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中・東欧、ロシア、大学教育、美術展、映画鑑賞などなど


by chekosan
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読書メーター 2018年12月のまとめ

通常の授業、助っ人授業、法事、依頼原稿の調査、思いがけない事態の発生など、多方面でいろいろあった12月。でも、寝込んでいる間に終わった10月や大きな行事に駆け回った11月よりも、内容的に良い本に出会えたひと月でした。

特に、ティモシー・スナイダー『暴政』はおすすめ度MAX。スナイダーは東欧史研究者なので、よけいに響くということもあるでしょうが、普遍性のある主張です。若者におおいに勧めたい。

と思って授業で紹介したら、早くも翌週のカードに「購入しました」と書いてくれた学生がいました。そういう学生と学び合える環境があることを嬉しく思った月でもありました。


12月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2308
ナイス数:335

暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン感想
中・東欧史、ホロコースト史家で、『ブラック・アース』『ブラッド・ランド』の著者、ティモシー・スナイダー氏が緊急出版した小さな本。強権的、独裁的な政治を支え、助長するのは普通の人々の日常のふるまいや言動であることを歴史の事例からわかりやすい言葉で解説。第一条が「忖度による服従はするな」。いろんなところで紹介していこう。力強くおすすめ。まずは書評連載で取りあげました。https://www.kansai-woman.net/Review_s.php?id=201450
読了日:12月01日 著者:ティモシー・スナイダー,Timothy Snyder


あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 (520))あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 (520))感想
輪読ゼミで取り上げたので再読。短いエピソードを重ねていくことで、ユダヤ人への迫害が次第に深刻になっていう様子が読者にもヒシヒシと迫る。当時の様子や生活習慣、法律や社会の変化を実にうまく盛り込んであるなと再確認した。再読でも細部にまだまだ発見があったので、また取り上げたいなと思う一冊。そしてこの年末こそ続編も読もう。授業では、ティモシー・スナイダー『暴政』も紹介。同時に読むとより考察が深まると思う。
読了日:12月04日 著者:ハンス・ペーター・リヒター


その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く――その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く――感想
岡檀氏の自殺希少地域の研究に感銘を受けた精神科医が、それらの地域を訪ねる。見出したのは、そうした地域では助けるという行為がごく自然に行われているということ。相手の意向を汲みすぎず、必要な手立てを講じようとする。なるほどその方が物事は解決するだろうなと感じ入る。その他参考になる点多々あり。岡檀氏の本も読みたい。
読了日:12月07日 著者:森川すいめい



なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか ピース・コミュニケーションという試み (光文社新書)なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか ピース・コミュニケーションという試み (光文社新書)感想
大変興味深かった。著者はメディアやコミュニケーションのプロ。戦争や平和に関する情報の伝わりかた、受け止めかた、伝え方について知り、考えるのに良い一冊。事例と理論の割合もよく、読みやすい。平和教育のあり方を考えるのにも参考になる。先日読んだティモシー・スナイダー『暴政』と併せておすすめしたい。
読了日:12月12日 著者:伊藤 剛



実戦!  海外で活かせる人材力実戦! 海外で活かせる人材力感想
著者よりご恵贈あずかりました。
読了日:12月14日 著者:今井 市郎





【改訂完全版】アウシュヴィッツは終わらない これが人間か (朝日選書)【改訂完全版】アウシュヴィッツは終わらない これが人間か (朝日選書)感想
輪読ゼミで改訂版を再読。二回目なので衝撃は減ったが、別のところで発見などあり。読んできた学生たちもそれぞれ深く受け止めて、言葉を絞り出して、過去を知ることを今に結びつけて考えようとしてくれていた。アウシュヴィッツの体験ものは他にもあるが、そのなかでも良いと思う。特に若い人たちに向けた質疑応答の部分は強くおすすめ。
読了日:12月20日 著者:プリーモ・レーヴィ



生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある感想
面白かった。統計データとインタビュー調査を組み合わせ、徳島県旧海部町の自殺率の低さの原因を探った研究を一般向けにまとめたもの。人々の生の声や日常のふるまいを重視して分析した結果、当該地域では公平水平な人間関係、弾力性の高い合意形成のプロセス、日常的に使う公共の施設やサロン的な場に住民たちがいつでも自分が行きたいときに自分の力で行けていること、拘束しすぎない、でも他人に無関心でない、程よいつながりが保たれていることが明らかになった。自殺予防のみならず、コミュニティや人間関係のありかたを考える参考になる。
読了日:12月22日 著者:岡 檀



コルチャック先生―子どもの権利を求めて (伝記絵本 世界を動かした人びと)コルチャック先生―子どもの権利を求めて (伝記絵本 世界を動かした人びと)感想
輪読ゼミでコルチャック先生を取り上げるので、関連本をたくさん図書館で借りてきた。絵本や児童書は侮れない。簡潔にまとめてくれているので全体像をつかみやすい。本書の巻末には写真や解説があるので、さらにわかりやすい。子どもの顔がちょっと怖くて親しめないけど… 栄養失調な感じが出ているといえばそうか。(^-^; 
読了日:12月24日 著者:フィリップ メリュ


コルチャック先生 子どもの権利条約の父 (講談社の翻訳絵本)コルチャック先生 子どもの権利条約の父 (講談社の翻訳絵本)感想
輪読ゼミでコルチャック先生を取り上げるので、関連本を集中して読もうとたくさん借りてきた。こういう絵本は、当時の様子をちゃんと調べて描き込んでいるのだなあ。コルチャック先生の建てた孤児院や、その内部、夏のキャンプなどは別の絵本(汐文社の伝記絵本)の巻末に載っている写真どおり。本書は訳がいいのか、最後の方ではぐっと涙を誘う。
読了日:12月24日 著者:トメク・ボガツキ



ぼくたちもそこにいた (岩波少年文庫)ぼくたちもそこにいた (岩波少年文庫)感想
『あのころはフリードリヒがいた』の続編。1933年(ヒトラーの首相就任)時に8歳だった、まじめで優しいけど中庸な「ぼく」や、みんなの憧れのエリート少年ハインツ、共産党員の父親を持つギュンターたちの数年間を淡々と描く。『フリードリヒ』の「ぼく」と本作の主人公は設定がほぼ同じで、作家自身が投影されていると思われる。ギュンターが体制に順応しようとする姿、父親も組み込まれていく姿が痛ましい。戦闘はかっこよくもなく、兵士は英雄でもなんでもないことを身をもって知るところでブツっと終わる。続いて第3作を読まねば。
読了日:12月27日 著者:ハンス・ペーター リヒター


若い兵士のとき (改版) (岩波少年文庫)若い兵士のとき (改版) (岩波少年文庫)感想
『あのころはフリードリヒがいた』第3作目。若くして志願兵となり、すぐに左腕を失った「ぼく」。人手不足で除隊にはならず、10代後半にして少尉としてポーランド、フランス、デンマークと移動する。理不尽なしごき、絶対服従、支配、復讐、略奪、死の恐怖、屈辱的な経験が綴られていく。『フリードリヒ』のように練りに練って書かれた作品ではなく、忘れられない強烈な記憶を残すべく書き留めた感じ。凄惨な場面も多い。より作家の体験が強く反映されているもよう。この作家の作品をもっと読みたかったが、これ以上書けなかったのも理解できる。
読了日:12月28日 著者:ハンス・ペーター・リヒター

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by chekosan | 2019-01-02 12:45 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)