中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan

関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊コーナー、4月分が公開されました。

今月は、1942年にチェコのプラハで実際に起こったナチス幹部暗殺事件を素材にした小説です。
この書評コーナーで初めて小説を取り上げました。

歴史小説なのですが、「ハイドリヒ暗殺事件を小説に描こうとする作者ビネを小説で描いた」ような小説です。チェコスロヴァキア愛に満ち満ちています。

研究者は、このテーマは面白い、この人物は魅力的だ、この国が好きだ、
もっと知りたい、他の人にも知って欲しいと思いながら調査を進めているので、
その過程はとてもエキサイティングで、本当は披露したくなるところなんですよね。
だから本書をとても羨ましく思いながら読みました。


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# by chekosan | 2018-04-15 11:18 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
ナチス政権下のドイツ、ハンブルクが舞台。

語り手の「ぼく」は、ベアリングを生産する工場主の息子で、お金には困らない。

ナチスが頽廃、敵性音楽とみなすジャズに夢中で、夜な夜なオシャレして踊り狂う不良坊ちゃん。

体制に与して党員になっている父親を軽蔑しつつ、その富と特権も享受していますが…

先日観てきた映画「ジャンゴ」と同じ時代。伝説的ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトのことも二ヶ所ほど出てきます。

以下若干ネタバレあり。


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主人公はブルジョワの子弟であり、資本主義の申し子です。父親が軍需産業で儲けているおかげで放蕩三昧だし、兵役も免れ、必死で出世しようと思わなくていい。

でも、彼はそういう出自だからこそ、「お国のために」を嫌い、政治経済文化の統制を唾棄します。

ユダヤ人とみなされる友人たちやその親類の不幸に悲しみ、憤り、手助けし、協力します。

彼の父親の工場でも、強制収容所の囚人たちを労働力として「活用」しているのですが、有能な技術者や働き手である囚人たちを痛めつけ虐げる親衛隊員を金やコネや色で籠絡して、囚人たちが多少はマシな状況でいられるようにします。

このあたりの展開は、シンドラーのリストみたいですね。

主人公たちは、政治活動を通してではなく、ジャズ愛好、闇の経済活動でもって、自由を束縛する体制にウラから半逆する、そして虐待される人々を救済するのです。

ジャズへの愛はホットだけど、「ぼく」の語り口は終始クール。最後までカッコつけて終わります。

カッコいい、痛快、と読むか、鼻持ちならんズル賢い坊ちゃんめ、けっ、と読むか。

私はリアルだなと読みました。

史実をヒントに、丁寧に調べて書かれた小説だと思います。

当時のヒットナンバーを流しながら読むと臨場感がアップします。



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# by chekosan | 2018-04-12 06:29 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
3月に続けて3冊読んだ田村和子さん(本の紹介はこちらこちら)が翻訳されていると知って読みました。

タイトルにあるように、ナチスドイツがつくったアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のなかに結成された女性音楽隊でバイオリニストを務めた女性の回想録です。

著者のヘレナさんは音楽の専門教育を受けたポーランド人女性です。下宿させた人がレジスタンス(抵抗組織の一員)であったという理由で、母とともに逮捕、投獄され、ビルケナウ収容所に入れられてしまいます。ヘレナさんは、音楽の経験が買われて、女性音楽隊の第一バイオリンに選ばれました。

ビルケナウは、アウシュヴィッツ強制収容所の支部のようなところなのですが、規模としてはアウシュヴィッツよりもずっと大きいです。あの悪名高いガス室が数棟あるところです。

そんなところに音楽隊が!?と思いますが、強制労働の行き帰りに行進曲を演奏したり、親衛隊の娯楽としてコンサートを催したりといった役割を果たすよう結成されたのです。

収容者のなかでは比較的ましな待遇を与えられ、生き残る可能性も高かったそうですが、それでも通常では考えられないようなひどい環境でした。

音楽は人々の癒しにもなり、音楽隊の命を長らえさせる手段にもなりましたが、同時に音楽隊員たちは、自分たちだけが(多少)優遇されているという後ろめたさ、ガス室で多くの人が殺されているすぐ側で音楽を奏でることへの苦悩も抱え、長く精神的に病む人もいたそうです。


音楽隊の指揮、編曲にあたったのは、ユダヤ人のアルマ・ロゼでした。彼女も収容者の一人で、しかも親衛隊がもっとも蔑んだユダヤ人でしたが、著名な音楽家であったこと、威厳に満ちた態度、音楽隊のレベルを非常に高めたため、親衛隊からも、「フラウ」という敬称をつけて呼ばれたそうです。「メス豚」だのと人間扱いされなかった収容所では異例のことだったそうです。

アルマ・ロゼは一切の妥協を許さず、音楽隊の演奏水準をどんどん高めました。しかし、アルマは急死します。毒殺といううわさもあるそうです。


著者のヘレナさんは、父も兄も亡くし、一緒に収容された母も病気で失います。音楽隊の仲間たちの励ましや協力でなんとか耐えぬき、解放の日を迎えることができました。ヘレナさんの故郷はソ連領になってしまったため、クラクフの音楽隊の仲間の一人の家に一時世話になり、音楽の仕事に打ち込むことで乗り越えてきたということです。

強制収容所の回想というとユダヤ人と思いがちですが、ヘレナさんのようにポーランド人や、そのほかの人種、国のひとたちも収容されていました。やはりユダヤ人収容者とは若干視点や感じ方が違うので、そのあたりも興味深く読みました。

ヘレナさん自身の出身を反映してか言葉遣いが上品で、音楽隊という特殊なところにいたということもあって、収容所体験の本としては痛い、汚いシーンが少なく、そういう記述が怖い人にも読みやすいと思います。



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# by chekosan | 2018-04-10 06:34 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
ホロコースト記念館での講演会のあと、館のスタッフの方と少しお話をして、また福塩線で福山駅に戻りました。

せっかくの遠出なので、お城のそばの福山市人権平和資料館を見学しました。


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資料館は1階が福山空襲、2階が人権(部落差別)の展示になっています。そんなに広くはないのですが、なじみのない土地ということもあり、初めて知ることも多く勉強になりました。

特に印象的だったのは、この写真にあるガスマスク。

社会主義圏だった国の懐古展的なものを見に行くと、かつては学校に子ども用ガスマスクが用意されていたという展示があります。

ガスマスクとはなんと冷戦時代の社会主義圏らしい一品、と思っていましたが、日本も戦時中、用意していたのですね。それにしても、これで何が防げるのかという素材・つくりです。


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もう一つ、食糧難、薬の不足にどう対処したかというコーナーで衝撃を受けたのがこちら。


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かたつむりって、解熱作用があるのですか!?
た、食べるのでしょうか?

建物の外には、広島の被爆アオギリ2世と、長崎の被爆クスノキ2世が植わっていました。

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福山城一帯は文化ゾーンになっていて、ほかにも歴史博物館や美術館や文学館があります。今回は入りませんでしたが、また機会があれば立ち寄りたいと思います。


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# by chekosan | 2018-04-09 18:18 | 博物館、資料館
広島県福山市のホロコースト記念館に、オランダのアムステルダムにあるアンネ・フランク・ハウスのロナルド・レオポルド館長の講演会を聴きに行ってきました。

ホロコースト記念館には、昨年の夏、杉原千畝の足跡を辿るリトアニア旅行の直前に、杉原に関する講演会を聴きに行きました

館長さんが、アンネの父であるオットー・フランクさんと知己を得たことをきっかけに開設された教育施設で、ホロコーストの流れや、アンネの部屋の再現や、日記の精巧な複製品などが展示されています。

小さな施設なのですが、わかりやすく、とてもいい展示だったので、またイベントなどがあれば行きたいなと思っていましたが、思ったよりも早い再訪となりました。

今回は一人だったので、新幹線の福山駅から福塩線に乗り換えて、2駅目の横尾駅から徒歩で。本数が少ないので講演開始の1時間前、ちょうど開館時間に到着となりましたが、講演前にじっくり展示を見ることができて、いい感じでした。

写真なかほど、橋のそばの黒い建物が記念館です。



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◇◇◇

アンネ・フランク・ハウスは、『アンネの日記』のアンネ・フランクの一家が、1942年から45年まで2年1か月にわたって息をひそめて隠れていたアムステルダム市内の隠れ家を保存し、公開している建物です。

レオポルド館長さんのお話によれば、年間130万人が訪れ、入館まで4時間待ちという日もあるそうです。
ユダヤ教で一番重要な祝日以外は年中無休だそうで、その一日しかない休館日に、建物のメンテナンスをするそうです。

館長さんは、わかりやすい英語で話されたのですが、原稿を用意している節はなく、終始、聞いている人を見て、語りかけられました。ホロコースト記念館の方が通訳をされたのですが、館長さんの詩的な語りかけを損なわない、すばらしい訳でした。

◇◇◇

ところで今回、驚いたのは、日本語に訳される前にワッと笑いが出ることが何度もあったこと。それも一人や二人ではなかったことです。

決してアクセスが良いとはいえない場所にある施設に、急遽開催が決まったという英語での講演会に100名の定員いっぱいまで人が集まり、熱心に話に耳を傾けるだけでもすごいことだと思うのですが、そのうちのけっこうな割合の人々が英語の講演を通訳なしでも理解できるというのは、ちょっと予想外でした。

前回も思ったのですが、こういう場所があるというのは大事ですね。人が集まり、育つ場となっているのだろうと思います。今回も子どもさんたちが聞いておられましたが、こういう水準の場に参加することで、それがその子たちの標準になっていくというのはすばらしいことだと思います。

こちらには、またお邪魔することがありそうです。学生も連れて行きたいなあ。

杉原千畝に関するパネルや現物の貸し出しも始められたので、展示の企画も考えたいと思います。




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# by chekosan | 2018-04-08 22:02 | 博物館、資料館 | Trackback | Comments(0)
新年度が始まりました。4/5-6 流通科学大学の新入生合宿でハチ高原に行ってきました。

1日目  
4:00起床 始発の次の電車で出発
8:10教室集合  出欠確認など
バスで3時間ほどのハチ北高原へ


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インストラクターさんたちによるアクティビティの間、教員は学生の様子を観察します。

22:30点呼 教員が手分けして部屋を回りました。
23:00ごろ 教員用の宿へ移動。日付が変わるころ就寝しました。

2日目
6:00起床 荷物をまとめて学生の宿へ移動
7:30朝食
8:40点呼

インストラクターさんたちによるアクティビティは、1日目よりも作戦が必要なものになっていきます。

2日間の振り返りをして、

私からは、話をよく聞き、ズルすることなく課題に取り組んでいて、今後に期待が持てるクラスだと全体講評をしました。


14:30バス出発 3時間ほどかけて大学へ。
17時ごろ到着 研究室に寄って荷物整理して帰途につきました。

週明けからは通常授業が始まります。一年付き合う学生たち、充実した活動ができるといいな!


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# by chekosan | 2018-04-06 19:16 | 大学教育 | Trackback | Comments(0)
流通科学大学の一年生対象科目「文書表現Ⅱ」から派生した課外活動についてまとめた教育実践論文が出ました。

「正課内教育および正課外活動における読書推進活動の展開 ー流通科学大学初年次科目「文章表現Ⅱ」の取り組みー」
 『流通科学大学高等教育推進センター紀要』第3号(2018年3月号)

2017年度は、授業の成果物である書評POPを兵庫県下10書店で採用していただいたブックフェア、

有志学生による授業成果物の学園祭展示企画、図書館総合展での学生によるポスター&口頭発表、

学生が立ち上げたビブリオバトルや読書会、図書館サークルなど、

初年次生向けの基礎の基礎である、読んだり書いたりといった科目からさまざまな課外活動が発生しました。

学内外の多くの方からのまなざしと知的刺激と評価を受け、文化活動を促進する学生リーダー候補が育ってきました。

今回は、この科目と課外活動を一緒に練り上げてきた桑原桃音先生との共著です。

2018年度は、一緒に活動してくれた学生たちに、より一層授業運営に関わってもらい、科目を越えた文化活動を展開できればと思います。


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# by chekosan | 2018-04-05 09:10 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
実在のギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトを主人公にした映画「永遠のジャンゴ」を観てきました。

ジャンゴはジプシー出身の大人気ギタリストです。若い頃のヤケドで左手は3本指しか動かせなくなるのですが、独自の奏法を編み出して、パリの大きな劇場を満員にするスターになります。

*ジプシーという呼称は蔑称であるとして最近は使われなくなってきていますが、この映画は1943年のナチスドイツ占領下のフランスが舞台なので、映画の中でもパンフレット類でもそのまま使われています。

ナチスドイツはユダヤ人だけでなく、ジプシーも迫害しましたが、ジャンゴはその演奏を評価され、ベルリンに演奏旅行に来るように言われます。

彼のファンであり愛人であるフランス美女にナチスのジプシー迫害について知らされたジャンゴは、妊娠中の妻と年老いた母と、スイスに逃げようとします。

しかし、スイスを目前にして、なかなか脱出が果たせず、待機している間に再び捕まり… 危うしジャンゴ! どうなるジャンゴ!



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大作、感動、大冒険、という感じではなく、わりと淡々と進んでいくのですが、天才ギタリストということで、演奏シーンがたっぷりなのが良いです。

ナチスはジャズを敵視し、ほとんど演奏しないように通達するのですが、聴衆はジャンゴたちの演奏が興に乗れば乗るほどノリノリになって羽目を外していきます。音楽の力はすごいなあ。だからこそ規制、統制、禁止するのですね。

映画のキャストには、本当のロマ(ジプシー)の人たちが出演しているそうです。主役以外のミュージシャンたちも本物とか。だからか、演奏の姿が自然だったのも良かったです。

劇中の曲もどれもよかったです。踊り出しこそしませんでしたが、もっともっと演奏シーンが多くても良かった!

同時期を舞台とした小説『スウィングしなけりゃ意味がない』も買ってあります。次に読もうと思います♪











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# by chekosan | 2018-04-03 21:13 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所見学を主目的とするポーランド行きからのつながりの本一色の3月でした。

「サウンド・オブ・ミュージック」は舞台はオーストリアですが、ナチスドイツとの併合時代の話なので繋がっています。こちらは関西ウーマン「信子先生のおすすめの一冊」で紹介しました。


3月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2216
ナイス数:260

『サウンド・オブ・ミュージック』で学ぶ欧米文化『サウンド・オブ・ミュージック』で学ぶ欧米文化感想
映画「サウンド・オブ・ミュージック」の歌と音楽、せりふ、視覚・聴覚的演出を6人の専門家がやさしく読み解いた本。映画を観るだけでも十分楽しめるが、背景にある文化や歴史を知ることによって、もっと作品を味わうことができるということを教えてくれる。月イチ連載の書評で詳しく紹介。https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=201287 書評を書くにあたって、久々に映画も鑑賞。監督の音声解説も。以来、親子でずっと歌いっぱなし。ザルツブルクに行きたくてうずうず♪
読了日:03月03日 著者:野口 祐子,山口 美知代,浅井 学,青地 伯水,出口 菜摘,横道 誠


展示の政治学展示の政治学感想
「展示」という行為のなかにある政治的行為について、複数の専門家がそれぞれの観点や事例から考察する論集。硬派な本だが一気に読んだ。いずれの論稿も勉強になった。見る、みせる、秘匿するという行為のなかにある権力関係、それを一方的でなくすにはどうするか、展示の形態や捉え方の変遷、展示をどう読み解くか、どう教育に生かすかなどなど。19c末以降の美術展示は、国や貴族、富裕層による富や権力の誇示から、知識とセンスの誇示に変わり、誰にでも開かれているようで実は大衆や下層階級を排除しているのではないかという考察が面白い。
読了日:03月09日 著者:宮下 規久朗


他者の苦痛へのまなざし他者の苦痛へのまなざし感想
戦争や刑罰の写真を撮ること、見ること、その力の効果や限界に関する考察。前史としての絵画や版画における残酷なシーンの表現についても。例示がたくさん出てくるが、本書の中には図版は一切ないので、その度にインターネットで画像を確認するなどしていたら、なかなか進まず。そして、文章から想像したのと実際の写真がかなり違っていて、やはり写真のもつ力は大きいと再認識したり。ソンタグの考察をしっかり咀嚼、検討するよりも、例示や細かい事実に、ほぉおー、へえぇ〜、と唸って、寄り道して、終わってしまった感じ…
読了日:03月11日 著者:スーザン ソンタグ


HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)感想
クンデラのように、というかクンデラ以上に、作者が作品中に顔を出し口を出す小説。むしろほぼドキュメンタリー。プラハを治めるSS幹部の暗殺事件について、作者が知ったきっかけから、調べを進めていく過程が盛り込まれている。そこがとても面白い。我々の業界では研究対象への愛をあからさまに文字で示すことは通常できない。小説ならでは。羨ましく思いながら読んだ。映画との比較など詳しくはブログに記録。https://chekosan.exblog.jp/28205007/ 今年の夏はハイドリヒ暗殺関連現場めぐりをしよう。
読了日:03月21日 著者:ローラン・ビネ


ワルシャワの日本人形―戦争を記憶し,伝える (岩波ジュニア新書 636)ワルシャワの日本人形―戦争を記憶し,伝える (岩波ジュニア新書 636)感想
著者はポーランド語の翻訳者。ドイツ占領下のワルシャワで抵抗運動に携わった人々や、彼らを記念する博物館などについて、わかりやすく語るように紹介する本。パヴィヤク監獄に収容された地下運動家の女性が少しずつ少しずつ仕入れた材料で作った日本人形にまつわる話や、そのエピソードを日本のアーティストがパフォーマンスにした話、日本の援助でシベリアから救出され、のちに「孤児部隊」を率いてワルシャワ蜂起に参加した青年の話など、興味深い事実が続く。コルチャック先生やコルベ神父の記述も。本書で紹介されたところをぜひ巡りたい。
読了日:03月22日 著者:田村 和子


生きのびる―クラクフとユダヤ人 (母と子でみる)生きのびる―クラクフとユダヤ人 (母と子でみる)感想
クラクフのゲットーや強制収容所を生き延びた人たちの体験を聞き取ったり、体験記から要旨をまとめたりしたもの。『シンドラーのリスト』に出てくる女性や、クラクフで証言活動を行っている男性、イスラエルに渡り回想記や小説を著した女性たちの体験はたいへん過酷でショッキングである。写真も大判なので臨場感がある。この本のために撮られた写真でも、先月(2018年2月)見てきたクラクフとかなり雰囲気が違うことに驚く。この間にクラクフはずいぶん変わったようだ。もっと見ておきたかったと臍を噛んだ。

読了日:03月24日 著者:田村 和子,山本 耕二

『ワルシャワの日本人形』と『生きのびる』についてはブログにも詳細


戦争を記憶する 広島・ホロコーストと現在 (講談社現代新書)戦争を記憶する 広島・ホロコーストと現在 (講談社現代新書)感想
このところ、歴史がどう記憶されるか、伝えられるか、それは何がどう影響するかといったことを扱った諸分野の文献を読んでいるのだが、やはり私は政治学の視点が合うと思いながら本書を読み進めた。参考になる事実、分析、表現がたくさんあって、付箋がニョキニョキ。なのに、なぜか全体をまとめられない本。。。
読了日:03月26日 著者:藤原 帰一




ワルシャワの春―わたしが出会ったポーランドの女たち (母と子でみる)ワルシャワの春―わたしが出会ったポーランドの女たち (母と子でみる)感想
ここ数日で同じ著者の本を続けて3冊読んだ。本書では、著者自身が出会ったポーランドの女性たちを紹介。戦争、社会主義体制、戒厳令、民主化と、激しく変化する社会で、それぞれの人生を切り拓いてきた人たち。最後に、ポーランドにおける女性の地位や扱われ方、その変化についてもまとめてある。詳細はブログに。https://chekosan.exblog.jp/28214759/  2003年発行の本なので、その後、さらにポーランド社会と女性の状況は変わっているはず。同じようなコンセプトの本を書いてもらいたいなあ。

読了日:03月27日 著者:田村 和子


鳥のいない空―シンドラーに救われた少女鳥のいない空―シンドラーに救われた少女感想
ホロコーストを生きのびた女性の回想記。人間はどこまで残虐になれるのか。夜を徹して読んでいたら、収容所の夢を見た。こういう状況で果たして自分たちは気を強く持って耐え抜けるだろうか…生ぬるく育った我が子らなど一日も持たないかもしれない…などと思うと悲しくなって下息子の細い体を抱きしめてヨシヨシしたのであった… 著者ステラさんのその後については田村和子氏の著作『生きのびる』『ワルシャワの春』で紹介されている。詳しくはブログに。https://chekosan.exblog.jp/28215997/

読了日:03月28日 著者:ステラ ミュラー‐マデイ

読書メーター

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# by chekosan | 2018-04-01 23:53 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
「シンドラーのリスト」によって救われた女性の回想記です。夜を徹して読みふけってしまいました。

著者のステラさんは、クラクフの豊かな家庭に生まれますが、ゲットーに移らされ、さらにはプワシュフ強制収容所に入れられます。母の強い意志で、子どもを預ける施設には入らず、年齢を偽って工場で労働に従事します。

子どもの施設に入っていれば、毎日の何時間にもおよぶ点呼や労働は免れ、読み書きも習えたかもしれないのですが、母のこの判断は正しいことが判明します。子どもたちは施設からまとめて連れ出され、絶滅収容所に送られて殺されたのです。

ステラさんも怪我や病気、飢えに苦しみますが、母や周囲の大人に支えられ、なんとか生きのびます。

伯父の計らいで、ステラさん一家は、オスカー・シンドラーがチェコに開く労働収容所に移る一団に配属されます。シンドラーの工場では、暴力や殺人がなく、食事も良好だったので、これで助かると思われました。

ところが、手違いなのか、女性たちを載せた貨車はチェコではなくアウシュヴィッツに着きました。そこでステラさんは傷が化膿して、健康状態をひどく悪化させます。

死ぬのを待つだけの伝染病棟で、女医の手厚い世話を受け、少し回復したステラさんは、シンドラーの収容所に移送される寸前に合流することができました。

チェコの収容所では、シンドラー夫妻の統制のもと、虐待や殺人は控えられていました。それでもどんどん食糧難が深刻になりますが、ほとんどの人たちが、ソ連軍による解放まで生きのびることができました。

ステラさんは10代前半だったため、恐怖や不安で震えやしゃっくりがとまらなくなったり、アウシュヴィッツ入所のときに剃られた毛がなかなか生えてこなかったりと、心身に強い痛手を負います。

両親と兄と揃って終戦を迎え、母方の祖母が存命だったので、クラクフに戻って住むところも確保できましたが、自分たち一家をリストに載せてくれた伯父夫婦は解放直前に亡くなってしまいました。

本書は収容所から帰還したステラさん一家が祖母の家にたどりついたところで終わっていますが、あまりハッピーエンドという雰囲気ではありません。ステラさんは、その後も「なぜ生き残れたのか」と冷たい目で見られ、健康状態もすぐれず、苦しみは長く続いたそうです。戦後編も出版されているので、翻訳を期待したいです。

ステラさんのその後については、田村和子『生きのびる クラクフとユダヤ人』『ワルシャワの春 わたしが出会ったポーランドの女たち』で少し紹介されています。

トマス・キニーリー『シンドラーのリスト(シンドラーズ・リスト)』や映画「シンドラーのリスト」と併せて読むと、この時期のクラクフのホロコーストの状況やシンドラーの活躍がよくわかります。





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# by chekosan | 2018-03-28 14:06 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)