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by chekosan

ゾフィア・ナウコフスカ『メダリオン』(松籟社 2015)

「ナチス・ドイツ占領下のポーランドにおける、ユダヤ系も含むポーランド市民の経験をめぐる証言文学」(訳者解説より)

ナウコフスカは両大戦間期からポーランドの文壇で活躍し、戦後はナチス犯罪調査委員会の一員として市民の声を聴き集めた。それらの一部を証言を主体に編んだのが本書。

本書は最初期のホロコースト文学、ナチス犯罪文学の一つに数えられる。ポーランドでは社会主義期においても学校などで積極的に読み継がれてきたという。

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収められているのは8編。いずれも短いが、事実は小説よりの言葉どおりのエピソードが続く。

特に一編目は強烈である。いまだたくさんの死体が残されたままの解剖学研究所の検分の様子から始まり、その遺体の保存の仕方や、そこで行われていた解剖学実験の実態がさらりと語られる。

以下、家畜用の貨物車両にすし詰めにされての移送、列車から脱出したものの負傷して線路脇でただただ弱っていく女性の話、収容所でのサディスティックな行為の数々など。

こうしたエピソードは、さまざまな自伝や証言集、小説などに頻繁に登場する。誇張でも、もちろん創作でもないことがあらためて確認できる。

訳者解説には、その後、明らかになったことなどもかなりの紙幅を割いて記述している。そのなかで、もっとも強烈な一編目で言及される、人間の脂肪から作った石鹸の話についての調査結果(2006年)も紹介されている。

それによれば、たしかに同解剖学研究所では、石鹸作りを含め人体を使ったさまざまな実験を行なってはいたが、そのために人を殺したり、そこで作られた石鹸が製品として市中に流通したりといった事実はないとのこと。

しかしインターネット上では、いまだ、当時ドイツでは人間の脂肪から作られた石鹸が大量生産品として出回っていたという言説が見つかるという。







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by chekosan | 2018-01-15 10:38 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)