映画「女は二度決断する」と犯罪被害者の訴訟参加
2018年 05月 13日
ドイツ、ハンブルクで、トルコ系移民の夫と一人息子と幸せに過ごしていた主人公は、2人を爆弾テロで失います。
警察は当初、トルコ系同士の抗争ではないか、夫は非合法な行為に携わっていたのではないかと疑います。
主人公は、重なるショックに心身のバランスを崩します。
捜査が進んで、ネオナチの犯行ということが判明します。
犯人を目撃していた主人公も裁判に参加するのですが…
この映画の見どころは、ショッキングなストーリー、主演女優の演技でしょう。
ストーリーの方は、2000年から11年にわたり、ドイツで実際に起った外国人を狙った連続爆弾テロ、強盗事件などを下地にしています。このときも、警察はトルコ人同士あるいはトルコ人とクルド人の間の抗争かトラブルではないかと疑って、なかなか犯人にいきつけませんでした。
主演女優(ダイアン・クルーガー)の演技は、子を亡くした母の狂わんばかりの辛さが迫ってきて涙しました。
が、この女優さん、目が知的なので、品行方正ではない女性には感じられなくて、だいぶ話が進むまでキャラクター設定がつかめないまま見ていました。(^-^;
結末は、タイトルから予想はついていましたが、それでも心臓がドクドク早打ちしました…
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私としては、中盤の裁判シーンが興味深かったです。
主人公も裁判に「訴訟参加人」として参加します。本人も実行犯を目撃しているので証人として出廷するのですが、そのためだけではなく、また単に傍聴しているのではなく、弁護人とともに裁判のあいだじゅう裁判に参加しているのです。彼女の弁護人は、ほかの証人に尋問し、被告弁護人と丁々発止の論戦も繰り広げます。
ドイツでは、犯罪被害者の訴訟参加制度があります。この映画の事件の場合、被害者本人(夫と息子)は亡くなっているので、その親族に対して訴訟参加権限が認められたパターンということでしょう。
訴訟参加人が、特に保護されるべきである場合、資力の有無にかかわらず無償の弁護人依頼権が認められます。裁判書類を閲覧する権利、弁護人を通じての書類の謄写権も認められるということです。
【参考】水野陽一「刑事訴訟における被害者弁護について ドイツにおける議論を参考に」(『広島法学』36(1) 2012年)
映画のなかで、主人公がパソコンで、裁判の証拠として提出された画像や書類を見ていると思しきシーンがあります。これは、上記の謄写権によって、裁判書類をデータで受け取れたということでしょうか?
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日本でも被害者等が刑事裁判に参加する制度はありますが、気になるのは「国選被害者参加弁護士の選定」の条件です。
裁判所のHPによれば、
「資力(※)が200万円に満たない被害者参加人は,国が報酬や費用を負担する国選被害者参加弁護士の選定を求めることができます。※資力とは,預金,現金等の合計額をいい,6か月以内に犯罪行為を原因として治療費等の費用を支出する見込みがあれば,その費用は資力から控除されます。」
とあるのですが、資力が200万円を超えていたら、国選弁護士はつけられないということになるのでしょうか。200万って低すぎないでしょうか。