中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan


晴天のゴールデンウイーク最終日、滋賀県東近江市にある滋賀県平和祈念館の企画展示、
『シベリア抑留 -ユネスコ世界記憶遺産 舞鶴引揚記念館所蔵品より-』を見てきました。



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こちら開館5年になるのですが、訪れるのは初めてです。
面白そうな講座や企画展示、映画上映をしているので、
ずっと気になっていたのですが、車でないと行きづらい場所なのです。
今回、訪問予定があった夫の車に便乗して、ようやく行くことができました。



まずは、滋賀にちなんだ展示。
戦時中、ありとあらゆる金属、それこそ鍋釜、釣鐘、戸車まで供出したころ、
手りゅう弾や地雷、フォークやナイフまで陶器で作ったそうです。

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地雷と言えば、つい先日、捕虜となったドイツ少年兵が、
北欧の海岸の地雷撤去にあたったという史実を基にした映画「ヒトラーの忘れもの」を観ました。
感想はこちら→ http://chekosan.exblog.jp/26806817/
地雷にもいくつか種類があるようですが、そのとき一番出てきた地雷が同じ形でした。


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シベリア抑留に関する企画展示をしていることは知らずに行ったのですが、
これもまたとても興味深いものでした。



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捕虜なので紙や書くものは持つことができないのですが、
セメント袋や落ちている紙、たばこの巻紙などをそっと集め、
短歌や料理の記録、日記などを綴ったものが展示されていました。
小さな小さな紙に、ていねいな字でぎっしり綴られています。

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抑留生活の様子を絵に描かれた方もおられました。
なかには、ソ連から描くようにと画材を渡された方もいらしたそうです。


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当時、実際に着用していた防寒着や、
唯一持って帰ることのできた飯盒や食器なども展示してありました。

証言の聞き書きも語られた言葉そのままでパネル展示してありました。
この証言が実に生々しくて、一つ一つじっくり読んでしまいました。

アウシュヴィッツ強制収容所関連の本を何冊か読みましたが、
食料や物資がまったく足りない状況で、なんとか工夫して物を作り出したり、
没収、懲罰の危険があっても記録をとろうとしたりしたことは共通していると思いました。


今回の展示物は、舞鶴の引揚記念館の所蔵品から、
滋賀県出身者のものを集めて展示したようでした。
図録のようなものはなかったのですが、舞鶴には詳しい資料があるのでしょうか。
一度、舞鶴にも行ってみたいと思いました。






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# by chekosan | 2017-05-07 17:52 | 博物館、資料館 | Trackback | Comments(0)
リニューアルした流通科学大学図書館内のラーニングコモンズエリアに、
「日本史跡観光研究会」のみなさんの展示コー
ナーができました。
メンバーが訪れた史跡を紹介するポスター
とともに、関連書籍を展示してあります。

この研究会、メンバーの多くは「文章表現Ⅱ」のOGです
2年前、流通科学大学に着任した初年度に担当した「文章表現Ⅱ」の受講生たちが
新しく歴史サークルを作って、その活動成果をどこで発表しようと考えて、
活動内容や展示内容と親和性の高い図書館とコラボして展示するに至ったのです。

私たち教員がけしかけたわけではありません。
けしかけずとも自分たちで発表する場や機会を考えて実行に移したところがまた嬉しいです。
しっかり学びとってくれたなぁと感動、感心しています。*^^*

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「文章表現Ⅱ」は独自のFacebookページを作っています。
これまでの活動記録もずいぶん蓄積されてきました。
ご覧ください☆









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# by chekosan | 2017-05-05 16:26 | 大学教育 | Trackback | Comments(0)
今月はツヴァイク月間でした☆ 先月の「関西ウーマン 信子先生のおすすめの一冊」に取り上げた、町山智浩さんの『映画と本の意外な関係!』で紹介されていた映画「グランド・ブダペスト・ホテル」の関連本と、映画にヒントをもたらしたというシュテファン・ツヴァイク『昨日の世界』にどっぷりはまりました。ツヴァイクについては、稿をあらためてたっぷり書きたいと思います。(^▽^)/


4月の読書メーター読んだ本の数:8  読んだページ数:2476 ナイス数:150


無意味の祝祭無意味の祝祭感想 良く言えば削ぎ落とされ洗練された、しかし、チェコ時代の作品に惹かれる読者としては物足りない作品。クンデラといえば、歴史や国家や社会と個人の人生の関わり方を考え抜いた哲学的考察、登場人物の内面をこれでもかというくらい分析するところ、実験的な入り組んだ構成へのこだわりが面白かったが、この作品では、そういう深さや悩み、実験的な性格は薄れている。この作品は、壮年期の迷いや悩み、苦しみから脱した老年期のクンデラが投影されていると思う。もはや生々しい葛藤の渦中ではない人の書く小粋さを楽しむ小品と感じた。読了日:04月01日 著者:ミラン クンデラ

ユリイカ 2014年6月号 特集=ウェス・アンダーソン―『グランド・ブダぺスト・ホテル』へようこそユリイカ 2014年6月号 特集=ウェス・アンダーソン―『グランド・ブダぺスト・ホテル』へようこそ  読了日:04月09日 著者:ウェス・アンダーソン,レイフ・ファインズ,野村訓市,蓮實重彦,三浦哲哉



ボタン穴から見た戦争――白ロシアの子供たちの証言 (岩波現代文庫)ボタン穴から見た戦争――白ロシアの子供たちの証言 (岩波現代文庫)感想 第二次大戦のドイツ軍侵攻時に2,3歳から14,5歳くらいだった101人の証言集。白ロシアの村々はドイツ軍に蹂躙され、想像を絶する目に遭う。村に残ったお年寄り、女性、子どもたちが、見境なく焼かれ、銃殺され、吊るされ、自ら掘らされた穴に落とされて埋められる。予想以上に恐ろしい、残忍な話ばかりが続くが、孤児や小さな子どもたちを周りの大人やソ連軍やパルチザンが救って育て、なんとか教育を授けようとする姿には救いや希望を感じた。数字だけでは伝わらない、一人ひとりの体験の重さが迫ってくる。読了日:04月09日 著者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ

文化立国論: 日本のソフトパワーの底力 (ちくま新書)文化立国論: 日本のソフトパワーの底力 (ちくま新書)感想 大学の授業で、政治と文化、文化によるまちおこし、ソフトパワーとしての文化、サブカル外交といった話題をちょいちょい取り上げている。学生の関心が高く、食いつきが良い。かつて芸術系大学・学部で教えていたときは、実際に自治体の主催する催しに関わっている学生も多く、私の方が教えてもらうことが多いくらいだった。いまの本務校は留学生がとても多いのですが、日本のサブカルを通じて日本が好きになったという学生が多い。本全体としてはやや散漫な気もするが、授業ネタになる細かい事例や事実多数。備忘のためメモをブログにアップ。読了日:04月11日 著者:青柳 正規

未来食堂ができるまで未来食堂ができるまで感想 大学図書館の新刊コーナーでみつけて帰りの電車で一気に読了。ブログでの脱サラ食堂開業日記をまとめた本。企業を退職してから開業後一年ほどの生の感覚が伝わる。30代半ば大手企業のSE出身。だからこそのシステマティックさ。事業計画書からスタッフ用マニュアルまで公開するオープンソースな食堂運営。その手法や数々のアイディアが興味深い。ただし、どうやって実際にお店を一人で回しているのかという一番知りたいところはこの本だけではわからない。同店のまかないさんをして、実地で学ぶ人も増えている模様。読了日:04月12日 著者:小林 せかい

ウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテルウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテル感想 オーストリアの作家ツヴァイクの作品にインスパイアされた映画のメイキング本。もう新品は売っていないので中古で定価以上で買ったが、それだけの値打ちはあった。監督や主演俳優やスタッフへのインタビューその他たっぷり解説が読める。イラストや写真も豊富。オールカラー。ロケ地となったドイツの町ゲルリッツや、ホテルのモデルの1つであるカルロヴィ・ヴァリのグランドホテル・プップに近いうちに行きたい。ブログに詳しくメモした。読了日:04月16日 著者:マット・ゾラー・サイツ


昨日の世界〈1〉 (みすずライブラリー)昨日の世界〈1〉 (みすずライブラリー) 読了日:04月23日 著者:シュテファン ツヴァイク
昨日の世界〈2〉 (みすずライブラリー)昨日の世界〈2〉 (みすずライブラリー) 読了日:04月27日 著者:シュテファン ツヴァイク




『昨日の世界』は別途。


読書メーター

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# by chekosan | 2017-05-01 17:18 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
もうずいぶん経ってしまいましたが、お友達とイギリスの絵本関連の展覧会をハシゴしました。

ひとつめはグランフロント大阪のナレッジキャピタルで開催されていた「ピーターラビット」展。
かなり出展数が多くて見応えがありました。

作者ビアトリクス・ポターの絵はイラスト的に慣れ親しんできましたが、
そういえば物語としてはきちんと読んでいなかったなあと、展覧会を見ながら思いました。

 ↓ 最近は写真撮影スポットを設けている展覧会が多いですね。私は必ず撮ってしまいます。

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2本目は滋賀県立近代美術館「絵本はここから始まった ウォルター・クレインの仕事」展。

よく似た企画を続けて観ると、時代背景などがよく理解できていいですね。
美術館業界で相乗効果を狙っているのでしょうか。そうならばありがたいタイアップです。

面白かったのは、両展ともで、「暦手帳」(?)みたいなのが展示してあったことです。
かわいらしい小ぶりな手帳で、カレンダーになっているのだと思います。

その「暦手帳」(?)で当時人気だったのがケイト・グリーナウェイという紹介がしてあった…かな。
だいぶ昔ですが、グリーナウェイ展も行ったことがあり、女性が好きそうだなあと思ったので納得。

が、鑑賞から少し日が経ってしまい、かつ今回は図録なども買わなかったため、ちょっと記憶が怪しい。
やはり手元にいろいろ残すとか、すぐに記録に残さないとダメですね。(-_-;)


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このあたりの時代の絵本のイラストを見ていると、とても懐かしい感じを覚えます。
もちろん私がこの時代にイギリスで少女期を過ごしたわけではないのですが。

母の今は亡き親友が、その方はご自身には子どもがおられなかったこともあり、
私たち姉妹にいつも素敵なプレゼントをくださいました。

その贈り物でおそらくピーターラビットも知ったように思いますし、
グリーナウェイそのものではなくとも、それ風な絵の可愛い小物をいただいていました。
そのおかげかなと思います。

そうした知らず知らずのうちに触れていることやものの影響や蓄積は、
じわじわとなじんで、のちに吸収・許容できる範囲を広げたり、柔軟にしたりするような気がします。

たとえ、そのときははまらなくても好きにならなくても、
先達が生み出した良いものにいろいろ触れておくことはやはり大事かなとつらつら思いました。

というわけで、ブリューゲルやヒエロニムス・ボスや
ルネ・マグリットやアンリ・ルソーやなんかのグッズを普段使いにして、
子らに見せつけて気味悪がらせています。逆効果? ( ̄▽ ̄)


◇◇◇

ところで、滋賀県立近代美術館の企画展示ですが、
少し前に別の友人と「ピアズリー」展に行ったときもさんざん言ったのですが、実に濃密です。

わたくし地元なので、小さいころからちょこちょこ行ってますが、
駅から遠くて不便ゆえ、常にガラガラなのですが、展示の内容自体はたいへん充実しています。

「アンリ・ルソーの夜会展」とか「マン・レイ展」とか、最近では「ピアズリー展」とか、
観ても観ても終わらない、、、足腰やられる、、、というくらい出展数が多いです。

改装で長期休館するそうですが、ぜひこのレベルを維持してほしいです。切に願います。







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# by chekosan | 2017-04-29 14:49 | 美術 | Trackback | Comments(0)
映画「グランド・ブダペスト・ホテル」をDVDで観ました。

劇場公開時はポスターを見て、オシャレなドタバタ喜劇なのかなと思い、
見逃してもさほど気にしていなかったのですが、
町山智浩さんの『映画と本の意外な関係!』を読んだところ、
この映画、オーストリアの作家ツヴァイクの作品にインスパイアされたものとわかりました。
こちらに書評掲載しています。

ツヴァイクは世紀転換期のウィーンで活躍したユダヤ人作家です。
平和主義者でユダヤ人ゆえ、ナチスドイツによるオーストリア併合後、著作は焚書となります。
そして亡命先のブラジルで服毒自殺をします。

いったいツヴァイクがどう絡むのかと、いてもたってもいられなくなって、
町山さんの本を読んで、すぐにディスクを取り寄せました。

そして見てみると、実に面白い!

ミステリーコメディで、セットや衣装や色彩、撮り方がとてもオシャレです。
お話の構造も何層かになっていて、実際の歴史をうまく盛り込んであります。

笑いながら楽しんだ最後の最後に、
「ツヴァイクの作品にインスパイアされた」という文言が黒い画面に大きく出ます。

それによって、この楽しくてオシャレな映画が、
一気に重層的になるというか、厚みを増すように思いました。

ツヴァイクのことや歴史的経緯を知らなくても楽しめるのですが、
この最後のフレーズに「なになに?」と思って少し調べた人は、
さらにこの作品を深く理解できるのではないかと思います。

わたくし、すぐさま3千部限定の豪華本を定価以上の値で買い求めました。
『ウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテル』。

この本、高価でしたが、それだけの値打ちがありました。
監督や主演俳優やスタッフへのインタビューその他、たっぷり解説が読めます。
イラストや写真も豊富。オールカラーです。

さらに、ツヴァイクの回想録『昨日の世界』も読み、
これは第一次~第二次世界大戦の中欧を知るとっかかりに非常に良いと思い、
同志社の「ロシア・東欧地域研究」でも取り上げました。

けっこう手をかけて準備したのですが、面白さが伝わっているといいなぁ。
今夜にでもDVDを借りに行きます!と感想もあったので大丈夫かな?

ロケ地となったドイツの町ゲルリッツも、実はなかなか面白い町なのです。
第二次世界大戦後、ドイツーポーランド国境の画定で、
それまで一つの町だったのがオーデル川で2つの国に分断されてしまった町なのです。

冷戦終結後、2つの町の交流や協力関係を進める取り組みがなされています。
古い町並みも残っていますし、ホテルの内部を撮るのに使った古い建物も
この秋にリニューアルオープンするとか?

映画のホテルやホテルのある町のモデルとされるチェコのカルロヴィ・ヴァリの
グランドホテル・プップとともに、今年度中くらいに行こうかなと思っています。
カルロヴィ・ヴァリ、昔行ったのですが、プップの内部には入っていないんです。

アンダーソン監督が特に参考にしたツヴァイクの回想録『昨日の世界』については別途。

ところで、映画のクライマックスは映画「薔薇の名前」を連想しました。
それは写真のでっかい本には特に書いていなかったのですが。
久しぶりに観たいな。

また、ヒッチコックの「引き裂かれたカーテン」からの引用シーンもあるそうです。
冷戦期の東西ドイツのスパイものだそう。
ということで、そちらもDVDを買いました。^^

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# by chekosan | 2017-04-24 13:31 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
この映画、原題は “Land of Mine”(地雷の国)ですが、それでは人を呼べないんでしょうね。
「ヒトラーの忘れもの」という邦題は、ちょっと意訳過ぎるかなと思いますが、
その方が時代やテーマを容易に想像させ、なんだろう観に行こうかなと思う人は多いかもしれません。

この作品の舞台はデンマークです。

デンマークはドイツと戦ったわけではないのですが、5年に渡って事実上占領されました。
イギリス率いる連合軍が解放したあと、デンマークに残されたドイツ兵捕虜が、
ドイツが海岸に埋めた200万ともいわれる地雷を撤去する任務に充てられます。
ところがこれが年端も行かない少年兵たちなのです。

統率するのがデンマークの鬼軍曹。
この人、はじめのうちはそれはそれは怖くて厳しい人なのですが、
自分の子どもくらいの年齢の少年たちが、食べ物もなく、体調不良にフラフラになり、
それでも故郷に帰るため文字通り命がけで任務にあたる様子を見て、
だんだんとほだされていきます。しかし…  


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    ↑
がっちりした軍曹と、あどけなさの残る少年兵たち。どう見ても子ども。ひょろひょろです。

戦争も末期になってくるとドイツは15歳くらいから兵士として採用するようになっていたのです。
それもお国のために、総統のためにと志願する男の子が多かったのですね。

パウゼバングの小説『片手の郵便配達人』にもそうした記述があります。
みすみす命を落とすくらいならと、祖父や母が阻止しようとするシーンもあります。

この映画の少年兵たちもそうして志願してきたのでしょうか。
「お前たちは兵士か!?」「はい!軍曹!」「では兵士らしくしろ!」と怒鳴られます。

兵士らしく任務を全うして故郷に帰り、瓦礫だらけのドイツの復興のため働くことを夢見て、
なんとか数か月を耐えようとするのですが、
砂浜を匍匐前進して手で掘って地雷を除去するという作業は危険が伴います。
どんどん仲間が減っていきます。

こんな非効率的な危険な作業を未来を担う子どもが命を落としてあたっていたとは。

いや、そもそも何万何百万という地雷を埋めなければ、こんなことは起こりえなかったわけです。

地雷を製造し、埋めて、それを撤去するなどという不毛なことに費やした資源と人命とエネルギーを
もっと生産的なことに向けていればと思わざるを得ません。
もちろん地雷だけでなく、すべての殺傷手段についてもそうです。
せめて同じ過ちを繰り返さないよう、史実を明らかにし、歴史に学ばなくてはいけないと思います。

なお、この捕虜による地雷撤去の事実も長らく公にはならず、
1998年になって、『強制の下で』という本が出版されて、ようやく白日の下に晒されたそうです。

2012年にはデンマークは地雷撤去完了を宣言したそうですが、
その翌年には未処理の地雷が発見されたそうです。












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# by chekosan | 2017-04-22 15:42 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
関大「外国書研究」や、一般教養の「政治学」の講義では、
政治と文化、文化によるまちおこし、文化政策、
ソフトパワーとしての文化、サブカル外交といった話題をちょいちょい取り上げています。

日本人学生の関心が高く、身近に感じられるので、とても食いつきが良いです。
かつて芸術系大学・学部で教えていたときは、実際に自治体の主催する催しに関わっている学生も多く、
私の方が教えてもらうことが多いくらいでした。

いまの本務校は留学生がとても多いのですが、
日本のサブカルを通じて日本が好きになったという学生が多いです。

というわけで、この本も読んだのですが、このところ忙しくてなかなか記録できず。(-_-;)
以下は備忘のための軽めのメモです。まとまってません。


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著者は文化庁長官。国立西洋美術館長も務めた。
日本の伝統的な文化や習慣重視で、本書のサブタイトルは「日本のソフトパワーの底力」だが、
経済産業省が進める「クールジャパン」戦略については、
90年代にイギリスのブレア政権が進めた「クール・ブリタニア」を真似たもので、
やや新鮮味に欠けると冷めた評価である。

◇◇◇

2000年前後、「文明間の対話」の重要性が広く認識されるようになる。
これはグローバル化の進行、インターネットの普及の影響と背中合わせである。

言語のグローバル化に航路して、オックスフォード英語辞典は採録する英単語を世界中から集めるようになった。
英語圏以外のアジアや中東などで使われている英単語も含めているという。

◇◇◇

文化をソフトパワーとしてうまく発信しているのは「韓流」をひろめた韓国であろうと著者は言う。
韓流ドラマははじめから海外での放映を前提につくられており、放映料はきわめて安いという。
また、海外で放映する際、出演者全員の同意が必要な日本と違い、韓国はそのハードルが低いらしい。
そのため、「ドラマの出来、筋立ても上質とはいいがたい」ドラマではあるが、
海外のテレビ局にとっては、安くで一定の女性ファンを取り込める、ありがたい存在なのだと評している。

◇◇◇

著者の手本はフランスの文化立国戦略か。

フランスは自国文化の保護育成にたいへん力を入れている。
そのため、1993年、GATTウルグアイラウンドでは、カナダとともに、
映画については関税撤廃の対象から外すべきと粘り強く主張し、
映画やオーディオビジュアル分野について自由貿易における「文化的例外」が認められた。
これはハリウッド映画が映画市場を席捲することを避けるためである。

たしかに著者が引くフランスの文化政策、文化予算には驚嘆する。
過去の文化を保護、保存、活用することはもちろん、新しい文化を育成することにも力を入れている。
そのときに、これまでの予算額を分配するのではなく、上積みするところがすばらしい。

◇◇◇

ユネスコの「世界遺産」や「記憶遺産」「文化多様性条約」といった制度についても、
日本ははっきりと出遅れている。
著者は、「文化多様性条約」は保護主義を助長するようなことはなく、
むしろ文化や映像・音響作品の防衛の枠組みに恩恵をもたらしているとする。

◇◇◇

2012年6月のリオ+20会議「包括的豊かさレポート2012」は、
豊かさをはかるには、天然資源、教育水準、熟練した労働力、
整備された社会インフラや機械化などの総計で見る必要があるとしている。
そこで、自然資本、人的資本、人工物(物的)資本をストックと考え、数値化している。

日本の場合は、豊かさを維持するには、人的資本を増やすことにかかっている。
これには、多種多様な教育の機会を得ることと、文化の充実がきわめて重要である。

具体的には、自国語の尊重と海外における日本の普及、
日本の伝統文化の継承と浸透、ポップカルチャーに代表される現代文化の活力を増大させること、
異なる文化を受容すると同時に、日本文化を他の文化と相対化する柔軟性をもちうることである。

◇◇◇

本書後半は、さらに具体的な文化政策や地方自治体の取り組みが紹介されている。
そうした実際的な取り組みをもっと詳しく知りたいところだが、
それは各主体が発信していることだろうから、おいおい追っていきたい。

・「新・伝統工芸品」 … 南部鉄器への注目
・ヨーロッパのアーティスト・イン・レジデンス ※日本でも平田オリザさんが手がけている
・文化庁による「日本遺産」の創設 …「グループ化」と「物語性」を重視
・伝統文化をかみ砕いて伝える「インタープリター」の養成
・南イタリアの洞窟住居群の保全と活性化の事例
・イギリスの芸術文化支援 「アーツ・カウンシル」
 「アーム・レングスの原則」…政治と助成機関は一定の距離をおくべし
・イギリスの史跡保護 イングリッシュ・ヘリテージ
・ドイツの文化教育 具体的施策は地方にゆだねているが教育は連邦政府が力を入れている
・アメリカは寄付文化 寄付を促す税制
・フランスの造船業の町ナント 音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」で町おこし
 「ヨーロッパでもっとも住みやすい町」とまで
・スコットランドのグラスゴーも工業都市から文化都市へ変貌
・日本でも浜松市と鶴岡市がユネスコの「創造都市」に認定
・豊岡市「コウノトリ」の町へ
・富山県射水市大島地区「絵本の町」






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# by chekosan | 2017-04-22 13:59 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)

流通科学大学の初年次生対象科目「文章表現Ⅱ」第一週が終わりました。

初年次科目全体のカリキュラムの一部変更に伴い、
今年度、この科目はクォーター開講(6-7月、8週、週一回連続2コマ)から、
セメスター科目(4-7月、15週、週一回1コマ)となり、
受講対象者、受講の仕方、クラス分けの仕方、履修指導の時期や方法なども変わりました。

3年目にして、またまた新しい条件のもとで授業をすることになりました。

一回目の授業は、オリエンテーション。「文章表現Ⅱ」の授業概要を説明しました。
過去2年の授業の様子や活動の様子をスライドで見せながら話したので、
どんなことをするのかイメージや全体像がつかめたようです。

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SA(ステューデントアシスタント)さんに撮影をお願いしました。
SAさんは昨年の受講生です。横浜の図書館総合展にも一緒に行ってくれました。


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まさに百聞は一見に如かず。
先輩たちの作品を提示することでイメージが作れたようです。


今年も「学習記録カード」で毎週、意見や感想をやりとりしますが、

「不安だったけど楽しみになりました」という安堵の声、
「国語や小論文は得意・好きなので楽しみ」という頼もしい声、

そして! とっても嬉しい今年の特徴!

「本が好きなので楽しみ」「先生のおすすめの本も教えてください」という声が!
それも何人もが!


この科目、今年は「履修を推奨する」という位置づけで、
取る場合はクラスが前もって指定されています。

「文章表現Ⅱ」には、事前アンケートで、
高校で卒論レポートを書いていたり、小論文や国語系の選択科目をとっていたと答えたような、
ある程度、文章の書き方などを学んできた学生が配置されています。

つまり学習経験のある学生が集まっています。が、完全な希望者というわけではありません。
ですが、カードの記述や、授業態度、授業後の質問内容などから、
経験値だけではなく、意欲も高そうな学生たちのように見受けられました。

過去2年も、意欲的であったり、勤勉だったり、作業がていねいな学生の割合が高い科目でしたが、
今年もかなり期待できそうです。

図書館とのタイアップ、学外の書店様との連携、学内外への発信、学内外での交流を継続・強化し、
さらに今年は「学生協働による授業と授業外活動の展開」をテーマにさらなる進化をはかります。

体と手と頭と口を使った楽しくてためになるアクティブなアカデミック・ライティングの授業、
集大成?ピーク?の年にしたいと思います。

ということで、今年もますます情報公開、情報発信を進めます。


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テキストも出しました。(^▽^)/ スライド11番の写真がそれです。
共著『アカデミック・ライティングの基礎』、晃洋書房さんから4/20一般発売です。
この本に関しては、また別途、お世話になった皆様へのお礼を兼ねて報告します。





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# by chekosan | 2017-04-14 22:50 | 大学教育 | Trackback | Comments(0)
ノーベル賞作家、スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチの「ユートピアの声」5部作のうちの一つ。
ナチスドイツに侵攻された白ロシア(ベラルーシ)の子どもたちの証言を集めた作品。

ドイツ軍が侵攻してきた頃に、2,3歳から14,5歳くらいだった人々101人の生の声を集めています。
第2次世界大戦での一般人の被害者というとユダヤ人が真っ先に浮かびますが、
ソ連でも大変な数の人々が殺されたり亡くなったりしています。

白ロシアの村々はドイツ軍に蹂躙され、想像を絶する目に遭います。
この本での証言は、子どもだった人たちのものですから、戦闘行為ではなく、
村に残ったお年寄り、女性、子どもたちが、見境なく焼かれ、
銃殺され、吊るされ、自ら掘らされた穴に落とされて埋められた様子が生々しく伝えられます。

男性たちはみな出征していたり、パルチザンとなって戦っているので、ほとんどいません。
男性だけでなく、ソ連では多くの女性も兵士やパルチザンとなって戦っていました。

多くの子どもが亡くなり、生き残っても孤児になります。
年端もいかないうちから働き、戦火の中を避難します。

予想以上に恐ろしい、残忍な話ばかりが続くのですが、
孤児や小さな子どもたちを周りの大人が引き取って育てたり、
ソ連軍やパルチザンが救って育て、ありあわせのものでなんとか教育を授けようとするなど、
極限状態でも次の世代を守ろうとした人たちの姿には救いや希望を感じました。

「戦争での犠牲者 〇万人」という数字では伝わらない、一人ひとりの体験の重さが迫ってきます。


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# by chekosan | 2017-04-13 17:01 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
合宿明けの初年次ゼミ、大学での学び方や大学生活に慣れるためのプログラムから開始です。
今週は、先輩学生たちが大学生活でがんばっていることなどを話しに来てくれました。

一人目はベトナムからの留学生君です。
もちろん日本語でスピーチも質疑応答もこなしました。すばらしい!
明るい人柄なのも功を奏したか、一年生から次々質問が出ました。

二人目は昨年の私のクラスの学生です。この時間のアシスタントにも入ってくれます。
彼女は自分の関心や目標と、本学のさまざまな科目やプログラムを上手にマッチさせ、
友達づくり、海外研修、学園祭実行委員会、地域人材プログラムなど
大変充実した一年を過ごしたことを真摯にていねいに話してくれました。

2人ともスライドも上手に作っていましたし、話しぶりも好感が持て、
学生生活の面でも、プレゼンテーションの面でも、一年生の良いお手本になってくれました。
学生は、先生よりも先輩の話や振る舞いに影響を受けるので(笑)、二人には感謝感謝です!

一年生も、きちんとした態度で話を聞き、きちんとした言葉で、良い質問を次々出せていました。
なかなか良いスタートを切れています。


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※写真は顔が特定できないよう部分的に加工しています


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# by chekosan | 2017-04-12 21:13 | 大学教育 | Trackback | Comments(0)