夏の旅行の機内では、行きに3本、帰りに1本、映画を鑑賞しました。
行きは、こちらの2本↓↓と、「バービー」(バービーは面白かったけど記事にする予定なし)。
この2本は、どちらもセリフ主体で、そんなにドラマティックではない地味な映画でした。
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帰りは、Irena's Vow (イレナの誓い)を観ました。どうやらうら若き乙女が、ナチ・ドイツ占領下のポーランドで何人ものユダヤ人を匿ったものらしい。それは見なくては!です。
看護学生だったイレナは、ドイツによるポーランド侵攻で家族と離れ離れになります。
町でドイツ軍に捕らえられたイレナは、軍需工場で強制労働に就かされたあと、見た目も「アーリア系」でドイツ語も使えたため、ドイツ将校用レストランの給仕に回されます。
さらに、軍服の修繕室の監督も任されるようになります。修繕室には、ゲットーから通いで10人ほどのユダヤ人が配置されていました。イレナは彼らと心を通わせ、何かと便宜を図ります。
働き者のイレナは、てきぱき働いて信用を得ながら、将校たちの会話を聞き取り、一斉検挙の予定をユダヤ人らに伝えるなどして、少しでも犠牲になる人を減らそうとします。
工場の責任者である国防軍の少佐に気に入られたイレナは、少佐の別邸の家政婦に任命され、収用された邸宅の改築も監督することになります。
食事中の将校らの会話から、SS(親衛隊)によるユダヤ人掃討作戦の計画が近づいていることを知ったイレナは、少佐の別邸の地下室に修繕室のユダヤ人らを匿うことを思いつきます。
とはいっても、いったいどうやって彼らを別邸へと誘導するのか、果たして匿い続けられるのか…!?
というお話です。
ざっとしたあらすじだけでもじゅうぶんスリリングですが、映画は全編、緊張感に満ちています。
ドイツ占領下のポーランドでユダヤ人を匿っていることがバレれば、家族一同、裁判なしで処刑という厳罰が待っているのに、最大12人もの成人を匿うのです。潜伏しているユダヤ人の具合が悪くなったり、誰かにユダヤ人を匿っていると密告されたりといった危機も起こります。
主人公の機転と勇気に惹きつけられ、ときに、ヒーー!となりながら、夢中で観ました。
ホロコーストものは今でも毎年何本も映画になっていますが、この作品なんかは、受け入れられやすい物語ではないかと思います。日本公開しないのかなあ。
それにしても、これが実話ベースとは驚き。
そこで、もっと情報がないかと探したところ、回想録が邦訳されていることがわかりました。
イレーネ・グート・オプダイク∥口述、ジェニファー・アームストロング∥著述『インマイハンズ ユダヤ人を救ったポーランドの少女』(全日法規 2000年)です。
これがまた、読み始めると止まらない!
事実は小説より奇なり。いやいや、映画以上です。
映画は、回想録に書かれたうち、ユダヤ人を匿って救った部分をクローズアップして、かなり忠実に再現してあります。
回想録でも、ユダヤ人を匿っていたときの話はボリュームもあり、内容も濃いのですが、実はイレナさん、その前後も大変な経験をされているのです。
看護学生としてポーランド軍と行動を共にし、一時は森の中で潜伏生活を送ります。
ソ連軍に捕らえられて酷い目に遭ったあと、捕虜として看護助手としてソ連軍の病院で働きます。そこでも危い目に遭いかけますが、親切な人に助けられてソ連軍から逃れ、しばらく平穏に暮らしました。
家族のもとに帰れるチャンスが訪れますが、彼女を窮地に陥れた人物のせいで、窮地に陥ります。なんとかそこから脱出しますが、ドイツ占領地に入ると今度はドイツ軍に捕らえられてしまいます。そのあとからが、映画の話になります。
イレナさんは匿っていたユダヤ人を逃すことに成功したあと、パルチザンとして活動します。そのことで、またしても危険人物とみなされ、捕まってしまいます。
このときも脱出することができて、彼女が救ったユダヤ人たちの援助で、ユダヤ人を装って難民として保護されます。イレナさんはようやく安全に暮らせるようになりますが、戦争中に見たショックな光景が頭を離れません。
そんな彼女のことを知った国連からの職員が、彼女から話を聞き、アメリカの市民権を得られるようにしてくれます。
アメリカに渡ったイレナさんは、世話をしてくれた人とアメリカでばったりと再会し、結婚します。ずいぶん年月が経って、ポーランドにいた妹たちの消息もわかり、再会を果たします。
映画のお話の前後もそれぞれ映画にできそうな、なんとも波乱万丈な人生です。
いやいやこんな状況を耐え抜いたものだ、こんな窮地をよく切り抜けられたものだ、というエピソードがずっと続きました。
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若干余談ですが。
原作では、イレナさんはドイツ系に見えることで比較的優遇されたように書かれていました。たしかに巻頭に載っている写真でも、そのように見えます。
映画のイレナ役のソフィー・ネリッセさんは、本人とはあまり似ていませんし、ドイツ人っぽくは思えませんでした。でも、ちょっとポテッとしたお顔立ちがかわいらしくて、演技も役どころに合っていたと思います。
この記事を書くのに確認したところ、映画「やさしい本泥棒」の主人公を演じていたとわかりました。「やさしい本泥棒」は、ポーランドへ行く機内で観た映画だったので、なんだか奇遇~~ ( ´∀` )
あの少女が、いい娘さんになって~~、と近所のおばちゃんみたいな感慨に浸ったのでした。
ということで、日本での公開、求む!