第二次世界大戦中にドイツが略奪した美術品を救い出すアメリカの特別部隊「モニュメンツ・メン」の活躍を、実話にもとづき、コメディタッチの演出で描く、エンターテインメント系映画「ミケランジェロ・プロジェクト」を観ました。
本作は、それらに比べると、映画としての出来はちょっと劣りますが、エンタメとしては面白く観れますし、なにより、こういう史実があったことを知るきっかけとして、ここから事実はどうなのかもっと詳しく知るきっかけとして、意味のある作品だと思います。
ジョージ・クルーニー、かっこいいし(笑) 角度によっては、スターリンに見えて仕方ないのですが。(;^ω^)
そのジョージ・クルーニーが、監督、脚本、製作、出演までしています。「モニュメンツ・メン」を発足させ、指揮をとり、自らも最前線で美術品捜索と奪還にあたった大学教授役です。
ほかの部隊員も、学芸員や彫刻家など、美術の専門家ばかりで、軍隊経験もほぼなさそうな人々です。一応、新兵対象の基礎訓練は受けますが、とうてい戦闘は無理そう。
この映画を観るまでは、モニュメンツ・メンたちは、調査員的な活動をしたのだとばかり思っていました。この映画でいうと、フランスの美術館の女性職員クレールさんのような。
ところが、まともに最前線に行くのですね!
まずは、どこに略奪品があるのかわからないので、調査をするところから始めるのですが、どうやらあそこにあるらしいとなったら、銃を片手に危険覚悟で乗り込んでいくのです。
ときには野営キャンプで寝泊まりします。えええ、普通に軍隊生活したの!?とびっくりでした。
びっくりといえば、その野営キャンプにも、ちゃんと故郷の家族から小包が届いて、チーズやクラッカーや、家族の声を録音したレコードやらが、本人の手に渡るのです!
収容所に入れられたユダヤ人の回想録をよく読んでいたので、小包がちゃんと届くのか!と変なところに感心しました。
そして、野営キャンプにはシャワーのテントもあって、たっぷりのお湯のシャワーを浴びることができます。
ついでにいえば、フランスからも美術品やユダヤ人の財産が根こそぎ奪われるのですが、ユダヤ人でないパリの人びとは、きれいな装いで、そこそこまともな生活ができています。
同じ侵略、占領地でも、ポーランドなどとはずいぶん違うなあと感じたところです。
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同じ連合国軍でも、ソ連軍は、ドイツから奪い返した品々を、賠償金代わりにソ連に持って行ってしまうので、ソ連軍が差し押さえる前に自分たちが確保せねばと攻防を繰り広げます。
一応、「(ソ連は)2000万人死んだんだから」というセリフはありますが、なんだか最後の方は、対ドイツというより、対ソ連とのたたかい、みたいな感じにもなっています。
ただ、ソ連の部隊の指揮官が最後に見せる表情は、先んじられたなとニヤッとするような口元なので、徹底的に悪者として描いているわけではなさそうです。多分。
モニュメンツ・メンは、イギリス人も参加していますが、基本はアメリカの作戦です。取り戻したものは、持ち主に返還したようなので、そこは良かった良かった。
でも、いまだ行方がわからなくなっている美術品や、もとの持ち主がわからないものもたくさんあるようです。
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映画は、軽めに楽しく、ああよかった、で終わるので、原作や、関連する本などをまたおいおい読んでいきたいなと思います。
ほかのサイトを見てまわっていると、このプロジェクトに参加したメトロポリタン美術館学芸員さんはのちに館長となり、鬼館長として辣腕を振るったようで、その人が出てくる美術小説もある模様。
こちらにも、実際のモニュメンツ・メンたちに関する詳しい解説があります。ありがたい。
ところで、この映画でもっとも重要な奪還品とされたのが、ヘントの祭壇画と、ブルージュの教会にあったミケランジェロの聖母子像でした。
それで、邦題はミケランジェロ・プロジェクトなのですが、この聖母子像、ブルージュに行ったときに、果たして見たかなあ?
ブルージュはものすごく美しい街で、運河めぐりをしたことも覚えていますが、教会に入ったかは覚えていません。ミケランジェロを見たという記憶もないので、見ていないのか。見ていたとしても、覚えていなければ見ていないと同じ?
だとしたら、残念なことをしました。
ベルギーはものすごく良かったので、いつか再訪したらそのときは!