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by chekosan
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谷口長世『アンネ・フランクに会いに行く』(岩波ジュニア新書 2018)

同志社の「政治学」の授業で、要件かなり緩めなブックレポートを出したところ、ある学生が選んだ一冊。

著者は78年に欧州に渡って以来、長期に渡ってアンネの足跡を辿る取材を重ねてきた。

そのため本書には、現在とは違う収容所跡の雰囲気や受け入れ体制の様子や、当時を知る関係者の生の声など貴重な体験や証言が散りばめられている。そうした証言者自身の体験や言葉の方が興味深かった。

特に「アンネのストーリーはごく一部」だという証言者の言葉は重い。もちろん一人の人物の人生を追うことにも意義があり、矛盾・対立することではないが。

それにしても写真が少なくて残念。記者時代に撮った写真は個人では使えないのかな。アンネが隠れ家に移る前に住んでいた家周辺や、アウシュヴィッツに送られる前にいた収容所なども訪ねているのに、一切写真がない…


谷口長世『アンネ・フランクに会いに行く』(岩波ジュニア新書 2018)_b0066960_00124391.jpg



ところで、アンネの父オットー氏も、なぜ日本でここまで『アンネの日記』が人気なのだろうと言っていたそうだが、いまどきの学生もホロコーストといえばアンネが真っ先に浮かぶようだ。

複数の歴史の教科書に載っているのも影響しているのだろう。私の娘時代には既に数種類の関連本が出ていたので、親の影響もあるのかも。

と思っていたら、アンネ・フランク財団のスタッフは、本書の著者に、日本人は戦争の被害者であるという意識があるから被害者の象徴であるアンネに共感するのではないかと問いかけたとあって、なるほどそれもあるかもと。☞文末にそうした趣旨の記事のリンク。

とはいえ、ホロコースト云々関係なく、感受性豊かな少女の日記として共感する読者も多そう。☞こちらもそのような趣旨の記事のリンクを文末に。

実際、別の授業の学生も『アンネの日記』を取り上げて熱く語ってくれたのだが、その学生も、思春期の心理や思索の面、文芸的な面で面白かった、生きていればきっといい作家になったと思うと感想を言っていた。ふむふむ

で、アムステルダムのアンネの隠れ家はなかなかひょいとは行けないし、入場するのに長蛇の列だそうだから、広島県福山市のホロコースト記念館に行けば、実寸大のアンネの部屋と、隠れ家の模型があるよと紹介しておいた。


アンネ・フランクと直接関係はないが、ユダヤ人映画制作者リディア・シャゴールさんの話がたいへん気になった。シャゴールさん一家はオランダ領東インドに逃げるのだが、同地がドイツの同盟国である日本に占領されたため、日本軍収容所に囚われてしまったというのである。彼女の『頭を垂れて』『総統の名の下に』という本を見ることはできないだろうか。


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「戦争被害者として共感?『アンネの日記』日本で人気の理由 イスラエル紙が分析」




後者の論調の記事。

「なぜ、日本人はこれほどまでにアンネ・フランクが好きなのか?
この人気は、ユダヤ教やホロコースト(ユダヤ人の大虐殺)への関心とは無関係だ。
読者の大半を占める若い女性を惹きつけているのは、アンネというひとりの少女の個人的な物語である。日記に豊かに表現された 十代の少女の感性に、アンネとはまったく異なる環境に生きる日本の13~15歳の若者たちから強く共感しているのだ。」







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by chekosan | 2019-02-12 00:38 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)