読書メーター2017年7月のまとめ
2017年 08月 01日
読んだ本の数:9
読んだページ数:2011
ナイス数:191
亡命ロシア料理の感想
これぞウィットとユーモア。ソ連からアメリカに亡命した男性二人組によるロシア料理への愛溢れるエッセイ。亡命してきたとはいえ、手をかけて生み出される故郷の味は恋しいもの。ファストフードな「南国」アメリカでそれを再現する難しさを、ちょびっと皮肉を効かせて綴る。各章のタイトルが文学作品のパロディだったり、各国の料理や国民気質を程よくイジったりと、知的な刺激に満ちている。笑える名言に付箋が乱立した。多分何度もひもとくな! 壺と木のおたまとサワークリームとウォッカを揃えて、ロシア料理を作りたくなる一冊。おすすめ!
読了日:07月07日 著者:ピョートル ワイリ,アレクサンドル ゲニス
読んじゃいなよ!――明治学院大学国際学部高橋源一郎ゼミで岩波新書をよむの感想
作家の高橋源一郎氏のゼミが、岩波新書の著者を招いて特別講座を受けたものを岩波新書にしたもの。哲学の鷲田清一、憲法の長谷部恭男、詩人の伊藤比呂美という贅沢さ。ゲスト講義の部分は対談の収録なので、臨場感があり、内容も興味深い。ページの関係か、どうやらかなり割愛しているらしいが、他のコーナーをなくして、ゲストの話をできるかぎり載せてほしかった。
読了日:07月18日 著者:高橋源一郎
不便益という発想~ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも 行き詰まりを感じているなら、 不便をとり入れてみてはどうですか?(しごとのわ)の感想
なんでも自動、機械化、人任せにしていると、危険を察する感覚や意識が薄れたり、自分ならではの使い方ができなくなったり、身体能力が低下したりする。あえて一手間、一思考すること(不便)がかえって安全性や独創性や能力開発(益)に繋がることがあるという発想。事例としては、オートロックではなく鍵を差してひねって開閉すること、自分で組む旅行、リハビリなど。我が家もあえて今どきコレ?みたいな道具で家事をしたりしている。時間と手間をかけてでも得たい安心感、安全性、感覚は確かにある。
読了日:07月21日 著者:川上浩司
いのちの証言: ナチスの時代を生き延びたユダヤ人と日本人の感想
著者は森鴎外の舞姫のモデルを見つけ出したベルリン在住の作家。本作では第二次大戦中、ベルリンの日本大使館がユダヤ人女性を雇い、匿っていたという話を聞き、真相を調査するという内容。前半は資料調査でわかった日本人によるユダヤ人保護の他の事例、後半はベルリンで生き残った数少ないユダヤ人生存者の体験談の聞き取り。それらも興味深いが、ベルリンにいくつもある負の歴史の記念碑や、小学校での歴史教育でユダヤ人迫害について調査させているという話がたいへん興味深い。歴史を伝えようとする不断の取り組みは大いに参考にしたい。
読了日:07月24日 著者:六草 いちか
素描・杉原千畝の感想
第二次大戦中に赴任先のリトアニアで多数のユダヤ人に通過ビザを発給して欧州からの脱出を助けた外交官・杉原千畝氏ゆかりの場所や人を精力的に訪ね、その際に得た関係者の証言や書簡などから千畝氏の生涯や人となりを描き出そうとする著作。著者の千畝氏への強い思い入れや、こうあってほしいという千畝像が色濃く反映されている。
読了日:07月27日 著者:小谷野裕子
ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか? (講談社+α新書)の感想
いや面白かった。著者は構成作家をしていたが、実家の寺を継ぐため帰郷し、石川県羽咋市役所の職員になる。情報収集、情報発信、すばやい行動で、過疎集落を限界集落でなくしたり、農産物をブランド化したりと、少ない財源で次々に周囲が驚くアイディアを実行して、市への注目度を上げることに成功する。日本人は近い存在ほど過小評価するから、メディアに情報を流して、外部から注目、評価してもらうという戦略は参考になる。なにより「評論家」にならずに実行すること。何もしないことほど悪い策はない。肝に銘じたい。
読了日:07月28日 著者:高野 誠鮮
「ホロコーストの記憶」を歩く 過去をみつめ未来へ向かう旅ガイドの感想
ベルリン、アムステルダム、日本でホロコーストの記憶を残そうとする施設や取り組みについてまとめている。厚めのA5ノートくらいのコンパクトな本だが内容は濃い。地図、写真が豊富で、説明もわかりやすい。この本を持って各地をまわりたい。おすすめブックガイド、おすすめ映画リスト、HPリスト、ワークショップの案内も。児童生徒から一般まで勉強になる一冊。おすすめ。
読了日:07月31日 著者:石岡 史子,岡 裕人
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