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by chekosan

秘密警察書庫見学とT.ガートン アッシュ『ファイル―秘密警察(シュタージ)とぼくの同時代史』

この夏、ベルリンとプラハに行きました。

目的の一つは、ベルリンの旧東ドイツ秘密警察関連の施設を見学することです。

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秘密警察というのは俗称で、保安を統括する国家機関のことです。
対外的な諜報活動とともに、国内の反体制分子を見張る役割も果たしました。

1989年の民主化以後、問題となったのは主に後者の活動の方です。

特に東ドイツとチェコスロヴァキアは国民に対する監視が強かったといいます。
両国では、異常に多くの人たちが秘密警察で働いたり協力したりしました。

でも、秘密警察に関係した人たちをどう「処遇」するか、
あるいは秘密警察の作成した文書をどう扱うかで両国の対処はかなり違いました。

私は以前、チェコスロヴァキアの秘密警察(StB)に関わった人びとを
公職から追放する法律について論文をまとめました。

チェコスロヴァキアの民主化と公職適否審査法(ルストラツェ法) : ルストラツェの法制化とその背景
チェコスロヴァキアにおける公職適否審査法(ルストラツェ法)をめぐる諸問題


その後、少し時間が空いてしまいましたが、
他の旧共産主義諸国の施策との違いについても知りたくなり、今回の見学に至ったわけです。


以下の3枚の写真は、現在の文書書庫で私が撮影したものです。

書庫は、月一回、一般に公開されます。シュタージ博物館とは別の入り口です。
追加料金はいりませんが予約が必要です。

係の人に従って2時間ほどの見学ツアーに参加します。
見学は無料、ドイツ語または英語の説明があります。撮影も可能です。
ただし、勝手に見て回ることはできません。一箇所動くたびに施錠、解錠されます。

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『ファイル 秘密警察とぼくの同時代史』(みすず書房 2002)は、
東ドイツの秘密警察(Stasi シュタージ)の監視対象となった、
イギリスの歴史学者でジャーナリストのティモシー・ガートン・アッシュが、
自分に関するシュタージのファイルを読み、
密告をしていた人たちや彼らを監督していた秘密警察職員を訪ねるドキュメンタリーです。

彼は、自分に関する機密書類を公開請求して、
思いがけない人々が情報提供者だったことを知ります。

当時つけていた日記などども照合し、自分でも忘れていた過去を思い出していきます。
そのうえで、文書に登場する「密告者」たちに話を聞いて、事実を確認していきます。

そのなかで、シュタージが作成した文書にはいくつもの小さな間違いがあることを確認します。
情報提供者と目された人物が実は別の人であるとわかるケースもありました。

もしも自分が他の資料や当該人物への確認をせずに、
シュタージの記述だけにもとづいて、誰かを「密告者」と告発していたら、、、?

実際、内容の精査なしに「吊し上げ」られた人は何人もあったようです。
そして、失職したり、自殺したりといったことも起こっていたといいます。

ガートン・アッシュは、自分を「密告」していた人たちに直接話しを聴いた結果、
彼らをそうさせた生い立ちや背負ってきたものに一定の理解を示します。

そして、イギリスの諜報機関にもインタビューを試みます。
その結果、わかったのは、、、



と、まるでスパイ小説のような趣もあるノンフィクションです。

ガートン・アッシュ自身の「過去」をたどる形をとっているので、
やや情緒的な表現が多く、参考文献や出典などは示されていません。
「読み物」色が強いと言えるでしょう。

が、その分、冷戦期の東西欧州の緊迫した状況を追体験したり、
ドイツの「過去の清算」をどう捉えるかを著者と一緒に考えたりできると思います。


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by chekosan | 2016-08-14 22:44 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)