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by chekosan

『ギュンター・グラス「渦中」の文学者』講演会とG.パウゼヴァングとあれこれ

「ブリキの太鼓」で世界に名をとどろかせ、ノーベル文学賞を受賞したドイツの作家、ギュンター・グラス。

以前から社会的活動や政治的発言等を報道で目にして、知った気になっていました。2006年に一時期SS隊員だったと告白したときはショックを受け、2015年に亡くなったときも。長く気になる存在でした。

今回、そのグラスの研究者、依岡隆児先生の講演会が大阪で開催されると知り、友人と行ってきました。

会場は大阪、谷町六丁目の駅を上がってすぐの隆祥館書店さん。面積は小さいながら、特色あるお店づくりをされていて、何度もメディアで取り上げられているところと知りました。作家のお話を直に聞くトークイベントも200回以上開催されているとのことです。

あらかじめ予約・振り込みをしておいて、当日、依岡先生の著作をお店で受け取るという流れ。お店の前には看板が。



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入り口を入ると(というか入る前からというか)、どんと正面に棚がそびえていて、そのラインナップを見ると、こちらのお店のこだわりや主張が一見してわかります。

右手には、これまでのトークイベントに登壇された方々の著書コーナーも。特色ある棚づくりをされているなあと拝見しました。

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イベント参加料はゲストの依岡先生の著書代も含んでいたので、図書館で借りた本で予習。当日、新品の本に速攻で付箋を貼り替えました。^^



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本書はグラスの経歴や生き方と作品解説をまとめた評伝。とても読みやすくて、ほぼ一気読み。また知った気になってしまいました(笑)

講演会では、この評伝をベースに、先生が撮影された写真やグラス秘話なども披露されました。


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この企画、第二部は「まちライブラリー」(まちかどやお店などに設けた図書コーナーや私設の図書室など本を介した交流スペース)を提唱されている礒井純充さんと依岡先生のトーク、第三部は会場の参加者も交えてお気に入りの本を紹介し合うというものだったのですが、第二部以降は時間が押せ押せで…

依岡先生は四国で「まちライブラリー」や読書会を開かれているとのことだったので、その話も聞ける!と、とても楽しみにして行ったので、その点はかなり残念でした。(-_-)

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第三部でのフェイバリットブックス紹介タイムに備えて、私が用意していたのはこちら。これらを全部抱えて持っていったわけではありませんが。

ドイツの作家グードルン・パウゼヴァングの作品。


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イベントでは、グラスは難しくて読みにくい、長い、面白くない(!)といった感想も出ていましたが(私の意見ではありません)、それでいくとパウゼヴァングはわかりやすくて読みやすく、短く、面白いです。彼女は小学校教諭を務めながら、児童文学の研究で博士号を取得した人。子どもにも読めて、しかし深い衝撃を受ける作品を生み出しています。

ナチスドイツ政権下のドイツの村や町の「普通の」人々の様子を淡々と描いたもの、ドイツで原発事故が起こったという設定のフィクション、核戦争後の世界を描いたものなど、グラスの代表作とテーマが重なります。

見てみると、グラスが1927年、パウゼヴァングが1928年生まれ。同世代です。戦争終結時、17歳くらい。ぎりぎり未成年なので、戦争に責任があるとはみなされないが、まったく何も知らなかった、完全に関係がなかったというわけではない世代です。

生まれ育った場所も、グラスはダンツィヒ(当時は自由都市、のちにポーランド領グダニスク)、パウゼヴァングはドイツ領ボヘミア東部の町(戦後はチェコスロヴァキア領)で、2人とも戦後、故郷を喪失しています。

グラスは政治活動にも積極的に関わり、パウゼヴァングは小説を通じて戦争や核の問題を訴えたという違いがありますし、作品のスタイルや文体もずいぶん違うのですが、昨日のイベントで紹介するにはぴったりだったかなと思います。パウゼヴァング、いいのにあまり知られていないから、積極的に紹介すべきだったかな。


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グラスの作品は、同志社の特殊講義で読みたい気もしたのですが、絶版だったり高価だったりで、ちょっと難しいかもしれません。ほかの同世代の作家を取り上げて、そのときに一緒に紹介するというのもいいかも。昨日のイベントでもちょっと名前が出ていた、ハンス・ペーター・リヒターあたりはどうかなと考え中です。

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ところで、グラスは「長くてわかりづらくて面白くない」という発言を聞いたときは思わずのけぞってしまったのですが… 

今回に限らず、読み方や読む目的が違うと楽しみ方や捉え方は違うのかなと思うことはあります。

私は、著名な作品でも、歴史の証言というか資史料的な感覚でとらえているところがあって、「あ、ここでもイラクサが出てきた」とか「ペチカの裏で寝るってなに!?」(東欧~ロシアあたりの作品によく出てくる)といった超細部が気になって調べたりするのが楽しいのです。そういう細部に関して輪読の授業で語ってしまって、「へ?」みたいな反応が出ることもありますが。

でも、そのような細部にこだわって調べてみて、その小ネタ披露をしてみようという回を設けたときに面白がってくれた学生たちは作品全体も楽しめていました。そして、小ネタ披露でない回でも、よく読みとり、よく語れていたなあということを思い出したりしたのでした。


まとまりなくつらつら書き連ねてしまいました。グラスの作品の感想はまた別途…(いつか多分)













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by chekosan | 2018-10-15 11:14 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)