぜんっぜん違った。まあどっか南方?から小人族を種族丸ごと連れてきて、主食と安全と引き換えに監禁のうえ労働させ、新製品の人体実験に供するなどという設定は搾取する資本家そのもので、ある意味外れてなくもないか。で、主人公一家、飢えをしのげるようになるのはよいが、工場敷地内で外界との接触を断って、創業者の意のまま甘いものにまみれて生きていくのだろうか。
読了日:10月29日 著者:ロアルド・ダール

読書メーター

[PR]
# by chekosan | 2018-11-04 23:39 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
ノーベル文学賞作家ギュンター・グラスが代表作『ブリキの太鼓』を書くまでの前半生をつづった自伝的作品です。

タイトルどおり、玉ねぎの皮を一枚一枚剥いていくように、少年時代から1959年ごろまでを想起していきます。

かつての自分を「彼」という三人称で語ったり、「私」という一人称で語ったり。
浮遊霊のように昔の自分のまわりをふわふわとまわりながら思い出そうとしているような部分もあれば、
若かりし自分と今の自分が一体化して生々しい感覚を思い出しているような部分もあり、
いやしかしそれは本当にそのときのことだったのか、あとからの記憶とが混じっているのかも、、、とまた錯綜し、曖昧になったり。

わかりづらいとか、ごまかしていると受け取られる可能性のあるスタイルになっているのですが、本人による本人の過去の「想起」とは、本来そういうものなのだろうと思います。

「のちに、この経験をこの作品のここに盛り込んだ」というような記述がかなりたくさんちりばめられているので、グラスの作品をより深く研究するには欠かせない本であろうと思います。

以下、現代史を知る資料として読んで、印象に残った部分をまとまりなくメモ。


b0066960_13121928.jpg

【母とブック・クラブ】
グラスは自分でも「マザコン」と書いているように、母の影響を受け、母を敬愛し、母のかわいい坊やであったことを意識してきた。

母の小さな商店を切り盛りする手腕に関するエピソードも面白いが、49頁「ブック・クラブの会員でもあった」とあるのに注目。
これはどうやら定期的に本が届けられるシステムのことで、「開戦後は新しい本は届かなくなり、本が増えなくなった」が、2部屋しかない小さなフラットの本棚には、ドストエフスキー『悪霊』はじめ、東西の文学作品が並んでいたよう。

幼いグラスは、母の蔵書を次々読みふけって、父からは「本を読んでも腹はふくれないぞ」と言われるのだが、母はグラスが読みふけっているのを見るのが好きだったという。

対して、父に関する評はちょっと冷ため。決して悪い父親ではないように思うのだが。グラスが料理好き、もてなし好きになったのも、本人は捕虜収容所での経験を大きく取り上げているが、お父さんが料理好きだったことが影響しているのではないかなあ。

【捕虜収容所における文化活動】
183頁あたり。グラスは少年兵として出陣し、負傷、米軍に捉えられて終戦を迎える。捕虜収容所では、「課題ごとに徹底的に研究するグループやサークル」が組織され、「時間割を決めて」知識を育んでいったという。コースには、古代ギリシャ語、ラテン語、エスペラント語、代数学、高等数学から、簿記のような実学、聖書学、仏教入門講座もあり、合奏団や合唱団も組織された。

グラスはここで現物を使わない料理コースに参加する。食べ物はなし、講義のみの初心者向けコースということだが、豚一頭まるまる利用する方法を教わるなど本格的であったらしい。グラスは熱心に話を聞いて、なけなしの紙にメモを取って、のちのちその教えを守って料理に励んだのだそう。


【米軍によるホロコーストに関する教育】
205頁あたり。捕虜収容所では、アメリカ人教育将校による矯正教育が行われた。しかし彼の「努力は無駄だった」「私たち、もちろん私自身もだが、彼が見せる白黒写真を信じようとはしなかったからである」。

「それはベルゲン・ベルゼンやラーヴェンスブリュックの強制収容所の写真だった… 私は死体の山や、焼却炉を見た。飢えている人々、餓死した人々、骸骨になるほどやせた別世界から来たような生存者を見たが、信じることはできなかった。私たちの言う言葉は同じだった、「それで、これをドイツ人がやったって言うのかい?」「絶対、それはドイツ人のしわざじゃない」「ドイツ人はそんなことはしないよ」」

「私が少しずつ理解し、自分が知らないあいだに、もっと厳密には、何も知ろうとせずに、犯罪へ加担したことをおずおずと認め始めるまでには、時間がかかった。その犯罪とは年とともに小さくなるものではなく、時効になろうともせず、相変わらず私を苦しめている」

【故郷の喪失】
グラスはダンツィヒの出身。自由都市ダンツィヒは戦後、ポーランド領グダニスクとなる。グラスは、ダンツィヒを追放された親類たちと戦後しばらくして連絡をとることができるようになり、両親や妹とも再会を果たす。

「あちこちに散在している親戚の葉書には、破壊された故郷ダンツィヒのことや」「彼らが耐え抜いてきた苦難の数々について書かれていた。」「また自分たちが知るはずもない「犯罪と称されること」についても書かれていたが、そこからは「だけどポーランド人たちが我々にしたあらゆる不正は、何ひとつとがめられていないのではないか……」という言葉が読み取れた。」

「我々追従された者はどこに行っても歓迎されずつらい目にあっています。私たちも同じドイツ人だというのに、ここにいる人々と同様に……」


【ペルジール証明書】
デュッセルドルフを本拠地にしたヘンケル社で製造されたペルジールという名の洗剤から、「ペルジール証明書」という言葉ができた。それを使えば褐色(=ナチス)の汚れが付いたたくさんのチョッキがまっ白に洗浄でき、その後は役職も地位もクリーンな男に納まることができるというのだ。」319頁。

【オットー・パンコークとロマ人たち】
327頁あたり。「彼は私にとって長いあいだ…模範となりつづけた」「余った賞金でロマとシンティの民族のための財団を設立したとき、隔年で与える財団の賞をオットー・パンコークにちなんで名づけることにしたのは、私にはごく自然なことだった」

「彼はナチスの時代、作品の制作と展示が禁じられていた。」

【ハンス・ヴェルナー・リヒターとの出会い】
432頁。グラスを文学者の集い「四七年グループ」に誘い、文壇デビューのきっかけをつくった。

【パウル・ツェラン】
450頁あたり。ツェランはユダヤ系。両親は収容所で亡くなる。グラスとパリで交流。「私は何度か、パウル・ツェランがそこからは逃れられないと思っていたあの回転から、彼を誘い出すことに成功した」。しかしのちにツェランは過去の記憶に苦しんで自殺。


解説より
【SS隊員であった告白を受けて】
455頁から
ヴァイツゼッカー(元ドイツ連邦共和国大統領)「…彼の文学の力と彼が野蛮な戦争の後にドイツ=ポーランド関係でもたらした際立った功績は、何も変わらない!」

クリスタ・ヴォルフ(旧東独作家)「今も昔もグラスは私の同僚、他の同僚たちのために戦ってきた」「あのドイツ再統一の騒動のとき、私をたったひとりで弁護してくれたことに感謝している」

【「ゆっくり」のススメ】
460頁。1999年に「学ぶ教師」という外国人問題をテーマとする講演をした。そこで彼は異文化を背景にした人々から学ぶことを説き、総合学科の教科として「ゆっくり」やることの学習を推奨している。慌ただしい時代、あえて自分の内面と向かい合うこと、読書によって孤独に浸ることの重要さを説いている。




[PR]
# by chekosan | 2018-10-21 14:18 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
同志社で担当している「特殊講義」。今まで法学部の科目だとばかり思っていたら、どの学部でも履修できるのだと初めて知った3年目。そして実際、今年は文学部哲学科からも数名受講!学際科目だ!(?)

昨年度の講義科目受講生や春の講義科目受講生も数名受講しています。これって、とっても嬉しい☆(´∀`*) 

結果、初年度2人、2年目5人、そして今年は10人と、倍々ゲームで、とうとう二桁です(笑) 

今年は、科目のサブタイトルを「文学で学ぶ東欧・ドイツ・ロシア」と題しました。ずっとアシスタントをしてくれている院生君、科目名を見て、「どんどん範囲が広がっている! どこまでいくんだろう!」と思ったそうです。

形式上、科目の設置の条件としてサブタイトルを変える必要があったということもあるのですが、こうして範囲をゆるくしておくと読む本の選択肢が広がるからいいかなと思ったのです。( ̄▽ ̄) 

ということで、今年は過去2年、あまり読めていなかったロシアものからスタートしました。

しかし、あえて日本人作家の作品。米原万里さんの『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』『オリガ・モリソヴナの反語法』です。

いずれも米原さん自身の少女時代の経験をベースに書かれています。チェコやロシアを舞台としたノンフィクションとフィクションです。


b0066960_19420033.jpg

関連本なども読み直して予習するの図。右にあるお菓子は米原さんの『旅行者の朝食』に出てくるハルヴァ。昨年、リトアニアで見つけ、今年はエストニアで見つけました。エストニアで買ったノートにメモをとっていきました。このノート、ロシア語練習帳のようなページが入っていて、この本のノートにぴったりです。

※『旅行者の朝食』は関西ウーマンの書評コーナーで取り上げました。




『嘘つきアーニャ』は以前に読んでいたと思ったのですが、第1部を読み始めて、あれ??

もしかしたらNHKのドキュメンタリーで見ただけだったかも? 

おませな少女の下ネタ満載で、授業で使って大丈夫だったかと苦笑。でも、もちろんそれで終わりではなくて、社会主義期のプラハの学校に集った4人の少女たちの学校生活を通して、社会情勢、国際情勢を鮮やかに描き出しています。

米原さんと3人の友人たちは長く音信不通になっていたのですが、30数年ぶりにNHKの企画で再会を果たします。

番組の方では会えた良かったで終わるのですが、『嘘つきアーニャ』の方では、過去のエピソードに加え、再会に至るまでの調査の過程や、そこでわかってきた友人たちの人生、それに対する米原さんの思いが詳しく語られます。



b0066960_19293637.jpg


『オリガ・モリソヴナの反語法』はフィクションの小説です。少女時代にプラハのソビエト学校に通っていた日本人の主人公が、ソ連の崩壊、情報公開を機に、異彩を放っていた女性教師たちの謎を解いていくという話です。

フィクションですが、歴史的事実を巧みに織り込んだリアル感たっぷりの話になっています。

主人公が謎解きをする今の時点(1992年のモスクワ)、主人公たちがプラハのソビエト学校に通っていた1960年代、女性教師たちの過去(1930年代から50年代)と、3つの時代を行き来する構成で、主人公の回想もあれば証言者の話、手記による説明などを行ったり来たりするので、一読ではわかりづらいところもあります。

そこで、『オリガ・モリソヴナの反語法』年表を手分けして作りました! 

歴史的事実と、作品中の登場人物たちの動きとをピックアップしていくと、A3で2枚分になりました。
私も最後の3章をやってみましたが、これはなかなか面白い作業でした。

細部の修正や補足などをして、クラスのみんなの共有財産にしようと思います。

で、『オリガ』、文庫本で500ページほどあるのですが、みんな一気に読めたようです。

謎解きも面白いけど、歴史とからめたリアルな描写がとても面白かったという感想や、

日本人作家の目と体験を通して書かれた作品であることで、かえって理解や親しみを深められたように思うという感想、

ヨーロッパが舞台だけど宗教がからんでこないのは日本人でソビエト学校に通っていた米原さんだからこそではないかという感想(なるほど!)、

歴史を知るということは、政治家や戦争の名前を覚えるということではなく、個人の物語を見つめることが重要なのだということをあらためて感じたという感想、

何度も読むべき本だと思った、人間の一生ってすごい、人が生きるために必要なことってなんだろう、、、

などなど、それぞれいろいろと考えてくれたようです。

まだ緊張感がみなぎっていて、わーわーしゃべって盛り上がるというのではないのですが、全員が同じ作品をじっくり(しかし一気に)読んでくるというのがなにより貴重な経験だと思っています。

全員が同じ読み方、感じ方をする必要はないと思っています。誰かが取り上げた箇所に、そうそう、そこ面白いよねと思ったり、そんなとこあったっけと思ったり。

そういう時間をゆるゆる共有することで、じんわりとなにかが効いてくると思っています。


次の共通テキストは、『オリガ』における重要テーマからのつながりで、ソルジェニーツィン『イワン・デニーソヴィチの一日』です。

でもその前にインターバルで、次回は持ち寄り企画。旅行の報告や本や映画の紹介など、全員になにがしか発表してもらいます! とっても楽しみです!






[PR]
# by chekosan | 2018-10-18 21:05 | ロシア・東欧に関する授業@同志社 | Trackback | Comments(0)
2か月近く経とうとしているのに、なんだかちっとも進まないバルト3国紀行シリーズです。

リトアニアは昨年夏に来たので、そのとき見逃したところを中心に回りました。

宿からすぐそこのヴィリニュス大学。旧市街の中心にあります。いくつもの建物が連なっていて、中庭で繋がっています。中に教会もあり、その塔の上からは絶景が楽しめます。

b0066960_19251504.jpg


b0066960_19254004.jpg



b0066960_19255990.jpg


街を一望できるということは、それだけ高いということで、、、登りはエレベーターを使って、一気にぐううーんと上がったのですが、それがけっこう怖かったので、下りは階段でゆっくり降りようと思ったら、甘かった。

木製で下が見える階段はもう恐ろしいわ、一段が高いので足にくるわ… その日はもう足がガックガクでした。(^-^;


b0066960_19494898.jpg

大学構内は夏休み中のため、見学客しかいませんでした。


b0066960_19512581.jpg


b0066960_19522105.jpg

b0066960_19524825.jpg

これが大学のキャンパス内… 夢のようですよねえ…

本屋さんに入って本をどどんと買って、振り返ったらこの内装!!


b0066960_19505889.jpg

b0066960_19542551.jpg


大学構内に小さい画廊もありました。

b0066960_19571949.jpg

ヴィリニュスの風景画の版画を一枚買いました。額装しようと思います。


b0066960_19594563.jpg


大学のなかには古い図書館などもあるのですが、本も買ったので、構内はこれくらいにとどめて。


お昼ごはんを食べるところを探しがてら歩いていたら、大統領府に。

独立100年のオブジェがありました! 記念日はもうだいぶ前に終わっているので何もないかなと思っていたら♪


b0066960_20021190.jpg


つづく



[PR]
# by chekosan | 2018-10-17 20:06 | リトアニア | Trackback | Comments(0)
「ブリキの太鼓」で世界に名をとどろかせ、ノーベル文学賞を受賞したドイツの作家、ギュンター・グラス。

以前から社会的活動や政治的発言等を報道で目にして、知った気になっていました。2006年に一時期SS隊員だったと告白したときはショックを受け、2015年に亡くなったときも。長く気になる存在でした。

今回、そのグラスの研究者、依岡隆児先生の講演会が大阪で開催されると知り、友人と行ってきました。

会場は大阪、谷町六丁目の駅を上がってすぐの隆祥館書店さん。面積は小さいながら、特色あるお店づくりをされていて、何度もメディアで取り上げられているところと知りました。作家のお話を直に聞くトークイベントも200回以上開催されているとのことです。

あらかじめ予約・振り込みをしておいて、当日、依岡先生の著作をお店で受け取るという流れ。お店の前には看板が。



b0066960_09302770.jpg

入り口を入ると(というか入る前からというか)、どんと正面に棚がそびえていて、そのラインナップを見ると、こちらのお店のこだわりや主張が一見してわかります。

右手には、これまでのトークイベントに登壇された方々の著書コーナーも。特色ある棚づくりをされているなあと拝見しました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

イベント参加料はゲストの依岡先生の著書代も含んでいたので、図書館で借りた本で予習。当日、新品の本に速攻で付箋を貼り替えました。^^



b0066960_09395691.jpg


本書はグラスの経歴や生き方と作品解説をまとめた評伝。とても読みやすくて、ほぼ一気読み。また知った気になってしまいました(笑)

講演会では、この評伝をベースに、先生が撮影された写真やグラス秘話なども披露されました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この企画、第二部は「まちライブラリー」(まちかどやお店などに設けた図書コーナーや私設の図書室など本を介した交流スペース)を提唱されている礒井純充さんと依岡先生のトーク、第三部は会場の参加者も交えてお気に入りの本を紹介し合うというものだったのですが、第二部以降は時間が押せ押せで…

依岡先生は四国で「まちライブラリー」や読書会を開かれているとのことだったので、その話も聞ける!と、とても楽しみにして行ったので、その点はかなり残念でした。(-_-)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


第三部でのフェイバリットブックス紹介タイムに備えて、私が用意していたのはこちら。これらを全部抱えて持っていったわけではありませんが。

ドイツの作家グードルン・パウゼヴァングの作品。


b0066960_09572588.jpg


イベントでは、グラスは難しくて読みにくい、長い、面白くない(!)といった感想も出ていましたが(私の意見ではありません)、それでいくとパウゼヴァングはわかりやすくて読みやすく、短く、面白いです。彼女は小学校教諭を務めながら、児童文学の研究で博士号を取得した人。子どもにも読めて、しかし深い衝撃を受ける作品を生み出しています。

ナチスドイツ政権下のドイツの村や町の「普通の」人々の様子を淡々と描いたもの、ドイツで原発事故が起こったという設定のフィクション、核戦争後の世界を描いたものなど、グラスの代表作とテーマが重なります。

見てみると、グラスが1927年、パウゼヴァングが1928年生まれ。同世代です。戦争終結時、17歳くらい。ぎりぎり未成年なので、戦争に責任があるとはみなされないが、まったく何も知らなかった、完全に関係がなかったというわけではない世代です。

生まれ育った場所も、グラスはダンツィヒ(当時は自由都市、のちにポーランド領グダニスク)、パウゼヴァングはドイツ領ボヘミア東部の町(戦後はチェコスロヴァキア領)で、2人とも戦後、故郷を喪失しています。

グラスは政治活動にも積極的に関わり、パウゼヴァングは小説を通じて戦争や核の問題を訴えたという違いがありますし、作品のスタイルや文体もずいぶん違うのですが、昨日のイベントで紹介するにはぴったりだったかなと思います。パウゼヴァング、いいのにあまり知られていないから、積極的に紹介すべきだったかな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

グラスの作品は、同志社の特殊講義で読みたい気もしたのですが、絶版だったり高価だったりで、ちょっと難しいかもしれません。ほかの同世代の作家を取り上げて、そのときに一緒に紹介するというのもいいかも。昨日のイベントでもちょっと名前が出ていた、ハンス・ペーター・リヒターあたりはどうかなと考え中です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ところで、グラスは「長くてわかりづらくて面白くない」という発言を聞いたときは思わずのけぞってしまったのですが… 

今回に限らず、読み方や読む目的が違うと楽しみ方や捉え方は違うのかなと思うことはあります。

私は、著名な作品でも、歴史の証言というか資史料的な感覚でとらえているところがあって、「あ、ここでもイラクサが出てきた」とか「ペチカの裏で寝るってなに!?」(東欧~ロシアあたりの作品によく出てくる)といった超細部が気になって調べたりするのが楽しいのです。そういう細部に関して輪読の授業で語ってしまって、「へ?」みたいな反応が出ることもありますが。

でも、そのような細部にこだわって調べてみて、その小ネタ披露をしてみようという回を設けたときに面白がってくれた学生たちは作品全体も楽しめていました。そして、小ネタ披露でない回でも、よく読みとり、よく語れていたなあということを思い出したりしたのでした。


まとまりなくつらつら書き連ねてしまいました。グラスの作品の感想はまた別途…(いつか多分)













[PR]
# by chekosan | 2018-10-15 11:14 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)

芸術鑑賞の頻度が下がっていて淀んできた感…


美しいものを観たい!禁断症状が出てきたので、無理やり時間をねじ開けて会期終了間近のプラド美術館展に行ってきました。

会場は兵庫県立美術館です。

兵庫県立美術館は面白いテーマ、楽しい演出で人気なのですが、その分、たいへん混みます。今回は混むのを避けて行きましたが、それでもそこそこ人で埋まっていました。



b0066960_08422234.jpg



お楽しみの撮影スポットはあっさりした感じ。いつもくすっと笑える工夫があるのですが、今回はただの看板。ちょっとアレ?という始まり。



b0066960_08441790.jpg


会場へ至る大階段の演出も真面目。今までの企画展では、怪物が飛び回っていたりとわくわくさせてくれたのですが…




b0066960_08455211.jpg


会場内は、作品保護のためでしょうか、かなり照明が暗く、ライトが当たっているところとそうでないところの明暗の差が大きくて、ちょっと具合が悪くなりました… ;;

音声ガイド(有料)を使ったので、これはという作品はパネルの説明を必死で読まなくてもよかったのは救い。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スペイン王家のコレクションなので大作(サイズの点でも)揃いだったのですが、メインのベラスケスはやはり一味違うなということがわかる解説でした。

これ↓なんかは、王様の肖像画ですが、意外と質素な服装。そのわけは…とか、


b0066960_08494781.jpg



宮廷で雇われていた人たち(小人症の人とか…)の肖像画の解説もなるほどと感心(会場内撮影禁止なので写真はなし)。ベラスケスの絵はその人物の自然な表情をとらえているとありました。たしかに、王家の人であっても、あまり美化しないですよね、ベラスケスって。そんなに顎突き出して描いていいの…?とか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


宗教をモチーフとした絵画が、時代によって世俗的になるというか親しみやすくなったことを示したコーナーも興味深かったです。マリアの夫ヨセフが後の時代になると「善き父」の象徴と化していくとか。

ルーベンスの聖家族像など、ふつうの庶民の幸せな一家という感じ。好感が持てます。



b0066960_08565756.jpg


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

美術展のお楽しみミュージアムグッズは、バリエーションはたくさんあったのですが、ノート一冊でもびっくりするほど高くて… 今回は収穫なしでした。(-_-)


兵庫県立にしては、遊び・工夫・オリジナリティが少ないかなという感じでしたが、やはり現物を間近に見れて、解説によって時代背景を知ることができ、勉強になりました。







[PR]
# by chekosan | 2018-10-15 09:16 | 美術 | Trackback | Comments(0)

今月の書評@関西ウーマン、公開されました。
https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=201411

ブルーアイランドこと青島広志さんのイラストたっぷりピアノ名曲図鑑です!

ピアノやってる(やってた)人はもちろん、そうでない人にも!

青島さんの文章はユーモアがあるので肩肘張らずに名曲に親しめます。

でも、やはりなんといっても生のステージはもっとおすすめ♪
とにかく楽しいです♪


b0066960_13540755.png


[PR]
# by chekosan | 2018-10-13 13:56 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)