中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan

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旅から帰ってから、行った先に関連する本を読むと、
場所や光景、雰囲気が浮かぶので、より面白く感じますね。

先に読んでおけば、ここも見たのに、ここで食べたのに~ということもありますが、
また行きたい、次は絶対!とモチベーションも上がります。

私が前回チェコに行ったのは1999年、それから長い間行けてなかったのですが、
その間にチェコや東欧の絵本や雑貨を紹介する本が何冊も出版されました。

そのなかで、鈴木海花 中山珊瑚『よりみちチェコ 街と森をめぐる旅ガイド』
(スペースシャワーネットワーク 2007)は、少し大人な旅を綴った一冊です。

著者は、ともに編集者の母と娘、デザインは父という親子共作です。
写真とデザインがよくて、読みやすいです。

よくある観光地案内、かわいいもの紹介ではないところがいいです。

チェコアニメのスタジオ、写真家や造形作家のアトリエ訪問、
「もぐらくん」シリーズの作者ズデニェク・ミレルのインタビュー、
靴の一大メーカー、バチャ社探訪など、
一般的にはなかなか行けないところを訪ねています。

宿泊先も、お城ホテル、元修道院ホテル、ゲーテも愛した由緒あるホテルなど。

今度チェコに行くときは、こういうちょっとマニアックなところも行きたいと思います。

◇◇◇

ホテルといえば、欧州には古い歴史ある建物をホテルにしているところが多いのですが、
一室料金なので、複数で泊まればまったく手が出ないほど高くはないのが魅力です。

今回、私も子連れなので、時間と安心を買うつもりで、
プラハでは便利で名の通ったところに泊まりました。

アールヌーボーの建てものですが、内部はリノベーションして現代的。
でも、ツイン(ダブル)で日本の都会のビジネスホテルのシングル値段くらいでした。

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久々に行ったプラハはずいぶん変わっていました。
街まるごと世界遺産なので、建物や街並みは変わっていないのですが、
流行りの食べ物やお土産物のラインナップがずいぶん変わっていました。

16年前までは見なかった新しいお菓子がそこらじゅうで売っていたり、
アイスクリームの表記が、チェコ語の zmrzlina ではなく、
ice cream やイタリアンジェラートに席巻されていたり。

新しいお菓子もジェラートもとてもおいしかったのですが、
どこの国に来たのかわからなくなるような気がしました。

前述のもぐらくんも、昔から人気のチェコの絵本・アニメのキャラクターですが、
いまや一大産業?お土産キャラ?となっていました。
どの店にも大量のもぐらくんがやもぐらくんグッズが…

そうなるとなんとなくいいや、、という気になるのですが、
チェコの子どもが普通に使っていると思われるA5ノートだけは買いました。

表紙の数字は、ノートの種類を示しているようです。
罫の太さなどでしょう。
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中身はこんな感じです。もっと太い罫もあります。
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私はA5ノートをお仕事ノートにしていて、一冊ごとに違う柄にしているので、
出先では可能な限り文具コーナーを見て回るのですが、
今回は意外とバリエーションがなかったです。

このノートは今回の旅の思い出として、死蔵せず使いたいと思います。^^



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by chekosan | 2016-08-17 09:31 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
ベルリンで最優先で訪ねたかった施設が、いわゆる秘密警察(シュタージ)関連の施設です。
これは私が以前に書いた論文との関係が深いテーマなのです。

必ず見ておきたかったうちの一つが、秘密警察の拘置所です。
民主化後に閉鎖されましたが、語り継ぐために保存公開しようという運動が起こり、
整備されて見学できるようになっています。

拘置所の前には大型バスが停まっていました。
デンマークから団体さんが来られていたので、そのバスかもしれません。

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どんなにおどろおどろしいところかと思ったら、意外にも閑静な住宅地でした。
ベルリンは緑が多いのですが、このあたりも並木が茂っていて散策している気分になります。
近くにはスーパーのチェーン店もあります。

以前の様子を示す案内板

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現在の様子 遠方に同じ三角屋根の建物が見えている
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拘置所の見張り塔のすぐそばには、施設が閉鎖されたあとに再開発されたのでしょう、
かわいらしい一戸建てが並んでいました。

 ↓ ここを進むと、かわいい一戸建て住宅が
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もちろん当時は周辺一帯、一般人は立ち入り禁止で、地図上も空白だったといいます。


ガイドつき見学は、ドイツ語なら1時間ごと、英語は日に3回です。予約は不要です。
かつて実際に拘留された方たちもガイドをされたり、研究をされたりしています。
(私たちを案内してくださったのは若い女性でした。)

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みっちり2時間、ていねいな説明を聞きながら、
開設当初の劣悪な部屋、多少はマシだけど完全に隔離するよう造られた新棟、
尋問のための棟などを見て回りました。

「Uボート」(潜水艦の名前)と呼ばれていた、古い棟の房。
地下で暗くてジメジメしていて、臭気が漂っていました。

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トイレはバケツが一つだけ。

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新棟の廊下の壁につたっているコードは、ひっぱるとすぐ切れて、
どこで切れたかがすぐわかるようになっています。
緊急時(暴れた、逃げようとした、自殺しようとした、急病になったなど)の警報装置です。

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拘留された人は、徹底して他の人と会わないようにさせられたそうです。

連れて来られるときに使われた車。
車両内部も、小さな小さな空間に仕切られています。大柄の人は入らないくらい。

隣接する病院に運ぶときも、拘置所がどこかわからないように
わざわざ遠回りをしたそうです。

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新棟の房は多少はマシになっていますが、
光は入りますが、ガラスブロックなので外の様子はまったくわかりません。

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身体的な拷問は行われなくなっていったそうですが、尋問は夜を徹して行われました。
日中は独房で過ごすのですが、ベッドに横になることを禁止されたといいます。

睡眠を奪うこと、外界やほかの収容者との接触を断つこと、
仲間や家族が裏切ったかのような情報を吹き込んで孤独感を高めること、
たまに好みの飲み物などを出して、すべて知られているという恐怖感を味合わせること、
といった心理的な責め苦が行われたそうです。

自殺や逃亡ができないように、鏡も壁に埋め込まれています。
そうした「工夫」のためか、この拘置所内で亡くなった人は少なかったそうです。

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外の空気が吸えるのは、ごくごく限られた時間だけ、しかもこの空間のみでです。
「トラの檻」と呼ばれていたそうです。

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一度に100名ほどを収容できたそうですが、尋問する係員も同じくらいいたとか。
ほぼ1対1だったわけです。

東ドイツは稀に見る監視国家で、国民の7人に1人が
秘密警察の活動に関与していたといいます。


◇◇◇

実際にここに拘留されて尋問を受けた女性の経験と、彼女が保存公開に携わったという話が、
アナ・ファンダー『監視国家 東ドイツ秘密警察に引き裂かれた絆』(白水社 2005)
紹介されています。
*この本の執筆時点では公開準備が進んでいるところまでです。

著者はオーストラリア出身の女性。

1994年にライプツィヒ(旧東ドイツ領)を訪れ、
シュタージの被害に遭った人たちに関心を抱きます。

1996年に再びベルリンにやってきて、テレビ局でアルバイトをしながら、
シュタージの被害者や、元シュタージ職員、シュタージの協力者を訪ね、
直接話を聞いて、本書にまとめました。

本人たちからの証言は非常に生々しく、臨場感に富んでいます。
96年当時はベルリンの街も人の生活もまだ混乱し、荒れている様子です。


私はこの夏初めてベルリンに行ったのですが、
すっきりと開発された明るく整った街としか思えませんでした。

壁もなくなり、秘密警察の施設も整備されていて、
まるでずっと昔のことのように思えてしまいます。

が、当事者にとっては、その後も人生は連続しているのです。
とりわけ被害にあった人にとっては、何も終わっていないのです。

本書が書かれた時点から、さらに10年が経ちました。
ここに登場した人たちの人生はその後どうなったのだろうと思います。

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◇◇◇

秘密警察が作成した膨大な資料を保管し、調査研究している機関の書庫に関しては、
2016年8月14日の記事で少し紹介しています。写真あり。
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by chekosan | 2016-08-16 22:08 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
今回ベルリンに行くにあたって見たかったのは、

①秘密警察関連施設(その一部は2016年8月14日のブログに
②ベルリンの壁関連施設
③ホロコースト関連施設

でした。

しかし、ベルリン滞在は実質4日しかとれず、しかも小4男児連れなので、
①を最優先に、あとは旧東独の雰囲気を少しでも知れたらと思っていました。

私はドイツ語はさっぱりわからないので(昔、文法は勉強したのですが…)、
日本語、英語が堪能な現地の方に案内をお願いしました。

1~2日目は、その方に案内していただいて、①関連の博物館などをいくつかまわりました。

そのときに教えていただいたのが、これです。

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ベルリンの壁が立っていたあとを示すブロックとプレートです。

壁はいまはほとんど残っていませんが、この地面に残る筋に着目すると、
こんな街真ん中を武骨なコンクリートで仕切っていたのかと唖然とします。

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この写真は、ポツダム広場に隣接するライプツィガー広場で撮りました。

同じ場所をGoogleのストリートビューで確認すると、壁の一部もありました。
こんな感じで、広場をぶったぎって壁が立っていたことがわかります。

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*この画像は2008年に撮影されたもののようです


3日目は案内なしで自分たちだけで動いてみました。
すると、議会関係の建物がつづく河岸に「壁」のあとを見つけることができました。

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持っていたガイドブックにも載っておらず、ほかに見物している人もいなかったのですが、
壁と闘った人、壁を越えようとして亡くなった人を記念(祈念)する場所でした。

Parlament der Bäume(The Parliament of Trees

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*柵に各国語の案内がありました。柵の中には入れなかったと思います。


見市知(みいち とも)『ベルリン 東ドイツをたどる旅』(産業編集センター 2009)にも、
このベルリンの壁のあとを自転車でたどる話が書かれています。

ベルリンの壁は全長160キロ、これを歩いて辿るのは大変なのですが、
ベルリン市内にはレンタル自転車が普及しているので、
マップやアプリや標識を頼りに辿っていくのは面白いかもしれません。

見市さんは、東西ドイツ統一1ヵ月前から東ベルリンに留学され、
ベルリンが変化していくさまをリアルタイムで見てこられました。

東ドイツ時代の東ベルリンをしのぶことのできる場所や、
東ドイツ時代の生活の様子を感じられるものを紹介する、
小さいけど東ベルリンへの愛と郷愁に満ちた本です。

私は帰国後に入手して一気読みし、またベルリンに行きたくなりました。

オールカラーで写真が大きく、説明もていねいで読みやすいので、
ベルリンに行く人、行きたい人、行ったことのある人におすすめです。

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    裏表紙にベルリンの壁のあとのブロックの写真が使われています
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by chekosan | 2016-08-15 16:02 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
この夏、ベルリンとプラハに行きました。

目的の一つは、ベルリンの旧東ドイツ秘密警察関連の施設を見学することです。

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秘密警察というのは俗称で、保安を統括する国家機関のことです。
対外的な諜報活動とともに、国内の反体制分子を見張る役割も果たしました。

1989年の民主化以後、問題となったのは主に後者の活動の方です。

特に東ドイツとチェコスロヴァキアは国民に対する監視が強かったといいます。
両国では、異常に多くの人たちが秘密警察で働いたり協力したりしました。

でも、秘密警察に関係した人たちをどう「処遇」するか、
あるいは秘密警察の作成した文書をどう扱うかで両国の対処はかなり違いました。

私は以前、チェコスロヴァキアの秘密警察(StB)に関わった人びとを
公職から追放する法律について論文をまとめました。

チェコスロヴァキアの民主化と公職適否審査法(ルストラツェ法) : ルストラツェの法制化とその背景
チェコスロヴァキアにおける公職適否審査法(ルストラツェ法)をめぐる諸問題


その後、少し時間が空いてしまいましたが、
他の旧共産主義諸国の施策との違いについても知りたくなり、今回の見学に至ったわけです。


以下の3枚の写真は、現在の文書書庫で私が撮影したものです。

書庫は、月一回、一般に公開されます。シュタージ博物館とは別の入り口です。
追加料金はいりませんが予約が必要です。

係の人に従って2時間ほどの見学ツアーに参加します。
見学は無料、ドイツ語または英語の説明があります。撮影も可能です。
ただし、勝手に見て回ることはできません。一箇所動くたびに施錠、解錠されます。

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『ファイル 秘密警察とぼくの同時代史』(みすず書房 2002)は、
東ドイツの秘密警察(Stasi シュタージ)の監視対象となった、
イギリスの歴史学者でジャーナリストのティモシー・ガートン・アッシュが、
自分に関するシュタージのファイルを読み、
密告をしていた人たちや彼らを監督していた秘密警察職員を訪ねるドキュメンタリーです。

彼は、自分に関する機密書類を公開請求して、
思いがけない人々が情報提供者だったことを知ります。

当時つけていた日記などども照合し、自分でも忘れていた過去を思い出していきます。
そのうえで、文書に登場する「密告者」たちに話を聞いて、事実を確認していきます。

そのなかで、シュタージが作成した文書にはいくつもの小さな間違いがあることを確認します。
情報提供者と目された人物が実は別の人であるとわかるケースもありました。

もしも自分が他の資料や当該人物への確認をせずに、
シュタージの記述だけにもとづいて、誰かを「密告者」と告発していたら、、、?

実際、内容の精査なしに「吊し上げ」られた人は何人もあったようです。
そして、失職したり、自殺したりといったことも起こっていたといいます。

ガートン・アッシュは、自分を「密告」していた人たちに直接話しを聴いた結果、
彼らをそうさせた生い立ちや背負ってきたものに一定の理解を示します。

そして、イギリスの諜報機関にもインタビューを試みます。
その結果、わかったのは、、、



と、まるでスパイ小説のような趣もあるノンフィクションです。

ガートン・アッシュ自身の「過去」をたどる形をとっているので、
やや情緒的な表現が多く、参考文献や出典などは示されていません。
「読み物」色が強いと言えるでしょう。

が、その分、冷戦期の東西欧州の緊迫した状況を追体験したり、
ドイツの「過去の清算」をどう捉えるかを著者と一緒に考えたりできると思います。


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by chekosan | 2016-08-14 22:44 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
月一回の書評連載@関西ウーマン、8月も旅ものにしました。

仕事や家庭の責任がかかる大人の女性こそ、日常と離れる時間をもちたいですよね。
私も8月前半、子連れでしたが欧州行ってきました♪ 

「私はいまドイツへ向かう飛行機の中でこの書評を書いています」
って出だしにしたくて、ホントにそうしました(笑) 

本文はこちらです ↓

Soliste おとな女子ヨーロッパひとり旅(寺田和代)
信子先生のおすすめの一冊(関西ウーマン)




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by chekosan | 2016-08-13 15:16 | 書いたもの | Trackback | Comments(0)
授業が佳境の7月、読了の冊数は少ないですが、旅の目的地関係の本も見たりもして、
みっちりワクワクな月でした。

『みえない雲』のパウゼヴァングに出会えたのが一番の収穫です。
『おとな女子ひとり旅』は関西ウーマンの8月書評にしました。(8月13日公開)

2016年7月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:1554ページ
ナイス数:224ナイス

みえない雲 (小学館文庫)みえない雲 (小学館文庫)感想
なぜ知らなかったんだろう、もっと知られてもいいのにと思う一冊。一気に読んだ。西ドイツで原発事故が起こったという設定の小説。逃げ惑う人々の様子、避難民が忌避の対象になってしまう様子が生々しく迫る。訳者あとがきにも共感したので抜粋。「「怖い」とか「死にたくない」という感覚を失ってしまってはいけないと思います。…まず、この「感じる」ことがスタートです。つぎは「知ること」です。さらに必要になってくるのが「考える」ことです」。アレクシェービッチ『チェルノブイリの祈り』とともにおすすめ。
読了日:7月29日 著者:グードルンパウゼヴァング



僕たちの居場所論 (角川新書)僕たちの居場所論 (角川新書)感想
座談会を収録したもの。著者3名は古くからの知り合いなので、内輪話が多く、話題もどんどん枝分かれするのだが、それだけに勢いがあり、忌憚のない意見が噴出して面白い。著者らのファンには特にそうだろう。3名とも大学や私塾で教えているのだが、教育の主体は教える側ではなく教わる方にあり、教える側は学びのトリガーを与えるだけというスタンス。だからこそ著者らの周りには多くの人が集まり、長く関わろうとするのだろう。後半、グローバル化と嫌韓や反ユダヤ主義やヘイトスピーチとの連関に関する考察部分も興味深い。
読了日:7月25日 著者:



Soliste{ソリスト} おとな女子ヨーロッパひとり旅Soliste{ソリスト} おとな女子ヨーロッパひとり旅感想
「おとな女子」という言葉はちょっとアレだが、プラハへの旅の記録があったので購入。著者は30代半ばから欧州へのひとり旅にはまり、20年で29回旅立ったという。一回一週間ほど、予算は20万円と、少し頑張れば多くの人が実現可能な範囲で、落ち着いたおしゃれな旅を楽しんでいるのがいい。あとがきにあるように、旅は「手持ちの日常だけでは煮詰まってしまいそうな気分をゆるめ、それだけが自分のすべてじゃないと思わせてくれる」。私も今年16年ぶりにヨーロッパに行って、それを実感したので、これからちょこちょこ行こうと思っている。
読了日:7月21日 著者:寺田和代



クイア・スタディーズ (思考のフロンティア)クイア・スタディーズ (思考のフロンティア)感想
クイアとは、非異性愛に分類される様々なセクシュアリティを集約する言葉であり、かつ学問的にはそれらの間の差異について思考をめぐらせる概念であるという。この言葉自体が一般には耳慣れないものであると思うのだが、本文ではさらに聞いたことのない用語が頻出し、戸惑った。本の体裁からして入門書あるいは概説書的な位置づけなのかと思ったが、そうではなかったのか。あるいは、この分野は専門家とそうでない者との「常識」がよほど乖離しているのか。非異性愛に関する歴史や思考の観点といった内容については勉強になった。
読了日:7月17日 著者:河口和也



貧困女子のリアル (小学館新書)貧困女子のリアル (小学館新書)感想
お金の問題で困っている大学・短大卒30代女性を取材した本。その収入があれば貧困にはならないだろうにという人が多いのが特徴。家族との関係がうまく築けてこなかったことが背景にある人が多いようである。そこに、正規、非正規雇用間の待遇格差や、正規は正規でまっとうな労働環境にないなどといった社会的な問題が重なって事態を悪化させている。さらに当の女性たちは労働問題や社会保障に関する知識や関心が薄いことも共通している。キャリア教育花盛りだが、夢をもてと言うばかりでなく、こうしたことこそ学ぶ必要があるのではないか。
読了日:7月8日 著者:沢木文



1冊の「ふせんノート」で人生は、はかどる1冊の「ふせんノート」で人生は、はかどる感想
大学図書館の選書ツアーで学生が選んだ本を読み比べる第2弾。大きめのふせんを常備し、こまめにメモして、家なりオフィスなりに置いたA4ノートに貼って、アイディアや思考をブラッシュアップさせるという手法。それは面白いし、おそらく有効だと思うが、実例写真がコピー機で「文字・写真」モードにしそこねたときのような黒さ。さらに、そのノートをどう仕事の実現に結び付けていくかというノウハウは巻末に載せたURLにアクセスしてねとなっている。本文5分の1に圧縮できるのに、そこを載せないのはなぁぜ?と思ったりなんかする。
読了日:7月6日 著者:坂下仁



メモで未来を変える技術メモで未来を変える技術感想
大学図書館の選書ツアーで学生が選んだ本を読み比べる第1弾。本書は自己啓発系。手のひらサイズのメモ帳に夢や「夢のかけら」を書いていくといつかかなうという主旨。著者は一日5~6件、年間2000件の「夢のかけら」を書くという。それTo doなんじゃ?なことも含まれているが、書くことでアンテナが立ち、情報や仲間が集まり、意思がかたまって実現していくことは確かにある。著者がこの本を出版したのはまさにその流れ。立証可能性とか根拠とかはさておき、とにかくポジティブ。前向きなことを書き出したくなる本ではある。
読了日:7月5日 著者:小野正誉



読書メーター

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by chekosan | 2016-08-12 13:58 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
8月1日から11日(9泊11日)で、ドイツはベルリンとチェコのプラハに行ってきました。

共産主義時代をどう振り返ろうとしているか、
ともに情報統制や秘密警察の監視が厳しかった両国を見比べるのが目的です。


旅のお供は『片手の郵便配達人』にしました。
出発前にパウゼヴァングの『みえない雲』を読み、衝撃と感銘を受けて、
この作家と訳者の文章を続けて読みたいと思いました。

そうしたところ、本書を棚にみつけました。
以前に新聞の書評でみつけて読まねばと買っておいたものです。
これはドイツに行くのにちょうどいいと持っていきました。




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◇◇◇

世界大戦末期のドイツの村での話です。
主人公のヨハンは17歳で出兵します。
戦地で片腕をなくし、兵役を免除されて故郷に帰って来ます。

愛する母もヨハンの不在の間に亡くなっています。
ヨハンは「私生児」で、父は不明です。

故郷に戻ったヨハンは来る日も来る日も郵便配達にいそしみます。
配達にまわる村々の人たちを気遣い、できるかぎりのことをしようとします。
村々の人たちも、ヨハンを愛し、信頼し、助けてくれます。

厳しい冬を経て、美しい春を迎えるころ、村々の人々に届ける手紙は、
愛する家族の無事の便りよりも、死亡通知が増えていきます。

やがて終戦を迎えるのですが、それは新たな混乱と支配、復讐の訪れでもありました。

戦闘場面を描かずして、戦争が辺鄙な田舎の人々にもたらした様々な悲劇を
静かにじわじわと伝える話です。

戦争はごくごく普通に暮らしていた人々を加害者にも被害者にもさせます。
心中、ヒトラーや戦争を批判的に見ているヨハンもまたそうです。
村の人や、よそから避難してきた人たちもそうです。

この人たちがなぜこんな目に、こんなことにという出来事が起こり、
人の優しさと残酷さを同時に味わうことになる小説です。

◇◇◇

パウゼヴァングの著作、やはり読みやすく、しかし衝撃的でした。
小学校教諭をしながら100冊近くの著作を発表しているということで、
ほかの邦訳作品も読もうと思います。





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by chekosan | 2016-08-12 12:06 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)