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by chekosan

映画「アウシュビッツ行き最終列車 ヒトラー第三帝国ホロコースト」(2009年)

ホロコーストをめぐる謎(疑問)のなかで、知りたいような知りたくないようなことの筆頭が、家畜運搬用の貨車に人々がすし詰めにされて、何日もかけて強制収容所に連れていかれた、という事実の詳細でした。

いったいどういうことなのかと。

混んだ電車に乗ったり、乗っている電車が駅以外で停車したりするだけでも心臓がバクバクしてくるのに、家畜用貨車にすし詰めで何日もなどという状況なんて、想像するのも恐ろしい。

ホロコースト映画にも、部分的に移送される場面が出てくることはありますが、貨車に押し込められるところくらいです。「戦場のピアニスト」 がそうですね。

ソフィーの選択」には、移送中の様子が少し出てきますが、ソフィー親子が乗っていたのは貨車ではなく客車でした。

ショアー」には、移送列車の機関士や、移送列車の沿線住民へのインタビューが収録されています。

シンドラーのリスト」 は、少し突っ込んだ表現があります。駅に停車しているすし詰めの貨車から水を求める人々の様子を見たシンドラーが、顔と金が利く立場を利用して、ホースで水を撒かせるというシーンがあります。

本作「アウシュビッツ行き最終列車」は、まさにその移送に特化した映画です。

存在はもっと前に知ったのですが、ショックすぎて観れないかもと思っていました。

そのうち、ホロコースト生存者の回想録などを読み進めるうちに少しずつショッキングな事実がわかってきて、耐性ができてきたので、買ってあったDVDを視聴しました。

一言でまとめるなら、文字で知ったあとで観て良かった、です。



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本当に、ほとんど列車内だけの映画です。

はじめこそ、ベルリンに残っていたユダヤ人が深夜に追い立てられるシーンがありますが、あとはずっと移動中の様子。

この列車は、ベルリンからアウシュビッツへユダヤ人を移送した最後の便でした。1943年4月19日、688人です。

それまでにベルリンからはすでに7万人のユダヤ人が追放されていましたが、残りの人々も移送するようにとの指示が下ります。

指示を出したのは、ゲッベルス宣伝相とシュペーア軍需相。シュペーアは、「ヒトラー最期の12日間」ではダンディでまともな感覚を残す人物に描かれていましたが、こうした作戦の責任者でもあったわけです。

ーーー

このときに移送された人々は、裕福だったり、医者だったり、芸術家だったり、有名なスポーツ選手だったりで、みなきちんとした装いで集合するのですが、移動中にどんどん衣服を脱ぎ捨て、疲弊し、汚れていきます。

小さな格子入りの窓一つか二つの貨車に100人ほどが詰め込まれるのです。(車両は6両くらい)

はじめは座ることもできない混み具合だったのが、途中から座ったり崩れるように寝たりするのは、矛盾ではなく、何人もが亡くなっていったからです。遺体を一か所に集めて、場所を作ったのです。

ひとつの車両にバケツが2つだけ。水入りと空です。空の方はトイレ替わり。これで数日間、移動したというのです。

映画では、人々がひもを渡して服を吊って目隠しにし、トイレ空間を作っていましたが、もっとぎゅう詰めで座ることもできなかった便もあったそうなので、その場合は、、、

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なんとか品位を保とうと努める人たちや、わずかでも助けようとする国軍兵士たちの登場など、ほんの少しだけの救いがあるシーンもなくはないですが、とにかく絶望的です。

脱出の試みも失敗。亡くなったり、殺されたり、気がふれたりする人が続出します。

列車からの脱出の試みというのは実際あったそうで、回想録などにも出てきます。

しかし、走る車内からの脱出は当然危険極まりなく、それで命を落とす人もたくさんあったようです。

たとえ死ななくても、脱走したユダヤ人を助けたことがわかればその人や村の人も処刑されてしまうので、見殺しにしたという話も。

それでも助ける人がいなくもなかったようですが、助けるのも命がけの危険な行為です。

ーーー

映画のなかで、主人公のひとりが、地下に潜伏していれば!と悔やみます。

「最終列車」での移送で、ベルリン(ドイツ本国)は「ユーデンフライ」(=ユダヤ人がいない)になったとされますが、実際には少数ながら、匿ってもらったり、身分を偽ったりして生き延びた人もいました。

そのうちの4人のエピソードを映画にしたのが、「ヒトラーを欺いた黄色い星」 です。映画制作時、ご健在の4人のインタビューも交えた面白い映画です。

ーーー

実際にあったことを反映させてはいても、実録ではなく作られた映画なので、まだ耐えられますが、実際にその場にいたらと考えると… いやいくら想像しても全然違うのだろうなと思います…

列車内だけの話ということもあって、超大作のようなスケール感はありませんが、けっこう印象的な場面の多い映画でした。

夜中に観たこともあって、歌手とピアニストの老夫婦の夫婦愛と歌声が残って、わたくし、夢で歌っていました…






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by chekosan | 2019-06-10 11:55 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)