6月のことになりますが、有志の学生たちと、京都府宇治市のウトロ平和祈念館を訪ねました。今年4月に開館したばかりの新しいミュージアムです。
この地区は、戦争中、飛行場建設のために集められた朝鮮人労働者たちが、計画中断後も暮らし続けた場所です。1987年まで上下水道が引かれないなど、悪環境のもとで、あからさまな差別に遭ってきました。さらには、土地転売に伴って住民が立ち退きを迫られるという事態になりました。
国内外からの支援を得て、立ち退き問題は解決に至ります。この危機を乗り越えた人々の歩んできた歴史を語り継ぎ、交流の拠点となる場として新たにつくられたのが、同祈念館です。
ウトロ地区については、
以前に柳原銀行記念資料館に行ったときに少し学んで、いつかぜひ現地に行きたいと思っていたので、ミュージアムがオープンするのを心待ちにしていました。記憶と継承について関心を持つ学生たちと訪ねることのできる日が来て嬉しいです。
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野外には、飛行場建設のための飯場(宿舎)の建物を移築してあります。
飯場の炊事場の流し台は、開館に備えて倉庫に保管されていましたが、ヘイトクライムによる放火に見舞われ、焼け焦げたものをあえて使ってあります。
祈念館の2-3階は展示室、1階には交流スペースが設けられ、お茶をしながら図書を見たり、語り合ったりできるようにされています。
展示室は撮影不可なので、じっくりと見学して、その場で理解、記憶できるよう努めました。(主な展示物が掲載された図録が販売されています)
どういう経緯で、この地域に人が住むようになり、その後、どのような生活が営まれたのか、どうやって難局を乗り越えていったのか、パネルや現物等で解説してあります。コンパクトなミュージアムですが、よくわかる展示でした。
当地に住んでおられた女性の等身大パネルとお部屋の再現コーナーが、愛嬌のある、人の生活や人生を感じられる空間になっていたのもいいなあと思いました。
展示を見学したあと、スタッフの方に屋上から周囲の位置関係を説明していただき、現状や今後の再開発計画等についても、少しお話を聞くことができました。
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あいにく、大粒の雨が降ってきたので、1階に降りて、交流スペースでコーヒーをいただきながらクールダウン。ものすごく蒸し暑い日だったので、コーヒーがとてもおいしかった!
開館直前に起こった、7軒が全半焼するというヘイトクライムによる放火の現場も教えていただいたので、みんなで歩いていきました。
現場には火災の跡がそのまま残っており、絶句しました。
こうした過ちが繰り返されないよう、同館が、正しい知識と認識を得て、生身の人々の暮らしを感じとれる場となっていくことを強く願います。
アクセスしやすいところですし、また見学の機会を設けたいと思います。