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by chekosan

デボラ・E・リップシュタット『否定と肯定』(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017)

先日観に行った映画「否定と肯定」の原作本を読みました。

面白い。とても読み応えがあって面白いので、読みふけらないように自制しながら読みました。

副題「ホロコーストの真実をめぐる闘い」が示すように、アウシュヴィッツのガス室に象徴されるナチスドイツによるユダヤ人絶滅政策をめぐる実際にあった裁判の話です。


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ホロコーストがヒトラーの命令によって組織的に行われたことを否定するイギリスの歴史家アーヴィングを著書で批判した著者リップシュタットは、その歴史家から名誉毀損で訴えられます。

イギリスでは、訴えられた側が、名誉毀損の事実がないことを立証しなくてはいけません。

そこで、被告であるリップシュタットは、有能弁護団や専門家たちと綿密な調査を重ね、原告アーヴィングが歴史的資料を歪曲して引用していることを証明していきます。

映画も、裁判の様子やリップシュタットと弁護団のヒューマンドラマをわかりやすく描いたと思いますが、原作の方は、イギリスの裁判の進め方や法廷での具体的な争点をていねいに追っていて、それがとにかく面白いです。

裁判開始までに、関連のある資料を開示するよう双方が請求し、それらを元に何年にもわたってリサーチを積み重ねるのですが、開示資料には手紙や日記まで含まれているのです。そうしたプライベートな記録も、請求があれば提出しないといけないのです。

弁護団は、アーヴィングの著作の記述と、彼が出典として示した資料を徹底的に照らし合わせていきます。その一つ一つの立証場面が実に細かくて感心します。

裁判記録や、リップシュタットが詳細につけていた日記をもとに、彼女の心情も隠さず盛り込んで書かれているので、歴史もの・裁判ものでありながら、小説のように読むこともできます。

一部事実関係を確認したい記述があったので、全面的におすすめかは保留ですが、論争的な史実に関していいかげんなことを言ってはいけない、ましてや自説を通すために歪曲したり不適切な抜粋をしたりしてはいけないということを知ることができる本だと思います。






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by chekosan | 2018-01-21 23:14 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)