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中・東欧、ロシア、大学教育、美術展、映画鑑賞などなど


by chekosan
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2か月近く経ってしまいましたが、春休み、三重県四日市市の四日市公害と環境未来館(四日市市立博物館内)に家族で行ってきました。noteでは広告なしで読んでいただけます。
同志社大学の特殊講義<「負の遺産」と政治>で、2020年度だったか、ここに関する論文を取り上げて発表してもらったことがあるのですが、なかなか行けずにいました。昨年度の同科目の受講生さんが行ってきて報告してくれたのを聞いて、いいかげん行かねば、もう行く!と決意。

車ならそんなに遠くもないので、春休み恒例の中部地方への日帰りドライブ旅行の行先にしました。それだけではさすがにもったいないので、旧東海道の宿場町の雰囲気が残る関宿に寄って観光もしました(こちらにその様子を載せています)。

ホントは先に博物館・未来館→関宿の予定だったのですが、高速の出口を間違えて逆に。博物館と未来館を見終えたら閉館の時間になってしまいました。

博物館は、四日市市のまちの発展を表した実物大模型と、丹羽文雄記念室があって、そちらも面白くて、けっこう時間が経っていきました。

そして、ようやく本命の四日市公害と環境未来館。たいへん工夫が凝らされた、たっぷりの展示です。結論から言って、ここだけでも行く価値がありました。ごくごく一部だけご紹介。

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全体の雰囲気はこのようにスタイリッシュ系

小さな子どもにもわかるように様々な工夫が凝らされています。コーナーごとに、このような↓平易な文で書かれた、ぺらぺらめくる説明があり、そのコーナーに関するワークシートも設置されています。

昔は海水浴場があった四日市の海辺ですが、港として整備が進み、工場が誘致され、軍の燃料廠ができていきます。そのため、戦時中には何度も空襲に遭います。

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壊滅的な被害が出た四日市港ですが、戦後、再び、工場が建ち始め、工業地帯として発展していきます。

その当時の新聞や広報などから関連記事を抜粋したものを引き出しに格納してあります。思わず開けて見てみたくなりますね。

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四日市ぜんそくの原因となった、コンビナート近くの団地を再現した実物大模型。高度成長期の団地の再現模型は、千葉の国立歴史民俗博物館にもありましたが、ここのは、さらに「実家にあったで、あれ!」的な身近さが。散らかった感じが、またやたらリアル。


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パネルや引き出し式展示のほかに、パソコンでの説明展示も。

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コンビナートの排煙の風下地区の人びとに、ひどいぜんそくの症状が出るようになります。

こちらは気管支の模型。

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今回の見学でもっとも衝撃を受けたのが、小学四年生の女の子が、ぜんそくの発作で亡くなっていたという事実でした。こちらは、その女の子が使っていた吸入器。

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裁判についての展示のあと、その後の地域や行政、企業の取り組みについての展示があります。


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そして、四日市の現在と未来という最終コーナーでは、広く環境についての展示がありました。

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一階には、被害の大きかった地区の小学校を模した部屋があります。ここでは講演会などの催しができるようになっています。

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うがい場の再現。

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当時の日課表の再現 うがいの時間が設けてあります

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市の複合施設で、こんな立派なビルです。

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市立博物館と未来館だけで、これだけの資料がありました。ボールペンとマグネットは、未来館でいただきました。

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ミュージアムショップで、資料やはがきなどを購入。ウサギは見たわけではないですが、なんかインパクトがあったので。浮世絵は、この日に行った関宿と四日市のものを。でもお安かったので、もっとたくさん買っても良かったな。

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そして、衝撃を受けた、ぜんそくで亡くなった少女の物語の漫画と、そこから派生した活動等について書かれた本も購入しました。

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感想を読書メーターより転載

四日市公害と環境未来館で購入。館の設立(2015年)経緯についての論文を授業で学生と一緒に読んだことはあったが、ようやく見学。子どもから大人までしっかり学べる工夫された展示だった。かつては海水浴ができた浜が海軍の燃料廠になったこと、四日市は9回も空襲を受けたこと、工場が出来ていくことが当初は歓迎されたことなど歴史的経緯もよくわかった。展示物には9歳でぜんそくによる心臓まひで亡くなった女の子が使っていた吸入器があり、もっとも衝撃を受け、その少女を取り上げた漫画が掲載されている本書を買い求めた。

本書には、四日市ぜんそくで亡くなった少女とお母さんの漫画、漫画を製作した経緯、少女のお母さんのインタビュー、漫画が生まれるきっかけとなったテレビのドキュメンタリー、漫画を翻訳するプロジェクト、若い世代の公害や環境問題へのコミット、四日市公害がもつ現代的かつ普遍的な意味や警鐘と継承について、何人もの人の文章が掲載されている。

本書を読んだすぐ後に、日本企業がフィリピンなどで進めているレアメタル採掘事業(日本向けに輸出される)に関するドキュメンタリー映像と解説を視聴。鉱山開発のために、先住民の農地が荒らされ、水が汚染され、さまざまな健康被害が出ていることを知る。現地住民を分断するような企業側の対応、反対運動を監視、弾圧するような現地警察、有害物質の測定と測定値の公開の要請に対してうやむやな態度をとる企業。高度成長期に甚大な被害を生んだ公害の教訓は日本国内ではある程度活かされているかもしれないが、他国(途上国)では活かされていない。「持続可能な開発」を謳うときには、それが他の負の面をもたらさないか、よそに負担を転嫁していないか、犠牲を強いていないかも見なくては。

夫氏は別の本を生協で取り寄せてくれていました。こちらも読もうと思います。

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# by chekosan | 2024-05-21 19:18 | 負の遺産/記憶と継承 | Trackback | Comments(0)
チェコ旅行記2023年夏、久々の更新です。早くしないと一年経ちそうです。今年も行きたいのに。行く前に書いてしまいたい! note では広告なしで読んでいただけます。

さて、プラハのユダヤ人地区にある華やかなスペインシナゴーグの展示物には、ナチによる占領に伴うチェコのユダヤ人の苦難を示すものも多数ありました。

これは有名な切手。ヒトラーがプラハ城に入場して街を見下ろしている写真を使ったもので、ヒトラーの54歳の誕生日記念切手です。

プラハのユダヤ人地区④日本占領下の「上海ゲットー」関連展示物を発見する ~チェコ旅行2023夏(21)_b0066960_09160240.jpg


切手と言えば、この1~2年、ちょこちょこソ連や東欧のものを集めています。大昔も集まってくるものを保存することはしていますが、最近は、時代を映す資料として、「らしい」ものを中心に、いいのが安く出あれば、くらいの緩さで、メルカリやアンティーク市などで買っています。

東欧の古いものはレトロカワイイと人気で、雑貨や切手も、案外出回っています。手芸などの材料にどうぞと束で売られているのを見ると、ひ~~!と思っちゃいますが。そういうのはきっと大量に出回っているのでしょうけどね。

この写真のかたまりは、チェコスロヴァキアの郵政70周年記念切手(新品)と、チェコがドイツに占領されていた頃のものを混ぜた、ありがたいセットでした。

プラハのユダヤ人地区④日本占領下の「上海ゲットー」関連展示物を発見する ~チェコ旅行2023夏(21)_b0066960_15415288.jpg

上の1列は、チェコスロヴァキア建国当初に作られたデザインの切手。デザインは、アルフォンス・ミュシャ(ムハ)です。そのミュシャの肖像画を切手にしたのが、右のシート。一番下のも同じくミュシャの顔とミュシャデザインの切手の柄で、郵政60周年記念切手のようです。

ヒトラーとその横の切手は、ドイツに占領されていた、ボヘミア・モラヴィア保護領の時代のもの。いかついわ。ミュシャのデザインとはずいぶん違うわ。

スペインシナゴーグの展示に戻って。

ん? 日本語で書かれた証明書?

プラハのユダヤ人地区④日本占領下の「上海ゲットー」関連展示物を発見する ~チェコ旅行2023夏(21)_b0066960_09162305.jpg


上海無国籍避難民処理事務所」が発行した「移動猶予許可証」です。

いったいどういうものなのか。

日本が占領していた上海の租界に、1943年2月18日、「無国籍避難民」の居住地区を定める布告が出されます。3か月後の5月18日以降、「無国籍避難民」は、特別な許可なくして地区外に出ることはできなくなります。

この「無国籍避難民」というのは、ほぼ、ドイツ占領下の中欧から上海に非難してきたユダヤ人と同義です。ナチのユダヤ人への締め付けが厳しくなっていくと同時に、ユダヤ人の受け入れ先もなくなっていき、上海しか逃れる先はなくなっていき、大勢のユダヤ人が上海を目指したのです。それ以前から、上海には多くのユダヤ人が住んでいましたが、ロシア系やそのほかの系統のユダヤ人はこの規制の対象外です。

指定地域に住まわされることになった「無国籍避難民」が、この地区の境界を越えるには、「通行許可証」という証明書が必要でした。そちらは、参考にした書籍、関根真保『日本占領下の〈上海ユダヤ人ゲットー〉「避難」と「監視」の狭間で』(昭和堂、2010年)に写真が載っていました。

スペインシナゴーグに展示されていたのは、この指定地域に居を移すことを猶予された人に発行されたものです。医療従事者や、公共機関に勤務する者、高齢者、病人などが対象となったようです。この「猶予」は期限付きですが、更新・延長もできたようです。写真の「猶予許可証」も、何度かの更新のあとが読めます。(キャプションがちょっと合っていない気がしますが)

というわけで、思いがけずプラハのユダヤ人地区でみつけた日本語の展示物について、ようやく記録が書けました。(;´∀`)

ちなみに、上海には、上海ユダヤ難民記念館というのがあります。日本経済新聞2015年4月19日の記事によれば、第2次大戦中、中国・上海でユダヤ人が暮らした記録を世界記憶遺産に登録しようという動きもあるとか。

なんと今学期の受講生さんの一人が、そこを見学したことがあるという話を聞かせてくれて、俄然、気になってきています。ここも「千畝めぐり」※の一環になるし!

※「千畝めぐり」=私の造語。リトアニアでユダヤ人に大量の通過ビザを発行した杉原千畝に関連のある場所をめぐる旅のこと。ちょっと日本語的にはおかしいけど。

チェコ旅行記、まだまだ続く。(終わらない予感もしてきた…)




# by chekosan | 2024-05-16 17:13 | 負の遺産/記憶と継承 | Trackback | Comments(0)
note では広告なしで読んでいただけます(※インスタグラムからの引用はありません)。

4月、本格的に新学期がスタートする前に、家族揃って、京都で美術展めぐりをして、春休みをしめくくりました。

キュビズム展では、思いがけず、東欧出身の画家が大きくフィーチャーされていて収穫大でした。











今年は新しい科目があるわけでもなく、外部での講演があるわけでもなく、各大学がズレてスタートしたこともあって、ヒーヒー言わずに過ごせました。とはいえ、長い休みのあとの授業はどっと疲れるので(授業ダイエットと呼んでいる)、キュビズム展に行った以外は、週末はおとなしくしていました。

それが良かったか、春休み後半に感じていた調子の悪さも回復していき、風邪やら腰痛やらの不安もなく、ゴールデンウィークへと突入することができました。

授業も波に乗ってきたので、5月は授業以外のインプット&アウトプットにも積極的に取り組もうと思います。


4月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2992
ナイス数:319

聖書男(バイブルマン) 現代NYで 「聖書の教え」を忠実に守ってみた1年間日記聖書男(バイブルマン) 現代NYで 「聖書の教え」を忠実に守ってみた1年間日記感想
もう何年も前に宗教学の専門家の方に面白いですよと教えていただいた本。寝かせている間になぜか下息子があっというまに読んでしまっていた。なぜかこの春休みの終わりに、今でしょ!と俄然読む気が沸き起こった。いや確かに面白かった。もともと「不可知論者」という著者は、ユダヤ系だが信仰心はほぼない。なのになぜか自ら聖書の教えに従って生活してみるというチャレンジを実行する。まずは4ヶ月ほどかけて聖書を読んで、教えをピックアップするところから始める。聖書の教えには矛盾や意味のわからないものも多く、どう解釈すればよいのか、著者は宗教に詳しい「顧問団」に相談しながら試していく。

一年のうち9か月ほどを旧約聖書の教えに従って過ごし、残りは新約の教えも採り入れて、仕事も親戚・友人づきあいも不妊治療もしながら日常生活を送る。ひげを剃らず、混紡の服を着ず、どんどん風貌が(原題の大都会においては)異様になっていく著者の姿はクスっと笑える。ユダヤ教やキリスト教の各派の違いを体感すべく、さまざまなところへ出向いて話を聴き、やがて信仰心が芽生える…とはいかないものの、良い作用も確かにあると実感していく。

まじめな宗教本ではなく、ユーモア満載のチャレンジ本。妻や子どもとの日常も微笑ましくて可笑しい。隣人との交流とその結末のところはちょっと涙。著者は人気雑誌の編集者で、楽しく読ませる文章なので、それこそ聖書並みに太い本だが笑いながら、あっという間に読めた。あまりに面白いので、途中で著者の前作も借りて読んだ。/それにしてもアメリカでは日常に宗教的な要素が浸透しているなあと感じる。そして政治的にも強く影響を及ぼしているなあと。そういえば、ドナルド・トランプに関しても3回くらい触れられている(揶揄的に)。
読了日:04月04日 著者:A.J.ジェイコブズ

カナダ金貨の謎 (講談社ノベルス)カナダ金貨の謎 (講談社ノベルス)感想
夫氏が借りてきたのを私も。若くして准教授になっている「臨床犯罪学者」(ホームズ役)と作者と同名の作家(ワトソン役)による推理小説短編集。驚くようなトリックなどはではないけど軽く楽しめた。有栖川有栖氏は大学の先輩に当たるので(面識はまったくないけど)、本筋よりも、2人が出会った頃の京都の「英都」大学の様子(今はなき学生会館)や学者が今でも住んでいる下宿(おばあさんが管理している間借りタイプ)などが出てくるシーンが懐かしくて面白い。
読了日:04月07日 著者:有栖川 有栖


驚異の百科事典男 世界一頭のいい人間になる!驚異の百科事典男 世界一頭のいい人間になる!感想
同じ著者の『聖書男』がえらく面白くて、その前作のこちら『百科事典男』の方が書評に合うんじゃないかという予感がして、続けて読みました。ぶっとい本なのですが(それこそ聖書や事典みたいに!)めちゃくちゃ愉快です。2ページ1回は「フ!」と笑いながら読みました。春休み最後の数日を費やすことになりましたが、悔いなし!( ´∀` ) 関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊で取り上げました
読了日:04月08日 著者:A・J・ジェイコブズ




不完全な司書不完全な司書感想
東吉野の山奥に古民家を借り、自宅の本棚を私設図書館として公開されているという。その場所で成り立つのだろうかと気になって借りる。口絵のカラー写真から居心地のよさそうな静謐な雰囲気が伝わる。どうやら私設図書館で生計を立てているというわけではなく、著者夫妻が社会や人と繋がるための場であるよう。とてもきれいな文章で、ひっかかりなく読めるけど、薄皮一枚の脆さやあやうさも感じて読んでいて少し辛い感じも。引用される本もそうした状態の人に合うものが多い感じか。いくつか参考になる本があったので借りてみた。
読了日:04月09日 著者:青木海青子


「若者の読書離れ」というウソ: 中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか (1030;1030) (平凡社新書 1030)「若者の読書離れ」というウソ: 中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか (1030;1030) (平凡社新書 1030)感想
読書指導や書評指導なんかをしている身として気になる一冊。大規模な読書調査からは「若者の読書離れ」とはいえないと著者はいう。むしろ「朝読」の取り組み効果で、小中学生はかつてなく本を読んでいるし、高・大生は大人と同じ水準で横ばいだという(そもそも大人は昔から月に2冊未満しか本を読まない人がほとんどで偉そうなことはいえない)。大学生については、全入時代で本を読まない層の割合が増えたからと推論している。この調査の精読部分は面白い。ただ、本を読む読まないも遺伝子の影響が大きく、だからこそ高校生以上になると(つづく)
読了日:04月12日 著者:飯田 一史


理科系の読書術 - インプットからアウトプットまでの28のヒント (中公新書 2480)理科系の読書術 - インプットからアウトプットまでの28のヒント (中公新書 2480)感想
火山学の先生の知的生産術。以前に仕事術か何かを読んだことがあるが、徹底してアウトプットを意識したインプット法を提唱している。そのため人文社会系にはしっくりこない点もあるが、こうした効率の良い勉強法仕事術を参考にすべきかもなあ。でもやっぱりしっくりこないせいか頭に残らず。(悪い本というのではなく合う合わないの問題)
読了日:04月15日 著者:鎌田 浩毅



悼むひと: 元兵士と家族をめぐるオーラル・ヒストリー悼むひと: 元兵士と家族をめぐるオーラル・ヒストリー感想
著者はJAL客室乗務員から大学へ復学、英近代労働運動史研究をしていたが、知人から資料を託されたことをきっかけにビルマ戦史の研究を始めたという「主婦研究者」(自称)。20年に渡り戦友会に「お世話役」として出入りし、元兵士らから聞き取りを重ねたことを一般向けにわかりやすい文章でまとめたのが本書。反戦活動家らからは、戦友会や靖国神社の行事への参加を咎められることも多々あるそうだが、元兵士ら自身は戦争を讃美しているわけではなく、英雄扱いされることも望んでいないことを強調している。

戦場に行っていない人や戦争を知らない若い世代ほど「英霊」を讃美し、「勇ましい」言説を声高に主張している様子も報告される。そうした人たちは、戦場を見てきた元兵士の生々しい体験や非戦の主張を聞くと黙ってしまうそう。さらには靖国神社の行事では、乃木大将や赤十字の看護婦コスプレをしている人もいるそう。ファッションとして戦争を消費しているのだなぁ。そういえば旧飛行場跡を見学したときもコスプレさんたちがいらしたな。散々な目に遭って同僚の死を目の当たりにした元兵士との大きなずれを感じる。
ところで、20年以上研究生活を送って大学で教鞭をとっていながら「主婦研究者」であることを強調するのが気になった。夫や子どものいる女性研究者はみんなそうだと思うのだけど(私は家事育児だいぶサボってきたので堂々と主婦と名乗れないけど)。おそらく著者の切り拓いてこられた分野はそれだけ男性ばかりで、聞き取りをするのに、「主婦」であることや、元兵士らの「娘」的なキャラクター付けが必要で効果的だったのだと思うが。それはともかく、慶應大日吉台の戦争遺構の案内もされているそう。ひょいと行きにくいところだけど行きたいなあ。

読了日:04月19日 著者:遠藤 美幸


新版ダリの繭新版ダリの繭感想
夫氏が借りてきたのを私も。作家の初期の頃の作品だからか、なかなか話に乗れなくて、少々冗長な気がした。凝った構成ではあるが、文章がまだこなれていない感じか。ダリのような髭がトレードマークの社長が、なぜか髭が落されている状態で殺されて発見されたという奇怪な殺人事件。本筋には関係ないが、ちょろっと触れられる、ルーマニアのシュルレアリスムの画家のエピソードが面白い。意外なところで意外なことを知れて得した気分。
読了日:04月29日 著者:有栖川 有栖

読書メーター

# by chekosan | 2024-05-12 17:00 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
今月の関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊が公開されました。

今月は、ベリングキャット。こちらからどうぞ。

シリアにおける化学兵器の使用、マレーシア航空17便撃墜事件、ロシアの元スパイの毒殺未遂事件、ロシアの反体制活動家の毒殺未遂事件。この10年ほどのあいだに世界を騒然とさせた出来事の謎の解明の立役者です。

べリングキャットは、インターネットを駆使して、見過ごされている問題、発見されていない問題に関する情報を収集・分析し、その結果わかったことを拡散して世界に広く知らしめることを目的に活動する、いわば「インターネット探偵団」です。ハッカーとは違い、誰でもアクセスできるオープンソースを使っています。

戦争犯罪の追及だとか、暗殺犯の特定、航空機撃墜事件の真相究明などと言うと、普通の市民には縁遠く思えますが、実は私たちにもインターネット上の情報を使って問題を究明できることがたくさんあります。

メディアリテラシーを高めて、インターネットをうまく使って、社会問題を解決していきたいですね。


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# by chekosan | 2024-05-11 14:29 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
上息子(ウエムス)との親子研究旅行、3日目の午後は、千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館の送迎バスに乗って、国立歴史民俗博物館へ。note では広告なしで読んでいただけます。

同志社大学の「負の遺産」と政治と題した科目で、よく輪読する『ミュージアムと負の記憶: 戦争・公害・疾病・災害:人類の負の記憶をどう展示するか』という本の第1章(安田常雄「歴博「現代展示」と戦争認識」)が、この国立歴史民俗博物館の「現代」展示についてなので、いつか行かなくちゃなあと思いながら、何期か経ってしまっていました。

なにしろ、ここもまた、なかなかアクセスしづらいというか。なんでここなんだろうと思っていたのです。

でも、ちゃんと調べて、そのとおりに動いたら、問題なくスムーズに到着~

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お目当ては現代展示の部屋なので、古い時代はサーっと飛ばし見するでえ~~と宣言していたのですが、そこはさすがに国立。

展示物の量も多いし、予想よりも気合の入った演出というか、面白く見れる工夫がされていて、うっかりデジカメでバチバチ撮りながら回ってしまいました。いやあ、もっと古色蒼然としているのかと思ってました。

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矢じりとか石斧とか壺の破片とか興味ないねんなどと口悪く言うこともあるのですが、なんかちょっと笑える展示も多くて、石器時代も楽しめる。


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まあ古い時代はわりとレプリカが多いし、ここの大きな方針は「生活史」なので、芸術性の高いものがたくさん並んでいるわけではなく、ほおお~~♡と感動するというのはありません。

また、人々の生活をテーマ別に見ていくという切り口なため、えっ、いつのまに○○時代になったの??と思うようなところもありました。そのため、小さい人や外国からの人にはわかりにくいようにも思います。

でも、為政者の移り変わり中心の大文字的な歴史ではなく、いろんな地方の、いろんな生活をたくさん再現しようとしているところは面白いと思いました。

我が滋賀県も何ヵ所かで登場していました。 (∩´∀`)∩

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東海道と中山道の合流地点を示す草津宿の道標 ↑


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実物大の宿の模型(というのか?) 楽しい~


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めちゃリアルな河童!! いや空想上の生物だからリアルというのもおかしいのだが

ものすごくたくさんの部屋と展示物があるので、なかなか現代展示に行き着きません(笑)

写真も膨大に撮ってしまいましたが、キリがないのでバサッと省略して、とくに印象的だったものだけ。

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↑ 東日本大震災に遭った東北の民家を再現 靴を脱いで上がれます

↓ なんか既視感あるわと思ったら、やっぱり滋賀県の農村

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近代部門が一時閉鎖中だったのが残念でしたが、しかし、開いていたら現代展示までたどり着かずに閉館していたかも? (;´∀`)

ようやくたどり着いた現代展示室。

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ここは、上記の本で展示の構成や意図を読んで知ったうえで見ましたが、やはり文字で読むのとは、だいぶ違いました。

なにより、この歴博が、現代展示をつくるにあたって戦争についてどう展示するかを検討したさいに、地域の資料を活用し、地域との繋がりを意識して千葉の連隊にフォーカスを当てたとあって、それはまあわかるけど国立なんだから一連隊に特化しなくても? とうっすら思っていたのが、現地に来てみて、なるほどそういうことだったのかとストンと腑に落ちました。

バスの窓から、こんもりとした小さな山の上に博物館が建っているのを見て、そして、その小さな山に入っていくところの看板を見て、あああ、「千葉の連隊があった」というのは、イメージしていたよりももっともっとピンポイントでの意味だったのね、とわかったのです。

歴博が建っている場所というのは、もとはお城があった場所で、そこに連隊の兵営地が置かれていたのですね。大阪城に陸軍の施設が建てられたのと同じようなことなのですね。なるほど、そりゃ取り上げなあかんわね、まさに現場やったんやから。

軍隊の施設が置かれていた場所とは思わず、下調べが不十分で、遺構や記念碑を見て回る時間はとれず、残念でした。大抜かりでした。

こういうのが、この場所にあったということなんですね。↓

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以下、ごくごく一部ですが、とりわけ印象的だったものをいくつか。

今回の旅で目に飛び込んできた、「伝単」(戦時に対戦国に向けて撒かれたビラ)がここにもありました。

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日本軍が中国で撒いた伝単


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米軍がフィリピンで撒いた伝単

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大政翼賛会と全日本厨芥利用協会のポスター「厨芥を生かせ! 御台所の廃物から生まれる一億円」
そりゃすごい 食品ロスをなくしてエコな生活(皮肉です)

戦後のコーナーも面白い。

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地域社会の民主化を啓蒙するポスター 直截的やなあ~

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闇市と人々の生活

ちょっと飛ばして、公害列島日本のコーナーには、上記の本にも載っていた、水俣病に関する展示を確認できました。

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水俣には未だ行けてません。でも近いうちに必ず行きます。とりあえず、大阪のみんぱく(国立民族学博物館)で企画展示をしているので行く予定です。

そして、高度成長期の団地の実物大模型は、あまりに「知ってる」ものだらけ。「これ、ウチの実家から持って来たんちゃうか、あったでおんなじもん」「私が幼児期に住んでた団地の部屋そのまんまみたいや」などと、ウエムスにキャイキャイ(ささやき声ですが)言いまくってしまいました。

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ふきんかけには、「日東紡の新しいふきん」! これ実家で使っていたので、私も結婚以来、ずっと買い足して使っています(笑)

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これー! まったく同じ(かそっくり)なやつ、あったーーー! 「状差し」と呼びたいね、このタイプは。

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いやいや、私も歴史になった(?)感。

この旅行のあと、家族で三重の歴史博物館に行ったときにも、やはりこのような団地を再現したところがあって、そちらはさらに既視感満載でした。また後日、別途、記録します!


戦後民主主義を象徴する多種多様な雑誌コーナーも印象的でした。最近、雑誌の売り上げが落ちて、休刊廃刊が相次いでいるので、また一段階、変わっていくなあ、なんて思いながら。


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そして、現代展示の最後の最後、つまり、この博物館の常設展示の大トリ、ゴジラ! 

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この日は、大学は春休みでしたが平日だったので、お客さんもかなり少なく、ゴジラとの記念写真も貸し切りのような状態で撮れました。

このゴジラは、2メートル50センチあるそうです。ゴジラの第一作は、1954年11月に封切りされたのですが、その年の3月1日に起こった、ビキニ環礁での水爆実験で被曝した第五福竜丸の事件に大きく影響を受けています。

その後、ゴジラはかわいらしくなっていきますが、80年代に原点回帰して、怖いゴジラに変わります。歴博に立っているゴジラは、その80年代のゴジラをベースに平成ゴジラのイメージを合わせて作りかえてもらったものだそうです。

上記の本によると、現代展示のなかで原発の問題をどう入れ込んでいくかを考えていくなかで、核があるかぎり日本にやってくるゴジラを据えられることになったのだそうです。


最後に、企画展「歴博 色尽くし」を急いで鑑賞。常設展示は地味で茶色っぽいもんが多かったけど、企画展は色味のあるものがあったな、くらいな感じしか覚えていませんが(すみません)、この螺鈿は、とても綺麗でした!

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帰りの新幹線は決めていないとはいうものの、なにしろ長い旅路なので、ほどほどで切り上げねばなりません。

でも、ミュージアムグッズは買わねば。

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はにわのぬいぐるみやハニワスキー(歴博ミュージアムショップのコンシェルジュらしい)のはんこをゲット。こういうハンコは提出物に「見ました」印として使うので、いくつあってもいいのです。しかし、ハニワスキーって、スラブ系の人みたい(笑)

はにわぬいぐるみは、みんなが集うダイニングの窓際の棚に直立して、旅の思い出を呼び起こしてくれています。

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ときどきヒト型が馬に乗っかっていたりする

こうして、ウエムスとの親子研究旅行東京・千葉編2泊3日も、実り多い濃いものとなりました。

帰りは東京駅で食料を買い込んで、車内でたっぷり食べました。ああ、楽しかった。

得たものは授業で披露していこうと思います。


# by chekosan | 2024-05-02 23:45 | 負の遺産/記憶と継承 | Trackback | Comments(0)