中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan
唐沢寿明、小雪主演「杉原千畝」をDVDで観ました。これで杉原千畝氏を取り上げた映像作品3本目です。

うーーん。この映画は好評だったのでしょうか。ノベライズされた小説を先に読んだときに予感はしていたのですが、うーーん。。。という感じです。

唐沢寿明は、いい俳優だと思います。テレビドラマの「白い巨塔」なんて、とても良かったと思います。知的な人だし、見た目的にも割とイメージに合っていると思っていました。が、、、この映画、セリフが全編英語なのです(ポーランド人だけの場面はポーランド語、日本人だけの場面は日本語ですが)。そのために、唐沢君の演技がヘタに思えるのです。

千畝夫人・幸子役の小雪も、ただ千畝に寄り添うだけのおとなしい奥さんというキャラクターになってしまっていて、実在なのかわからないロシア人女性スパイの方が存在感があるという事態に。あと、細かいことですが、あの時代で着物にイヤリングしているのも気になります。外国にいるときはアリだったのでしょうか? 

この作品は、加藤剛版ドラマ反町隆史版ドラマとの差別化を図ったのか、ユダヤ難民に通過ビザを大量発給するエピソードの部分がかなりあっさりしています。監督によれば、単なるお涙頂戴にしたくなかったということですが、狙い通り(?)盛り上がりに欠けるものとなっています。というか、とりあえず全体的にテンポが悪いです。

杉原ビザを持ったユダヤ難民が極東ウラジオストクまでたどり着いたものの、日本は入国を許可しない、さあどうするという後日談を挿入した点は過去のドラマと違う部分なのですが、これも残念なことに中途半端です。どうせならもっとしっかり描くか、まったくない方がいいように思いました。

この作品に関して、史実と異なる部分をかなり細かく指摘する論文もあります。が、それ以前に、狙いやテーマがよくわからない映画になっているように思いました。

良いところは、、、絵というか画質はさすがに過去のドラマよりはずっといいです。ただ室内のセットはちゃちいです。これも残念な感じです。映画なのに。あれ? フォローになっていない?


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これで3本の映像作品を観ました。一番古い加藤剛主演のドラマは、幸子夫人の著作の構成に忠実なドキュメンタリードラマという感じ、反町隆史主演のドラマは主題をしぼった、わかりやすくお涙頂戴な物語、唐沢寿明主演の映画は前2作と違うものをと意気込んでいろいろ盛り込もうとした結果、いろいろ薄まってしまったという感じでしょうか。どれを勧めるかと言われると難しいです。どれも一長一短ありです。いずれにしても、脚色や演出、創作した部分はあるものとして観る必要はあると思います。





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by chekosan | 2017-06-17 22:24 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
杉原千畝を取り上げた映像作品2本目は、反町隆史、飯島直子主演の「六千人の命のビザ」です。こちらは、終戦60年ドラマスペシャルとして、よみうりテレビが制作しました。1時間46分ほどです。

1992年制作の加藤剛主演の「命のビザ」(←感想あり)は、千畝夫人・幸子氏の回想録『六千人の命のビザ』に書かれた内容をほぼ網羅したもので、情報量が多く、後日談もしっかり盛り込んであるのが良さです。ただ、後日談の部分がかなり長いため、少しストーリーが散漫になっていると言えなくもありません。

反町版は、千畝氏がリトアニアでユダヤ難民にビザを発給したエピソードに特化し、登場人物もかなり少なくしているので(お子さんの数まで減っている…)、わかりやすく人道的なドラマになっています。ただし、話を凝縮させているわりには、脚色というか、ちょっとここはフィクションだろ~と思える場面はあります。

キャスティングや演技に関しては、はじめのうちは、う~ん、反町隆史ではかっこよすぎ? 加藤剛さんのインテリな感じの方が合っているなあ、、、他の役も、ちょっとセリフや演技がちょっとわざとらしいなあという気もしましたが、そのうち気にならなくなりました。いや、それどころか、千畝がカウナスの駅でギリギリまでビザを書き続ける場面などは、けっこう感動しました。期待していなくてごめんなさい。

あ、でも戦後の再会シーンの反町千畝の老けさせ方はいただけないです。せっかくの感動がちょっと…(笑) 幸子夫人役は、私は飯島直子の方がゆったりした感じで良かったな(←多分に好みも入ってます)。

ということで、残る1本、唐沢寿明主演の映画もまた観ます。



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by chekosan | 2017-06-14 23:07 | リトアニア | Trackback | Comments(0)
加藤剛、秋吉久美子主演「命のビザ 六千人のユダヤ人を救った日本領事の決断」を観た。このあと2本、杉原千畝氏関連の作品をDVDで用意している。3本観たら比較などしてみたい、とりあえず忘れないようにメモ。

私は本作品をテレビで見て杉原千畝氏を知ったような記憶があったのだが、どうも覚えがないシーンが多くて、違うものを観たのではないかという気もする。あるいはカットされたものを見たのだろうか?

それはともかく。

本作品は、第二次世界大戦のさなかに、本国の命令に背いて、リトアニアから脱出しようとした2千人を超すユダヤ難民に通過ビザを発行して6千人の命(ビザは家族に適用されたため)を救った外交官、杉原千畝氏の苦悩、決断、その後に至るまでを追っている。リトアニアを去ってからの話も案外長い。

ここはという場面のセリフは、原作である妻・杉原幸子氏による回想録『六千人の命のビザ』にかなり忠実にしてある。当時の映像も随所に挟まれているのが効果的。半ドラマ半ドキュメンタリーのような感じのつくりである。

加藤剛が千畝氏のイメージによく合っているように思う。ご本人を知らないのにイメージに合うとか合わないというのもおかしな話かもしれないが。

DVDにはさらに、妻・幸子氏が50数年ぶりにリトアニアを訪問した際の記録映像も付いている。当時、日本領事館で働いていた現地の女性が幸子氏を迎えて思い出を語るシーンや、シナゴーグで現地のユダヤ人からお礼を言われるシーンなども収録されている。



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by chekosan | 2017-06-08 01:04 | リトアニア | Trackback | Comments(0)
今月はツヴァイク月間でした☆ 先月の「関西ウーマン 信子先生のおすすめの一冊」に取り上げた、町山智浩さんの『映画と本の意外な関係!』で紹介されていた映画「グランド・ブダペスト・ホテル」の関連本と、映画にヒントをもたらしたというシュテファン・ツヴァイク『昨日の世界』にどっぷりはまりました。ツヴァイクについては、稿をあらためてたっぷり書きたいと思います。(^▽^)/


4月の読書メーター読んだ本の数:8  読んだページ数:2476 ナイス数:150


無意味の祝祭無意味の祝祭感想 良く言えば削ぎ落とされ洗練された、しかし、チェコ時代の作品に惹かれる読者としては物足りない作品。クンデラといえば、歴史や国家や社会と個人の人生の関わり方を考え抜いた哲学的考察、登場人物の内面をこれでもかというくらい分析するところ、実験的な入り組んだ構成へのこだわりが面白かったが、この作品では、そういう深さや悩み、実験的な性格は薄れている。この作品は、壮年期の迷いや悩み、苦しみから脱した老年期のクンデラが投影されていると思う。もはや生々しい葛藤の渦中ではない人の書く小粋さを楽しむ小品と感じた。読了日:04月01日 著者:ミラン クンデラ

ユリイカ 2014年6月号 特集=ウェス・アンダーソン―『グランド・ブダぺスト・ホテル』へようこそユリイカ 2014年6月号 特集=ウェス・アンダーソン―『グランド・ブダぺスト・ホテル』へようこそ  読了日:04月09日 著者:ウェス・アンダーソン,レイフ・ファインズ,野村訓市,蓮實重彦,三浦哲哉



ボタン穴から見た戦争――白ロシアの子供たちの証言 (岩波現代文庫)ボタン穴から見た戦争――白ロシアの子供たちの証言 (岩波現代文庫)感想 第二次大戦のドイツ軍侵攻時に2,3歳から14,5歳くらいだった101人の証言集。白ロシアの村々はドイツ軍に蹂躙され、想像を絶する目に遭う。村に残ったお年寄り、女性、子どもたちが、見境なく焼かれ、銃殺され、吊るされ、自ら掘らされた穴に落とされて埋められる。予想以上に恐ろしい、残忍な話ばかりが続くが、孤児や小さな子どもたちを周りの大人やソ連軍やパルチザンが救って育て、なんとか教育を授けようとする姿には救いや希望を感じた。数字だけでは伝わらない、一人ひとりの体験の重さが迫ってくる。読了日:04月09日 著者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ

文化立国論: 日本のソフトパワーの底力 (ちくま新書)文化立国論: 日本のソフトパワーの底力 (ちくま新書)感想 大学の授業で、政治と文化、文化によるまちおこし、ソフトパワーとしての文化、サブカル外交といった話題をちょいちょい取り上げている。学生の関心が高く、食いつきが良い。かつて芸術系大学・学部で教えていたときは、実際に自治体の主催する催しに関わっている学生も多く、私の方が教えてもらうことが多いくらいだった。いまの本務校は留学生がとても多いのですが、日本のサブカルを通じて日本が好きになったという学生が多い。本全体としてはやや散漫な気もするが、授業ネタになる細かい事例や事実多数。備忘のためメモをブログにアップ。読了日:04月11日 著者:青柳 正規

未来食堂ができるまで未来食堂ができるまで感想 大学図書館の新刊コーナーでみつけて帰りの電車で一気に読了。ブログでの脱サラ食堂開業日記をまとめた本。企業を退職してから開業後一年ほどの生の感覚が伝わる。30代半ば大手企業のSE出身。だからこそのシステマティックさ。事業計画書からスタッフ用マニュアルまで公開するオープンソースな食堂運営。その手法や数々のアイディアが興味深い。ただし、どうやって実際にお店を一人で回しているのかという一番知りたいところはこの本だけではわからない。同店のまかないさんをして、実地で学ぶ人も増えている模様。読了日:04月12日 著者:小林 せかい

ウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテルウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテル感想 オーストリアの作家ツヴァイクの作品にインスパイアされた映画のメイキング本。もう新品は売っていないので中古で定価以上で買ったが、それだけの値打ちはあった。監督や主演俳優やスタッフへのインタビューその他たっぷり解説が読める。イラストや写真も豊富。オールカラー。ロケ地となったドイツの町ゲルリッツや、ホテルのモデルの1つであるカルロヴィ・ヴァリのグランドホテル・プップに近いうちに行きたい。ブログに詳しくメモした。読了日:04月16日 著者:マット・ゾラー・サイツ


昨日の世界〈1〉 (みすずライブラリー)昨日の世界〈1〉 (みすずライブラリー) 読了日:04月23日 著者:シュテファン ツヴァイク
昨日の世界〈2〉 (みすずライブラリー)昨日の世界〈2〉 (みすずライブラリー) 読了日:04月27日 著者:シュテファン ツヴァイク




『昨日の世界』は別途。


読書メーター

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by chekosan | 2017-05-01 17:18 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
映画「グランド・ブダペスト・ホテル」をDVDで観ました。

劇場公開時はポスターを見て、オシャレなドタバタ喜劇なのかなと思い、
見逃してもさほど気にしていなかったのですが、
町山智浩さんの『映画と本の意外な関係!』を読んだところ、
この映画、オーストリアの作家ツヴァイクの作品にインスパイアされたものとわかりました。
こちらに書評掲載しています。

ツヴァイクは世紀転換期のウィーンで活躍したユダヤ人作家です。
平和主義者でユダヤ人ゆえ、ナチスドイツによるオーストリア併合後、著作は焚書となります。
そして亡命先のブラジルで服毒自殺をします。

いったいツヴァイクがどう絡むのかと、いてもたってもいられなくなって、
町山さんの本を読んで、すぐにディスクを取り寄せました。

そして見てみると、実に面白い!

ミステリーコメディで、セットや衣装や色彩、撮り方がとてもオシャレです。
お話の構造も何層かになっていて、実際の歴史をうまく盛り込んであります。

笑いながら楽しんだ最後の最後に、
「ツヴァイクの作品にインスパイアされた」という文言が黒い画面に大きく出ます。

それによって、この楽しくてオシャレな映画が、
一気に重層的になるというか、厚みを増すように思いました。

ツヴァイクのことや歴史的経緯を知らなくても楽しめるのですが、
この最後のフレーズに「なになに?」と思って少し調べた人は、
さらにこの作品を深く理解できるのではないかと思います。

わたくし、すぐさま3千部限定の豪華本を定価以上の値で買い求めました。
『ウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテル』。

この本、高価でしたが、それだけの値打ちがありました。
監督や主演俳優やスタッフへのインタビューその他、たっぷり解説が読めます。
イラストや写真も豊富。オールカラーです。

さらに、ツヴァイクの回想録『昨日の世界』も読み、
これは第一次~第二次世界大戦の中欧を知るとっかかりに非常に良いと思い、
同志社の「ロシア・東欧地域研究」でも取り上げました。

けっこう手をかけて準備したのですが、面白さが伝わっているといいなぁ。
今夜にでもDVDを借りに行きます!と感想もあったので大丈夫かな?

ロケ地となったドイツの町ゲルリッツも、実はなかなか面白い町なのです。
第二次世界大戦後、ドイツーポーランド国境の画定で、
それまで一つの町だったのがオーデル川で2つの国に分断されてしまった町なのです。

冷戦終結後、2つの町の交流や協力関係を進める取り組みがなされています。
古い町並みも残っていますし、ホテルの内部を撮るのに使った古い建物も
この秋にリニューアルオープンするとか?

映画のホテルやホテルのある町のモデルとされるチェコのカルロヴィ・ヴァリの
グランドホテル・プップとともに、今年度中くらいに行こうかなと思っています。
カルロヴィ・ヴァリ、昔行ったのですが、プップの内部には入っていないんです。

アンダーソン監督が特に参考にしたツヴァイクの回想録『昨日の世界』については別途。

ところで、映画のクライマックスは映画「薔薇の名前」を連想しました。
それは写真のでっかい本には特に書いていなかったのですが。
久しぶりに観たいな。

また、ヒッチコックの「引き裂かれたカーテン」からの引用シーンもあるそうです。
冷戦期の東西ドイツのスパイものだそう。
ということで、そちらもDVDを買いました。^^

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by chekosan | 2017-04-24 13:31 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
この映画、原題は “Land of Mine”(地雷の国)ですが、それでは人を呼べないんでしょうね。
「ヒトラーの忘れもの」という邦題は、ちょっと意訳過ぎるかなと思いますが、
その方が時代やテーマを容易に想像させ、なんだろう観に行こうかなと思う人は多いかもしれません。

この作品の舞台はデンマークです。

デンマークはドイツと戦ったわけではないのですが、5年に渡って事実上占領されました。
イギリス率いる連合軍が解放したあと、デンマークに残されたドイツ兵捕虜が、
ドイツが海岸に埋めた200万ともいわれる地雷を撤去する任務に充てられます。
ところがこれが年端も行かない少年兵たちなのです。

統率するのがデンマークの鬼軍曹。
この人、はじめのうちはそれはそれは怖くて厳しい人なのですが、
自分の子どもくらいの年齢の少年たちが、食べ物もなく、体調不良にフラフラになり、
それでも故郷に帰るため文字通り命がけで任務にあたる様子を見て、
だんだんとほだされていきます。しかし…  


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    ↑
がっちりした軍曹と、あどけなさの残る少年兵たち。どう見ても子ども。ひょろひょろです。

戦争も末期になってくるとドイツは15歳くらいから兵士として採用するようになっていたのです。
それもお国のために、総統のためにと志願する男の子が多かったのですね。

パウゼバングの小説『片手の郵便配達人』にもそうした記述があります。
みすみす命を落とすくらいならと、祖父や母が阻止しようとするシーンもあります。

この映画の少年兵たちもそうして志願してきたのでしょうか。
「お前たちは兵士か!?」「はい!軍曹!」「では兵士らしくしろ!」と怒鳴られます。

兵士らしく任務を全うして故郷に帰り、瓦礫だらけのドイツの復興のため働くことを夢見て、
なんとか数か月を耐えようとするのですが、
砂浜を匍匐前進して手で掘って地雷を除去するという作業は危険が伴います。
どんどん仲間が減っていきます。

こんな非効率的な危険な作業を未来を担う子どもが命を落としてあたっていたとは。

いや、そもそも何万何百万という地雷を埋めなければ、こんなことは起こりえなかったわけです。

地雷を製造し、埋めて、それを撤去するなどという不毛なことに費やした資源と人命とエネルギーを
もっと生産的なことに向けていればと思わざるを得ません。
もちろん地雷だけでなく、すべての殺傷手段についてもそうです。
せめて同じ過ちを繰り返さないよう、史実を明らかにし、歴史に学ばなくてはいけないと思います。

なお、この捕虜による地雷撤去の事実も長らく公にはならず、
1998年になって、『強制の下で』という本が出版されて、ようやく白日の下に晒されたそうです。

2012年にはデンマークは地雷撤去完了を宣言したそうですが、
その翌年には未処理の地雷が発見されたそうです。












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by chekosan | 2017-04-22 15:42 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
月イチ書評連載@関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊、4月は、
新しい新書のレーベルから、映画評論家、町山智浩さんの『映画と本の意外な関係!』です。

以前は苦手だった映画、自分の専門に関係するものに限ってはよく見るようになってきました。
今期も授業で、映画もいっぱい紹介するよと宣言してきました!
こうした映画評の本はとても参考になります。

本文はこちら。 https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=201086




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by chekosan | 2017-04-08 20:24 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
くたくたな3月。テキスト刊行準備と、卒業入学準備、職場の新年度準備で予想外に忙殺。
読書も論文執筆も停滞しました。4月、長時間の電車通勤が復活すると、かえって読めるかな?


3月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1847
ナイス数:429

ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)感想
なんと6巻発行から2年! そうでしょうね、これだけ調査をするには2年でも短いくらいですね。このシリーズ、作品や作家、古書の流通のこと、実にていねいに書かれてましたね。5巻くらいからドロドロ度が増して、ちょっとうーん、、となりましたが。今後もスピンオフが出るとのことで、初期の面白さが戻ることを期待します。最終巻は途中で種明かしの予想がついてしまいました。残念。そして、去年、明星大学にいったときに、あの本を見てこなかったのも残念! そのときは現物を展示していたかわかりませんが。機会があったら今度こそ!
読了日:03月03日 著者:三上 延


シェア空間の設計手法シェア空間の設計手法感想
若い人向け共同住宅だけではなく、幅広い事例を取り上げている。図面には人や家具なども描き込まれているので、空間の使われ方が想像しやすい。写真は少なめなので、複雑な構造の建物は素人には若干わかりづらい。では、素人には参考にならないかというとそんなことはなくて、設計した人や施主(空間の運営者)の発言や活用事例からいくつか具体的なヒントや大きな示唆が得られた。日本人は無目的、多目的な場所は苦手」ということ、タイムシェアの事例、「ほのかなわれわれ性」という表現が面白い。詳しくはブログに記録
読了日:03月03日 著者:


アウシュヴィッツの図書係アウシュヴィッツの図書係感想
実話をもとにしたフィクション。舞台がアウシュヴィッツなので信じがたい残酷な情景も出てくる。耐えがたい苦しみや悲しみが主人公たちを襲う。それを和らげてくれたのが、家族収容所につくられた学校。主人公の少女ディタは、そこに極秘で持ち込まれた8冊の本を管理する「図書係」であった。禁止されている本を隠し持っていることがばれれば殺される。ディタは知恵を働かせ、命がけで本を守る。それだけ本は人々の心を救う大切なものであった。家族収容所での生活について詳細に書かれているという点でも興味深い。詳しくはブログに記録
読了日:03月07日 著者:アントニオ G イトゥルベ


ルポ 難民追跡――バルカンルートを行く (岩波新書)ルポ 難民追跡――バルカンルートを行く (岩波新書)感想
2015年、欧州に大挙して押し寄せた難民の大移動に新聞記者である著者が同行したルポ。ただし、記者は難民用の移動手段は使うことができず、取材対象者であるアフガンからの難民、アリさん一家とはぐれたり待ちぼうけを食わされたりする。その間の難民一家の移動や生活の様子がわかりづらく、記者の苦労談が印象に残ってしまった。ドイツの手厚い難民保護に対して極右政党が勢力を伸長するのもわからなくないという記述はひっかかる。弱者は徹底して貧しくあらねば、苦難を耐え忍ばなければいけないだろうか。ほか気になる点をブログに記録
読了日:03月09日 著者:坂口 裕彦


ヘンな論文ヘンな論文感想
あまりに面白くて、よそさまで書かせていただいている書評コーナーでも激しくおすすめ。トンデモ論文を集めた本ではありません。大まじめな論文をわかりやすく面白おかしく紹介しながら、学問、研究の楽しさとそれにかける研究者の情熱に敬意を払うものです。書評には盛込ませんでしたが、イラストがまた楽しいのです。タツオさんとこのイラストレーターさんで続編を激しく希望♫  ☆「関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊」でも取り上げました☆
読了日:03月12日 著者:サンキュータツオ



コルチャック先生 (岩波ジュニア新書 (256))コルチャック先生 (岩波ジュニア新書 (256))感想
コルチャック先生は、ポーランドの著名な作家、教育者、医者で、孤児院を創設し、1942年にユダヤ人の子らとともにトレブリンカ収容所に移送されて亡くなった。その生涯と、教育者としての思想や活動、ポーランド史、ポーランドにおけるユダヤ人について、よく理解できた。また彼らが運ばれた収容所の見取り図や、同収容所の数少ない生存者の証言、亡くなった人たちを追悼する石碑の写真や、亡くなった人たちの灰や骨の山の写真もある。コルチャック先生を知る数少ない生存者の貴重な体験談も紹介している。ワイダ監督の映画の感想はこちら。☆本書の詳しい感想はこちら
読了日:03月13日 著者:近藤 康子



映画と本の意外な関係! (インターナショナル新書)映画と本の意外な関係! (インターナショナル新書)感想
映画のなかに登場する本や意味深いセリフを紹介。幅広い教養や知識が惜しげなく開陳され、親しみやすい文体で面白かった。どちらかというとアメリカ映画中心、セリフ中心? ヨーロッパ関係の逸話に惹かれた。「グランド・ブダペスト・ホテル」ツヴァイク(第二次世界大戦前のウィーンの作家)がらみ。「ベルリン・天使の詩」ドイツの思想家ベンヤミンがらみ。「ソフィーの選択」タイトルだけは知っていたが未見。これは観なくては。でも全部わかってしまった…もちょっとネタバレ控えてほしかった… 詳細はブログにメモ
読了日:03月21日 著者:町山 智浩

読書メーター

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by chekosan | 2017-04-02 16:21 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)

映画のなかに登場する本や、意味深いセリフを紹介。
幅広い教養や知識が惜しげなく開陳され、親しみやすい文体で面白かった。

どちらかというとアメリカ映画中心、セリフ中心?
まえがきと最終章でヨーロッパ関係の逸話が書かれていて、強い興味を覚えた。
心惹かれた映画や事実をメモしておく。


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「グランド・ブダペスト・ホテル」(2013年)
劇場公開時に観たいなと思いつつ逃している。
本作はツヴァイクの著作にインスパイアされたという。
ツヴァイクは第二次世界大戦前にウィーンで活躍した作家。
ナチスドイツがオーストリアを併合し、ツヴァイクの本は焚書に。
亡命先のブラジルで服毒自殺。

→ 観ました! 感想はこちらに。http://chekosan.exblog.jp/26810957/




「ベルリン・天使の詩」(1987)
これはビデオをいただいて持っているのだが未見。
ここに出てくる老人が図書館で本を読む姿は、パリ国立図書館で本を読む、
ドイツの思想家ベンヤミンの写真をもとにしているという。

ベンヤミンもユダヤ人で、やはり著書が焚書にされている。
パリがナチスドイツによって陥落したあと、スペインに逃げ込むが、入国を拒否され服毒自殺。


「ソフィーの選択」(1982)
タイトルだけは知っていたが未見。これは観なくてはと思っていたところ。
でも、全部わかってしまった… もう少しネタバレを控えてほしかった… orz
でも、観ます!







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by chekosan | 2017-03-25 22:56 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)

コルチャック先生は、ポーランドの著名な医者、教育者、作家です(1878?-1942)。
「子どもの権利」を尊重するという当時では新しい思想、主張を展開した人です。

ポーランドで2つの孤児院を開き、運営していましたが、
ユダヤ人やポーランド人のナチスドイツのユダヤ人絶滅政策によって
子どもたちと共にトレブリンカ収容所に送られ、殺されました。

本名は、ヘンルィク・ゴールドシュミット、「コルチャック」はペンネームです。



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映画の制作は、1990年。
ポーランドが共産党体制から民主化へと移行してからの作品ですが、白黒です。
それによって、何度か挟まれる、ナチスドイツによる記録映像に違和感なくつながります。

ナチスは書類や映像での記録を丹念に撮っていて、この映画のなかでも、
兵士がワルシャワのユダヤ人特別区(ゲットー)の様子を撮影している場面が出てきます。

街に骨と皮だけになった人々がゴロゴロ転がって死んでいる様子、
そうした死体を運んでいく様子などが、映画のなかに挟まれます。

そのようにして、この映画で描かれていることは作り事ではないのだということ、
実際は映画以上に悲惨な状態だったのだと示しているのではないかと想像します。

同じくワルシャワのゲットーを舞台にした、
ポランスキ監督の「戦場のピアニスト」でもそうした場面が出てきます。

ナチスは、撮影している撮影隊の様子まで撮影しています。
目の前で飢えと病気と暴力に晒されている人々を撮影し、さらにそれを撮影するという、
「客観的」で冷淡な行為そのものが、戦争の狂気をよく表しています。

ただし、「戦場のピアニスト」の方が悲惨さではかなり上回っています。
「コルチャック先生」は、そうはいっても相対的には綺麗な映像です。

それは、コルチャック先生自身が著名な知識人で、
ポーランド人、ユダヤ人、さらにはドイツ人からも尊敬されていたため、
なんとか物資や支援金を駆けずり回って集められたこと、

コルチャック先生は医者であり教育者であったので、
たとえゲットーに押し込められようと
孤児院をできるかぎり清潔に健康に配慮して運営していたこともあるでしょうし、
子どもたちも重要な登場人物であるため、あまり悲惨な映像にしにくかったのかもしれません。

ですので、あまりにも悲惨な映像は見られないという人でも見ることができると思います。


ところで、DVDには付録として小冊子が入っていたのですが、その解説によると、
この映画は上映後、フランスの評論家に「反ユダヤ主義」であると批判されたそうです。
それはちょっと驚きでした。そのようには私には読みとれませんでした。

確かに、ユダヤ人のなかにもナチスと通じて甘い汁を吸っている人物がいて、
彼らは街角で次々人が死んでいる状況下でも遊興にふけっていて、
そんな人たちからコルチャック先生は支援を受けざるを得ない、
その行為を抵抗組織の若者からなじられるというシーンもあります。

また、危険を冒してユダヤ人を助けようとするポーランド人もいることも示されます。

これもポランスキ監督が「戦場のピアニスト」のメイキングで語っているのですが、
ある民族が全員悪人だったり善人だったりすることはないでしょう。
ワイダ監督のこの作品でも、そのことをバランスよく描いているように思えるのですが、、、


ラストシーンが幻想的なのも、コルチャック先生と子どもたちを待ち受ける運命から
目を背けるようなものだと受け取る人もいるようです。

このラストは、たしかに、うーん、そうくるのか?と思わなくもないです。
終わりの30分ほどを一緒に見ていた小4の子どもには解説をしないといけませんでした。

ただ、字幕でははっきりとトレブリンカのガス室で殺されたと出ていますし、
殺されるシーンまで映画に盛り込む必要があるとも思えません。

あえて、「移送」されるところで終わっていることで、
彼らがそのまま死へと直行したことを示しているように思います。

移送されるまでに、何度か逃げ出せるチャンスはありました。
せめてコルチャック先生だけでも、養子に出せる子だけでも、と思えなくもない。
みんな一緒にいるべきだと主張した先生は意固地だと言えなくもないかもしれません。

しかし、あらゆる権利を剥奪され、外界から遮断され、
情報も自由も食料も財産も体力も健康も一切奪われた人たちが、正確な状況を把握し、
後世から見た「善後策」を選ぶことは困難だったでしょう。


私自身は、この映画は比較的淡々と話が進んだせいか、
有名な実話なので結末を知っていたからか泣きませんでしたが、
コルチャック先生の子どもへの接し方、彼らにかける言葉、
孤児院の教育方針、運営方法などにはたいへん感銘を受けました。

悲劇で泣かせるとか、ドラマティックな展開で衝撃を与える映画ではなく、
コルチャック先生の思想の深さや広さ、意志の強さや実際にとった行動、
高潔さなどをじっくり受けとめる映画だと捉える方がよいのではないかと思います。

コルチャック先生のことをもっと知りたいと思い、買ってあった本を出してきたら、
一緒に映画後半を見ていた小4男児が、先に読み始めました。
へぇ~~すごいねんなあ、と感心しながら横で読んでいます。
子が読み終えたら、私も読もうと思います。^^

→2017/3/13追記:
子よりも先に読みました。感想はこちらに。http://chekosan.exblog.jp/26716756/








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by chekosan | 2017-03-12 20:03 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)