人気ブログランキング | 話題のタグを見る

中・東欧、ロシア、大学教育、美術展、映画鑑賞などなど


by chekosan
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」

旧東ドイツの著名な作家、クリスタ・ヴォルフの『残るものは何か』(恒文社 1997年)を読んでいて、そういえば2016年夏のベルリン旅行の記録をロクに残していないことを思い出しました。

このときは、いわゆる秘密警察(シュタージ)の拘置所跡シュタージの公文書書庫が非常に印象的だったため、帰国後すぐに、それにしぼった論文を書くことに集中したため、旅の記録はほとんど書いていなかったのでした。

そのシュタージ論文、なぜかいまだにコンスタントにアクセスしていただいています。全編、オール日本語なんですけど、なぜか外国からもアクセスやダウンロードがあります。なぜ? 一体誰が? ありがとうございます。





さて、クリスタ・ヴォルフの『残るものは何か』は、秘密警察に監視されている女性作家の一日を書いた短い作品です。

はじめは何がテーマなのかがわからないぼんやりした感じ。そのあとも、劇的な何かが起こるわけではなく、むしろ淡々と内面をつづっていると言えるような話です。

作品そのものは、さらっと読んでしまえばあっという間に終わるのですが、語り手である作家の一日の動きをベルリンの地図で追ったり、注釈なく出てくる固有名詞を確認したりしながら読むと、がぜん臨場感が増します。

さらに、本編と同量かそれ以上あるかもしれない解説をていねいに読むと、社会主義期の東ドイツの文学界、知識人の動向についての理解が深まります。

『残るものは何か』の主人公の作家は、ベルリンのフリードリヒ通りからヴァイデンダム橋を渡ります。

訪問時は意識していなかったのですが、しっかり写真を撮っていました。


クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_21253139.jpg

向こうの方にテレビ塔が見えます。


クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_21275019.jpg


アレクサンダー広場も、ある人の思い出話のなかに、ちろっと出てきます。


クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_20543472.jpg


クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_20545337.jpg


登場順は逆ですが、ヴァイデンダム橋を渡ったあと、主人公は「涙のトーチカ」と呼ばれているガラスのパビリオンの横を通ります。

これは、「涙の宮殿」のことと思われます。かつては、東西ベルリンの出入を管理する場所でした。


今は、東西ドイツに分かれていたころの記憶をとどめる場所として、無料の博物館になっています。

外観は撮り忘れてましたが、模型は熱心に撮っていました。手前が、現在、博物館になっている建物です。





クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_20595188.jpg
上から見た図。

クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_21084576.jpg

東←→西の人の流れを、赤と白の人形で表しています。(どっちがどっちか忘れてしまいました。)


クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_21100508.jpg


断面図。

クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_21002584.jpg
細かい。

クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_21013864.jpg


東西ドイツを行き来した人たちのトランクや思い出の品が展示されています。


クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_21033051.jpg


クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_21054191.jpg


これは西側の親せきからの小包を再現したものだったか。


クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_21072308.jpg

検問所を再現した部屋もあります。


クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_21115072.jpg


このとき9歳だった下の息子、カウンターに届きません。




クリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』とアレクサンダー広場とヴァイデンダム橋と「涙の宮殿」_b0066960_21081308.jpg


いい写真が撮れていなくて、全体像がうまく伝えられませんが、東西に分断されてしまったベルリンを象徴する、別れと再会の場所であったことをわかりやすく展示してありました。おすすめです。


久々のベルリン旅行記でした。







名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by chekosan | 2019-10-22 21:35 | 東ドイツ | Trackback | Comments(0)