こちらは、90分と、いまどきの映画にしては、やや短め。実際の時間の経過と同じように進んでいきます。
いや、これ、あまり話題になっていなかったけど、面白かった!
生まれてくる子どもの名前を「アドルフ」にするという宣言に、集まった家族が喧々諤々、という映画紹介をちらっと見ていたので、ヒトラーとナチの過去をどうとらえるかという話かと思ったら!
いや、ヒトラーとナチの過去を今も禁忌としているドイツ、というのもテーマではあるのですが、その話はどちらかというととっかかりで、それを発端に、家族、友人のあいだの秘めたる思いや、前々から引っ掛かっていたことが露わになっていくという展開。
お互い深い愛情や友情をもっているのは確かなのですが、実はこう思っていた、ここが気に食わない、誰々ってこういうとこ嫌だよね、などと、あああ、もうそのへんで!! と見ている方はハラハラもの。
なんか役の設定と俳優の年齢が合っていなくて不自然な気もちょっとしましたが、それを吹き飛ばす演技。自然だけど、コミカルで。
笑えて、ちょっと泣けて、大人が楽しめる映画、と思いました。
あ、若い人にはわからない、というわけではないです。こどもだましじゃない、人生について実感をもって考えさせてくれる、という点で、です。
でも、ドイツの文学者や映画のタイトルなんかが頻繁に出てきて、それが会話のポイントになっているので、そこがわからない(知らない)と、面白みが減じるかな、というのはありそうです。
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これ、もとは舞台劇だったそうで、映画もそんな感じでつくってあります。
冒頭とラスト以外は、すべて、大学教授と国語教諭夫婦の家のなかだけで進みます。
場面転換がほとんどなくても、ちゃんと成り立っていて、見せる、脚本の良さ。
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そして、舞台となるお家が、これまたとっても素敵。蔦の絡まる、歴史のありそうな邸宅。
リビング、ダイニング、キッチン、それぞれが広い。おしゃれ。快適そう。
グランドピアノが奥の方にちょこっと置いているように見えるんです。
キッチンなんて、パントリー?みたいなところと、コンロなんかが置いているところと、二か所に分かれているし。
インテリ夫婦という設定なので、本もたくさんあって、レコードプレーヤーなんかがあったりする。レコードです、円盤の。
それでも、高卒の弟は、劣等生だったのに、商売はうまくいって、義兄の3倍は稼いでいて、それを義兄(大学教授)が密かに妬んでいる、という設定。
いやもう充分やーん、こんな家住めてるなら!! 羨ましくて悶えました。
人口密度の違いによる不動産価格の差、住居に対する感覚や価値観、そしてセンスの違いを見せつけられました。
映画とはいえ、ああ羨ましい、ああ素敵。
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いや、それにしても、大がかりなロケやセットを組んでの映画もいいですが、こういう、セリフだけで構成されるお芝居もいいですね~!
そういえば、秋にまた、劇団青年団のお芝居をとっていたのでした。楽しみです。
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会話劇の映画といえば、これも良かったです。こちらは、パリ爆破作戦をめぐる丁々発止という深刻な話です。