中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan
同志社大学法学部の「特殊講義」、2年目は「文学作品で知るロシア・東欧」と題して、ロシア・東欧の歴史や社会を扱った文学作品(ルポルタージュ文学を含む)を精読します。

15週で10冊程度は読むものと思っておいてください、とシラバスに書いたので、またまた極小サイズのクラスになるかなあと思っていたら、昨年の3倍になりました。そのなかには昨年度の講義科目受講生や春の講義科目受講生も。わ~☆(´∀`*) 

と言っても一桁ですが(笑)

今年はまず、2015年のノーベル文学賞を受賞したベラルーシの作家、スヴェトラーナ・アレクシェーヴィッチの作品のうち、文庫で手に入る3冊を読みます。

1冊目は『戦争は女の顔をしていない』(1984年)です。

これは、第二次世界大戦においてソ連軍に従軍した、あるいはパルチザンとして対独闘争に加わった、もしくはそうした人たちを支援した女性たちの証言集です。



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アレクシェーヴィッチの作品の特徴は、膨大な市井の人々の証言を集め、それらを加工せずに、しかし意図をもって編みなおすという手法です。

何日も通ったり、何時間もかけたりして、徐々に心と口を開いてもらって出てきた体験や思いを集めて、生の歴史を編んでいくのです。この作品では、500を超える人々から証言を得たといいます。

ほとんど解説なしに証言が続くので、受講生たちははじめはかなり戸惑ったようです。読んでいても、しらばく、いつの、どこの、なんの戦争の話かもわからなかったとのこと。

また、当時のソ連やヨーロッパの状況を知る人には自明の団体の名称や地名も、いまの学生はなかなか見聞きする機会がないので、1冊目としてはけっこう大変だったようです。(^^;

そこで、発表者は時代背景や用語を調べてレジュメにしてくれました。アシスタント院生君も地図や年表を用意して補ってくれました。いい感じ~♡

厳密なテキスト解釈をするのが目的ではないので、基調報告のあとは、感想を訊いたり、話したり、こんな本にはこんなことも書いてあったよ、こんな映画にこういうシーンがあったわ、そういえば、くらいでゆるゆるやっています。

16やそこらで女性たちはなぜ従軍したのか。前線で生死の境目を見た女性は何を語るのか。戦争において女性にしか見えない語れないことはあるのかないのか。それはどういうことか。そして、彼女たちは戦争のあと、どう生きてきたのか。

人それぞれさまざまな戦争との関わりや思いがあって、“男たちの正史”のようにひとくくりにはできないのだ、ということが明らかになります。統合することや整合性、共通点を見いだすことが目的ではありません。一人ひとりの経験を残すための作品です。そのため「まとめる」ことができない作品です。

それにしても生の証言の重さ、ドラマ以上の劇的な経験、衝撃の事実にめまいを覚え、胃が痛くなりました。
ショッキングな場面も多く、万人におすすめとは言えませんが、たいへんな労作です。耐えられる方にはおすすめします。

授業では、さすがにこの内容で500ページを一週ではきつかろうと今回は2週かけました。それでもどうやらけっこうしんどかったみたい!?

でもなかには、授業では取り上げないアレクシェーヴィッチの別の作品を読み始めた受講生も。素晴らしい!

あと2作、引き続きアレクシェーヴィッチ、読んでいきます。がんばろうね、みんな(笑)






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# by chekosan | 2017-10-12 17:21 | ロシア・東欧に関する授業@同志社 | Trackback | Comments(0)
バタバタといくつか展覧会に行ってきました(^-^)

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関西大学博物館で開かれていた「ふしぎなサイエンスアート」は、錯視を利用した動く絵。

いや実際には絵は動かないのですが、そのように思えるのです。鯉や女の人がずっとワタシを見つめてくれる。面白いですよ。

二件目は、田中達也 さんのミニチュアライフ展。ミニチュアのフィギュアや食品サンプル、日用品を使った見立ての世界。

タイトルがダジャレってて、とっても楽しいんです♬ 撮影OK、SNSでの拡散OKでした。

一番いいなと思った「隠れた名曲を掘り起こす」。ノートになっていたので購入しました。


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「香港というより「本」港」は実物はなく、写真だけでしたが、この夏の思い出に重なってにやりとしました。

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三件目は、前評判の高い「バベルの塔」展@国立国際美術館。

こんなフォトスポットもありました。バベルの塔って東京タワーよりずっと大きい計算になるんですって。

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呼び物のブリューゲルの「バベルの塔」は、こんなサイズにこんないっぱいよう描き込んだなあ〜という小ささ。

大昔、ウィーンの美術史博物館で見た方のバージョンはずっと大きかったので、不思議な感じがしました。

お昼抜きで向かったので、鑑賞後は館内のレストランへ直行。

展示に合わせた バベル盛りセットにしました。ちょっとバベルの塔崩れちゃってるっぽい気もしなくもないですが、おいしくいただきましたヽ(*´∀`)


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このあともまだまだ魅力的な展覧会があります。いっぱい行きたいな〜。



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# by chekosan | 2017-10-11 10:07 | 美術 | Trackback | Comments(0)

今年の秋は、神戸新聞ブッククラブ加盟の書店様とのコラボ企画が実現しました!

「文章表現Ⅱ」受講生が作製したおすすめの一冊のPOPから10作品を選んでいただき、10の書店様の店頭でブックフェアを開催してくださるというものです。


ご依頼をいただき、フェアのPOPも「文章表現Ⅱ」有志チームのメンバーが作りました。


先陣を切ってコーナーを設けていただいた紀伊國屋書店神戸店様にお伺いしました。


エレベーター近くの神戸関連物や手帳コーナーのある一角です。お近くにお越しの際は是非、お立ち寄りください


このあと兵庫県一円の9書店様で同様のフェアを開催してくださる予定です。またお邪魔させていただきたいと思います♬



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# by chekosan | 2017-10-06 23:14 | 大学教育 | Trackback | Comments(0)
誕生日~香港研修引率~風邪~授業開始で、充実していたけど、あっという間だったようなひと月。

あいかわらず、怖い系暗い系が並ぶ読書記録。特に最後のホロコースト回想録なんて、夜に読んでしまって怖くて眠れなくなった。でも、貴重な証言がたくさん綴られ、さまざまなことを深く考えさせられた本だった。今月のMVP。残酷なシーン満載なので、おすすめはしにくいけど。


9月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2951
ナイス数:296

怖い絵のひみつ。 「怖い絵」スペシャルブック怖い絵のひみつ。 「怖い絵」スペシャルブック感想
大人気の美術展、「怖い絵」展の紹介本。中野京子氏のベストセラー『怖い絵』シリーズで紹介されている名画を含む、さまざまな「怖い」絵を集めた企画展。キャッチコピーは『その闇を知ったとき、名画は違う顔を見せる。』。本書は、同展の主な作品の解説や展覧会にまつわる秘話、中野氏と宮部みゆき氏の対談など。この美術展、兵庫会場に行ったがたいへんな人で、解説板を読むのもひと苦労。先に本書で予習しておいて正解だった。表紙やチラシにも使われている絵は確かに良かった。大きくて、緻密で、肌やドレスの質感がとても美しい。
読了日:09月02日 著者:中野 京子


怖い絵 (角川文庫)怖い絵 (角川文庫)感想
悪魔や人殺し、戦争といった「怖さ」だけではない。現代では考えられないような残酷な風習や習慣、人の心の闇やよこしまな気持ちを露わにしている「怖い」絵もある。「とにかく絵を見て何かを感じてみましょう」という日本の美術教育に中野氏は疑問を呈する。西洋の絵画には神話や宗教、時代の背景を知らないと寓意がわからないモチーフ、題材がたくさん出てくる。その意味を知ることで、絵は俄然、面白くなる。月イチ書評で取り上げました。https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=201166
読了日:09月03日 著者:中野 京子


約束のネバーランド 5 (ジャンプコミックス)約束のネバーランド 5 (ジャンプコミックス)感想
いよいよ脱出。もともと現実離れした話ではあるが、ますます超人になっていく子どもたち、異世界みたいな外の世界。ハウスにいる頃の方が面白かったな。。。
読了日:09月08日 著者:出水 ぽすか




復讐専用ダイヤル―赤川次郎ショートショートシリーズ (赤川次郎ショートショートシリーズ 1)復讐専用ダイヤル―赤川次郎ショートショートシリーズ (赤川次郎ショートショートシリーズ 1)感想
図書館に行ったついでに小5息子に適当に何冊か見繕った一冊。自分が一気読みしてしまった。赤川さん、久しぶり。何十年ぶりかな。一時期ずいぶん読んだなぁ。相変わらず読みやすくて面白い。こちらは短編集。携帯電話がない時代の話もあるのでだいぶ昔の作品なのだが、全然古びない。ちょっとブラックでちょっと人情味があって。また時々気分転換に赤川さんの本、手に取ってみよう。
読了日:09月10日 著者:赤川 次郎


とりつくしま (ちくま文庫)とりつくしま (ちくま文庫)感想
心残りのある死者が一つだけ何かモノに取り憑けるというお話。学生がすごく感動するんですと勧めてくれた。ピュアだなぁ。私なら、、子らのベストオブぬいぐるみなら捨てられずにそばに居られるかなとか思ったけど、やっぱりいいや。家族が嘆きかなしむ様子を見るのは辛いし、落ち着いてきた頃に聞きたくないこと見たくないことを知ってしまうのもヤダし、自分の存在が忘れられていくのを見るのも嫌だな。しばらくしっかり悲嘆にくれてもらったら、あとは私のことは忘れていいから明るく生きていってほしいなぁ!
読了日:09月11日 著者:東 直子


怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)感想
怖い絵シリーズ2作目。絵が描かれた当時の常識や風習、考え方、流行りがわかると、面白く感じなかった絵の面白みがわかってくる。それでも絶賛されるほどの名画なのかよくわからないものもあるが、それは文庫という小さなサイズに押し込まれているからかもしれない。ところでルーベンスの時代ならアタシも三女神の争いに仲間入りできたんじゃないかしら。生まれる時代間違ったわ〜(´∀`)
読了日:09月11日 著者:中野 京子


あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 (520))あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 (520))感想
子どもの頃から気になっていた本をようやく読んだ。ドイツ人少年のぼく一家は、同じアパートに住むユダヤ人のフリードリヒ一家と親しくつきあう。少年の父は20世紀にまさか国家が虐殺を指揮することはないだろうと脱出を拒む。いかにも悪どい家主、一家を助けようとしながらも決定的なところでは及び腰なぼくの一家、ノリでポグロムに参加してしまうぼく。普通の人々がユダヤの人々を追い詰めていく様子が淡々とリアルに描かれる。三部作のようなので続きもまた読みたい。
読了日:09月12日 著者:ハンス・ペーター・リヒター


夜の記憶:日本人が聴いたホロコースト生還者の証言夜の記憶:日本人が聴いたホロコースト生還者の証言感想
著者は生命倫理の研究者。ホロコーストの現場や生存者を直接訪ねた記録だが、肝心のインタビューが大幅に短縮されている人もあるよう。インタビュー相手が既に回想録を出しているような人ばかりだからか? 挨拶部分や「話を聞いてのまとめ」的コーナーを排して、できる限り生の証言を採録して欲しかった。全体的に情緒的で思い込みや想像に基づく記述が多いので留意する必要がある。ところで、第2世代、第3世代へのホロコーストの影響については別の機会にという記述が何度か出てくるが、研究成果はもう出されないのだろうか。
読了日:09月14日 著者:沢田 愛子


おわらない音楽 私の履歴書おわらない音楽 私の履歴書感想
日経新聞「私の履歴書」に加筆修正したもの。疾風怒濤な小澤氏のこれまでをざっと追える本。すごい密度、すごい交友関係。恩師への尊敬の念と、自らも次の世代を育てようと教育活動に力を入れているところに感動。おかげで、我が息子も、小澤征爾音楽塾の青少年無料招待リハ公開で、小澤征爾指揮カルメンをかぶりつきで観ることができ、良かった良かったと大興奮して帰ってきた。初めてのオペラがそれだったおかげで、すっかりオペラ好きになった模様。一流は違うと思った次第。私も小澤氏の公演、聴きに行きたいなあ。
読了日:09月17日 著者:小澤 征爾


日本に来たユダヤ難民: ヒトラーの魔手を逃れて 約束の地への長い旅日本に来たユダヤ難民: ヒトラーの魔手を逃れて 約束の地への長い旅感想
著者はイスラエルの建国に携わり宗教大臣を務めた人物。ポーランドからのユダヤ難民の救出に奔走した回想録。団体名や派閥名、宗教上の用語が頻発してわかりづらい。一覧と注釈が欲しかった。著者自身、杉原千畝の発給した通過ビザを持って日本に来た難民ではあるが、その話は一部である。杉原については深い敬意と謝意を持って記してあるが分量は多くない。なお最近インターネット上でユダヤ人の恩人として拡散されている人物についてはかなり厳しく否定している。
読了日:09月19日 著者:ゾラフ バルハフティク


日本人に救われたユダヤ人の手記日本人に救われたユダヤ人の手記感想
リトアニアで生まれ育ったユダヤ人少年のホロコースト回想録。杉原関連本には、杉原との交流部分ばかりが引用されるが、本書はそれ以外の体験の方が断然面白い。面白いという表現はそぐわないかもしれないが…本書で語られているユダヤ人に対する迫害、殺害、略奪の様子は生々しく残酷で非常にショッキングである。それでもカウナスではユダヤ人同士の結束が固くコミュニティの信頼関係が崩れなかった。詳細は、この夏、かつてのゲットー跡を訪れた記録と併せてブログに。http://chekosan.exblog.jp/27140033/ 読了日:09月22日 著者:ソリー ガノール





読書メーター

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# by chekosan | 2017-10-01 14:02 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
チェコスロヴァキアで実際に起った史実を基にした映画「ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦」を観に行きました。

ハイドリヒはナチのナンバー3と言われた人物です。ドイツが占領したチェコスロヴァキアの抵抗組織を壊滅状態に追い込み、ユダヤ人絶滅政策を推し進めた人物でもあります。イギリスと在ロンドン亡命チェコスロヴァキア政府は、チェコスロヴァキア軍の兵士7人を、ハイドリヒ暗殺に送り込みます。その7人のうち2人を主人公に据えた話です。

前半は作戦の計画段階や作戦を実行すべきか否か惑う人々の葛藤を淡々と描いていて、演技や演出や音楽も控えめです。全体をセピアっぽい色調にすることで当時のプラハっぽさをうまく表現しています。

舞台がプラハで、主要登場人物はチェコの俳優が多いのに、言語が英語なのは残念。ここはやはりチェコ語でやってほしかった。興行的に仕方ないのでしょうけど。ドイツ人はドイツ語でした。

外国の俳優さんって年齢や美醜がよくわからないことがあるのですが、本作でもそうでした。そのため登場人物がそれぞれどういう位置づけなのか、しばらくわからなかったです。(^^;

以下ネタバレあり。


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実行部隊は、イギリスからパラシュートでひそかにやってきた軍人たちで若者中心。軍人ゆえに亡命政府の命令は絶対です。

チェコスロヴァキアにとどまって抵抗活動をしているレジスタンスは、ナチによって壊滅状態に追いやられてきたため、この作戦には慎重です。ナチの幹部を暗殺などすれば報復としてどれだけの市民が殺されるかわからない、チェコが地図から消えてしまうかもしれないと言います。パラシュート部隊の若者たちにも恐怖心や迷いが生じます。

しかし、結局パラシュート部隊7人は計画を実行します。このとき、たまたま居合わせた市民が何人も銃撃戦の犠牲になります。

彼らの潜伏を助けた協力者の親子も残酷な仕打ちを受けます。ここのシーンはとにかく酷い。作品中もっとも観るのがつらい場面が続きます。

さらにレジスタンスが恐れていたように、5千人ともいわれる市民がナチの報復で殺されます。

実行部隊を匿ったという疑いをもたれたリディツェ村は、男性全員が処刑され、女性や子どもは収容所送りになり、そのうちほとんどの人は生きて帰ってくることができませんでした。見せしめのため、村の建物はすべて破壊され、更地にされてしまいます。

このような報復の残虐さと悲劇については、チェコのレジスタンスの口から暗殺の実行部隊に伝えられます。映画の最後には観客に向けて字幕でも再度示されます。暗殺の代償はやはりたいへんなものとなったのです。

が、この映画は、実行部隊のなかの2人に焦点を当てたドラマとなっています。そのため、暗殺者らの思いや迷い、恐怖心と愛国心とのせめぎあい、協力者のチェコ女性との恋と別れ、暗殺の緊迫感、暗殺実行後に匿われた教会でのドイツ軍との銃撃戦をかっこよく、ロマンチックに描き過ぎている感がありました。特に最期の最期の幻想シーンはちょっと…と思いました。

邦題からイメージするほどヒーロー万歳な戦争物ではないですが、もう少し深みが欲しいかなという感じです。

というか、この邦題… たしかに内容とは一致していますが、B級戦争映画感満載過ぎませんか。
これではお客さん呼べないと思うのですが…





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# by chekosan | 2017-09-30 17:50 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
「シンドラーのリスト」をDVD特典映像「生存者たちの声」とともに観ました。

スティーブン・スピルバーグ監督のアカデミー賞受賞作、ホロコースト映画の代表のような作品です。公開当時から話題になっていたのに、20年以上経ってようやく観る気になりました。

シンドラーはもっと「白い」善人として描かれているのかと思っていましたが、決してそうではないのですね。遊び上手のプレイボーイ、酒と女と贈賄で大儲けするやり手経営者。

ところが、廉価な熟練労働者を確保するという理由でユダヤ人を雇用し始めたはずが、そのうち彼はその理屈が通らないような人まで雇うようになります。お金を積んで、危ない橋を渡って、ユダヤ人労働者たちを家族ごと雇用するのです。

いよいよその手も使えなくなるかという事態に陥ると、蓄財を投げ打って自分の故郷に軍需工場を稼働させる名目で、1000人以上のユダヤ人たちを「身請け」します。そして、建前だけの「収容所」に彼らを住まわせ、SSの立ち入りや干渉を拒み、終戦まで彼らを守り通したのです。

はじめにつくったクラクフのホーロー工場では鍋や釜をつくって儲けを出すのですが、最後のチェコの軍需工場では砲弾を造っているふりをしただけで、実際にはまったく売れるものは造っていなかったといいます。

まさに「映画のような話」なのですが、特典映像を見ると、生存者の証言と映画のなかのエピソードがぴったり合っているのです。



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◇◇◇

ところで、ホロコーストに関する回想や証言には、「なぜ逃げなかったのか、抵抗しなかったのかと聞かれるが、まさか20世紀にもなって意味なく人が人をこれほどまで殺戮したりはしないだろうと思っていた」という証言がよく出てきます。

ところが現実は、前例や想像をはるかに超えて残虐さを増していきます。とにかく何もかもを取り上げられ、むやみやたらと暴力を振るわれ、簡単に殺されます。

誰かが脱走したり抵抗したりすれば、本人だけでなく、周囲の人たちまで暴力を振るわれたり、見せしめや抑止のために問答無用で殺されされますし、そうしたことがなくても、口をきいたからといっては殺され、気に入らないからといっては殺され、あるいは特に何の理由もなく殺されていくのです。

着の身着のまま、まともに食べることもできず、圧倒的な力の差、暴力の手段の差があるなかで、虐げられている側は抵抗や反抗や逃亡などできなかったのです。そうした事実があったことを、こうした作品や生存者の証言で残していくことは大切です。そうでなければ気がつけばまた、、ということになりかねません。

ということで、スピルバーグはホロコーストや大量虐殺の生存者の証言を集め、教育に活用する活動を展開しています。すでに全世界から5万2千の証言を記録し、データベース化して閲覧できるようにしているそうです。

◇◇◇

さて、シンドラーが多くのユダヤ人を雇った工場は、ポーランドのクラクフとチェコのブルニェネツにあります。クラクフのホーロー工場の方はクラクフ歴史博物館になっていて、多くの人が見学に訪れているようです。こちらは近いうちにアウシュヴィッツと併せていきたいと思っています。




一方、チェコのシンドラー工場の方は廃墟になっています。

チェコの工場は19世紀に建てられた古い建物で、チェコで唯一現存する収容所です。戦後は国有化されて工場として使われてきました。民主化後に民営化され、車のシートカバーなどの織物工場として稼働しますが、2009年に倒産したあとは放置され、2014年に売りに出されました。

地元の作家が歴史的な文化財として保存公開するよう働きかけてきましたが、それが実り、現在の所有者と地元自治体が博物館として保存することに同意して、今後再建される予定のようです。

この工場はシンドラーの出身地にあるのですが、ここはドイツ系住民が多数を占めていたズデーテン地方です。ヒトラーのドイツはズデーテン地方、そしてチェコを占領します。戦後、チェコはドイツ系住民を国外追放します。89年の民主化後、このことは、ドイツ系住民への財産返還の問題もからまえてチェコとドイツの間の大きな問題となります。

さらには、シンドラーの若い頃の素行が良くなかったこと、ナチス党員になったことなども重なって、彼への評価や彼の工場の保存・活用については地元住民の積極的な支持を得られていなかったようです。

この工場が歴史を問い直し、後世に悲劇と教訓を伝えていく場となるでしょうか。

整備されたらぜひ訪れたいと思います。











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# by chekosan | 2017-09-25 16:13 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
入手が遅れて後回しになっていた『日本人に救われたユダヤ人の手記』を読んだ。リトアニアで生まれ育ったユダヤ人少年が、ホロコーストを生き抜いた回想録である。

ソリー少年の一家は日本領事代理だった杉原千畝と交流があったため、杉原関連本には必ずといっていいほど引用される本である。というと、杉原ビザで欧州を脱出した話かと思えるが、そうではない。ソリーの一家は、杉原の忠告を受けながらリトアニア脱出になかなか踏み切れなかったために、とんでもなく過酷な体験をしてしまう。ソリーと父、姉、叔母はなんとか終戦まで生き延びるのだが、ほとんどの親類縁者友人知人は亡くなってしまうのである。

ソリーと父は、敗北が避けられなくなったナチドイツの命令で、ゲットーからダッハウ収容所へ連行され、さらに収容所から徒歩で移動させられる。この「死の行進」の途中で、日系アメリカ人部隊に救出される。

というように、ソリー少年に救いの手を差し伸べた人々のなかに杉原や日系2世の米兵がいたということで、邦題は「日本人に救われた」となっているわけである。

杉原関連本には、杉原との交流部分や日系人が救出した部分のみがクローズアップされて引用されるのだが、本書はそれ以外の体験の方が断然、面白い。面白いという表現はそぐわないかもしれないが…

リトアニアにはユダヤ人社会が根付いていて、文化的、経済的に豊かなコミュニティを形成していた。ソリーの一家もそうである。事業で成功し、カウナス中心地の広いアパートで、宗教的、文化的に満たされた生活を送っていた。

ところが、ソ連の侵攻、ナチスドイツの侵攻に伴って、リトアニア人のユダヤ人への憎悪が爆発する。ヨーロッパユダヤ人を死に至らしめたのはナチス親衛隊だけではない。むしろ実行部隊はドイツが占領した地域の地元住民や、ウクライナなどから連れてこられた兵士たちであった。本書で語られているユダヤ人に対する迫害、殺害、略奪の様子は生々しく残酷で非常にショッキングである。

それでも、ソリー少年たちのいたカウナスではユダヤ人同士の結束が固く、ゲットーに閉じ込められたのちも、ユダヤ人評議会やユダヤ警察とコミュニティとの信頼関係が最後まで崩れなかった。食べるものにも事欠く状態であっても、カウナス・ゲットーでは、職業学校や文化団体、オーケストラまで活動していた。カウナス・ゲットーの生み出す物資は質も高く、生産性が高かったため、ドイツ占領下のゲットーのなかで一番長く存続できたという。

カウナスのユダヤ警察は住民側に立っており、地下抵抗組織を支援してさえいた。最後にはそれがナチスにばれて警察官たちも虐殺されてしまう。が、そうした結束の固さ、人間関係が保たれていたことは、ゲットー閉鎖後、収容所に移送されたのちもプラスの効果をもたらしたようである。

にしても、酷い。実に恐ろしい日々である。よくソリー少年や父が生き残れたものだ。まさに危機一髪を何度も何度も脱している。機転を利かせて、技能を生かして、コネや伝手を辿って、なけなしの財産をはたいて、身を隠して、、、目の前で他の人たちが殺されたり、連行されたりすることも度々ありながら、ソリーたちがなんとか生き延びたのは、精神力と運と家族や友人たちとの結束が大きいように思う。


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なお、カウナス・ゲットーも他のゲットー同様、ドイツの敗退が色濃くなって解体、焼き打ちされてしまう。ゲットーに生き残っていた人々はバルト諸国やドイツなどの強制収容所に連れて行かれてしまう。そのため現在のカウナスにはゲットーの痕跡はない。

戦後は木造住宅が建てられ、住宅地になっている。夏にカウナスに行ったとき、5万人が殺された現場である「第9要塞」(別途投稿予定)に行く途中、そうとは知らずにその地区の大通りをバスで通って、強烈に惹かれるものがあった。第9要塞で買った写真集を見たところ、まさにそのあたりがかつてのゲットーであったとわかり、後日あらためて歩いてみた。

第9要塞の受付で購入したパンフや磁石、そしてカウナス・ゲットーの今を撮った写真集。

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今、かつてのゲットーだった地区には、記念碑が立っているくらいである。


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2002年にカウナスを訪れた澤田愛子氏は、『夜の記憶』(創元社 2005)のなかで、カウナスにおけるホロコーストの記憶の留め方について批判的に記述されている。そのときは第9要塞を訪れる人も他にはおらず、高額の撮影料をとられたという。旧ユダヤ人墓地も荒れており、ゲットーの病院があったところで撮影をしていると、通行人の男性が「何かを口走って行った」という。それが何という言葉であったかは通訳者に確認しなかったというが、澤田氏の前後の文脈から、あまり良くない空気を感じ取ったのだろう。

私がこの夏(2017年)に訪れたカウナスは、そのような雰囲気はまったくなかった。第9要塞は賑わってはいないが見学者が何組もいたし、安価な入場料で、わかりやすくていねいな展示を見ることができた。

ゲットーがあったVilijanpole地区は、たしかに高級感のある中心部の通りと比較すれば取り残された地区という感じはしたが、高層ビルが建設されていたり、いまどきなスーパーが営業していたりと再開発の最中という感じであった。さらには、この地区で地図を見ていたら「何かお探しですか、お手伝いしましょうか」と英語で訊いてくれる人があったり、「日本人か? 日本はいいねえ」とわざわざ自転車を停めてニコニコと声をかけてくれる夫婦に出会ったりもして、むしろ友好的、歓迎されている雰囲気を感じることができた。

リトアニアはEU加盟(2004年)に向けて、過去の歴史の再評価に取り組んだ。今もそれは続いている。自国の「負の歴史」に向き合って、さまざまな整備を施し、外国から多くの人を受け入れるようになってきたことの表れかもしれない。

いずれにせよカウナスにおけるポグロムとホロコーストの歴史については、もう少し調べてみたい。見損ねているところもまだまだあるので、もう一度行きたいと思っている。


つづく


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# by chekosan | 2017-09-24 12:28 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
クロアチアを舞台にした映画「灼熱」を観てきました。

だいぶ前に新聞の小さな映画評でユーゴが舞台だということだけチェックしてはいたものの、あらすじもテーマも予習せずにいったので、何の話だろうと思いながら見始めました。

映画は3章立てです。1991年、2001年、2011年のクロアチアのある地方の若い男女の恋愛を描いています。3話とも別の話なのですが、それにしては主人公が似ているなあ、ユーゴではこういうタイプが主役の顔なのかな?とか思いながら見ていました。

実は、似ているどころか、なんと3話とも、同じ俳優たちが主人公や主要登場人物を演じていたのでした。(^^; 同じ村を舞台に、10年ごとの恋愛と、内戦と、人種対立、親きょうだいの確執を描き出すという趣向だったのです。外国の俳優は見分けがつかんわと思ったら、同じ人だったわけです(笑)

夏、海、自然、音楽、涙という共通点はありますが、時代が変わると若い二人の恋愛の状況や展開が変わります。悲劇もたくさん起こりましたが、和解も?と思わせる構成になっています。

それにしても、、、ユーゴの内戦の勃発と終結からもう20年経つのですね。それなのにいまだにボロボロに潰れた家屋が打ち捨てられたままの集落が残っているのです。そのことに愕然としました。

ところで、この映画、年齢制限は特に見当たらないのですが、生々しいシーンがわりとあります。映画に興味を持ち出した息子と行こうかとも思ったのですが、予定が合わず一人で行きました。一緒に行かなくて正解でした。(ノ▽〃)


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# by chekosan | 2017-09-23 17:33 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
そんなアホな!(笑) という映画ですが、楽しく泣き笑いしながら観ました。

同志社の「ロシア・東欧地域研究」で受講生が教えてくれた映画です。アマゾンプライム特典で、無料で観ることができました。

かつてソ連のボリショイ管弦楽団の指揮者として名声を博した主人公は、体制に盾ついたとして音楽の世界から追放され、いまや清掃員で生計を立てています。それが、ある機会をとらえて、かつての仲間をかき集めてパリで管弦楽団として演奏をするという大博打を打つお話。

いやさすがにもう無理だろうという困難が次々立ちはだかるのですが、そこはコメディ映画、ありえない展開で乗り切ります。

ところで、主人公はフランス語もできるという設定なのですが、主演俳優さんはこの映画で初めてフランス語にトライしたとか! すごい。てっきりもともとしゃべれる人かと思って観ていました(フランス語の発音の良しあしはわかりませんが…)

以下、ネタバレあり。




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ハチャメチャ楽団と、美しきヒロインのヴァイオリニストとの演奏が始まるのですが、そこからはとにかく盛り上がります。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のとりわけハデハデな部分をダイジェストで繋ぎ、そこに美人ソリストの出生の秘密が重ねられて、これでもかこれでもかと畳みかけていきます。

俳優さんたちの指揮や演奏は音とずれていて、まあやはりそこは嘘臭さが残るのですが、吹替のヴァイオリン演奏の音がものすごい盛り上がりを見せるので、それも気にならなくなります。

特に、ソリスト役の女優さんがキレイで品があって、立ってるだけでも絵になるのですが、感極まって泣きながら熱演するのです。とにかく美しい~~~♡

その感動の演奏場面の間にも、ちょっと余計かなと思うようなコミカルなシーンがいくつか差しはさまれていくので、完全な感動モノにはならないのですが。(^^;

ユダヤ人の親子が本番直前までがめつく商売していたり、ロマ人たちが空港で偽造ビザを堂々と作ったり、団員たちがパリでいかにも田舎者くさい振る舞いをして現金をむしり取っていく姿なんかも、いくらコメディとはいえ、ちょっとやりすぎなんじゃないかとも思いました。

とまあ、いろいろツッコミどころはありますが、面白い映画でした。
ということで、しばらくチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調をリピートして聴くことになりそうです♪





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# by chekosan | 2017-09-17 18:51 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
カウナスの中心から、杉原記念館へは徒歩で行きました。

というか、そもそもカウナスのメインストリートは歩行者&自転車のみ通行可で、公共交通機関はそれを取り巻くようにしか走っていません。おかげで安心して散策ができます。

てくてく歩いていると、ギムナジウムがありました。ところが、その敷地内に小さな子向けの遊具があるのです。


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カウナスは歩いて回れる街のサイズのわりには、いろんなところに子ども向け遊具が設置してあります。夕方以降は子連れで散策するママやパパも実にたくさん見かけました。ここなら子育てしやすそうだなあと感心してたのですが、高校の敷地に遊具というのはさすがに謎。

帰国後、リトアニアに関する論文を根こそぎ集めて見ているなかで、その謎は解明されました。

リトアニアの学校が日本と大きく違っているのは、小学校から高校までが、同じ敷地・建物に入っているということです。ですから、学年にかかわらず地域での子どもたちの結び付きは自然に強くなり、放課後は、小学校、中学校といった枠を超えて、みんなでバスケットボールなどをして遊んでいます。」(デヴェーナイテー・ヴィオレッタさん談「わたしの国の学校教育②リトアニア共和国」『学校経営』2004年2月号)

ちなみに、リトアニアでは「教育は無料」という方針のもと、教育機関は大学を含め、基本的に国立だそうです。学制は、2001年から、小学校4年、中学校6年、高校2年の12年制で、義務教育は中学校(「基礎学校」)までですが、ほとんどの人は高校(「中等学校」)まで進学しているそうです。

なお、外務省の「諸外国・地域の学校情報」のリトアニアページによれば、

「当国教育法により、16歳以下の児童は外国人であっても就学を義務付られている」「外国人に対する言語特別指導 有り」「当国教育法が外国人子女の教育を受ける権利を保証しているため、当国現地校への入・編入学には特段の支障は無い」そうです。

つづく




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# by chekosan | 2017-09-17 14:24 | リトアニア | Trackback | Comments(0)