中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan

タグ:本、読書、図書館 ( 209 ) タグの人気記事

輪読ゼミ2冊目は、スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチの2作目『ボタン穴から見た戦争』です。

こちらは第二次世界大戦―ソ連ではドイツとの「大祖国戦争」と言いますが―当時、白ロシア(ベラルーシ)で幼児から子どもの年齢だった人たちの戦争体験です。

101人の(当時の)子どもたちの証言は、女性兵士たちの証言を集めた前作『戦争は女の顔をしていない』よりも淡々としているように思ったと受講生たち。なるほどそうかもしれません。

しかし、語られる内容はとんでもなく残虐で残酷な体験です。初読のときはたいへんショックを受けました。

報告をしてくれた受講生も、同じように白ロシアの子どもから見た戦争を題材にした映画「炎628」を思い出して辛くなったそうです。

ちなみに、アレクシェーヴィチは、その「炎628」の原作に感銘を受け、人々の体験を生の形で残すことを後押しされたと言っています。

それにしても、戦争は子どもを子どもでなくしてしまう。子どもらしい子ども時代を過ごせなくさせてしまう、、私たちがいま、こういう状況に置かれたら、果たして生き延びられるだろうか、、、そんな生命力、生活力はないのではないか、、、とみんなで考えこんでしまいました。


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細かいところで私が気になったのは、頻出するペチカのこと。ペチカとは、内部で薪を燃やすレンガ造りの暖房装置ということは知っていましたが、この本には、「ペチカの上で寝た」「ペチカのなかで寝た」「ペチカの裏にいた」というような証言がたくさん出てくるのです。

上? 中?? 裏???

気になるのでちょっと調べてみたら、ペチカは私たちが家で使うストーブのようなサイズではなく、上部をベッドにできるくらいの大きさなのですね。放射熱で家全体を温めるので、上に寝てもヤケドしたりはしないのですね。

でも中とか裏とかってどういうことなのでしょう。この点はよくわからないままです。


ほかにも、食料がないのでスカンポを食べたという話。スカンポって??と調べると、その辺でよく見る植物です。あれがスープになるとは! 

油糟がおいしかったという話も出てきます。ものによっては、「ハルワ」のようだったという証言も。「ハルワ」と言えば、この夏のリトアニアでの思い出の一つなので、思わずその話をうきうきと受講生に披露しました(笑) 

どんな話かというのは、関西ウーマンの書評をご覧ください。「ハルワ」の写真はこちらにあります。


白ロシアはこの戦争で628の村が焼かれます。焼かれたあとには、ペチカと煙突しか残らなかったという証言があります。白ロシアではないですが、タルコフスキー監督の映画「僕の村は戦場だった」にも、まさにそういう光景が出てきます。

「僕の村は戦場だった」には、前作『戦争は女の顔をしていない』でよく出てきた女性軍医も登場するので、その二つの場面を少しみんなで観たりもしました。70年も昔のことはいくら字で読んでもわからないところがたくさんあります。そうしたときに画像や映像があると助かりますね。

と、そんな感じで、ゆるゆると語り合ったり、関連資料を見たりして、一冊をみんなで味わうように読みました。

次は関連する映像資料を観ます。そして、その次はアレクシェーヴィチまつり第3弾『チェルノブイリの祈り』です。







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by chekosan | 2017-10-21 00:09 | ロシア・東欧に関する授業@同志社 | Trackback | Comments(0)
南草津駅前に新しくできたアーバンデザインセンターびわこ・くさつで開催された、「みんなでつくる「まちライブラリー」」講演会&ワークショップに行ってきました。

滋賀県でも有数の乗客乗降数を誇る駅の真ん前、ロータリーからも見える、わりと流行っていた(と思われる)イタリアンレストランがなくなって、いったいこのあと何になるのかなあと思っていたら、なにやらがらんどうな空間が出現しました。

どうやらオープンはしているらしいのに、何のお店なのか事務所なのかわからない。宣伝を見かけることもない。前面は一面のガラス張りなのに中の動きがわからない。最近増えだした丸見えのクッキングスタジオかと思いましたが、そのわりにはキッチンがないような。。。

駅前一等地に、誰が何に使うのかわからないがらんどう空間がなぜ出現したのだろうとはっきりいっていぶかしんでおりました。

そうしたら、まちライブラリーのFacebook経由で、まちライブラリー提唱者の礒井純充さんと、京都の個人宅でのコミュニティ空間開設の関係でご一緒させていただいたことのある立命館の武田史朗先生によるワークショップがあるとのこと。

あの空間に気軽に集えるライブラリーができるかもしれない! それは行かねば!と本日いそいそ行ってまいりました。



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礒井さんのご講演のあと、数名ずつでワークショップ。

まずは、まちライブラリーの催しでは恒例、本を紹介しながらの自己紹介タイム。こういうときって、実にバラエティに富んだ本が登場するので面白いです。

私は、先日の関西ウーマンの書評でも取り上げた『弱いつながり』を。コミュニケーション空間をつくっていくためのキックオフのプレイベント?に来られるような皆さんには関心を持っていただけそうかなと思って選びました。



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そして、ここにまちライブラリーをつくるならというお題でお話。時間がかなりタイトだったのですが、こうしたワークショップに手慣れた方ばかりのテーブルだったので、あっという間にブレインストーミングのふせんがこんなに。


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全体への発表。立命館の院生さんが実に上手にまとめてくださいました。



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最後に礒井さんの全体講評。


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こうした初対面の人が多く集う機会では、知らない人が小さな単位をつくって話し合う形はとても有効だと思いますが、逆に別のテーブルの方は顔も見ないで終るというデメリットもあります。

時間があれば、何度か組み合わせを変えて話を発展させていくというやり方がありますが、今日は時間が押せ押せだったのでそうもいかず、せっかく関心を持った人たちが集まったのに、ちょっともったいなかったかなと思いました。

まだまだこれから、この場所の使い方を考えていく機会を設けられるようですので、今後も注目したいと思います。

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自分では自分の写真が撮れないので、UDCBKさんのFacebookから写真をシェアさせていただきました。



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by chekosan | 2017-10-18 22:56 | 図書館、図書室、本のあるところ | Trackback | Comments(0)

2回、3回と読むたびに、強く共感したり、さらなる発見があったり、より近づいていける気がしてきています。

すべての時間と体力をがむしゃらに研究だけに注ぎ込める若い時期と違って、家族ができたり体力が落ちたりすると、力技による無理ができなくなってきます。

そうしたときに、東さんは、新しい視点や関心を得るには、いつもと違う場所へ行くと良いと気づいたといいます。

いつものスマホに流れてくる同じようなメンバー、同じような情報源からの情報で固まっていないで、場所を変えてみる。それだけで見えるものが変わってくる。

若い人にも年を重ねた人にも、今の状況に閉塞感を持つ人にはもちろん、充分満ち足りていると思っている人にもおすすめします。



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by chekosan | 2017-10-14 15:09 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
同志社大学法学部の「特殊講義」、2年目は「文学作品で知るロシア・東欧」と題して、ロシア・東欧の歴史や社会を扱った文学作品(ルポルタージュ文学を含む)を精読します。

15週で10冊程度は読むものと思っておいてください、とシラバスに書いたので、またまた極小サイズのクラスになるかなあと思っていたら、昨年の3倍になりました。そのなかには昨年度の講義科目受講生や春の講義科目受講生も。わ~☆(´∀`*) 

と言っても一桁ですが(笑)

今年はまず、2015年のノーベル文学賞を受賞したベラルーシの作家、スヴェトラーナ・アレクシェーヴィッチの作品のうち、文庫で手に入る3冊を読みます。

1冊目は『戦争は女の顔をしていない』(1984年)です。

これは、第二次世界大戦においてソ連軍に従軍した、あるいはパルチザンとして対独闘争に加わった、もしくはそうした人たちを支援した女性たちの証言集です。



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アレクシェーヴィッチの作品の特徴は、膨大な市井の人々の証言を集め、それらを加工せずに、しかし意図をもって編みなおすという手法です。

何日も通ったり、何時間もかけたりして、徐々に心と口を開いてもらって出てきた体験や思いを集めて、生の歴史を編んでいくのです。この作品では、500を超える人々から証言を得たといいます。

ほとんど解説なしに証言が続くので、受講生たちははじめはかなり戸惑ったようです。読んでいても、しらばく、いつの、どこの、なんの戦争の話かもわからなかったとのこと。

また、当時のソ連やヨーロッパの状況を知る人には自明の団体の名称や地名も、いまの学生はなかなか見聞きする機会がないので、1冊目としてはけっこう大変だったようです。(^^;

そこで、発表者は時代背景や用語を調べてレジュメにしてくれました。アシスタント院生君も地図や年表を用意して補ってくれました。いい感じ~♡

厳密なテキスト解釈をするのが目的ではないので、基調報告のあとは、感想を訊いたり、話したり、こんな本にはこんなことも書いてあったよ、こんな映画にこういうシーンがあったわ、そういえば、くらいでゆるゆるやっています。

16やそこらで女性たちはなぜ従軍したのか。前線で生死の境目を見た女性は何を語るのか。戦争において女性にしか見えない語れないことはあるのかないのか。それはどういうことか。そして、彼女たちは戦争のあと、どう生きてきたのか。

人それぞれさまざまな戦争との関わりや思いがあって、“男たちの正史”のようにひとくくりにはできないのだ、ということが明らかになります。統合することや整合性、共通点を見いだすことが目的ではありません。一人ひとりの経験を残すための作品です。そのため「まとめる」ことができない作品です。

それにしても生の証言の重さ、ドラマ以上の劇的な経験、衝撃の事実にめまいを覚え、胃が痛くなりました。
ショッキングな場面も多く、万人におすすめとは言えませんが、たいへんな労作です。耐えられる方にはおすすめします。

授業では、さすがにこの内容で500ページを一週ではきつかろうと今回は2週かけました。それでもどうやらけっこうしんどかったみたい!?

でもなかには、授業では取り上げないアレクシェーヴィッチの別の作品を読み始めた受講生も。素晴らしい!

あと2作、引き続きアレクシェーヴィッチ、読んでいきます。がんばろうね、みんな(笑)






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by chekosan | 2017-10-12 17:21 | ロシア・東欧に関する授業@同志社 | Trackback | Comments(0)
バタバタといくつか展覧会に行ってきました(^-^)

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関西大学博物館で開かれていた「ふしぎなサイエンスアート」は、錯視を利用した動く絵。

いや実際には絵は動かないのですが、そのように思えるのです。鯉や女の人がずっとワタシを見つめてくれる。面白いですよ。

二件目は、田中達也 さんのミニチュアライフ展。ミニチュアのフィギュアや食品サンプル、日用品を使った見立ての世界。

タイトルがダジャレってて、とっても楽しいんです♬ 撮影OK、SNSでの拡散OKでした。

一番いいなと思った「隠れた名曲を掘り起こす」。ノートになっていたので購入しました。


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「香港というより「本」港」は実物はなく、写真だけでしたが、この夏の思い出に重なってにやりとしました。

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三件目は、前評判の高い「バベルの塔」展@国立国際美術館。

こんなフォトスポットもありました。バベルの塔って東京タワーよりずっと大きい計算になるんですって。

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呼び物のブリューゲルの「バベルの塔」は、こんなサイズにこんないっぱいよう描き込んだなあ〜という小ささ。

大昔、ウィーンの美術史博物館で見た方のバージョンはずっと大きかったので、不思議な感じがしました。

お昼抜きで向かったので、鑑賞後は館内のレストランへ直行。

展示に合わせた バベル盛りセットにしました。ちょっとバベルの塔崩れちゃってるっぽい気もしなくもないですが、おいしくいただきましたヽ(*´∀`)


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このあともまだまだ魅力的な展覧会があります。いっぱい行きたいな〜。



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by chekosan | 2017-10-11 10:07 | 美術 | Trackback | Comments(0)

今年の秋は、神戸新聞ブッククラブ加盟の書店様とのコラボ企画が実現しました!

「文章表現Ⅱ」受講生が作製したおすすめの一冊のPOPから10作品を選んでいただき、10の書店様の店頭でブックフェアを開催してくださるというものです。


ご依頼をいただき、フェアのPOPも「文章表現Ⅱ」有志チームのメンバーが作りました。


先陣を切ってコーナーを設けていただいた紀伊國屋書店神戸店様にお伺いしました。


エレベーター近くの神戸関連物や手帳コーナーのある一角です。お近くにお越しの際は是非、お立ち寄りください


このあと兵庫県一円の9書店様で同様のフェアを開催してくださる予定です。またお邪魔させていただきたいと思います♬



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by chekosan | 2017-10-06 23:14 | 大学教育 | Trackback | Comments(0)
誕生日~香港研修引率~風邪~授業開始で、充実していたけど、あっという間だったようなひと月。

あいかわらず、怖い系暗い系が並ぶ読書記録。特に最後のホロコースト回想録なんて、夜に読んでしまって怖くて眠れなくなった。でも、貴重な証言がたくさん綴られ、さまざまなことを深く考えさせられた本だった。今月のMVP。残酷なシーン満載なので、おすすめはしにくいけど。


9月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2951
ナイス数:296

怖い絵のひみつ。 「怖い絵」スペシャルブック怖い絵のひみつ。 「怖い絵」スペシャルブック感想
大人気の美術展、「怖い絵」展の紹介本。中野京子氏のベストセラー『怖い絵』シリーズで紹介されている名画を含む、さまざまな「怖い」絵を集めた企画展。キャッチコピーは『その闇を知ったとき、名画は違う顔を見せる。』。本書は、同展の主な作品の解説や展覧会にまつわる秘話、中野氏と宮部みゆき氏の対談など。この美術展、兵庫会場に行ったがたいへんな人で、解説板を読むのもひと苦労。先に本書で予習しておいて正解だった。表紙やチラシにも使われている絵は確かに良かった。大きくて、緻密で、肌やドレスの質感がとても美しい。
読了日:09月02日 著者:中野 京子


怖い絵 (角川文庫)怖い絵 (角川文庫)感想
悪魔や人殺し、戦争といった「怖さ」だけではない。現代では考えられないような残酷な風習や習慣、人の心の闇やよこしまな気持ちを露わにしている「怖い」絵もある。「とにかく絵を見て何かを感じてみましょう」という日本の美術教育に中野氏は疑問を呈する。西洋の絵画には神話や宗教、時代の背景を知らないと寓意がわからないモチーフ、題材がたくさん出てくる。その意味を知ることで、絵は俄然、面白くなる。月イチ書評で取り上げました。https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=201166
読了日:09月03日 著者:中野 京子


約束のネバーランド 5 (ジャンプコミックス)約束のネバーランド 5 (ジャンプコミックス)感想
いよいよ脱出。もともと現実離れした話ではあるが、ますます超人になっていく子どもたち、異世界みたいな外の世界。ハウスにいる頃の方が面白かったな。。。
読了日:09月08日 著者:出水 ぽすか




復讐専用ダイヤル―赤川次郎ショートショートシリーズ (赤川次郎ショートショートシリーズ 1)復讐専用ダイヤル―赤川次郎ショートショートシリーズ (赤川次郎ショートショートシリーズ 1)感想
図書館に行ったついでに小5息子に適当に何冊か見繕った一冊。自分が一気読みしてしまった。赤川さん、久しぶり。何十年ぶりかな。一時期ずいぶん読んだなぁ。相変わらず読みやすくて面白い。こちらは短編集。携帯電話がない時代の話もあるのでだいぶ昔の作品なのだが、全然古びない。ちょっとブラックでちょっと人情味があって。また時々気分転換に赤川さんの本、手に取ってみよう。
読了日:09月10日 著者:赤川 次郎


とりつくしま (ちくま文庫)とりつくしま (ちくま文庫)感想
心残りのある死者が一つだけ何かモノに取り憑けるというお話。学生がすごく感動するんですと勧めてくれた。ピュアだなぁ。私なら、、子らのベストオブぬいぐるみなら捨てられずにそばに居られるかなとか思ったけど、やっぱりいいや。家族が嘆きかなしむ様子を見るのは辛いし、落ち着いてきた頃に聞きたくないこと見たくないことを知ってしまうのもヤダし、自分の存在が忘れられていくのを見るのも嫌だな。しばらくしっかり悲嘆にくれてもらったら、あとは私のことは忘れていいから明るく生きていってほしいなぁ!
読了日:09月11日 著者:東 直子


怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)感想
怖い絵シリーズ2作目。絵が描かれた当時の常識や風習、考え方、流行りがわかると、面白く感じなかった絵の面白みがわかってくる。それでも絶賛されるほどの名画なのかよくわからないものもあるが、それは文庫という小さなサイズに押し込まれているからかもしれない。ところでルーベンスの時代ならアタシも三女神の争いに仲間入りできたんじゃないかしら。生まれる時代間違ったわ〜(´∀`)
読了日:09月11日 著者:中野 京子


あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 (520))あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 (520))感想
子どもの頃から気になっていた本をようやく読んだ。ドイツ人少年のぼく一家は、同じアパートに住むユダヤ人のフリードリヒ一家と親しくつきあう。少年の父は20世紀にまさか国家が虐殺を指揮することはないだろうと脱出を拒む。いかにも悪どい家主、一家を助けようとしながらも決定的なところでは及び腰なぼくの一家、ノリでポグロムに参加してしまうぼく。普通の人々がユダヤの人々を追い詰めていく様子が淡々とリアルに描かれる。三部作のようなので続きもまた読みたい。
読了日:09月12日 著者:ハンス・ペーター・リヒター


夜の記憶:日本人が聴いたホロコースト生還者の証言夜の記憶:日本人が聴いたホロコースト生還者の証言感想
著者は生命倫理の研究者。ホロコーストの現場や生存者を直接訪ねた記録だが、肝心のインタビューが大幅に短縮されている人もあるよう。インタビュー相手が既に回想録を出しているような人ばかりだからか? 挨拶部分や「話を聞いてのまとめ」的コーナーを排して、できる限り生の証言を採録して欲しかった。全体的に情緒的で思い込みや想像に基づく記述が多いので留意する必要がある。ところで、第2世代、第3世代へのホロコーストの影響については別の機会にという記述が何度か出てくるが、研究成果はもう出されないのだろうか。
読了日:09月14日 著者:沢田 愛子


おわらない音楽 私の履歴書おわらない音楽 私の履歴書感想
日経新聞「私の履歴書」に加筆修正したもの。疾風怒濤な小澤氏のこれまでをざっと追える本。すごい密度、すごい交友関係。恩師への尊敬の念と、自らも次の世代を育てようと教育活動に力を入れているところに感動。おかげで、我が息子も、小澤征爾音楽塾の青少年無料招待リハ公開で、小澤征爾指揮カルメンをかぶりつきで観ることができ、良かった良かったと大興奮して帰ってきた。初めてのオペラがそれだったおかげで、すっかりオペラ好きになった模様。一流は違うと思った次第。私も小澤氏の公演、聴きに行きたいなあ。
読了日:09月17日 著者:小澤 征爾


日本に来たユダヤ難民: ヒトラーの魔手を逃れて 約束の地への長い旅日本に来たユダヤ難民: ヒトラーの魔手を逃れて 約束の地への長い旅感想
著者はイスラエルの建国に携わり宗教大臣を務めた人物。ポーランドからのユダヤ難民の救出に奔走した回想録。団体名や派閥名、宗教上の用語が頻発してわかりづらい。一覧と注釈が欲しかった。著者自身、杉原千畝の発給した通過ビザを持って日本に来た難民ではあるが、その話は一部である。杉原については深い敬意と謝意を持って記してあるが分量は多くない。なお最近インターネット上でユダヤ人の恩人として拡散されている人物についてはかなり厳しく否定している。
読了日:09月19日 著者:ゾラフ バルハフティク


日本人に救われたユダヤ人の手記日本人に救われたユダヤ人の手記感想
リトアニアで生まれ育ったユダヤ人少年のホロコースト回想録。杉原関連本には、杉原との交流部分ばかりが引用されるが、本書はそれ以外の体験の方が断然面白い。面白いという表現はそぐわないかもしれないが…本書で語られているユダヤ人に対する迫害、殺害、略奪の様子は生々しく残酷で非常にショッキングである。それでもカウナスではユダヤ人同士の結束が固くコミュニティの信頼関係が崩れなかった。詳細は、この夏、かつてのゲットー跡を訪れた記録と併せてブログに。http://chekosan.exblog.jp/27140033/ 読了日:09月22日 著者:ソリー ガノール





読書メーター

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by chekosan | 2017-10-01 14:02 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
入手が遅れて後回しになっていた『日本人に救われたユダヤ人の手記』を読んだ。リトアニアで生まれ育ったユダヤ人少年が、ホロコーストを生き抜いた回想録である。

ソリー少年の一家は日本領事代理だった杉原千畝と交流があったため、杉原関連本には必ずといっていいほど引用される本である。というと、杉原ビザで欧州を脱出した話かと思えるが、そうではない。ソリーの一家は、杉原の忠告を受けながらリトアニア脱出になかなか踏み切れなかったために、とんでもなく過酷な体験をしてしまう。ソリーと父、姉、叔母はなんとか終戦まで生き延びるのだが、ほとんどの親類縁者友人知人は亡くなってしまうのである。

ソリーと父は、敗北が避けられなくなったナチドイツの命令で、ゲットーからダッハウ収容所へ連行され、さらに収容所から徒歩で移動させられる。この「死の行進」の途中で、日系アメリカ人部隊に救出される。

というように、ソリー少年に救いの手を差し伸べた人々のなかに杉原や日系2世の米兵がいたということで、邦題は「日本人に救われた」となっているわけである。

杉原関連本には、杉原との交流部分や日系人が救出した部分のみがクローズアップされて引用されるのだが、本書はそれ以外の体験の方が断然、面白い。面白いという表現はそぐわないかもしれないが…

リトアニアにはユダヤ人社会が根付いていて、文化的、経済的に豊かなコミュニティを形成していた。ソリーの一家もそうである。事業で成功し、カウナス中心地の広いアパートで、宗教的、文化的に満たされた生活を送っていた。

ところが、ソ連の侵攻、ナチスドイツの侵攻に伴って、リトアニア人のユダヤ人への憎悪が爆発する。ヨーロッパユダヤ人を死に至らしめたのはナチス親衛隊だけではない。むしろ実行部隊はドイツが占領した地域の地元住民や、ウクライナなどから連れてこられた兵士たちであった。本書で語られているユダヤ人に対する迫害、殺害、略奪の様子は生々しく残酷で非常にショッキングである。

それでも、ソリー少年たちのいたカウナスではユダヤ人同士の結束が固く、ゲットーに閉じ込められたのちも、ユダヤ人評議会やユダヤ警察とコミュニティとの信頼関係が最後まで崩れなかった。食べるものにも事欠く状態であっても、カウナス・ゲットーでは、職業学校や文化団体、オーケストラまで活動していた。カウナス・ゲットーの生み出す物資は質も高く、生産性が高かったため、ドイツ占領下のゲットーのなかで一番長く存続できたという。

カウナスのユダヤ警察は住民側に立っており、地下抵抗組織を支援してさえいた。最後にはそれがナチスにばれて警察官たちも虐殺されてしまう。が、そうした結束の固さ、人間関係が保たれていたことは、ゲットー閉鎖後、収容所に移送されたのちもプラスの効果をもたらしたようである。

にしても、酷い。実に恐ろしい日々である。よくソリー少年や父が生き残れたものだ。まさに危機一髪を何度も何度も脱している。機転を利かせて、技能を生かして、コネや伝手を辿って、なけなしの財産をはたいて、身を隠して、、、目の前で他の人たちが殺されたり、連行されたりすることも度々ありながら、ソリーたちがなんとか生き延びたのは、精神力と運と家族や友人たちとの結束が大きいように思う。


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なお、カウナス・ゲットーも他のゲットー同様、ドイツの敗退が色濃くなって解体、焼き打ちされてしまう。ゲットーに生き残っていた人々はバルト諸国やドイツなどの強制収容所に連れて行かれてしまう。そのため現在のカウナスにはゲットーの痕跡はない。

戦後は木造住宅が建てられ、住宅地になっている。夏にカウナスに行ったとき、5万人が殺された現場である「第9要塞」(別途投稿予定)に行く途中、そうとは知らずにその地区の大通りをバスで通って、強烈に惹かれるものがあった。第9要塞で買った写真集を見たところ、まさにそのあたりがかつてのゲットーであったとわかり、後日あらためて歩いてみた。

第9要塞の受付で購入したパンフや磁石、そしてカウナス・ゲットーの今を撮った写真集。

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今、かつてのゲットーだった地区には、記念碑が立っているくらいである。


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2002年にカウナスを訪れた澤田愛子氏は、『夜の記憶』(創元社 2005)のなかで、カウナスにおけるホロコーストの記憶の留め方について批判的に記述されている。そのときは第9要塞を訪れる人も他にはおらず、高額の撮影料をとられたという。旧ユダヤ人墓地も荒れており、ゲットーの病院があったところで撮影をしていると、通行人の男性が「何かを口走って行った」という。それが何という言葉であったかは通訳者に確認しなかったというが、澤田氏の前後の文脈から、あまり良くない空気を感じ取ったのだろう。

私がこの夏(2017年)に訪れたカウナスは、そのような雰囲気はまったくなかった。第9要塞は賑わってはいないが見学者が何組もいたし、安価な入場料で、わかりやすくていねいな展示を見ることができた。

ゲットーがあったVilijanpole地区は、たしかに高級感のある中心部の通りと比較すれば取り残された地区という感じはしたが、高層ビルが建設されていたり、いまどきなスーパーが営業していたりと再開発の最中という感じであった。さらには、この地区で地図を見ていたら「何かお探しですか、お手伝いしましょうか」と英語で訊いてくれる人があったり、「日本人か? 日本はいいねえ」とわざわざ自転車を停めてニコニコと声をかけてくれる夫婦に出会ったりもして、むしろ友好的、歓迎されている雰囲気を感じることができた。

リトアニアはEU加盟(2004年)に向けて、過去の歴史の再評価に取り組んだ。今もそれは続いている。自国の「負の歴史」に向き合って、さまざまな整備を施し、外国から多くの人を受け入れるようになってきたことの表れかもしれない。

いずれにせよカウナスにおけるポグロムとホロコーストの歴史については、もう少し調べてみたい。見損ねているところもまだまだあるので、もう一度行きたいと思っている。


つづく


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by chekosan | 2017-09-24 12:28 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)

関西ウーマン「信子先生のおすすめの一冊」、9月は中野京子さんの「怖い絵」シリーズです。

ただいま、兵庫県立美術館で、この本にちなんだ展覧会が開かれています。
7月22日から始まり8月30日には入場者15万人を突破しました。

キャッチコピーは『その闇を知ったとき、名画は違う顔を見せる。』

……「怖い絵」といっても、悪魔や人殺し、戦争といったわかりやすいものだけではありません。現代の私たちには考えられないような残酷な風習や習慣が反映されている「怖い」絵もあれば、ダヴィッドのスケッチのように人の心の闇の部分やよこしまな気持ちを露わにしているという点で「怖い」絵もあります。……

書評本文はこちらからどうぞ。


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by chekosan | 2017-09-09 14:38 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
2017年8月は、1日から11日までリトアニア調査旅行。リトアニア良かった。帰ってきて、資料をたくさんひも解いて、見てきた記系論文を書いて一応提出。そんなひと月。ということで、8月の読了本もリトアニアと旅が中心。9月も派生本を読んでいく。


8月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2105
ナイス数:201

鴎外の恋 舞姫エリスの真実鴎外の恋 舞姫エリスの真実感想
昨年ベルリンで鴎外記念館近くに泊まっていながら記念館には行かなかった。読んでいたら絶対に行ったな。いやベルリンに行ったからこそ、この本に興味を抱けたのかも。次の機会にはぜひ行ってみよう。本書は、森鴎外の『舞姫』のヒロイン、エリスのモデルを探すドキュメンタリー。著者はベルリン在住で、ドイツ語が堪能。粘り強い調査でモデルと思われる女性を突き止める。調査のきっかけから細かい過程、著者の迷いまで、つぶさに書きとめた読み物は、研究者の書くものよりもドラマチックで面白い。若干、感情移入が強すぎるきらいはあるが。
読了日:08月04日 著者:六草 いちか


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影感想
森鴎外の「舞姫」のヒロイン、エリスのモデルと思われる女性を追うドキュメンタリー第2作。著者は、公文書や教会の文書をしらみつぶしに探し、モデルと思われる女性の妹の子孫を突き止め、女性の中年期の写真を手に入れる。前作も本作も、著者の探索を時系列で記述する形のため臨場感がある。研究者であればカットするような、調査にかかった時間や行き詰まり、対応した文書館の担当者の様子まで書かれており、調査の苦労や手法がわかるところも面白い。ただ、推測や感情に基づく記述や情緒的な表現が多い点には注意が必要。
読了日:08月17日 著者:六草 いちか


ぼくには数字が風景に見えるぼくには数字が風景に見える感想
リトアニアに関する本を洗い出していて浮上。著者はサヴァン症候群でアスペルガー症候群。映画「レインマン」のように数字に強く、記憶力に秀でている。数字や言葉は色や感覚を伴って現れるという。驚きの連続。しかしコミュニケーション能力には難がある。本書でも記述の量や濃度にムラがあり、そこに著者の特性が表れている。で、なぜリトアニアが関係するかというと、著者が1997年頃、英語教師としてイギリスから赴任したから。違いがあって当たり前という状況に身を置くことで著者は大きく変化し、自信をつける。私にはこの章が面白かった。
読了日:08月19日 著者:ダニエル・タメット


旅行者の朝食 (文春文庫)旅行者の朝食 (文春文庫)感想  → 関西ウーマン連載「信子先生のおすすめの一冊」で取り上げました。
チェコのコイ料理をSNSで話題にしたところ、読書友達が本書にも記述があると教えてくれた。その部分だけ確認して積読になっていたので、リトアニア旅行のお供にして寝る前にちびちびと読んだ。米原さんが求め続けたお菓子ハルヴァの話を読んだ翌日だったか、リトアニアの小さな村のスーパーでそれを発見。果たしてそのお味は、、、月イチ連載の書評に書きました。https://www.kansai-woman.net/Review_s.php?id=201150
読了日:08月19日 著者:米原 万里


バルト三国歴史紀行〈3〉リトアニアバルト三国歴史紀行〈3〉リトアニア感想
著者はソ連・東欧に駐在していた元ビジネスマン。バルト3国の旅の記録と歴史紹介シリーズの3巻目のためか、いつのどういう旅なのかがよくわからなかった。発行は2007年だが奥付によれば1998年から地方紙で連載されていたようなので、旅自体はそのあたりなのか? 今年(2017年夏)行って見てきたリトアニアとはずいぶん様子が違い、この間の変貌ぶりを感じられた。構成や流れやバランスがややこなれていない気はするが、これだけリトアニアをクローズアップした本はそうはない。細かく出典が示されていればなお良かった。
読了日:08月21日 著者:原 翔


ホロコースト前夜の脱出―杉原千畝のビザホロコースト前夜の脱出―杉原千畝のビザ感想
著者は小中学校の教師を勤め上げる直前に新聞で杉原千畝に関するコラムを読み、強い関心を抱く。退職後、杉原夫人や、杉原の発給したビザで欧州を脱出したユダヤ人の1人でのちにイスラエルの宗教大臣を務めたバルハフティク氏との面会を実現する。本書は夫人やバルハフティク氏の著作に多くを拠っており、独自の調査研究の成果は特にないようだが、当時の情勢や、杉原ビザ発給前後の状況を満遍なくダイジェストで小説風に読むことができる。
読了日:08月24日 著者:下山 二郎


伝記世界を変えた人々 (6) ワレンバーグ−ナチスの大虐殺から10万人のユダヤ人を救った、スウェーデンの外交官伝記世界を変えた人々 (6) ワレンバーグ−ナチスの大虐殺から10万人のユダヤ人を救った、スウェーデンの外交官感想
1944年、中立国スウェーデンの外交官としてハンガリーに赴任し、10万人のユダヤ人を救出した人物の伝記。ワレンバーグは名家の出身で、アメリカに留学し、数か国語を操る青年だったが、職業外交官ではなかった。ようやくユダヤ人救出に動きだしたアメリカの戦時難民委員会の活動を欧州で展開するための要員であった。だからこそ思いつく大胆な作戦で多くの人々を救う。ところがソ連によるハンガリーの解放直後、今後の交渉のためソ連軍司令部に赴いたまま失踪する。いまもって失踪後の足取りがはっきりしないということに衝撃を受ける。
読了日:08月25日 著者:M.ニコルソン,D.ウィナー


旅のラゴス (新潮文庫)旅のラゴス (新潮文庫)感想
人間社会の発展をやり直すとしたら系SFファンタジー。主人公は、彼らが生きる星に宇宙船でたどり着いた先祖が残した書物を求めて旅をする。書物から高度な文明の発展史を吸収するが、自分たちの世界の科学や社会的制度の自然な発展を飛び越すような知識や技術をむやみに与えることはしない理知の人。ラゴスという名はロゴスからか。そこは面白いが、出自が良く、行く先々で尊敬され、「世話をする」妻たちが現れ、子は妻たちに丸投げで故郷に戻り、すべてを得た老年に思い出の人を追って旅に出るってのは、いかにも「男のロマン」な冒険譚。
読了日:08月25日 著者:筒井 康隆

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by chekosan | 2017-09-01 11:11 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)