中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan

佐藤亜紀『スウィングしなけりゃ意味がない』(角川書店 2017)

ナチス政権下のドイツ、ハンブルクが舞台。

語り手の「ぼく」は、ベアリングを生産する工場主の息子で、お金には困らない。

ナチスが頽廃、敵性音楽とみなすジャズに夢中で、夜な夜なオシャレして踊り狂う不良坊ちゃん。

体制に与して党員になっている父親を軽蔑しつつ、その富と特権も享受していますが…

先日観てきた映画「ジャンゴ」と同じ時代。伝説的ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトのことも二ヶ所ほど出てきます。

以下若干ネタバレあり。


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主人公はブルジョワの子弟であり、資本主義の申し子です。父親が軍需産業で儲けているおかげで放蕩三昧だし、兵役も免れ、必死で出世しようと思わなくていい。

でも、彼はそういう出自だからこそ、「お国のために」を嫌い、政治経済文化の統制を唾棄します。

ユダヤ人とみなされる友人たちやその親類の不幸に悲しみ、憤り、手助けし、協力します。

彼の父親の工場でも、強制収容所の囚人たちを労働力として「活用」しているのですが、有能な技術者や働き手である囚人たちを痛めつけ虐げる親衛隊員を金やコネや色で籠絡して、囚人たちが多少はマシな状況でいられるようにします。

このあたりの展開は、シンドラーのリストみたいですね。

主人公たちは、政治活動を通してではなく、ジャズ愛好、闇の経済活動でもって、自由を束縛する体制にウラから半逆する、そして虐待される人々を救済するのです。

ジャズへの愛はホットだけど、「ぼく」の語り口は終始クール。最後までカッコつけて終わります。

カッコいい、痛快、と読むか、鼻持ちならんズル賢い坊ちゃんめ、けっ、と読むか。

私はリアルだなと読みました。

史実をヒントに、丁寧に調べて書かれた小説だと思います。

当時のヒットナンバーを流しながら読むと臨場感がアップします。



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by chekosan | 2018-04-12 06:29 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)