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by chekosan

ドイツへの旅で、パウゼヴァング『片手の郵便配達人』を読む(みすず書房 2015)

8月1日から11日(9泊11日)で、ドイツはベルリンとチェコのプラハに行ってきました。

共産主義時代をどう振り返ろうとしているか、
ともに情報統制や秘密警察の監視が厳しかった両国を見比べるのが目的です。


旅のお供は『片手の郵便配達人』にしました。
出発前にパウゼヴァングの『みえない雲』を読み、衝撃と感銘を受けて、
この作家と訳者の文章を続けて読みたいと思いました。

そうしたところ、本書を棚にみつけました。
以前に新聞の書評でみつけて読まねばと買っておいたものです。
これはドイツに行くのにちょうどいいと持っていきました。




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◇◇◇

世界大戦末期のドイツの村での話です。
主人公のヨハンは17歳で出兵します。
戦地で片腕をなくし、兵役を免除されて故郷に帰って来ます。

愛する母もヨハンの不在の間に亡くなっています。
ヨハンは「私生児」で、父は不明です。

故郷に戻ったヨハンは来る日も来る日も郵便配達にいそしみます。
配達にまわる村々の人たちを気遣い、できるかぎりのことをしようとします。
村々の人たちも、ヨハンを愛し、信頼し、助けてくれます。

厳しい冬を経て、美しい春を迎えるころ、村々の人々に届ける手紙は、
愛する家族の無事の便りよりも、死亡通知が増えていきます。

やがて終戦を迎えるのですが、それは新たな混乱と支配、復讐の訪れでもありました。

戦闘場面を描かずして、戦争が辺鄙な田舎の人々にもたらした様々な悲劇を
静かにじわじわと伝える話です。

戦争はごくごく普通に暮らしていた人々を加害者にも被害者にもさせます。
心中、ヒトラーや戦争を批判的に見ているヨハンもまたそうです。
村の人や、よそから避難してきた人たちもそうです。

この人たちがなぜこんな目に、こんなことにという出来事が起こり、
人の優しさと残酷さを同時に味わうことになる小説です。

◇◇◇

パウゼヴァングの著作、やはり読みやすく、しかし衝撃的でした。
小学校教諭をしながら100冊近くの著作を発表しているということで、
ほかの邦訳作品も読もうと思います。





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by chekosan | 2016-08-12 12:06 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)