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by chekosan

イェジー・コシンスキ『ペインティッド・バード』(松籟社 2011)を教えてもらった@同志社大学特殊講義「文学作品で知るロシア・東欧」

同志社大学法学部の「特殊講義 文学作品で知るロシア・東欧」は、
一回の授業で一作品を読むというスタイルを採っています。

毎週一作品を15週、読み続けるのはかなり大変なので、
先日は、各自が好きな作品を紹介する回を設けました。

トルストイ『イワン・イリイチの死』、ゴーゴリの『』、
アルセーニイ・タルコフスキーの詩集『白い、白い日』(映画監督のタルコフスキーの父)

など、科目名には載せながら読めていなかったロシアものや、

キェシェロフスキ監督の「デカローグ」のノベライズ版、
そして、コシンスキ『ペインティッド・バード

といったポーランド出身者による作品が紹介されました。

『ペインティッド・バード』は紹介してくれた学生によると、
『走れ、走って逃げろ』(映画「ふたつの名前を持つ少年」)と主人公の境遇が似ているが、
もっと酷い話で、でもとても好きな作品だというので、さっそく入手して読んでみました。



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なるほど、これは酷い。

思わず息をのむ、あるいはひいいいぃと声を上げたくなるようなシーンのオンパレードです。

第二次世界大戦中、田舎に疎開した主人公は、混乱のなかで親と連絡が取れなくなります。
浅黒い肌、黒髪、黒い目のため、災いをもたらすユダヤ人か「ジプシー」のみなしごと思われ、
行く先々で虐待を受け、農村を転々とします。

彼自身が被ったり目撃したりする農民や兵士たちの残忍な行為は、
殴る蹴る撃つ焼く系の暴力も、性的な暴力も、あまりに過激すぎて嘘っぽく思えてきますが、
他の作品、例えばアレクシェーヴィッチの一連の作品や、クリストフの『悪童日記』、
あるいは戦争体験者の手記や自伝などにも、似たような場面がたくさん出てきます。

あとがきで作者自身が書いているように、この作品自体はフィクションですが、
決して創造の産物ではなく、当時こうした行為が頻繁に起こっていたのは事実のようです。

この作品は、賞賛とともに激しい批判も巻き起こし、
作者は故郷をことさらに悪く描いたと脅迫も受けたそうですが、

それでもかつての友人は、
「自分たちや家族の多くが戦争中にくぐりぬけた経験に比べれば、牧歌的な小説である」
という手紙を送ってきたとか。

厳しい自然環境、蔓延する伝染病、戦争による人心の荒廃という背景が
残虐性や性的な倒錯を強め、頻発させたのは違いないでしょう。

しかし、時代は変わった、今はもうこんな野蛮なことは起こっていない、
と言えないのが恐ろしいところです。

いやそれにしてもこわい。強烈でした。
悪夢を見るかもしれないので、繊細な人にはおすすめしません。

そうそう、一つ興味をひかれた箇所がありました。
赤軍の部隊に図書館があって、主人公がそこで読み書きを教えてもらうところです。
本を運んで勉強したり読書したりできるようにしていたのですね。

同じ頃、アメリカ軍も本国から大量の本を受け取っていたとか。
戦地でも、いや戦地だからこそ本が求められたのですね。
他の国はどうなんでしょう。気になるところです。



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by chekosan | 2017-12-27 23:18 | ロシア・東欧に関する授業@同志社 | Trackback | Comments(0)