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by chekosan

映画「裁かれるは善人のみ」(スビャギンツェフ監督 2014年)

クリスマスイブにロシア映画を観てきました。

クリスマスとは何の関係もない、華やかでもなく清らかでもない、
官僚制や腐敗や不正に人生を左右されていく一家の話です。

主人公は寒村で自動車修理を営む、ちょっと怒りっぽい男性。
その妻は後妻で、若くて美人だけど、疲れがにじんでさみしげな雰囲気。
先妻の息子は13,4歳くらい? 義母に反抗してばかりです。

祖父からの土地を市に収用されそうになっている主人公は、
モスクワから敏腕弁護士を連れてきて裁判を起こし、市と争います。

訴えは予想通り却下。
弁護士は市長の弱みを握って巻き返しをはかるのですが…
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主人公たちと、市長、裁判官、警察とのからみのシーンなどを見ていると
社会主義時代の話のように思えて仕方ないのですが、
登場人物が使うのがスマートフォンだったり、
市長の執務室に掛けられているのがプーチンの写真だったりするのを見て、
ああこれは現代の話なんだとハッとさせられます。

実は、この映画の着想のもとになったのは、
アメリカで実際にあった、土地収用が引き起こしたある悲劇的な事件だそうです。

大きな権力に翻弄される個人の苦しみ、悲劇という構図は、
ロシアでもアメリカでも日本でも、社会主義でも資本主義社会でも起こる話。

原題は「リヴァイアサン」。
旧約聖書に登場する海の怪物であり、
トマス・ホッブズが個人が抵抗できない国家を象徴するものとして使った言葉です。

それを象徴しているかのように、
舞台となる寒村の海岸には鯨のものらしき巨大な白骨が放置されています。

そして、鯨の骨を模したかのように、
何艘かの朽ちた船もひっくり返ったまま海に放置されています。

そんな寒々しい光景に最後に現れるあるものとは…

静かに、しかし受けた衝撃がじわじわとしみこんで後を引く映画です。
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by chekosan | 2015-12-28 00:21 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)