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by chekosan

映画「カッコーの巣の上で」(フォアマン監督 1975年)

チェコスロヴァキア出身のミロシュ・フォアマン監督の映画「カッコーの巣の上で」を観ました。

だいぶ前からDVDを持っていたのですが、チェコが舞台というわけではないので、後回しになっていました。

が、観てみたら、やはり名作といわれる作品というのは、それだけのことがありますね。「ソフィーの選択」のときも思いましたが、原作を読みたい、映画評や原作の書評や論文を読みたいと思わせてくれる作品でした。

そういえば「ソフィーの選択」の感想を書いた記事は、訪れる人の少ない本ブログにおいて、長期間にわたってアクセスのある一本です。あら、この記事の最後、「つづく」とか書いてますね。その後、関連する論文や映画評などは、ほぼ収集して読んだのですが、文章にはまとめていませんでした。気が向いたらまたいつか…?

さて、本題の「カッコーの巣の上で」。ネタバレありです。


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まったくの個人的な好みでいうと、フォアマン監督でなければ、ここに出てくる役者さんや話の舞台(1960年代のアメリカ)には興味は抱きませんでした。なのですが、この映画、役者さんたちの演技がすばらしいですね! 

舞台となった精神病院の患者さん役には、本当の患者さんたちも混じって出演しているとのことですが、見分けがつかないというか。

主たる登場人物の十数人の患者は当然役者でしょうが、患者を装って入院してきた主人公(刑事犯だけど強制労働を逃れようとしている)が、彼らに混ざると明らかに浮いてしまっているのです。狂人を装っているのが丸わかりです。主役も脇役もうまい。

看護師長さんもいいですね。落ち着いていて、言葉遣いもとても丁寧なんですよね。基本、ミスター誰々と呼びかけるし(主人公に名前の方で呼ぶシーンもありますが)、たまに患者が反論めいたことを言っても、一呼吸おいてから簡潔に答えを返します。院長が言った「優秀な婦長」という評もそのとおりだったのだろうと思わせるのです。

この師長さんに関しては、多くの感想で、決まって「威圧的」で「絶対権力者」というように書かれていますが、たしかに映画の全体のコンセプトや主人公目線から一言でまとめるとそうなるのですが、上司を欺いて悪いことをしているとか、いいかげんとか暴力的とかいうわけではなく、非常にきちんと看護者としての(当時の主流の)職務を果たす有能な管理者なんですよね。

もちろん、その「当時の主流の」精神病者への治療法や管理の仕方こそ問題であると告発する映画なので、師長が悪者のように捉えられてしまうわけですが。

そして、たしかに師長は、患者に発言を促しておきながら、あっさりと患者をくじくような返しをしてしまうのですが。

この看護者(師長ともう一人の看護師が進行している)と患者とのミーティングタイムのシーンには、ちょっと考えさせられました。

というのも、場をとりしきる立場にあると、どうしても全体をスムーズに進めたいという気持ちが強く出てきます。今日はこういう目的、ゴールに向けて話を進めたいのだと思うと、突発的な発言は好ましくない。無視するまではいかなくとも後回しにしたい。自分が思う筋書きから外れる言動をする人物は煩わしく感じてしまう。秩序を乱す言動をする人物は排除したくなる…

これは1960年代の精神病院で行われていた治療としてのミーティングの光景に限らず、教育や職場や地域その他さまざまな場面で生じ得ることではないかと思うわけです。

この映画では、ミーティング参加者が精神病者で、はじめのうちは従順、無関心、無気力だったのに、主人公のもたらした刺激によって気力が出てくると主張が止まらなくなり興奮しすぎてパニックを起こすといった極端な変化が起こるので、抑圧・統制による無気力からの劇的な脱却の過程と結果が見えてきますが、現実の「理性」を意識する人々の間では、そのような変化が生じないよう、自ら抑制し、あるいは周囲を無言有言の圧力によって黙らせてしまっているのではないだろうか。

というようなことが自戒を込めて連想されて、師長さんを単純に悪者にできないで鑑賞を終えたのでした。

で、専門家の分析や考察を知りたくて調べてみたのですが、学術論文はあまりみつかりませんでした。

ひとつ、原作に関する論文を見つけて興味深く読みました。

☞ 馬場聡「ケン・キージー『カッコーの巣の上で』: 管理社会のメタファーとしての母性文学研究論集 (20), 23-40, 2002年 筑波大学比較・理論文学会

また、映画を看護学の教材として活用されている先生の論文も。「カッコー」だけでなく、ほかの作品の解説もあります。

☞ 篠原由利子「映像から学ぶ精神障害者の病いの体験」福祉教育開発センター紀要 第12号(2015 年3 月)


映画に対する評論は取り寄せ中です。


ところで、今回の作品とはまったく関係のないエッセー集を読んでいたら、精神病治療に関する興味深い事実が出てきたので、そちらも調べて、合わせてまとめられたらと思っています。「ソフィー」のようにそのままになってしまう気もしますが。(^-^;












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by chekosan | 2019-02-20 14:53 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)