旧東ドイツの著名な作家、クリスタ・ヴォルフの『残るものは何か』(恒文社 1997年)を読んでいて、そういえば2016年夏のベルリン旅行の記録をロクに残していないことを思い出しました。
そのシュタージ論文、なぜかいまだにコンスタントにアクセスしていただいています。全編、オール日本語なんですけど、なぜか外国からもアクセスやダウンロードがあります。なぜ? 一体誰が? ありがとうございます。
さて、クリスタ・ヴォルフの『残るものは何か』は、秘密警察に監視されている女性作家の一日を書いた短い作品です。
はじめは何がテーマなのかがわからないぼんやりした感じ。そのあとも、劇的な何かが起こるわけではなく、むしろ淡々と内面をつづっていると言えるような話です。
作品そのものは、さらっと読んでしまえばあっという間に終わるのですが、語り手である作家の一日の動きをベルリンの地図で追ったり、注釈なく出てくる固有名詞を確認したりしながら読むと、がぜん臨場感が増します。
さらに、本編と同量かそれ以上あるかもしれない解説をていねいに読むと、社会主義期の東ドイツの文学界、知識人の動向についての理解が深まります。
『残るものは何か』の主人公の作家は、ベルリンのフリードリヒ通りからヴァイデンダム橋を渡ります。
訪問時は意識していなかったのですが、しっかり写真を撮っていました。
向こうの方にテレビ塔が見えます。
アレクサンダー広場も、ある人の思い出話のなかに、ちろっと出てきます。
登場順は逆ですが、ヴァイデンダム橋を渡ったあと、主人公は「涙のトーチカ」と呼ばれているガラスのパビリオンの横を通ります。
これは、「涙の宮殿」のことと思われます。かつては、東西ベルリンの出入を管理する場所でした。
今は、東西ドイツに分かれていたころの記憶をとどめる場所として、無料の博物館になっています。
外観は撮り忘れてましたが、模型は熱心に撮っていました。手前が、現在、博物館になっている建物です。
上から見た図。
東←→西の人の流れを、赤と白の人形で表しています。(どっちがどっちか忘れてしまいました。)
断面図。
細かい。
東西ドイツを行き来した人たちのトランクや思い出の品が展示されています。
これは西側の親せきからの小包を再現したものだったか。
検問所を再現した部屋もあります。
このとき9歳だった下の息子、カウンターに届きません。
いい写真が撮れていなくて、全体像がうまく伝えられませんが、東西に分断されてしまったベルリンを象徴する、別れと再会の場所であったことをわかりやすく展示してありました。おすすめです。
久々のベルリン旅行記でした。