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by chekosan

映画「独裁者と小さな孫」(マフマルバフ監督 2014年)

イラン出身でパリを拠点に活動している亡命映画監督の作品です。

ある国でクーデタが起こり、懸賞が掛けられた大統領と、
その後継者となるはずだった孫が逃げる2日間を描くお話です。

独裁者であった大統領と孫は変装して国内を逃げ惑うのですが、
その道中で悲惨な光景に次々遭遇します。

ついさっきまで自分と体制に従順だったのにあっさり寝返る側近、
傍若無人に民を脅し、強奪、強姦する兵士たち、
家族を失った原因を作った独裁者に恨みを持ち、
見つけたら殺してやると息巻く人々。

風が吹き荒れる荒涼とした砂地の国土、
きらびやかな首都とは大違いの貧しい地方には、
一体何を生産して国を維持してきたのか想像できないほど、
とにかく何もないのです。

自分の体制が生んだ歪みを、これでもかというほど
小さな孫の目の前で突きつけられていきます。

祖父と孫の命を懸けた逃避行に感情移入していく観客としては、
逃げ切ってほしい、助かってほしいと思ってしまいます。

特に孫はとにかくかわいらしい。
天使のように美しく、何もわかっていない純な存在です。

しかし、孫はともかく、祖父は民にとって憎き人物。
二人はどうなってしまうのか。どうなるべきなのか。
観る側に判断をゆだねられるラストです。

撮影はジョージア(グルジア)なので、
東欧の社会主義国になぞらえて観ることもできますし、
監督の出身の中東の独裁主義の国になぞらえることもできます。

が、あくまで作品の舞台は架空の国、
ほとんどの登場人物に固有名詞が与えられていないので、
どこか固有の国の出来事としてではなく、
独裁体制が生む悲喜劇として観ることができます。
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以下は、細かい部分。ちょびっとネタバレありです


この映画で、名前がはっきりと繰り返し出てくるのは、
ある少女とある女性だけです。2人は同じ名前です。

どの国にもよくある女性の名前ではあるのですが、
この2人がそれぞれ独裁者と小さな孫にとって
どういう存在だったかということを考えあわせると、
彼女たちがなぜその名前なのか、
どうして彼女たちだけが名前で呼ばれるのかには
おそらく意味(意図)があるのではないかと思います。

もう一つ、こちらは読みとり違い、記憶違いかもしれませんが、、

主人公の大統領も、その女性に、ある名前で呼ばれます。
それが、逃げる孫に偽名として大統領が使う名前と同じなのです。

ということは、その名前はおそらく大統領の本名ではなく仇名か何かで、
純粋だった青年時代を象徴するものとして使われているのではないかと思われます。



いや、それにしても孫が可愛いかった!
段ボールかぶるシーンが一番お気に入りです。
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by chekosan | 2015-12-30 23:30 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)