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by chekosan

映画「善き人のためのソナタ」(ドナースマルク監督 2006年)

ベルリンの壁崩壊の数年前の旧東ドイツが舞台です。

主人公は国家保安省(シュタージ)の役人で、スパイ養成大学の教官でもあります。
見た目からしていかにも冷酷非道、任務第一といった感じです。

当代の人気劇作家がどうやら怪しいと狙いを定めた主人公は、
作家の恋人である主演女優に魅了され、
作家の自宅の監視、盗聴を自ら買って出ます。

そして、彼らの監視にはさまざまな思惑が絡んでいることを知り、
作家とその仲間たちの反体制的な言動を把握しながらも、
上司に報告することをためらうようになります。

作家、女優、主人公たちの運命やいかに…!
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シュタージは国内外の「国家の敵」の諜報に当たっていた、いわゆる秘密警察です。
どんな国家にも諜報機関はあるものですが、
旧東独やチェコスロヴァキアはその監視が非常に厳しかったと言われます。

東独にとって反体制とみなされる、あるいはその兆候のありそうな人々は
四六時中監視され、自宅が盗聴されるのは当たり前、
周囲の人々も「協力者」として「リクルート」され、
動向を密告させられていました。

映画のなかで、尋問時に椅子に薄い敷物を敷いておき、
臭いを浸み込ませてガラス瓶に保存するという場面があります。
何かの捜査のときに警察犬に臭いをかがせるためです。
これも実際に行われていました。
この映画に描かれている監視や密告の様子は誇張でもなんでもないのです。

そのような体制が多くの悲劇も生むのですが、
それでも純粋な思い、愛や友情があり得たということは
映画のタイトル「善き人のためのソナタ」が示しているとおりです。

決してハッピーな話ではありませんが、希望や勇気も持たせてくれる一本です。


シュタージは壁開放の知らせが入るや最重要書類を破棄したとも言われますが、
そのときにシュレッダーにかけられたものも含め大量の資料類は
第三者機関(通称ガウク機関*)が管理し、関係者に資料を公開しています。

*反体制活動家であったヨアヒム・ガウク氏(現ドイツ大統領)が率いたため。


以下は印象的だった場面。ちょっとだけネタバレありです。

監視される劇作家のアパートメントは広いお部屋なんです。
4LDKくらい?で一部屋一部屋も広い。
インテリアもおしゃれで、いかにも優遇されている芸術家の住まいです。

かつては名声を集めていたのに、
政府ににらまれてほされてしまった老演出家の住まいは、
狭くて、隣人?の夫婦喧嘩が丸聞こえなのですが、
たくさんの本に囲まれた雰囲気のある空間。
私はこちらの方に憧れてしまいました。

どちらとも対照的なのが、体制のエリートだった主人公の住居。
薄っぺらい造りの簡素な集合住宅です。
社会主義国で大量に建てられたパターンの建物です。

そして、最後の場面で、主人公が入っていく書店。
このお店、目抜き通りに面する石造りの立派な建物で、
店名がなんとも皮肉なのです。

このお店、実在の書店だったのですが、残念ながら2008年に閉店、
しかし、2015年3月には文学サロンとして復活したようです。行きたい!

ネットで検索すればすぐわかってしまうのですが、
この映画をご覧になっていない方はググる前にぜひ映画で確認を!
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by chekosan | 2015-12-30 22:17 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)