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by chekosan

読書メーター 2018年9月のまとめ

1日にバルト3国の旅から帰着。その3日後、台風21号に襲われた関西空港の様子に心を痛めた9月初旬。
学生たちと快晴の空の下、広島の原爆遺構を訪ね、現地を歩く意義を体感した中旬。
興奮冷めやらぬまま新学期を迎えた下旬。
非常に濃い一ヵ月でありました。

9月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:3107
ナイス数:401

なぜ日本の災害復興は進まないのか―ハンガリー赤泥流出事故の復興政策に学ぶなぜ日本の災害復興は進まないのか―ハンガリー赤泥流出事故の復興政策に学ぶ感想
記録を忘れていた本。ハンガリーで2010年に起った赤泥流出事故では10名の住民が亡くなり、付近一帯の環境に重大な影響を与えた。赤泥はアルミニウム製造の過程で出る強アルカリ性の残滓。事故の直接の責任はアルミ会社にあるが、被害の甚大さを鑑み、政府は迅速に処理に当たり、被害者救済に努めた。加害会社の責任は責任として、人命や財産が侵害されたという事実を重視し、「被災の緩和」を第一に対策に当たったこと、募金を基金にして、コミュニティ崩壊を食い止め再生を促進するような施策に融通した手法などを著者は評価する。
読了日:07月25日 著者:家田 修 ※記録を忘れていたので9月分としてまとめておく


ゲンロンエトセトラ #5ゲンロンエトセトラ #5感想
最近我が家はうっすら東浩紀ブーム。観光、ダークツーリズム、スタディツアー、ミュージアムに関心があるので、いろいろヒントを得ている。この雑誌はそれらを特集。特集記事のみさらっと読んだが、後に刊行された、東浩紀『弱いつながり』『ショッピングモールから考える』古市憲寿『誰も戦争を教えられない』に発展、結実しているので、これから読む人はそれらを読まれるといいだろう。後ろの方の連載「プラハのカフカ・ミュージアムと「世界文学」の時代の文学館」も、短いレポートだが、最近の私の関心に重なっていて興味深かった。
読了日:09月05日 著者:東 浩紀,高橋 源一郎,市川 真人,速水 健朗,古市 憲寿,海猫沢 めろん,いしたに まさき,ふるまい よしこ,河野 至恩,安 天,松本 直之,入江 哲朗,松山 直希


埼玉県立浦和高校 人生力を伸ばす浦高の極意 (講談社現代新書)埼玉県立浦和高校 人生力を伸ばす浦高の極意 (講談社現代新書)感想
県立高校名をタイトルにした新書、それも高校生とその保護者向けの講演録で一冊の本を出して採算が採れるという点で既に驚き。しかし佐藤氏がここまで高校生や保護者に個別に助言しているとは!あれだけの勢いで著作を出し、方々で教えたり講演したりしながら、受験や大学の動向も追い、メンタルな相談まで。もともと中学教師になりたいと言っていただけあって、教えみちびき寄り添うことが好きなのだなあ。いろいろ感嘆する。灘校生との対話の本の方が内容的には濃いので、一冊選ぶならそちらをおすすめ。
読了日:09月06日 著者:佐藤 優,杉山 剛士


新版 広島長崎修学旅行案内―原爆の跡をたずねる (岩波ジュニア新書)新版 広島長崎修学旅行案内―原爆の跡をたずねる (岩波ジュニア新書)感想
単なる史跡案内ではない。ヒロシマ・ナガサキという表記、被害と加害、被爆体験の絶対視と「継承」、「生き残りの後ろめたさ」といった問題について考えることを促す。語り口は穏やかでやさしいが、しっかり咀嚼しながら読みたい本。リフトン『死の内の生命』ではアウシュヴィッツからの生還者と共通する被爆者の心情を分析しているとのこと。重藤文夫・大江健三郎『対話/原爆後の人間』、永井隆『長崎の鐘』、林京子『祭りの場』なども読みたい。広島は近々初めて行く。長崎は二度修学旅行で行ったが再訪したい。より深く意義ある観察ができそう。
読了日:09月09日 著者:松元 寛


バルトの光と風バルトの光と風感想
再読。前回(一年前)は初のリトアニア旅行の情報収集としてざっと見ただけだったが、今回はバルト3国縦断後なので一気に読み通した。著者が3国を回った1999年夏と私が行った2018年夏とは、治安や経済状況(物価含む)、賑わいなどが相当違う。個人の旅行記は、月日が経つと情報収集としては適さなくなるが、逆に社会の変わりようを知ることができる。ということで、私も記録を残さねば。それにしても男性は気楽にお酒に誘ったり誘われたりするのだな。女子学生、あるいは母として旅行するとそういうのは皆無だわ~。
読了日:09月10日 著者:河村 務


4歳の僕はこうしてアウシュヴィッツから生還した4歳の僕はこうしてアウシュヴィッツから生還した感想
資料調査や親族の証言で補って可能な限り当時の様子を再現した回想録。コミュニティがしっかりしていて、住民に有利になるよう働くユダヤ人評議会があったところでは、比較的長く共同体が存続し、多少ましな生活ができたようで興味深い。なお著者の親族のうちで唯一、戦争前に欧州を脱出した女性は、杉原千畝の発給したビザで日本を経由してアメリカに渡り、事業を成功させ、親族を呼び寄せたという。ここでも杉原ビザによるサバイバーが!詳しくはブログに記録。https://chekosan.exblog.jp/28650392/
読了日:09月11日 著者:マイケル・ボーンスタイン,デビー・ボーンスタイン・ホリンスタート


カウンターの向こうの8月6日 広島 バー スワロウテイル「語り部の会」の4000日カウンターの向こうの8月6日 広島 バー スワロウテイル「語り部の会」の4000日感想
この数年ヨーロッパの負の遺産を訪ねるようになって、広島に行ったことがないことが気になり出した。そこで同僚や学生とスタディツアーを計画、少しずつ関連本を読んでいる。戦後70年以上経ち、被爆体験者が高齢化し、亡くなられたり話せなくなったり記憶があいまいになったりされている。経営するバーで語り部の話を聞く会を10年以上続けた著者が、語りを直接聴くインパクトの強さを感じるとともに、記憶を記録に残しておくことも大事であると記しているところが印象に残った。著者自身も病気で若くして亡くなる直前まで本書を執筆された。
読了日:09月13日 著者:冨恵 洋次郎


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)感想
文学やノンフィクション作品を通してロシアソ連東欧を知る輪読の授業で読むので再読。もしかして読んでなかったか? NHKのドキュメンタリーで見ただけだったか? 1本目読みだして、あれ? おませな少女の下ネタ満載で、授業で使って大丈夫だったかと苦笑。でももちろんそれで終わりではなくて、社会主義期のプラハの学校に集った4人の少女たちの学校生活を通して、社会情勢、国際情勢を鮮やかに描き出す。授業終えたら学生の反応や感想交えて、詳しく記録しようと思う。とりあえず選んで間違いではなかった。
読了日:09月13日 著者:米原 万里


世界を平和にするためのささやかな提案 (14歳の世渡り術)世界を平和にするためのささやかな提案 (14歳の世渡り術)感想
中学生から大人までが対象だが、ルビがあるので小学校高学年でも可。各界の著名人の提言は見事にそれぞれ文体が違うのだが、いずれも流れるような文章。かなり練って作られた本だと感じた。一人数ページなので読むのが苦手な子でも。クラスで分担して読んで紹介し合うのもよいかも。若い書き手はやや抽象的、感覚的だが、柔らかく寄り添う文体なので若者に響きそう。専門家は短い中に情報や考え方を凝縮していてさすが。私はやはり国際協力の現場を踏んできた方の提言にひかれた。特に伊勢崎賢治氏の「就活と戦争」を学生に読ませたいと思った。
読了日:09月14日 著者:黒柳 徹子,徳永 進,中川 翔子,永江 朗,伊勢崎 賢治,木村 草太,香山 リカ,ヨシタケシンスケ,田中 優,島田 裕巳,小島 慶子,春香 クリスティーン,辛酸 なめ子,竹内 薫,最果 タヒ,山本 敏晴,山極 寿一,上坂 すみれ,文月 悠光,サヘル ローズ,池澤 春菜,加古 里子


「ダビデの星」を拒んだ画家フェリックス・ヌスバウム「ダビデの星」を拒んだ画家フェリックス・ヌスバウム感想
同じ著者のもう一冊のヌスバウムの本https://chekosan.exblog.jp/28304919/ を読んで。もう一冊との違いがあまりわからなかったが(私が忘れているだけと思うが)、いずれにしてもヌスバウムの絵を観にオスナブリュックに行きたい。
読了日:09月18日 著者:大内田 わこ




新版 1945年8月6日―ヒロシマは語りつづける (岩波ジュニア新書)新版 1945年8月6日―ヒロシマは語りつづける (岩波ジュニア新書)感想
著者は学徒動員中に被爆。原爆被害を広く知らしめる運動に携わってきた。タイトルは広島への原爆投下の日であるが、カバーしている範囲は広い。広島と長崎の投下直後の惨状から始まり、その後の影響と苦しみ、原爆開発の経緯、使用の背景、広島と長崎が選ばれた経緯、戦後の情報隠匿から、80年代の欧州の反核運動の広がり、チェルノブイリ原発事故、INF全廃条約の締結まで。新版は1989年に出されたもの。著者は2000年に亡くなられている。
読了日:09月25日 著者:伊東 壮



オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)感想
『嘘つきアーニャ』に続いて輪読ゼミで読む本。事実と体験を巧みに盛り込んだフィクション。1960年代にプラハのソビエト学校で出会った女性教師オリガ・モリソヴナたちの謎を、主人公が旧友と共に90年代初頭に解いていくなかで明らかになるスターリン時代の人権抑圧の実態。限られた日数で資料を探し関係者を訪ね歩く過程も非常にリアル。いくつかのどんでん返しもうまい。謎解き小説として読むだけでもスリリングで面白いが、革命からのソ連東欧の激動と悲劇と人々の生き様を感じとれる作品としておすすめ。
読了日:09月28日 著者:米原 万里

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by chekosan | 2018-10-01 20:52 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)