読書メーター 2016年4月のまとめ
2016年 05月 01日
一週間近く寝込んでの授業開始で、意気込んだわりに伸びませんでした。>3<
でも、読書メーターやまちライブラリーのイベントで読書友達が増え、
以前からのお友達も交えて活発な本談義ができて、
充実感と今後の展開への期待感を得られた月でした。
今月のイチオシは、アガタ・クリストフ『文盲』かな。
5月はいろんな分野の本をたくさん読みたいな。
◇◇◇◇
2016年4月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2748ページ
ナイス数:553ナイス
夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)の感想
森見氏は学生に人気で本作も学生のおすすめに挙がっていたが、『四畳半神話体系』にあまり入り込めなくて後回しになっていた。先日京大で学会→進々堂でランチしたのを機に手に取ったところ、思いのほか楽しく読めた。ありえないファンタジーなんだけど、京都なら起こっててもおかしくなさそうに思える。小柄なのに「そこにお酒があるかぎり」飲んでしまう黒髪の乙女に親近感を覚えたが(笑)、彼女が実は一番人間離れしている気もする。とりあえず緋鯉のぬいぐるみ背負いたい。文庫版解説の羽海野チカさんのイラストがイメージ通りで可愛い!
読了日:4月5日 著者:森見登美彦
さよならドビュッシー (宝島社文庫)の感想
衝撃的な悲劇からのはじまり、王子様のような人物とのスポ根的展開と主人公のあまりの短期間での回復ぶりは昔のテレビドラマやマンガを彷彿とさせる。ピアノ曲の解釈や指使いが詳細に記述されるかと思えば、難関というピアノコンクールの高校生の部一次予選がショパンのエチュード2曲、本選がドビュッシーのあの2曲というのはちょっとバランスを欠いているなあという印象。ミステリの筋書も予想通り。ちょこちょこヒントがちりばめられていたし。とツッコミどころは多いが、お布団のなかで一気に読んでしまうくらいには面白かった。
読了日:4月6日 著者:中山七里
書くことについて (小学館文庫)の感想
S・キングといえば我々の世代は「キャリー」ですよ。テレビで映画を観ていてラストで「ギャアアァァー!!!」と絶叫したら、母がすっ飛んできてテレビをブチっと消してしまい、オチを見逃した思い出…。本書はキングの小説作法です。『キャリー』や『ミザリー』の誕生秘話や、小説を書くための具体的なコツや世に出るための方法を開陳しています。でも作家になるための一番の肝は「たくさん読み、たくさん書くこと」。キングは日に数時間読書し、毎日規則正しく執筆しているそうですよ。私は小説は書かないけど、大いに見習わなくては!
読了日:4月10日 著者:スティーヴンキング
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)の感想
『週刊読書人』で生命倫理学の専門家が対談で取り上げていて読み応えがあったので手に取った。が、原作は予想外に淡々と静かに進む。主人公とその友人たちは臓器を提供するために生み出されたクローン人間なのだが、隔離された環境で育ったため、自分たちの「使命」を決定済みのこととして受け入れている。クローン人間という点はフィクションなのだが、臓器移植の技術が進展したことで、彼らのように臓器を提供するために「つくられる」子どもたちが現実にいることを対談では指摘している。彼らも「運命」を淡々と受け入れているのだろうか。
読了日:4月12日 著者:カズオ・イシグロ
文盲: アゴタ・クリストフ自伝 (白水Uブックス)の感想
『悪童日記』作者の自伝的短文集。一文も本全体も短くて、あっという間に読めてしまうが、読み終えるのが惜しくて仕方ない珠玉の一冊。著者はハンガリー動乱後、4ヶ月の赤ん坊を抱いて亡命する。4歳から本を読んできた著者にとって、亡命後の数年は「文盲」の日々であった。仏語で読み書きできるようになってからも、母語のようには扱えない。それでも作家として挑戦し続けるときっぱり宣言する。母語でないからこその簡潔な文体が胸に迫る。通勤電車で涙した。
読了日:4月13日 著者:アゴタクリストフ
ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)の感想
『悪童日記』三部作の二作目。作者とその祖国ハンガリーがたどった歴史が色濃く反映された、悪夢がえんえんと続くような隠微な世界。前作では登場人物に固有名詞が与えられず、主人公の双子は区別がつかないように描かれていたが、本作では「ふたり」や周囲の人々にも名前が与えられる。文体や表現方法も『悪童日記』のスタイルとはかなり違う。そうした表現上の変化は主人公の成長を示すためなのかと思いきや、実は三部作の展開において重要な意味を持っていることが本作の最後でわかる。間をおかず第三作へ突入!
読了日:4月15日 著者:アゴタクリストフ
第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)の感想
『悪童日記』三部作完結編。と言っていいのか。作品が進むごとに「真相」が明らかになっていくとも読めるし、本作のタイトルが暗示するように三作をそれぞれ別物として捉えることもできそう。その方が納得できる気もする。三部作全体の展開に関しては評価が分かれそう。ただ、三部作のなかで展開する「ふたり」とその周囲の人たちのエピソードには、大国に蹂躙されてきた東欧の小国がたどった歴史が影響していて大変興味深い。とりわけ第二作、三作目の舞台となる作者の故郷の街の様子は目に浮かぶように描かれていて、とても惹かれる。
読了日:4月16日 著者:アゴタ・クリストフ
コミュニティとマイクロ・ライブラリーの感想
民間の小規模な図書館であるマイクロ・ライブラリーについて語り合うサミットの3年目の記録。全国950にのぼるマイクロ・ライブラリーの一覧も収められています。こうした催しの参加者は多様です。官民、規模にかかわらず、本という共通項があれば緩やかに繋がれること、一緒に何かをしたり刺激を与えあったりできることを証明しています。こういう流れに大学関係者はあまり関わっていないとのこと。大学外での本を介した交流は大学人にとっても刺激になるし、お役にも立てると思うのですが。せっせと情報発信していこうと思います。
読了日:4月18日 著者:礒井純充,奥野武俊,森忠延,吉成信夫,他
天職は寝て待て 新しい転職・就活・キャリア論 (光文社新書)の感想
タイトルを鵜のみにするとちょっと違う。ボーっとしていても天職は降ってこない。でも「好き」「得意」を仕事にしようとか「なりたい自分」に向けて足りないところを埋めていこうというキャリア論とも違う。先はわからないし、「好き」と「憧れ」を混同すると失敗する。仕事はある程度じっくりがっつり取り組まないと、その楽しさや適・不適はわからない。ただ新しい展開が降ってきたときに掴めるよう日々の備えは必要。それは表面的なハウトゥーや流行りの思考メソッドなどではなく、広がり深まりのある読書で培おう等々ふむふむと納得。
読了日:4月28日 著者:山口周
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