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by chekosan
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社会正義をラップで叫ぶアフガニスタン難民の少女 ~映画「ソニータ」(2015年)

UNHCRの難民映画祭、4本目の作品は、「ソニータ」にしました。

アフガニスタンからイランに逃れてきた少女が、親が進めようとする結婚を拒否し、両国では女性には許されていない音楽活動で自分の道を切り拓いていこうとするドキュメンタリー映画です。


社会正義をラップで叫ぶアフガニスタン難民の少女 ~映画「ソニータ」(2015年)_b0066960_18132706.jpg



ソニータは、たいへん才能のある少女です。作品のなかで流れるミュージックビデオでは、児童婚を強制される少女たちの心の叫びに圧倒されます。原語はわからないのですが、字幕を通してでも、その魂が迫ってくるようです。

雑誌を切り抜いてコラージュしてノートに貼り付けて、自分の夢を表現するシーンが何度か出てくるのですが、言語やリズム感だけでなく、絵画的なセンスにも恵まれているのだなと感じます。

非常に芯の強い女性ですが、タリバンから逃れるさいに負った心の傷は深く、演劇療法で、その場面を再現するとたまらず涙したりもします。

彼女はイランへは不法に入国したため、なんの証明書も持っていません。そのため、正規の学校には通えず、NPOの保護施設で学びながら、清掃のアルバイトをしています。出生証明書やパスポートなどもないので、なにか行動を起こすにも相当な困難が伴います。

ロクサレ・ガエム・マガミ監督は、大変才能がある少女がいると、いとこから紹介されてソニータと出会い、3年かけて密着取材して編集しているうち、あるがままの状況を撮影するだけでなく、強制的に結婚させられないで済むよう介入すべきではないかと迷い始めます。監督が葛藤する場面は、本作のなかでも、もっとも印象的な場面のひとつです。


以下、少しネタバレありです。

社会正義をラップで叫ぶアフガニスタン難民の少女 ~映画「ソニータ」(2015年)_b0066960_18164900.jpg


ソニータの場合は、たしかに、特に秀でた才能がありますが、彼女自身が、男兄弟のみを優遇する家族制度に納得せず、女性は売り物ではなく、自分で自分の道を選ぶべきだという強い意志を持ち続け、決してあきらめなかったことが、苦境を脱する一番の武器になりました。

支える大人の助けがあったのも事実ですが、本人がくじけたり、勇気を出せなかったりすれば、周囲からの助けも得られなかったと思います。そして、彼女は母親に連れられてアフガニスタンに戻って結婚させられていたでしょう。

本人が断固として、いいなりにならない、自分の夢を叶えるという意志を貫こうとしたからこそ、道は開けたのでしょう。

それにしても、これはという才能を認めたら、言葉を知らない他国の子どもであっても伸ばそうとするアメリカは、チャンスの国、チャレンジの国ですね。

ソニータは、日本に向けてのメッセージで、自分は幸運だったが、ほかにもソニータはたくさんいる、「いい映画だった」で終わらず、行動してほしいと呼びかけています。





直接たくさんの「ソニータ」たちに会うことはできなくても、彼女たちが自分の意思で生きていけるよう、わたしも支援していきたいと思います。


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監督のインタビュー


それにしても、オンライン上映はありがたいですし、裾野を広げるにはたいへん良いと思います。東京でほんの2-3日開催しても、行けませんもん!

と思っていたら、やはりこれまで層としては薄かった若者世代が関心を示しているようです。

わたくしは、若者ではありませんが、この機会を存分に享受しております!(笑) 来年以降もぜひオンライン上映してほしいです!



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by chekosan | 2020-08-22 18:50 | 本、書評、映画、映像 | Trackback | Comments(0)