ベトナムからの技能実習生の女性3人が、酷い扱いをする職場を抜け出し、ブローカーを頼って、漁村に逃げます。
前職場がパスポートや在留カードを取り上げて保管していたため、彼女たちは不法滞在者となってしまいます。
宿泊費はいらないとはいえ、住居には見えないような建物(水産工場の一部?)で寝起きし、慣れない仕事に従事することになりましたが、故郷に仕送りをするため、働き続けなくてはいけません。
それでも3人一緒なので、夢を語ったり、雪に喜んだりと、日常に小さな楽しみを見出して乗り切ろうとします。
ところが、ある日、女性の一人が体調を崩します。保険証も取り上げられているので病院にかかることができません。一体どうしたらよいのか…彼女の決断は…?
公式HPよりお借りしました
と、あらすじだけだと、なんだか重くて辛そうな映画ですが(実際そうなのですが)、3人の実習生の様子がとても自然で、映像もきれいで、映画として、とても整っているなと思いました。
実習生役の3人は、監督がベトナムでオーディションをして発掘されたそうで、厳密な脚本はなしで、できるだけ俳優たちに自然に動いてもらったそうです。納得です。
それにしても、こんな扱いでも日本に来る人がいるのはなぜだろうという疑問がわきます。参加者のなかからもそのような質問がありました。
映画のあと、同作品の脚本・監督をされた藤元明緒さんによる解説、文化人類学者でベトナム研究者である比留間洋一先生による講座がありました。
お話を聞いて、日本では低賃金でもベトナム国内で得られる収入よりは断然稼げること、故郷の家族の仕送りへの期待とプレッシャーが非常に強いこと、ベトナムの派遣機関や日本の受け入れ側やブローカーらには不当な扱いをするところもあるが、そうした実態は知らされていないことといった実情を知ることができました。
映画の3人のように公的な証明書類を取り上げられて酷使され、そこから逃れようとすると不法滞在になってしまい、発覚すれば拘留され強制送還されてしまうなどという状況は是正されるべきです。改善策のひとつとして、お2人がおっしゃっていたのは、実習生側に職場を変更する自由を保証することでした。
もちろんきちんとした待遇で受け入れている企業や農家もあるのですが、技能実習生を受け入れている=あくどいと思われる、恥ずかしくて言えないとおっしゃる人もあるそうです。なんということでしょう…
◇映画と解説、講義、質疑応答で4時間あまりという長丁場で、少々眼球や頭が疲れましたが、たいへん勉強になりました。実り多い時間でした。
今回の作品の制作チームがサポーターを募られています。