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by chekosan
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藤井克徳『わたしで最後にして ナチスの障害者虐殺と優生思想』(合同出版、2018年)

この数か月、お出かけや映画鑑賞の記録で手一杯で、読書記録は読書メーターの月間まとめのみになっていました。

でも、読書メーターは、要点だけになってしまうんですよね(コメント欄を使って長々と書くこともできますが)。

だけど、逆に、255字にまとめるために、結構な時間をかけていることも多い… ( ̄▽ ̄;)

それなら、粗くてもブログに時間を置かずにあれこれ書いておくと、のちのち「過去の自分よ、ありがとう!」となるので、やっぱりできるだけ書いておく方が賢いかな~

ということで、藤井克徳『わたしで最後にして ナチスの障害者虐殺と優生思想』(合同出版 2018年)の記録です。

図書館の児童書のコーナーで別の本を探していて、たまたま見つけたのですが、「呼ばれていたのかな」と思いました。

注釈もていねいで、言葉づかいもやわらかく、わかりやすく書かれているので、児童から読めると思いますが、内容は濃いです。

以下は、自分のための備忘録というかインデックス程度なので、ざっとした抜粋では、この本の良さは全然伝わらないと思います。

本文はもっと具体的で心に訴えてきます。ぜひ本そのものをたくさんの人に読んでほしいです。


藤井克徳『わたしで最後にして ナチスの障害者虐殺と優生思想』(合同出版、2018年)_b0066960_11460437.jpg


前半は、ナチが行った障害者虐殺(「安楽死」」)計画=T4作戦について。

20万人以上ともいわれる障害者や、治る見込みがないと診断された精神病者などが、ホロコーストに先立って殺害されています。

ユダヤ人虐殺(ホロコースト)に比して、あまり知られていなかったのは、遺族らがまとまって追及や賠償を訴える動きが少ないためです。

親族に障害者がいたということを公にしたくないという「内なる差別」が、多大な犠牲を広く知らしめることを妨げてきたそうです。

著者の藤井克徳さんは、弱視から全盲になった方です。養護学校教諭をしながら、共同作業所設置や、人権擁護の活動に尽力されてきました。

T4作戦に関するNHKのドキュメンタリー番組制作にも深く関わってこられた方です。

著者の経歴や活動については、あとがきの部分にまとめられていますが、そちらがまた、たいへん印象的でした。

本の後半は、障害者虐殺の理論的、精神的な支えとなった優生思想(第3章)と、それに対峙する障害者権利条約(第4章)についてです。

優生思想とは、人間のなかには、優れたものと、劣ったものがあり、劣った部類の人は増やさないようにすべきだという考えです。

一見、科学的な研究に基づいているように見えた優生思想は、20世紀初頭、世界的なブームを起こします。

そして、「人種」や民族の単位で優劣を付け、優秀な民族ばかりの国にしていくという政策へと「発展」しました。

その最たるものがナチの障害者の大量虐殺ですが、アメリカやスウェーデン、日本でも、優生思想に基づく人権蹂躙は行われていました。

それも、つい数十年前までです。

第4章は、現在、障害者の権利をどのような考えのもと、どう保障しているのかを紹介しています。

日本も、国連加盟国のなかではずいぶん遅かったものの、国連の障害者権利条約を批准しました(2013年1月)。

このとき、形式的に批准するだけではなく、障害当事者を過半数含む委員会で国内法や制度を見直して整備し、国会の全会一致で批准承認を採択したことを著者は評価しています。

本書の終盤(第6章)には、私たちにできることが、①知ること、②わかること、③伝えること、④動くことの順で書かれています。

①の知ることでは、歴史を知ること、いまを知ること、関連する領域を知ることを説いています。

わかることの段階では、①の歴史、いま、関連領域の事実を一つずつていねいに掘り下げることとともに、複数の事実を突き合わせて共通点を探ることの大切さを説いています。

そして、わかるためには、1)ディスカッション、2)書き留めること、を勧めています。

③伝えることは、精査と整理を伴う効果的な過程です。伝えるときには、相手に受け止めてもらえるような工夫が必要です。

④動くことについては、次のような効用を書かれています。まず、かけがえのない人物や得難い事実と出会えること。二つ目に、動くことで自身が試され、確信につながること、そして三つ目に、動くことで変化がもたらされることです。

この6章は、障害者のことだけでなく、人や社会を知り、理解し、共存していくうえで大事なことが書かれています。学ぶというのはこういうことなのですよ、とまとめていると言ってもいいと思います。

5章までの事実の部分もさることながら、この6章は心に響きました。それでブログに単独で記録したような次第です。

関連記事: 本書にも出てくるオットー・ヴァイト氏の伝記の読書記録。ヴァイト氏は、第二次世界大戦下のベルリンで、ナチが抹殺の標的にした盲人やろう者やユダヤ人を、自身の経営するブラシ工場に雇用し、隠れ家に匿い、何度も窮地から救った人物です。




上の本をおすすめしたブックレビュー@関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊。













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by chekosan | 2022-09-20 11:46 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)