中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan
大阪は中之島の国立国際美術館で開催中のクリスチャン・ボルタンスキー展に行ってきました。

ここはいつもチケット売り場の横に企画展の大きな看板が立ちます。絶好の撮影ポイントです。しかしほとんど誰も撮ろうとしない。なぜだろう。


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今回は高2息子と行きました。現代美術で、しかも暗い重い感じの作風なのでどうかなと思いましたが、じっくりたっぷり鑑賞していました。平面のものを見るだけでなく、音、動き、空間全体のつくりを体感する展覧会で、テーマ性があるので、面白かったようです。

客層も、普段の美術展とは若干違っていたような。若い人の割合が他よりも高かったような気がしました。


この展覧会、ほとんどが撮影可でした。作家以外の人の顔写真を使った作品はだめだったのかな?

この作家の作品は、会場に合わせて組み立てるものが多いようで、同じ作品でも会場が違うと違う演出になるようです。ですので、パンフレットや図録の写真とちょっと違っていたりするのも面白いところです。


スタート地点の部屋は撮影不可です。若い頃の作品である「咳をする男」の映像が流れていて、これがまあ不快な映像です(^-^; 音はヘッドフォンで聞けるのですが、3秒くらいでこれはええわと断念しました(笑)


そこから、ボルタンスキー自身の顔写真を投影しているのれん状のカーテンを通って次の空間に進みます。じっと見ていると、幼少のときの顔から60代の顔へと変わっていきます。

坊やの頃のボルタンスキー。
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おじさんになっていくボルタンスキー。

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作家の顔が一巡したところで、次の間へ。

この展覧会、作品の表示がないので、入り口で配られたパンフレットが頼りなのですが、会場が暗くて文字が読めません。電球の下に行って読もうとしたら、実はその電球は作品の一部だったりしました(笑)

なんかこう、そういう、“いまどこにいるのか、何を見ているのか、何を表しているのかがすぐにわからない状態で、暗い迷路を手探りのように進んでいく感“がまた面白いのです。


「保存室(カナダ)」という作品。古着が大量に吊るされています。


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「保存室」で「カナダ」といえば、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で、収容者から取り上げた持ち物を集めて保管していた建物の通称です。

ボルタンスキーはフランス出身です。父はユダヤ人だったため、ドイツの占領中、彼の両親は見せかけの「夫婦喧嘩」をして「離婚」し、父は床下に隠れていたそうです。ボルタンスキー自身はその間に生まれたので、親子は収容所に連れて行かれることはなかったのですが、このような家族の体験や、知人などから聞いたホロコーストの様子が、のちのちまでトラウマになったとのこと。

であるからでしょう、彼の作品には人が存在していたこと、存在しなくなったことを示すものが多いようです。


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奥に矢印のようなものが? と思ったら、コートの周りに電球を配した作品でした。


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コートと電球でしかないのですが、人が「かつていた」ように思わせます。


「アニミタス(白)」と「アニミタス(チリ)」という作品の奥に、「ぼた山」という作品が見える空間。二つの作品の間を通ってもよいし、アニミタスの横を回ることもできます。アニミタスはどちらも映像です。風鈴の音がずっと流れています。


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アニミタス(白)の手前にあるのは、これです。紙を丸めたもの。ここから先通るな、というような線があるわけではないので、近くまで寄っていけます。わざとじゃなくても蹴ったりして動いてしまいそう。絶対的な状態ではない作品。


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アニミタス(チリ)の手前にあるのは、枯れ草に花。

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そして、奥には「ぼた山」と「発言する」から成る空間が。

ぼた山は大量の黒いコートから出来ています。これもまた大量死を想起させます。

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「発言する」のヒトガタとシンクロする息子。


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あとで、このヒトガタは前に立つと、ささやき声で言葉を発するらしいと知り、ガーン! 正面に立ったとき、あら?何か機械がくっついているなあ、細工がありそうだけどなにもないなあ、と思って見ていたのに。声なんて聞こえてこなかったように思う~(´;ω;`)


展示も終盤。死神かと思ったら、死の天使だそう。


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「来世」の部屋はなんだか文化祭のお化け屋敷みたいで(←失礼?)、すごく気に入りました。展示の順番は天使が先なのですが、天使に導かれて来世に行った、みたいなストーリーを脳内に作ってしまいました。

来世の文字はもっとくっきり繁華街のネオンみたいに光っているのですが、私が写るよう息子に撮ってもらったらこんなこと↓になってしまいました。私の来世どないやねんと思わせる怖さですが、かなり気に入ってます。


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到着しちゃいました。

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作品それぞれも思わず見入ってしまうのですが、今回は「会場全体のつくりかた」も一つの作品でした。足を運んで、その空間に身を置いて体感することに大きな価値がある展覧会です。しかも高校生は無料でした。ありがたい!


さて、恒例、展覧会のお楽しみ、ミュージアムグッズですが、そんなにたくさん種類はありませんでした。非クリアファイル2種類と図録を購入。このクリアファイルはかなりかっこいい。ほかにはマグネットやTシャツ、マグカップ、ハガキなど。

関連書籍にかなり惹かれましたが、重くて高額なものが多かったので、あらためて、にしました。


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関連企画である同館のコレクション展も鑑賞しました。こちらは企画展のチケットで入場できます。

近くでランチをしたあと、さらにもう一つ展覧会へ!(つづく)




# by chekosan | 2019-02-17 21:35 | 美術 | Trackback | Comments(0)
同志社の「政治学」の授業で、要件かなり緩めなブックレポートを出したところ、ある学生が選んだ一冊。

著者は78年に欧州に渡って以来、長期に渡ってアンネの足跡を辿る取材を重ねてきた。

そのため本書には、現在とは違う収容所跡の雰囲気や受け入れ体制の様子や、当時を知る関係者の生の声など貴重な体験や証言が散りばめられている。そうした証言者自身の体験や言葉の方が興味深かった。

特に「アンネのストーリーはごく一部」だという証言者の言葉は重い。もちろん一人の人物の人生を追うことにも意義があり、矛盾・対立することではないが。

それにしても写真が少なくて残念。記者時代に撮った写真は個人では使えないのかな。アンネが隠れ家に移る前に住んでいた家周辺や、アウシュヴィッツに送られる前にいた収容所なども訪ねているのに、一切写真がない…


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ところで、アンネの父オットー氏も、なぜ日本でここまで『アンネの日記』が人気なのだろうと言っていたそうだが、いまどきの学生もホロコーストといえばアンネが真っ先に浮かぶようだ。

複数の歴史の教科書に載っているのも影響しているのだろう。私の娘時代には既に数種類の関連本が出ていたので、親の影響もあるのかも。

と思っていたら、アンネ・フランク財団のスタッフは、本書の著者に、日本人は戦争の被害者であるという意識があるから被害者の象徴であるアンネに共感するのではないかと問いかけたとあって、なるほどそれもあるかもと。☞文末にそうした趣旨の記事のリンク。

とはいえ、ホロコースト云々関係なく、感受性豊かな少女の日記として共感する読者も多そう。☞こちらもそのような趣旨の記事のリンクを文末に。

実際、別の授業の学生も『アンネの日記』を取り上げて熱く語ってくれたのだが、その学生も、思春期の心理や思索の面、文芸的な面で面白かった、生きていればきっといい作家になったと思うと感想を言っていた。ふむふむ

で、アムステルダムのアンネの隠れ家はなかなかひょいとは行けないし、入場するのに長蛇の列だそうだから、広島県福山市のホロコースト記念館に行けば、実寸大のアンネの部屋と、隠れ家の模型があるよと紹介しておいた。


アンネ・フランクと直接関係はないが、ユダヤ人映画制作者リディア・シャゴールさんの話がたいへん気になった。シャゴールさん一家はオランダ領東インドに逃げるのだが、同地がドイツの同盟国である日本に占領されたため、日本軍収容所に囚われてしまったというのである。彼女の『頭を垂れて』『総統の名の下に』という本を見ることはできないだろうか。


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「戦争被害者として共感?『アンネの日記』日本で人気の理由 イスラエル紙が分析」




後者の論調の記事。

「なぜ、日本人はこれほどまでにアンネ・フランクが好きなのか?
この人気は、ユダヤ教やホロコースト(ユダヤ人の大虐殺)への関心とは無関係だ。
読者の大半を占める若い女性を惹きつけているのは、アンネというひとりの少女の個人的な物語である。日記に豊かに表現された 十代の少女の感性に、アンネとはまったく異なる環境に生きる日本の13~15歳の若者たちから強く共感しているのだ。」







# by chekosan | 2019-02-12 00:38 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)

関西ウーマンの書評連載、2月分が公開されました。

2011年3月11日に発生した東日本大震災で甚大な被害を出した石巻市にある製紙工場の復興の物語です。


工場の再稼働のドラマが一番の読みどころではありますが、全員避難を誘導し従業員の生命を守った担当者、流出物を回収し現場をきれいにして回った作業班など、各々の持ち場や職務に責任と使命を持って当たることの尊さをあらためて感じました。


そして、関西ウーマンFacebookページでも引用していただいていますが、美談だけではなく、危機的な状況で人びとがどのような行動を取りうるのかを知っておくこと、そしてそうした事態に備えることも防災のひとつではないかとあらためて思いました。


本文はこちらから。
https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=201495

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# by chekosan | 2019-02-09 10:37 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
そういえば、ちょうど一年前はポーランドに行ってたわ、アウシュヴィッツを見に。なんだかだいぶ前のことのように思えるけど…

ということで、1964年の映画「質屋」を観ました。

一体なにが、「ということで」なのかというと、この映画の主人公は、アウシュヴィッツで生き延びてニューヨークで質屋をしている男性なのです。

この映画のことは、映画評論家、町山智浩さんの著書『トラウマ映画館』で紹介されていて知りました。町山さんが執筆されたときは視聴が困難だったようですが、その後ブルーレイディスクが販売され、私は容易くゲットすることができました。

でも手に入ってしまうと、なかなか観ないんですよね。今日は映画館にある映画を観に行く予定を断念したので、代わりに家で本作を観ることにしました。

以下、ネタバレありです


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ジャケットを見るだけで全体の雰囲気はわかるというものですが、暗いです。というか、救いがないです…

主人公はまったく愛想のない初老のオッチャン。せっかく先生、先生と慕ってくれている店員や、気にかけてくれる人たちもいるのに、とにかくそっけない。というか冷たい。元大学教授なのですが、教養や知性が発現することすら抑え込んでいる様子です。

舞台も貧しくて治安の悪い地区。そこに持ってこられるような質草はなんの値打ちもないものばかりです。オッチャンはいかにも訳ありっぽい人たちにも情けをかけることなく、1ドルとか2ドルとかしか出してあげません。

店は防犯のため、金網だらけで、刑務所のようです。殺伐としています。

といっても、映画だし、そのうちさすがのオッチャンもほだされていくのかなと思ったら、そんな単純じゃないのです。

冷静沈着な主人公は、妻子が強制収容所で殺された日が近づいて、過去の記憶がフラッシュバックして、だんだんと様子がおかしくなります。

そこで、ようやく人間らしい、感情の乱れが現れるのですが、ここでこういう表情や感情を出させるのかと意外に思うシーンもあります。ちょっとずつ予想を裏切ってくれるといいますか。それが、観た人に、ささくれのように引っかかって残っていく感じがするのです。人間をリアルに描いていると思いました。

プエルトリコ系の不良青年たちとの絡みや話の展開は、「ウェストサイドストーリー」を彷彿とさせます。と思ったら、同時代の作品なのですね。音楽もカッコイイです。

◇◇◇

ホロコーストで生き残った人は過去の体験に苦しみ、さらには生き残ったという事実に罪悪感をもちながら生きていかなくてはなりません。その残酷さを描写するだけでなく、繁栄するアメリカの矛盾のふきだまりのような貧民街での閉塞感も絡めて話を展開しているので、二重三重にしんどくて、二重三重の意味で痛みを覚える作品です。

最後は、それだけはや~~め~~てぇぇぇぇ~~~と心の中で叫んで、目を手で覆って、指の隙間からコッソリ観ました。痛いよう… ><

◇◇◇

そういえば、ルメット監督といえば、「十二人の怒れる男たち」も買って持っていました。こちらも近々観るとしましょう。






# by chekosan | 2019-02-08 16:16 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
京都国立近代美術館で開催中の展覧会「世紀末ウィーンのグラフィック デザインそして生活の刷新に向けて」を観てきました。

美術展はこれまで、いろんなところのいろんなものに行ってきましたが、京都国立近代美術館はなぜか行く機会がなく、今回が初めてです! 


いいお天気になりました。

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今回は、十数年前に初めて大学で教えだしたとき、同じ科目をチームティーチングさせていただいた先生とご一緒しました。先生とは、先日、十数年ぶりに再会を果たしたのですが、お互い、この展覧会を観たいと思っていたことがわかり、すぐさま決行しました。ご縁のある方とは、時間をおいても、お付き合いが復活するものなのですね。


さて、この展覧会、なんと撮影可! ひゃっほ~です! 自館の所蔵する作品で構成しているからでしょうか。


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会場入り口には、こんな粋な演出が! 遠くにウィーンの分離派会館が建っているかのようでしょう?
吹き抜けの向こう側の壁に写真が貼ってあるのです。

分離派会館(ゼセッシオン)には、大昔に行きました。内部のクリムト作の壁画には言葉を失いました。ああ、あそこにはもう一度行きたい。あ、美術史美術館も。あれは見応えがある。


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展示品はリトグラフが大半だったと思いますが、クリムトやシーレの素描などもありました。素描なのになんかこう惹きつけるものがあるのはさすがですね。

展示点数はかなり多く、そのどれもが好みすぎて、そして順路がたいへんわかりづらかったため(笑)、ぐるぐるぐるぐる3巡くらいしてしまいました。

写真撮影可とはいえ、カシャカシャ音を立てるのは憚られるので控えめにして、そのかわり図録を買いました。が、やはり展示してあるのと図録や絵葉書では、だいぶ違いますね。

以下、気に入ったものを厳選して。

なんて素敵な装丁。

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この時期といえば、金。金、金、金ですね。効いていますね~。

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おじさん、かわいい。(おじさんなのか?)

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ミューズを讃える紳士たち。なんかちょっとコミカル♡


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ハッと惹かれた作品。プラハが主題でした! だからか!?

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ウィーンの風景を描いたパタパタ画集。かわいい! 右から2番目、私、大昔に行ったときに連泊したペンションのあたりだと思います。ああ懐かしや。


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手前のぺたぺた並んでいるのはトランプ。デザインかっこよすぎ。でもちょっとゲームしづらそうな気がしなくもない…?

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屋根裏の幽霊たち… きょわいよ…

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分離派スタイルな生活。たまらんイイ~~~~!

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ステンドグラスのデザイン画。これがなんだかものすごく気に入って気に入って。


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アドルフ・ロースの家具の実物も展示されていたのですが、そこだけは撮影不可。よそからの借り物だったからですね。仕方ない。とっても素敵な空間だったなぁ~ 

ほかにもとっても素敵な作品がごまんとあったのですが、これくらいで。



最初に吹き抜け越しに見えたゼセッシオンは、こんな感じで、展覧会場の向かい側の壁に貼ってあります。

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さあ、展覧会のお楽しみ、ミュージアムグッズですが、迷いに迷って、悩みに悩みました。すべて欲しい。しかし、既に一生分のクリアファイル、一筆箋、マスキングテープを持っている… 

で、ぐっと我慢して、図録とマスキングテープにとどめました。

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マントヒヒ柄??

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あと、思わず快哉を叫んだのがこれ。過去の展覧会の図録が買えました! 東ドイツとチェコの映画ポスター展のものです。

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叫びついでに、ムンクの叫び靴下も買いました。今回の展覧会とは何の関係もないですが。ヘンな靴下も実は好きなのです。ヘンな靴下をおろすのは、お泊まりのときのお楽しみにしています。これは、いつおろせるかな?(⌒∇⌒)


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鑑賞後はランチをしながらおしゃべりが尽きず、お茶の時間くらいまで居座ってしまいました。大人になってから、こういう時間をご一緒できる方が増えるというのは嬉しいですね。今度またクリムト展に行きましょうとお約束してお別れしました。

それにしても好き。世紀転換期ごろのウィーンの雰囲気。ウィーンは優先順位低かったですが、久しぶりに行きたいと思いました。




# by chekosan | 2019-02-06 23:53 | 美術 | Trackback | Comments(0)
先日のロシア映画「ヒトラーと戦った22日間」に続き、ソビボル絶滅収容所に関する映画を観ました。

今度は、ホロコーストを取り上げた長編映画「ショアー」のランズマン監督による「ソビブル、1943年10月14日午後4時」です。

ランズマン監督は、2018年7月に92歳で亡くなりました。追悼上映会が数か所で開催されましたが、日程が合わず行けませんでした。こうなると、この先、「ショアー」やその他の作品が上映される機会は、そうはなさそうです。

「ショアー」は大昔にビデオテープに録画したものを持っていて全編視聴したのですが、テープでは保存や映写が難しくなりそうです。そのほかの作品は、ばら売りされていません。ということで、資料として確認したり学生に紹介したりすることも考えて、思い切って決定版BOXを購入しました。

日本での初上映時のパンフレットに新しい原稿を足した小冊子付き。

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ランズマン監督の映画は、関係者へのインタビュー記録と、関係する場所の現在(撮影時)の様子から構成されます。「ソビブル」は、「ショアー」の撮影の一環で撮られたものですが、独立した映画としてまとめられました。

「ショアー」同様、「ソビブル」も、通訳を介してのインタビューがそのまま使われているので、やや冗長な感じもします。しかも、「ソビブル」の登場人物は、同収容所からの脱出計画で重要な任務を遂行した男性一人のみで、風景などの映像も少なく、彼のアップが映画の大半を占めます。

当時はまだ未成年だったこの男性、イェフダ・レルネル氏は、収容所を監視するドイツ兵の殺害を実行した一人です。殺害の場面では、やるべきことをやり遂げた喜びを感じたと証言していました。

貴重な当事者の証言ですが、登場するのが一人だけなので、全体像がわかりづらい感じもしました。

逆に、先日観た「ヒトラーと戦った22日間」では、脱出計画のリーダーとなるロシア兵士サーシャ・ペチェルスキー氏に焦点を当てているので、そちらはそちらで実行グループの人数が少なく感じられました。

どちらも、「ショアー」やその他の情報も入れながら観る方が理解しやすいように思います。

映画でも小説でも研究書でも、制作する人のねらいや注目するところが違えば、描き方が変わります。やはり一つの情報源だけではなく、いろいろなもので補っていく必要がありますね。














# by chekosan | 2019-02-04 18:52 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
年が明け、年度が終わっていく1月。舞台鑑賞、読書、映画鑑賞といったインプットが順調だった1月でした。勢いがついて、娯楽としての読書もできたくらいでした。

1月の読書メーター
読んだ本の数:16
読んだページ数:4559
ナイス数:504

コルチャック先生 (岩波ジュニア新書 (256))コルチャック先生 (岩波ジュニア新書 (256))感想
輪読ゼミで取り上げるので再読。あらためて濃い内容をわかりやすくまとめているなあと。平凡社ライブラリーの近藤二郎『コルチャック先生』の子ども向けという感じだが、お二人はご夫婦だった。康子氏はフランス語版からコルチャックの作品を翻訳している。
読了日:01月03日 著者:近藤 康子



決定版 コルチャック先生 (平凡社ライブラリー)決定版 コルチャック先生 (平凡社ライブラリー)感想
輪読ゼミで近藤康子(二郎氏とはご夫婦)『コルチャック先生』を取り上げるにあたって、コルチャック先生関連本をいくつか続けて読んでいる。本書では、歴史的背景や、コルチャックが影響を受けた教育者や文学者に関しても詳しく紹介されている。トルストイ、チェーホフ、プラトン『国家』を愛読していたらしい。それにしてもコルチャック先生の教育実践、教育思想は興味深い。強く惹かれる。2019年は「子どもの権利条約」ができて30年。重点的に若者たちに紹介したい。ワルシャワやトレブリンカにコルチャック先生詣でもしたいなあ。
読了日:01月03日 著者:近藤 二郎



荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)感想
ジョジョはほぼ読んでいないのだが、「ルーブルNo.9展」で多少興味を持つようになり、先日は子らと原画展にも行った。創作理論コーナーが面白かったので、早速、古書を取り寄せた。そうしたら帯が無くて残念(笑) 内容は意外な驚きの連続。デビューするため、他の漫画家のヒット作を丹念に研究したこと、ジョジョは異彩を放っているようでいて、実は少年漫画の王道・鉄則に沿って作っていること、映画や西洋美術、彫刻から学び反映させていること、事前に綿密にリサーチしていることなど、創作をしない者にも学ぶ点がたくさんあった。 
読了日:01月04日 著者:荒木 飛呂彦

荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟 (集英社新書)荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟 (集英社新書)感想
ジョジョ展で、荒木氏の創作は西洋美術や映画に影響を受けているということだったので、同氏の新書をまとめて購入。本書はさらっとだけ目を通した。中古を買ったのは失敗。やはり帯も欲しかった(笑) 私の関心のある領域では、『存在の耐えられない軽さ』が「アイテムに関して絶品」とのこと。インテリアやファッションなどに注目だそう。買ってあるDVD、いいかげんに観るとしよう。『嵐の中で輝いて』がWW2前夜のドイツが舞台とのことで、余力があったらこちらも観てみよう。
読了日:01月06日 著者:荒木 飛呂彦

荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)感想
ジョジョ展で、荒木氏が映画から創作のヒントを得ているということを知って。ホラー映画への愛がムンムン感じられて面白かった。ホラー映画を観ている意識はなかったが、意外と知っている作品があった。昔はテレビでしょっちゅう洋画を放送してくれていたからなあ。『エクソシスト』『オーメン』『キャリー』『エイリアン』『13日の金曜日』『ジョーズ』『羊たちの沈黙』etc. 『es』『ウェイヴ』といった心理実験ものも紹介している。岸辺露伴のモデルとなった古書探偵が出てくる『ナインスゲート』は観てみたいかも。
読了日:01月08日 著者:荒木 飛呂彦


教育問題はなぜまちがって語られるのか?―「わかったつもり」からの脱却 (どう考える?ニッポンの教育問題)教育問題はなぜまちがって語られるのか?―「わかったつもり」からの脱却 (どう考える?ニッポンの教育問題)感想
おもしろかった。おすすめ。 2010年の本だが古びていない。教育問題が核だが、社会問題一般に関する情報リテラシー、クリティカルシンキングの入門書として有効。サブタイトル〈「わかったつもり」からの脱却〉に言い尽くされている。教育者を目指す若者に向けて書かれたそうだが、大人にも読んでほしい一冊。
読了日:01月11日 著者:広田 照幸,伊藤 茂樹


ハンナのかばん―アウシュビッツからのメッセージハンナのかばん―アウシュビッツからのメッセージ感想
ホロコーストの犠牲になった13歳の少女の遺品のスーツケースをアウシュヴィッツ博物館から教育用展示品として貸借した日本人女性が、持ち主を特定し、カナダにいた兄を見つけ出したという実話。兄妹の体験と、兄ジョージさんと子どもたちとの交流は児童書となり、映画化されて世界中に知られることとなった。かばんは各地を巡回している。ジョージさんは、2019年1月12日、トロントで90歳で亡くなられた。詳しい記録はブログに。https://chekosan.exblog.jp/29184719/
読了日:01月12日 著者:カレン レビン

亡命者の古書店: 続・私のイギリス物語 (新潮文庫)亡命者の古書店: 続・私のイギリス物語 (新潮文庫)感想
輪読ゼミの持ち寄り企画で学生が紹介してくれた。チェコ好きでなくても面白く読めるのではないかと思うが、ちょっとでもチェコ好きなら、とても面白く読める。それにしても記述が細かい。詳細な日記をつけているのかなあ。紹介してくれた学生君が、これを読んで「スリボビツェ」というチェコのお酒を飲みたくなって飲もうと試みた話もしてくれた。ロシアや東欧のお酒を出すお店が京都にあるそう。みんなで行きたいねえと言っている。内容についてはブログに。https://chekosan.exblog.jp/29191199/
読了日:01月16日 著者:佐藤 優

無知無知感想
『存在の〜〜』ほどの読み応えはないが、クンデラらしい生々しい人間洞察がいい。亡命者の祖国への帰還をテーマにしているが、先日読んだ佐藤優『亡命者の古書店』に出てくる亡命者が悲哀や使命感に満ちているのとは対照的なのが面白い。クンデラの描き出す普通の男女は実にリアル。ちょっと滑稽で、ちょっとずるくて、ちょっと痛々しい。
読了日:01月18日 著者:ミラン・クンデラ


富豪刑事 (新潮文庫)富豪刑事 (新潮文庫)感想
気分転換に。深田恭子主演のドラマ「富豪刑事」は、バカバカしくも面白かった。原作では男性が主人公というのが今一つ想像しがたかったが、小説ならではのさまざまな技法を駆使して書かれていて原作は原作でやはり面白かった。作者が出てきて解説し始めたり、登場人物が読者に向かって話しかける場面があったり。映画の演出手法を取り入れているのかな。映画作品のキャラや映画俳優似の登場人物がたくさん出てきているし。いつでもどこでもタバコやら葉巻を吸っているのは時代を感じさせるけど、30年以上経っていても案外違和感なく読めた。
読了日:01月19日 著者:筒井 康隆

祈りの幕が下りる時祈りの幕が下りる時感想
気分転換に。家族が図書館で借りてきた本をパラパラ見たら、我が滋賀県が出てきたので、そのまま先に読んだ😜 東野氏の本は学生にも人気なので数冊は読んでいるが、私自身は特にファンというわけではない。が、サラサラ読める文体には毎度感心する。しかしまぁ、あまり衝撃とか感動はなかった。気分の切り替えにはなったので良しとする。
読了日:01月25日 著者:東野 圭吾




世界の文学〈42〉ゼーガース.ノサック―新集 (1971年)トランジット 死者への手向け 配電盤 標柱世界の文学〈42〉ゼーガース.ノサック―新集 (1971年)トランジット 死者への手向け 配電盤 標柱感想
面白い! 映画「未来を乗り換えた男」を観る前に原作「トランジット」をと図書館経由で取り寄せて読んだら、映画がイマイチでがっかり… 断然、原作!復刊を強く希望! 戦争中に外国へ逃げるということはそう簡単なことではないということがよくわかる。滑稽なほどの官僚主義が生むカオス。悲喜劇というかなんというか。ある男の独白という形をとっているが、独白にしては長い(笑) でも読ませるのです! 詳しくはブログに。https://chekosan.exblog.jp/29218587/ かなりおすすめ。
読了日:01月26日 著者:ゼーガーズ,ノサック


紙つなげ!  彼らが本の紙を造っている紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている感想
ずいぶん前に買っていた本。機が熟したような感じがあって開いた。東日本大震災における石巻の日本有数の製紙工場とその周辺の被災状況および復興の過程を当事者から聞き取って記録したもの。避難の誘導、工場再開のための復旧作業、流れ出た製品の回収など、社員がそれぞれの持ち場や職務に責任を使命を持って当たった様子に感銘を受けた。一方で、悲惨な被害の実態(亡くなられ方や遺体の散乱状況など)や火事場泥棒の様子といったことは、直後の報道では詳細には伝わってこなかったので、あらためてショックを受けた。
読了日:01月27日 著者:佐々 涼子


スターリンの葬送狂騒曲 (ShoPro Books)スターリンの葬送狂騒曲 (ShoPro Books)感想
映画がとても面白かったので原作も取り寄せ。原作はシリアス。ていねいに作られているけど、映画の方がエピソードが多くて、キャラが立っていて濃い。どちらも史実通りではないとのことなのでそこは気をつけたい。映画の感想中心にブログに記録。https://chekosan.exblog.jp/29224874/
読了日:01月27日 著者:ファビアン・ニュリ



気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社感想
積読本だったが機が熟して一気読み。立ち上げの頃から報道で見聞きしていたが、初商品カーディガン一着15万円に予約が殺到したとは! 糸井重里の「ほぼ日」のプロジェクトのPR力はすごい…そんな高価な商品を注文するのは都市の富裕層かといえばそういうわけではなく、むしろ県庁所在地以外からが比較的多いらしい。そうした地域にも高くても良いものを求める人はいるが機会を提供できていないのではないかという分析は面白い。同社が編み手を大勢確保できるのは柔軟な働き方を許容し、決算等の経営状況も共有しているからという点も興味深い。
読了日:01月27日 著者:御手洗 瑞子

チェコ語の隙間―東欧のいろんなことばの話チェコ語の隙間―東欧のいろんなことばの話感想
スラブ系の言葉同士は似ているけど、それだけにこんがらがったりするというのは、そのとおりだなあ。全然レベルは違うが、ワタクシもかつてロシア語、チェコ語、ポーランド語、スロヴァキア語の文章を読んでいたが、しばらくそのあたりの研究から離れたら、すっかりサビサビに。先日映画を観ていたときも、あるセリフを聞き取れたのに、ロシア語なのかポーランド語なのかがわからないという瞬間が。どこまで錆びついているんだか…(~_~;) なのに、こういう楽しい本を読むと、うっかり新しいことばを学びたくなるので困るのです(笑)
読了日:01月31日 著者:黒田 龍之助

読書メーター

# by chekosan | 2019-02-03 15:52 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
たくさんの言語を研究されている黒田龍之助さんの『チェコ語の隙間』を読みました。言葉や文化にまつわる楽しいエッセー集です。

「東欧のいろんなことばの話」というサブタイトルどおり、ポーランド語、チェコ語、スロヴァキア語、スロヴェニア語、クロアチア語、セルビア語、ブルガリア語、マケドニア語、ソルブ語などの習得にまつわる話や、それらを使う国を訪問したときのエピソードなどが短く紹介されます。

スラブ系の言葉同士は似ているけど、それだけにこんがらがったりすることもあるので要注意というのは、そのとおりだなあと思います。

いえ全然レベルは違うのですが、ワタクシもかつて、ロシア語、チェコ語、ポーランド語の順に習ったことがあり、スロヴァキア語の文章も辞書を引き引き、強引に読んだりしたこともありました。が、諸事情からそのあたりの研究から離れていた時期があって、すっかりサビサビになってしまいました。

先日映画を観ていたときも、あるセリフを聞き取れたのに、ロシア語なのかポーランド語なのかがわからないという瞬間がありました。どこまで錆びついているんだか…(~_~;)

と、そんな酷いことになっているのに、こういう楽しい本を読むと、うっかり新しいことばを学びたくなってきて困るんですよね(笑)

ブルガリア語はロシア語をやったことがある人には親しみやすい、しかもブルガリアはなんでもおいしいなんてことを読んだりしたら、じゃあブルガリア語を!とか思ってしまいました。


でも、この本でも書かれているのですが、現地のことばを発すると、やはり現地の方が喜ばれるんですよね。バルト諸国に行ったときは一語も使わずに済ませてしまいましたが、そういう態度はやはりよろしくないですよね。

そこで、リトアニア語はちょびっとくらいわかるようになりたいな、とテキストを買ってあるのですが、全然勉強していません… リトアニア語はスラブ系の言語でもないし、一から独学で勉強するのはやはりきつい。いっそ、日本におられるリトアニアの方に習おうかなあ。 




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# by chekosan | 2019-01-31 21:28 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
1943年に実際に起った、ソビボル絶滅収容所での反乱を描いたロシア映画「ヒトラーと戦った22日間」を観ました。

ヒトラーそのものはカケラも出てきません。原題「ソビボル」のままの方が内容に合っているのですが、それでは日本でお客が呼べないとの判断でしょうか。まあ「ヒトラー」とつければ、時代やテーマがすぐわかって、多少なりともお客さんが増えるというのはわかるのは確かですが… この邦題では、ちょっとB級っぽく思わせてしまうような…


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ソビボルはナチスドイツによって造られた「絶滅収容所」のひとつで、ポーランド東部にありました。列車で連れてこられた人々(多くはユダヤ人)は、ほぼ全員が到着後、すぐさま収容所奥のガス室で殺されました。

ごく一部の人たちだけが残され、技工(死体の金歯を溶かして加工するとか…)、没収品の仕分け(めぼしいものは将校たちが着服するシーンあり)、肉体労働(収容所の拡張のためか。湿地帯を開墾しているシーンあり)などに従事します。

ところが、戦況が思わしくなくなってきたため、ドイツは各収容所を順に解体していき、収容者たちの「処分」を急ぎ始めます。それを悟った収容者たちの一部が脱走を計画し、全員脱出を実行します。

600人ほどが収容所を脱出しようとするのですが、最終的に戦後まで生き残ったのは47人とか50人といった数でした(47人というのは、映画パンフレット中の芝健介氏の解説文による)。

◇◇◇

本作では、脱出を計画したグループのリーダーとなったサーシャにスポットを当てています。サーシャはロシア系のユダヤ人で軍人です。サーシャ役の俳優が、監督・脚本も手がけた作品です。

ちょっと音楽や映像が美しすぎるような気もしました。ドラマティックすぎるというか。グロテスクなシーンも、汚いシーンも、長すぎるんじゃないかと思う虐待シーンもあるのですが、それでも全体として妙に美的な感じがしました。

出てくる俳優さんたちも、美男美女揃いだし。←これは好みの問題もあるのかもしれませんが。私としては、収容者を演じる俳優は男女とも好みなお顔揃いだったので、少々リアルさが欠ける感じがしました。(^-^;

良かったのは、その人物が使っている言語そのままでしゃべらせているところです。こういうテーマの映画で、全部英語だったりするとすごくがっかりするのですが、この映画はいろんな言葉が飛び交っています。

言葉が違うために同じ収容者という立場であってもお互いに意思疎通ができないとか、いくつかの言葉、特に支配者の言語であるドイツ語をしゃべれる人は重宝されたり窮地をしのげたりする場面があります。出身も言葉も習慣も職業もふるまいもまったく違う人々がユダヤ人とひとくくりにされていたことをうまく表していました。

細部は演出や創作も入っているようですが、収容所の建物などはかなり実際に忠実に造ってあるそうです。反乱後、この収容所は解体、消滅され、いま現地を訪ねても当時の様子はわかりませんから、こういう映像は想像の助けになるかと思います。

◇◇◇

脱出計画・実行グループで最年少(?)のトマス・ブラット氏(愛称トイヴィ、映画では靴磨き少年)による脱出計画のリーダー、サーシャ・ペチェルスキー氏のインタビュー記事があります。1980年のものだそう。ペチェルスキー氏の回想録の記述とトマス少年の記憶とが食い違っている点や、脱出後のペチェルスキー氏の行動に対する説明を求める場面などもあります。

そうした緊迫した場面もさることながら、ペチェルスキー氏がもともとは音楽や舞台を学び、教えていたという経歴に驚きました。映画では、軍人としての経験から脱出作戦のリーダーになったタフガイという描き方なので、その前歴には触れられてないのです(見落とし、聞き落としていなければ)。

戦後、ペチェルスキー氏はソ連に帰還するのですが、捕虜になったことからスパイと疑われて投獄されます。西側に渡った彼を知る人々からの抗議で釈放されるのですが、その後も暮らし向きはよくなかったようです。このインタビューの時点でも、狭い共同住宅で質素に暮らしている様子が記されています。



同サイトには、このほかにもソビボルや他の収容所についての証言や情報が掲載されています。

ソビボルといえば、「SHOAH」のランズマン監督が、生存者にインタビューした記録映画があります。こちらも観ようと思います。







# by chekosan | 2019-01-30 13:11 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
映画「スターリンの葬送狂騒曲」を観ました。

これは面白かった!見逃さないで良かった!と心のなかで思わず自分の判断を讃えてしまいました。

ソ連の独裁者スターリンが亡くなり、側近たちが後継争い・権力争いを繰り広げる話です。拷問や処刑、殺害シーン満載なので、笑うのは不謹慎な気もするのですが、テンポのよいブラックコメディとして作られているので、ついつい笑ってしまいます。

時系列的には必ずしも史実に忠実ではないそうですが、実際に起ったことや情景をふんだんに盛り込んであるそうです。

ブラックコメディなので、話の展開が極端にスピーディではありますが、しかし、スターリン時代に粛清された人々の数(数百万ともいわれる)から考えると、実際にもあれくらいのスピードで、あれくらい軽々しく殺していかないと、そんな数にはならなかったかも…と思えてきます。



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今年度の輪読ゼミで読んだ米原万里の小説『オリガ・モリソヴナの反語法』はスターリン時代の粛清がテーマになっていて、この映画にも出てくるベリヤ(秘密警察の親玉)も出てきます。そこでは、ベリヤも、スターリン死後の権力争いで失脚したために、悪の張本人、卑劣漢として実際以上に誇張して伝えられたという見方も紹介されていました。

この映画でも、ベリヤは残忍で変態で狡猾で強引なやり手として描かれていますが、同時にフルシチョフたちライバルたちも、そんなベリヤを追い落として処刑してしまうくらいに残酷で狡猾な人物として描き出しています。誰もヒーローではなく、どいつもこいつも揃いも揃って…と思わせる映画になっています。

ロシアでは封切り直前に上映中止になったそうですが、まあさもありなん。

しかし、もしロシアや旧ソ連の構成国で上映されたら、普通の市民からは、どういう反応が出るのでしょう。笑えるのでしょうか。ブラックコメディとして受け止められるほどに「昔のこと」になっているのでしょうか。あるいは、コメディなんかにするな、まだ生々しい過去なのだと反発が出るのでしょうか。

ホロコーストやヒトラーはかなりセンシティブなテーマとして慎重に扱われていると思うのですが、スターリンやスターリン時代はどうなのでしょう。

思わず笑ったり、ああ面白かった!と思ったりしておきながらなんですが、スターリンなら、ソ連なら、コメディにして笑って楽しんでもよいのだろうか、違いはどこにあるのだろうとも思えてきました。あるいは、笑いながらも「…笑いごとじゃないよね」と思えてくるのであればよいのか…

◇◇◇

映画が面白かったので、すぐに原作のコミックと、劇場では手に入らなかった映画パンフレットも取り寄せました。

原作はファビアン・ニュリ作 ティエリ・ロバン画で、小学館集英社プロダクションから発行されています。こちらはシリアスです。う~ん、いかにもバンド・デシネ♪(フランスやベルギーの漫画)という感じで、画面は暗く、字が小さくてたくさん、劇画タッチです。

原作もていねいにつくられた作品ですが、映画の方がいろいろなエピソードを足してあって、登場人物のキャラも立っていて、見応えがあるかなと思いました。

なお、原作もやはり時系列などは多少いじってあるとのことです。





ヒトラーを題材にしたコメディタッチの映画はありますね。原作、まだ読めていません。読もうっと。





# by chekosan | 2019-01-28 21:25 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)