中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan
いやなかなか硬派で、密度の濃い作品です。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエヴォの「ホテル・ヨーロッパ」を舞台としたお話です。

第一次世界大戦勃発のきっかけとなった「サラエヴォ事件」から100年の記念式典が開かれるまさにその日、ホテル・ヨーロッパの従業員たちはストライキを計画します。冬季オリンピックのときにつくられ、多くの著名人をもてなしてきた格式高いホテルなのですが、実は2か月も従業員に給料を払えていないのです。

支配人は、EUからのVIPが多数揃う重要な催しを成功させ、その支払いで銀行への返済をはかりたい。2日待ってくれれば給料を払うからとストライキをやめさせようとします。従業員たちは、内外の注目が集まるその日にこそストライキに打って出て給料を支払わせたい。フロントの若き有能な女性スタッフは両者の板挟みになります。

屋上では、サラエヴォ事件100年特別番組の収録中。女性ジャーナリストが識者にインタビューをしています。3人目のインタビューの相手は、サラエヴォ事件の犯人とまったく同じ名前の男性です。何やら不穏な雰囲気。何者かよくわかりません。歴史認識をめぐって、ジャーナリストと激論になります。

ホテルのVIPルームにチェックインしたフランス人は、部屋にこもって、サラエヴォ事件やユーゴスラヴィア内戦を防げなかった欧州の責任を追及する演説の練習を続けます。

この大きく3つの話が同時進行していきます。フランス人VIPがホテルにチェックインしてから85分間の出来事を85分の映画にしたという形になっています。3つの話が一つになるときがクライマックスです。


b0066960_22362269.jpg



屋上でのインタビュー部分が長くてつまらないという感想も見ましたが、私はここが面白かったです。ボスニア・ヘルツェゴヴィナの過去と、いまも続く民族間の対立の根の深さ、深刻さの一端を知ることができる面白い構造になっていると思いました。

またフランス人VIPの演説は、実際のサラエヴォ事件100年の日に上演された一人芝居「ホテル・ヨーロッパ」を再現したものであるとのこと。この戯曲を原案として本作は作られたそうですが、もともとのお芝居も見てみたいと思いました。

スリルとサスペンスな要素も盛り込みつつ、こういう社会派な作品を作れる監督がいるのだなあ~、と思ったら、気になっていた「鉄くず拾いの物語」や「汚れたミルク あるセールスマンの告発」を撮った監督さんでした。どっちも観れてないのですが。

フランス人VIP役のフランス人俳優以外は、地元ボスニア・ヘルツェゴヴィナの俳優たちで、国際的には著名というわけではないそうですが、とても良かったように思います。

フランス人の場面以外はセルビア・クロアチア語です。この言葉もスラブ語の仲間なので、ほかのスラブ語と語彙や構文(というのか)が似ています。字幕があるからですが、うっすらとわかって嬉しかったです。そして、やっぱりスラブ系の言葉って、なんか音がかわいいです♡


 


[PR]
by chekosan | 2017-07-15 23:16 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)

2015年、アフガンやシリアからの難民が欧州に大挙して押し寄せた。
その大移動に新聞記者である著者が同行し、同時進行で発信するルポルタージュである。

難民や移民には、欧州各国が自国にとどまられないようにと移動手段を用意したため、
予想外に短期間で難民の波はギリシャからオーストリア、ドイツへと動く。

難民ではない記者は難民用の移動手段は使うことができず、
取材対象者であるアフガンからの難民、アリさん一家とはぐれたり待ちぼうけを食わされたりする。
同行取材とは言いながら、3週間の取材期間中、かなりの日数アリさんたちとは別行動となる。

シェンゲン協定により域内の移動は自由であるはずのEUで国境を目の前に右往左往したり、
難民の人たちと接触できなかったりして疲弊する記者の率直な吐露は同時進行ルポならではだろう。

ただ、はぐれていた間の難民一家の移動や生活の様子がわかりづらいため、
「同行記者おおいに苦労する」的な部分の方が印象に残ってしまうのは惜しい。


b0066960_21323314.jpg

取材対象であるアリさん一家がドイツにいったん落ち着いたところで、
話は、アウシュヴィッツに収容され、戦後はオーストリアのサッカー界の発展に尽力したユダヤ人、
ロッパーさんの生涯の紹介となる。

これは、ドイツが難民を受け入れる背景に、
第二次世界大戦中のドイツのユダヤ人迫害という事実があったことを説明するためなのだが、
章題が「贖罪のドイツ」であること、
オーストリアがナチスドイツに一方的に支配された被害国として描かれているのには違和感がある。


そして、ドイツに着いて数か月経ったアリさん一家の様子に話が戻るのだが、
ドイツの手厚い難民保護に感謝するアリさんの話を聞いて、
(記者の支局のあるオーストリアでは)欧州の若者が職を得るのに大変な状況なのに、
そんなに税金を使って難民を保護するようでは、極右政党が勢力を伸長するのもわからなくない、
というような記述が出てくる。

いやしかし、、、彼らは着の身着のまま命がけで異国の地へ逃れてきて、
正式に難民として承認されるかどうかもわからない不安定な身の上である。
豪邸で遊び暮らしているわけではない。

バーバラ・エーレンライクの『ニッケル・アンド・ダイムド』だったか、
低賃金で不安定な職に就いてみるという体験ルポがあった。
そうした生活をしていると、持ち物や「いざというとき頼れる命綱」がないために、
かえって健康的な食生活を送れず、健全な節約もできないという。

ドイツで家族3人、食費含めて生活費10万円では余裕などないだろう。
それとも弱者は徹底して貧しくあらねば、苦難を耐え忍ばなければいけないだろうか。

それよりも、ドイツはどうやって住居を確保し、支援金を捻出しているのか、
難民認定された人々の就職支援や、地域に入っていく手助けはどのようなものか、
外国人向けドイツ語講座はどのようなものか、
それらにどれくらいの人員を割いているのかといったところを知りたいと思った。









[PR]
by chekosan | 2017-03-11 00:51 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)

これから観たい映画の上映予定リスト、第2弾です。
まったくもって私の趣味と実益、都合に合わせたピックアップです。

※2月27日追加しました


「ホームレス ニューヨークと寝た男」

大阪 シネ・リーブル梅田 2月4日(土)~
京都 京都シネマ     2月4日(土)~
兵庫 元町映画館     順次公開

「エリザのために」  ルーマニアが舞台の映画

2月18日~ シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、京都シネマ
2月25日~  シネ・リーブル神戸


「フランス組曲」
アウシュビッツで亡くなったユダヤ人作家の未完小説が原作。
フランス人女性とドイツ人将校の悲恋。

→ 観ました。感想はこちらに

京都シネマ 2月25日ー3月3日



「手紙は憶えている」  70年前に家族を殺したナチスを探すストーリー。

京都シネマ 3/11(土)~3/17(金)


「Tomorrow パーマネントライフを探して」

公開中 シネ・リーブル梅田
2月11日(土)~ シネ・リーブル神戸
2月18日(土)~ 京都シネマ



「FAKE」  佐村河内守氏のドキュメンタリー映画

3月18日(土)~3月24日(金) 19日休英 京都シネマ 10:10~


「キャロル」

3月25日(土)~3月31日(金) 京都シネマ 10:10~








[PR]
by chekosan | 2017-01-29 14:47 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
月一回の書評連載@関西ウーマン、今月はハンガリー出身の女性作家、
アゴタ・クリストフの自伝的エッセイ集です。

あっという間に読めてしまう本です。そして読み終えるのが惜しく感じる珠玉の一冊です。

本文はこちら→ 
アゴタ・クリストフ『文盲』(白水社 2014)
信子先生のおすすめの一冊@関西ウーマン 2016年11月



b0066960_140109.png

[PR]
by chekosan | 2016-11-12 14:01 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
同志社のロシア・東欧地域研究、第二期の授業が終わりました。

今年度は、もう一つ同志社でロシア東欧関係の科目を担当することになったので、
本科目は入門編的な位置づけにして、春学期に移しました。

多人数を避けようと土曜1限にしたところ、
前学期112名登録だったのが、今学期は16名! 
初回から一度も来なかった学生も数名いて、最終的には10名に落ち着きました。

極端に人数が違うので、しばらくは進度も反応も手探りでしたが、
さすがに土曜1限に来る学生たち、少数精鋭でした。
受講者が多かった前学期以上に、多様性に富んだレポートや発表が相次ぎました。

法学、政治学、経済学系に加え、歴史、文学や美術、民俗学、宗教など、
幅広い話題が提供されて、私も大変刺激をもらいました。

期末レポートは、3回の小レポートで取りあげたテーマをさらに充実させた人、
あえて小レポートとは別のテーマに挑戦した人がいましたが、
それぞれが確実にレベルアップを果たしているのがわかる濃い内容でした。

b0066960_136475.jpg


実は、前学期の授業評価アンケートで、1,2名ではありますが、
授業中に受講生に発表してもらったり、毎回カードをやりとりしたり、
ていねいなレポート指導をしたりしたことに対して、
非常に強い否定の言葉を書いてきた学生がいて、今後どうしたものかとだいぶ悩みました。

が、大多数の受講生は一方通行でない授業スタイルを歓迎していましたし、
その声に沿わないのは、今学期の受講生の不利益になると思い直し、
前学期以上に発表の機会を増やす方向で進めました。

最終授業を終えて、記名ではありますが感想を読んで、やはりこの路線でいこうと思った次第です。

以下、抜粋です。

 「他の人のレポートを聴き、大変参考になった。… レポートの書き方も大変勉強になった」

 「レポートのお題の自由度が高かったので、みんなの興味関心から
  個性あふれるお話がたくさん聞けて勉強になりました」

 「発表を聞いて、自分が調べていない分野に強い興味を持ちました。…… 色々な面から
  ロシア・東欧について知れて、この授業に出てとても良かったと思いました」

 「みなさん非常に分析が深いレポートを作っていたので驚きました!」

 「レポートを書く機会が多くあり、自分で調べ物をして勉強することもでき良かったです」

 「講義の中で何人もの人が調べてきた発表を聞きましたが、この講義をとっている方は、
  自分がロシア・東欧の何に興味があるのかはっきりわかっていて、
  すごいと感心していました。… 」

 「レポートで好き勝手に好きなことを取り上げてしまってすいません … 」
 
  →全然OKですよ! 興味深い話題を提供してくれてよかったですよ!


秋学期は、迷いなく、完全にゼミ方式です。
ロシア・東欧に関する本を次々読んで、あれこれ語り合いたいと思います。
毎回、ざっくばらんな座談会のようになればいいなあ。
意欲的な学生さんのお越しをお待ちしております。^0^
[PR]
by chekosan | 2016-07-24 01:30 | ロシア・東欧地域研究@同志社 | Trackback | Comments(0)
「課題に使う本を探していてみつけたんですが。先生がお好きなんじゃないかと」
と、受講生がわざわざ図書館で借りて持ってきてくれた本。

その名も『共産主婦 東側諸国のレトロ家庭用品と女性たちの一日
(イスクラ著 社会評論社 2014年)。
『共産趣味インターナショナル』というシリーズの第4冊目です。

なんちゅうタイトル?!と思いながらパラパラ見せてもらったら、これがかわいらしいんです。
旧東側諸国のお人形が、社会主義時代の女性たちの生活の様子を再現している体で、
オールカラー、写真たっぷり、ちょっとコミカルで。

でも日用品やそれを生産していた会社のこと、当時の様子がきっちり説明してあって、
へええ~~~という事実もたくさん。楽しい一冊です。

b0066960_23212911.jpg



◇◇◇

1990年代にチェコのプラハに何度か行ったときには、
いつも一人暮らしの初老の女性のアパートにホームステイさせてもらっていました。

本書にも紹介されている「パネラーク」と呼ばれる、社会主義期に建てられた集合住宅です。

部屋数は少ないのですが、一室はゆったりしていて天井が高く、
ホストマザーが海外から持ち帰った思い出の品や家族の写真が飾られていて、
こじんまりとあたたかみあるお家でした。

キッチン奥のパントリーには、自家製ピクルスやジャムが並んでいて、
お昼ごはんに出してもらうスープもとにかくおいしかったです。
手作りのケーキもよく出してもらいました。

飲み物はお茶。体調に合わせて、いろんなハーブティーを出してもらいました。
お客さんが来られたらコーヒー。そして少しだけ煙草を吸われていました。

夜はソファでテレビを見ながら刺繍や編み物をされていることが多かったです。
手作りのものをたくさんプレゼントしてもらいました。
チェコの日常生活を体験させてもらったことを懐かしく思い出しました。

ホストマザーは亡くなられたので、その部屋にはもう滞在できませんが、
貴重な経験をさせてもらったなあと思います。

◇◇◇

最近、東欧諸国の雑貨や絵本や民芸品は日本の女性に大人気で、
それらを紹介する本も次々出ています。

この本も、そうしたものが好きな人にはたまらないのでは、と思うのですが、
このタイトルでは手に取るのを躊躇する人も多そう? (^^;) 
でもでも、楽しい本なので、レトロなものが好きな人にはおすすめです。

著者も女性で、旧東側の雑貨などをネット販売されています。
この本の撮影に使ったレトロ雑貨も展示している店舗も開かれています。
本には尼崎と書いていますが、移転されたようです。
→ 東ドイツ民生品展示室 DDR Komet
[PR]
by chekosan | 2016-06-29 23:33 | ロシア・東欧地域研究@同志社 | Trackback | Comments(0)
アメリカで活躍するマンガ家、スピーゲルマン氏が、
実の父親から聞き取った戦前~戦後の体験をマンガにした作品です。
1992年ピュリッツァー賞特別賞。

作家の父ヴラデックはポーランドのユダヤ人で、捕虜、隠れ家生活、収容所を生きのびました。
共に耐え抜いた妻アンジャ(作者の母)は、しかし、1968年に自殺します。
そのことが父と子には長く心の傷となります。

『マウス』は、父の記憶の部分と、聞き取りを進めている現在の父子関係が交差します。
そこがこの作品のオリジナリティで、優れたところだと思います。

b0066960_102185.jpg

     
作者の父母がアウシュビッツに送られるまでを描いた部分は、
発表するや世界的な反響を呼び、何か国もで翻訳版が刊行されます。

作者はマンガ家として大成功をおさめたわけですが、
押し寄せるインタビューや商品化、映像化などの申し込みに戸惑います。

アウシュビッツを生きのびた父への敬意と後ろめたさ、
父の経験を作品にしたことに対する良心の呵責を感じ、描けなくなります。
そうした悩みをかかりつけの精神科医に聞いてもらい、続編を描き上げます。

実は、この精神科医もテレジン、アウシュビッツ収容所の生存者です。
精神科医との対話の部分はたいへん興味深いです。(Ⅱ巻 p.43-46)


日本のマンガを読みなれた目には、コマ割の単調さ、線の荒さが気になるかもしれません。

また、ユダヤ人をネズミに、ドイツ人をネコに描くといった隠喩がされており、
さらに顔のアップが多用されているので、登場人物の見分けがつきにくくなっています。
それらは、しかし、まさに個人を個人として識別しない、尊重しない状況を表しています。

というように、この作品は絵を追うだけでは話がわかりません。
セリフや説明書きをしっかり読む必要があります。

作者は、翻訳版もマンガ専門でない出版社から出すこと、
ノンフィクションに分類することを主張したそうですが(Ⅱ巻附録解説)、
確かにそのように位置づけて読んだ方が良いと思います。

このように詳細な地図なども描かれています。
b0066960_10572021.jpg

作者の希望により、翻訳版には解説や訳注はつけられていないそうです。
そのためか晶文社版には訳者解説リーフレットが付いています。
これが作品の背景や反響を知る参考になります。
b0066960_10573472.jpg

なお、私はこの作品を次の論文で知りました。
大河内朋子「ドイツのコミックに描かれた「第三帝国」」『人文論叢』 (24), 2007
[PR]
by chekosan | 2016-06-06 11:08 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
戦跡や被災地、ゴーストタウンなど、「負の遺産」を紹介する本。
オールカラーで、読みやすい解説つき。

1章 大虐殺の地
2章 戦争とテロの傷痕
3章 被災地の光と影
4章 人種差別と貧困の記憶  

私の関心領域では、

 アウシュビッツ強制収容所跡(古市憲寿)
 サラエボ         (角田光代)
 福島           (村上和巳)
 チェルノブイリ      (国井真波)
 ホロドモール博物館    (服部倫卓)
  *ウクライナにある、旧ソ連時代の大飢饉に関する博物館

すぐに行けるかどうかわからないが、一つずつ訪ねてみたい。

授業その他で紹介すると、行ってみたいという人がちょこちょこみつかる。
企画しようかな。まずはアウシュビッツかな。

b0066960_11372195.jpg
  
   


   
[PR]
by chekosan | 2016-05-31 11:45 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
大阪中之島の国立国際美術館で開催中の
「森村泰昌:自画像の美術史」展に行ってきました。

今回の展覧会は、美術史に大きな功績を遺した芸術家たちの自画像に
森村さんが扮した作品を中心に構成されています。
展示室のつくりも凝っていて、たいへん充実した展覧会でした。

そしてなんと、撮影可、ブログやSNSでの拡散OKなのです!
ということで、ロシア、東欧に関連するものをご紹介。

「第9章」の部屋に入ると、えっ、カンバスが後ろを向いて林立しています。
b0066960_23162850.jpg

前に回って作品を見てみると、、、ん??
どこかの美術館なのですが、額縁しかない?? 
どうやって撮ったんだろう??
b0066960_23171056.jpg

これは実は、ロシアのエルミタージュ美術館が
第二次世界大戦時に大量の美術品を疎開させて額縁だけが残った
という史実にインスピレーションを受けて制作されたものです。
どの作品にも、森村さんがある人物に扮して登場しています。

そして、「第10章」の空間には「少年カフカ」という作品が。
カフカ少年に扮しているのは、もちろん森村さん本人です。
手に持っているのは、カフカのあの作品。
足元に転がっている水色のクマちゃんは、森村さんが大切にされていたもの。
b0066960_2321914.jpg

この展覧会、副題が「「私」と「わたし」が出会うとき」
両空間の作品群にはいろんな解釈や想像を喚起させられます。

ほかの作品もすべて非常に面白いです。何度も通いたいくらい。
ベラスケスの大傑作「ラス・メニーナス」を基にした作品群は、
現物を観ないと面白さがわからないと思います。

70分の映画も上映されています。料金に含まれています。
6月19日まで。おすすめの展覧会です。
[PR]
by chekosan | 2016-05-27 23:35 | ロシア・東欧地域研究@同志社 | Trackback | Comments(0)
何かを知りたくて追っていく過程を書いた本が好きです。

対象への強い関心や好奇心、ワクワクするような発見や調査の行き詰まり、
人との出会いと新たな関係性の構築といったプロセスも書き込んだ本には
専門書以上に刺激や示唆を与えられることが多いです。

本書もそのような本です。

b0066960_1293760.jpg

朝日新聞記者(現編集委員)の河原理子氏は
フランクルの『夜と霧』に深い感銘を受け、指針としてきました。

フランクルはユダヤ人精神科医で、戦時中、強制収容所で
肉体労働に従事したり、医師として働いたりした人物です。

◇◇◇

代表作『夜と霧』は名著の誉れ高い本ですが、私はずっと避けていました。
強制収容所の様子や収容者の心理を分析しているという内容が
自分には耐えられないように思えたからです。

実際、著者が経験した収容所での日々は凄惨かつ非道で過酷です。
が、そのような状況に置かれた人々の精神状態を
できるかぎり客観的に分析しようとした文章は、
穏やかで高潔で、むしろ光や希望さえ感じるものとなっています。

◇◇◇

フランクルは、「ひとりひとりの人間を個人の罪で判定するのではなく、
国民全体に対して共同の一括判定を下す」ことをくりかえし批判したそうです。

そのことでユダヤ社会や故国オーストリアでは反発も受けたそうですが、
復讐や憎しみに逃げ道を求めなかったからこそ、
多くの人が彼の思想や言葉に惹かれ、生きる支えにするのでしょう。

強制収容所のようなところでさえ、人は最後までどう振る舞い、
どう生きるかを決定する自由がある、
それを支えるのは未来への思いであるというフランクルの主張は、
時代を経ても多くの人を勇気づけています。

◇◇◇

河原氏は、彼の著作に大きな影響を受けた人々を日本各地に訪ねます。
さらには、フランクルの辿った道を確かめにポーランドやウィーンを訪ねます。

そうした「旅」を経て、河原氏自身の生きる意味についての思いが記されます。

◇◇◇


本書は新聞連載記事を核としているので、用語や時代背景の説明がわかりやすく、
全体を通して読みやすいものとなっています。

巻末には年表や参考文献リストもあり、フランクルや『夜と霧』、
ナチスドイツの収容所について知りたい、学びたい人の助けとなります。

おすすめの一冊です。
[PR]
by chekosan | 2016-05-19 13:13 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)