ドイツに併合されたオーストリアで、ヒトラーへの忠誠を誓うことを拒否し続けたことで反逆者として捕らえられた農夫とその妻の苦難と愛と正義の物語、映画「名もなき生涯」を観ました。実話にもとづく映画です。
長い…
長かった…
3時間の映画です。
これだけの長さが必要なのだろうか。編集し損ねたんじゃあないか?とさえ思いながら、がんばって観ました。
が、もしかしたら、この長さは、主人公とその妻や母が過ごした苦難と忍耐の時間を、見る側に体感させるためなのかもしれません。
本作は評論家には評判が良いようなのですが、いくつかの点で、うーん…でした。
まず、撮り方と編集の仕方に、落ち着きがない、とでも言いましょうか。意味がわからないシーンがパッと出てきて、ブツっと終わる、の繰り返しが多いのです。ホームビデオで撮ったような場面も多くて、ちょっとしんどくなります。
主人公の人物像の描き方もいま一つ。パンフレットの解説を読んで、この人物の生涯には、もっと膨らませるべきエピソードがあったと知りました。
セリフは英語なのですが、軍隊や刑務所、法廷での命令口調のときだけはドイツ語なのも気になりました。支配ー被支配、命令と沈黙、抑圧と不服従の象徴としてドイツ語が使われるのです。
そして、ドイツ語のときだけ字幕が出ません。そうすると、主人公がわからない言葉でまくしたてられているという表現なのかなと解釈してしまいそうですよね。
でも、オーストリア人もドイツ語を使うので、主人公がドイツ語をわからないわけがないのです。となると、果たして適切な演出なのだろうか?
しかも、主人公と妻の語り(手紙の文言の朗読)が、ドイツ語になるところがあります。威圧と抑圧の言葉として使われていたドイツ語が、そこでいきなり愛の言葉になるわけです。そこにも字幕は出ません。どういう意図があるのでしょう。
そうした「?」が多くて、残念ながら感動の涙には至りませんでした。
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でも、オーストリアの高地の自然や、農村の生活は、絵としてとてもとても美しく、見ごたえがありました。
農村における村落共同体のありよう、当時の農村と都会の違いも描かれています。
また、拘置所での政治犯の扱いがわかったのも収穫でした(時代考証が確かであるとしたら)。
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最後に引用される、ジョージ・エリオットの言葉が、この映画の言いたかったことを端的に表していました。紹介は控えますが、良い言葉でした。この言葉を知っただけでも、価値があったと思いました。