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by chekosan

映画「ターナー、光に愛を求めて」(原題 Mr.Turner)

ターナー(1775~1851)はイギリスを代表する画家です。
20年前に観光で行ったロンドンのテート美術館で作品を鑑賞しましたが、
とにかく大~きなキャンバスにキレイな海の絵を何枚も描いた風景画家、
というイメージくらいしか残りませんでした。

今回この映画を観て、そのイメージが覆されました。

この映画では、当時のイギリスの風俗、生活、美術界の様子、
貴族とそうでない人たちの世界の違い、
ターナーや周りの人たちの家族関係、男女関係等々が
生々しく、しかしあくまで淡々と描かれます。

ターナー自身も、背が低く、だらしなく太った、
ちょっと猫背でドスドス歩く醜男として登場します。

しかも、一体何語を話しているかわからないような発音。
この映画って舞台イギリスじゃなかったっけ…?と思うくらい。

ロンドンの自宅の家政婦ハンナも同じく、
薄汚れた服で、ひょこひょこと姿勢悪く歩き、滑舌も良くない。
そして何かの病気を患っているよう。

そこにお父さんが登場。
この父と子がそっくり。そして非常に濃密な関係なのです。

父は理髪師、腕一本で稼ぎ、息子に読み書きを教え、
絵の才があるとわかると、それを最大限伸ばすべく尽力する。
画材の調達、調合、自宅ギャラリーでの顧客対応。

ターナーが若くしてロイヤル・アカデミーで活躍する画家となったのも、
このお父さんあってのことということがわかります。
この父子関係、なかなか感動を誘います。
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しかし、お父さんラブなターナーは女性にはちょっといいかげん。
2人の子をなした女性の面倒も見ず、存在すら隠し通すような人です。

家政婦として、助手としてターナーに尽くすハンナにも手を出すけど、
なんだかいつも獣チック… 

かと思うと、旅先の宿の女主人の素朴で機転の利く、
心落ち着く会話に癒され、次第に恋心を募らせるところ、
女主人が未亡人となってのち二人で過ごす時間などは、
とても美しく、とても詩的に描かれています。

その対比がまた生身の人間ターナーの人生を感じさせます。


ターナーは幸運にも若くして才能を認められ、
生きている間に当代一の有名画家というポジションを確立しますが、
年齢による衰えを自覚せざるを得なくなったり、
有名人ならではの嘲笑や揶揄にさらされたり、
金にあかせて自分の作品を買う貴族や金持ちに接したりして、
自尊心を傷つけられたりもします。

そんなところも見どころです。


なにより、ターナーが旅する各地の風景と、
それを絵にした彼の作品が実に美しいです。とにかく美しい。


当時のイギリスの雰囲気を感じられる点でもおすすめです。

アカデミーの展覧会会場に作品を搬入してからも
画家たちがまだ絵筆を握って制作しているところとか、

ミルクを飲むカップは陶磁器ではなく錫製(?)で
ちっちゃいポットみたいなんだ~、とか、

豚の顔丸ごと市場で売ってるんだ!とか、

やっぱりイギリスは何はさておき紅茶なんだねえ~とか、

貴族の英語はわかりやすい!とか、

娼婦館はあるのに、貴族の娘が「私は子猫♡」みたいな歌を歌うだけで
青年貴族がいたたまれなくて席をはずしたりするんだ、この頃って、とか、

そうか、ヴィクトリア時代か、服もふるまいも表では地味にしていた時代か、
画面に登場する女王も地味やわ、そういえば、とか、

ヴィクトリア女王はターナー好きじゃなかったんだ、
それでほとんとテートギャラリーに収蔵されてるのか、とか。
(※この部分はパンフの解説で補いました)


あまり幅広い層にうける映画ではないと思いますが、
絵画が好きな人、イギリスが好きな人にはおすすめです。

これまた150分と長いですが、ドラマ性や刺激が低いわりには
飽きずに眠くならずに観ることができます。
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by chekosan | 2015-06-28 12:49 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)