中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan

カテゴリ:本、書評、映画( 63 )

グードルン・パウゼヴァングの小説『みえない雲』(小学館文庫 2006年)を原作とする映画を観ました。

私は同志社でやっていたドイツの反原発運動のポスター展で、この小説と映画のことを知りました。
小説を読んで衝撃を受け、パウゼヴァングの他の作品も読みました。

映画はDVDを買ってはいたものの、一年越しとなりました。

舞台はドイツ。原子力発電所の事故で被曝してしまう少女と同級生のラブストーリーになっています。

原作の主人公は14歳、恋愛要素はなく、もっとストレートに原発事故の恐怖を描いています。

映画の方も主演女優の決然とした表情や演技はいいのですが、ここはやはり原作に忠実に作ってほしかったです。
ちょっと無理がある場面が多く、嘘くさくなっているように思います。

ざっと評判を見たところ、映画だけを観た人にはけっこう評判が良いようですし、この映画からだけでも、原発や原発事故の問題について考えさせられるだけのインパクトはあるようです。

が、私としては、やはりパウゼヴァングの原作を強く押します。アレクシェーヴィッチ『チェルノブイリの祈り』と合わせて、広く読み継がれていかれるべき作品だと思います。




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by chekosan | 2017-10-21 17:27 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
新聞2紙の映画評を頼りに、東欧に関係のある映画をチェックしているのですが、新聞が積ん読になっちゃってて、ゲゲもう終わっちゃったかな!と焦ることがあります。

が、私が観たいと思うようなのは、東京や大阪の後、順次公開というものばかりなので、京都はまだまだこれからということが多いです。

大阪、神戸、京都でズレてやってくれていると、一番都合の良いときに都合の良い場所で観ることが可能なときも。

今回メモしたのはいずれも京都ではこれからのもの。╰(*´︶`*)╯ うまく時間が取れるといいな。


オン・ザ・ミルキー・ロード

君はひとりじゃない


甘き人生



ブルーム・オブ・イエスタデイ



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by chekosan | 2017-10-16 13:22 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
タルコフスキー監督の長編デビュー作「僕の村は戦場だった」を買ってあったDVDで観ました。

前々から名前は知っていたものの、モノクロの戦争映画にはなかなか食指が動かず、ようやくです。

が、戦争は戦争なのですが、グロテスクな場面や戦闘シーンは最小限で、意外とのんびりした映画な感じでした。

いや、ホロコーストものなどを続けて観ているせいでショックを受けなくなってきているだけかもしれませんが。

第2次世界大戦のソ連で、ドイツ軍の攻撃によって両親と妹をなくしたイワン少年は、ドイツへの復讐を果たすため、斥候として敵陣を偵察に行くという危険な任務を自ら望んで果たしています。

周りの大人の兵士や将校たちは、さすがに年端のいかない少年が最前線にいるのは良くないと、幼年学校にいかせようとするのですが、イワンは断固として拒否、結局、大人たちは折れて、再度イワンを偵察にやらせます。

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という話の中に、気丈で頑固だけど、やはりまだまだ幼いところも残るイワンが見る夢が挟まれていきます。

大好きなお母さんとの夏の日。お母さんは、ピカピカしていて、がっしりしていて、いかにも「最愛の母」という感じ。

ものすごい美少女の妹と遊ぶ光景。(私は、鑑賞後、他の人の解説や感想を読んでやっと妹だとわかりました…近所の幼なじみかと思った。そういえばセリフで妹がいたと出てきていましたね。映画の登場人物の読みとり能力の低い私…)

戦場の様子とは対照的な夢の部分が美しいです。

◇◇◇

絶賛の声が多いなか、妹が妹とわからない者が言うのもなんですが(笑)、やはり昔の映画だなあ、第一作だなあと思うようなところも多々あるように思いました。

主要登場人物は美男美女揃いで、目の保養になるのですが、すごく演技演技しているとか。なんかちょっと学芸会っぽい、わかりやすい「照れる演技」「悔しがる演技」だったり。

作品全体の流れも少々ぎこちないような、、、

でも、ピンとこない大戦中の戦場の様子が少しわかって参考になりました。

先週、輪読ゼミで読んだアレクシェーヴィッチのデビュー作『戦争は女の顔をしていない』では、たくさんの女性たちも前線に行っていたということがわかったのですが、この作品にも主要キャラとして若いものすごい美人の軍医(中尉)が出てきます。彼女は階級が高いので、スカートを履いて、髪の毛もゆるくカールして、余裕が見られますが(それとも映画だから?)。

塹壕とはどういうものなのかもわかりました。アレクシェーヴィッチの作品を読んだときに写真では確認したのですが(その影響で夢にまで塹壕が出てきました)、映像の方がわかりやすいですね。

ラストで、ソ連軍がベルリンを制圧し、ドイツ軍の書類を押収するのですが、そのときに処刑者の書類がたくさん出てきます。なるほど、そういうものによって死亡が確認できたり行方を辿ったりしたのだなあと思ったり。

多少の脚色はあるかもしれませんが、字で読むだけではわかりづらい一世代前の様子を知るには映画はいいですね。











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by chekosan | 2017-10-15 10:29 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
チェコスロヴァキアで実際に起った史実を基にした映画「ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦」を観に行きました。

ハイドリヒはナチのナンバー3と言われた人物です。ドイツが占領したチェコスロヴァキアの抵抗組織を壊滅状態に追い込み、ユダヤ人絶滅政策を推し進めた人物でもあります。イギリスと在ロンドン亡命チェコスロヴァキア政府は、チェコスロヴァキア軍の兵士7人を、ハイドリヒ暗殺に送り込みます。その7人のうち2人を主人公に据えた話です。

前半は作戦の計画段階や作戦を実行すべきか否か惑う人々の葛藤を淡々と描いていて、演技や演出や音楽も控えめです。全体をセピアっぽい色調にすることで当時のプラハっぽさをうまく表現しています。

舞台がプラハで、主要登場人物はチェコの俳優が多いのに、言語が英語なのは残念。ここはやはりチェコ語でやってほしかった。興行的に仕方ないのでしょうけど。ドイツ人はドイツ語でした。

外国の俳優さんって年齢や美醜がよくわからないことがあるのですが、本作でもそうでした。そのため登場人物がそれぞれどういう位置づけなのか、しばらくわからなかったです。(^^;

以下ネタバレあり。


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実行部隊は、イギリスからパラシュートでひそかにやってきた軍人たちで若者中心。軍人ゆえに亡命政府の命令は絶対です。

チェコスロヴァキアにとどまって抵抗活動をしているレジスタンスは、ナチによって壊滅状態に追いやられてきたため、この作戦には慎重です。ナチの幹部を暗殺などすれば報復としてどれだけの市民が殺されるかわからない、チェコが地図から消えてしまうかもしれないと言います。パラシュート部隊の若者たちにも恐怖心や迷いが生じます。

しかし、結局パラシュート部隊7人は計画を実行します。このとき、たまたま居合わせた市民が何人も銃撃戦の犠牲になります。

彼らの潜伏を助けた協力者の親子も残酷な仕打ちを受けます。ここのシーンはとにかく酷い。作品中もっとも観るのがつらい場面が続きます。

さらにレジスタンスが恐れていたように、5千人ともいわれる市民がナチの報復で殺されます。

実行部隊を匿ったという疑いをもたれたリディツェ村は、男性全員が処刑され、女性や子どもは収容所送りになり、そのうちほとんどの人は生きて帰ってくることができませんでした。見せしめのため、村の建物はすべて破壊され、更地にされてしまいます。

このような報復の残虐さと悲劇については、チェコのレジスタンスの口から暗殺の実行部隊に伝えられます。映画の最後には観客に向けて字幕でも再度示されます。暗殺の代償はやはりたいへんなものとなったのです。

が、この映画は、実行部隊のなかの2人に焦点を当てたドラマとなっています。そのため、暗殺者らの思いや迷い、恐怖心と愛国心とのせめぎあい、協力者のチェコ女性との恋と別れ、暗殺の緊迫感、暗殺実行後に匿われた教会でのドイツ軍との銃撃戦をかっこよく、ロマンチックに描き過ぎている感がありました。特に最期の最期の幻想シーンはちょっと…と思いました。

邦題からイメージするほどヒーロー万歳な戦争物ではないですが、もう少し深みが欲しいかなという感じです。

というか、この邦題… たしかに内容とは一致していますが、B級戦争映画感満載過ぎませんか。
これではお客さん呼べないと思うのですが…





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by chekosan | 2017-09-30 17:50 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
「シンドラーのリスト」をDVD特典映像「生存者たちの声」とともに観ました。

スティーブン・スピルバーグ監督のアカデミー賞受賞作、ホロコースト映画の代表のような作品です。公開当時から話題になっていたのに、20年以上経ってようやく観る気になりました。

シンドラーはもっと「白い」善人として描かれているのかと思っていましたが、決してそうではないのですね。遊び上手のプレイボーイ、酒と女と贈賄で大儲けするやり手経営者。

ところが、廉価な熟練労働者を確保するという理由でユダヤ人を雇用し始めたはずが、そのうち彼はその理屈が通らないような人まで雇うようになります。お金を積んで、危ない橋を渡って、ユダヤ人労働者たちを家族ごと雇用するのです。

いよいよその手も使えなくなるかという事態に陥ると、蓄財を投げ打って自分の故郷に軍需工場を稼働させる名目で、1000人以上のユダヤ人たちを「身請け」します。そして、建前だけの「収容所」に彼らを住まわせ、SSの立ち入りや干渉を拒み、終戦まで彼らを守り通したのです。

はじめにつくったクラクフのホーロー工場では鍋や釜をつくって儲けを出すのですが、最後のチェコの軍需工場では砲弾を造っているふりをしただけで、実際にはまったく売れるものは造っていなかったといいます。

まさに「映画のような話」なのですが、特典映像を見ると、生存者の証言と映画のなかのエピソードがぴったり合っているのです。



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◇◇◇

ところで、ホロコーストに関する回想や証言には、「なぜ逃げなかったのか、抵抗しなかったのかと聞かれるが、まさか20世紀にもなって意味なく人が人をこれほどまで殺戮したりはしないだろうと思っていた」という証言がよく出てきます。

ところが現実は、前例や想像をはるかに超えて残虐さを増していきます。とにかく何もかもを取り上げられ、むやみやたらと暴力を振るわれ、簡単に殺されます。

誰かが脱走したり抵抗したりすれば、本人だけでなく、周囲の人たちまで暴力を振るわれたり、見せしめや抑止のために問答無用で殺されされますし、そうしたことがなくても、口をきいたからといっては殺され、気に入らないからといっては殺され、あるいは特に何の理由もなく殺されていくのです。

着の身着のまま、まともに食べることもできず、圧倒的な力の差、暴力の手段の差があるなかで、虐げられている側は抵抗や反抗や逃亡などできなかったのです。そうした事実があったことを、こうした作品や生存者の証言で残していくことは大切です。そうでなければ気がつけばまた、、ということになりかねません。

ということで、スピルバーグはホロコーストや大量虐殺の生存者の証言を集め、教育に活用する活動を展開しています。すでに全世界から5万2千の証言を記録し、データベース化して閲覧できるようにしているそうです。

◇◇◇

さて、シンドラーが多くのユダヤ人を雇った工場は、ポーランドのクラクフとチェコのブルニェネツにあります。クラクフのホーロー工場の方はクラクフ歴史博物館になっていて、多くの人が見学に訪れているようです。こちらは近いうちにアウシュヴィッツと併せていきたいと思っています。




一方、チェコのシンドラー工場の方は廃墟になっています。

チェコの工場は19世紀に建てられた古い建物で、チェコで唯一現存する収容所です。戦後は国有化されて工場として使われてきました。民主化後に民営化され、車のシートカバーなどの織物工場として稼働しますが、2009年に倒産したあとは放置され、2014年に売りに出されました。

地元の作家が歴史的な文化財として保存公開するよう働きかけてきましたが、それが実り、現在の所有者と地元自治体が博物館として保存することに同意して、今後再建される予定のようです。

この工場はシンドラーの出身地にあるのですが、ここはドイツ系住民が多数を占めていたズデーテン地方です。ヒトラーのドイツはズデーテン地方、そしてチェコを占領します。戦後、チェコはドイツ系住民を国外追放します。89年の民主化後、このことは、ドイツ系住民への財産返還の問題もからまえてチェコとドイツの間の大きな問題となります。

さらには、シンドラーの若い頃の素行が良くなかったこと、ナチス党員になったことなども重なって、彼への評価や彼の工場の保存・活用については地元住民の積極的な支持を得られていなかったようです。

この工場が歴史を問い直し、後世に悲劇と教訓を伝えていく場となるでしょうか。

整備されたらぜひ訪れたいと思います。











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by chekosan | 2017-09-25 16:13 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
クロアチアを舞台にした映画「灼熱」を観てきました。

だいぶ前に新聞の小さな映画評でユーゴが舞台だということだけチェックしてはいたものの、あらすじもテーマも予習せずにいったので、何の話だろうと思いながら見始めました。

映画は3章立てです。1991年、2001年、2011年のクロアチアのある地方の若い男女の恋愛を描いています。3話とも別の話なのですが、それにしては主人公が似ているなあ、ユーゴではこういうタイプが主役の顔なのかな?とか思いながら見ていました。

実は、似ているどころか、なんと3話とも、同じ俳優たちが主人公や主要登場人物を演じていたのでした。(^^; 同じ村を舞台に、10年ごとの恋愛と、内戦と、人種対立、親きょうだいの確執を描き出すという趣向だったのです。外国の俳優は見分けがつかんわと思ったら、同じ人だったわけです(笑)

夏、海、自然、音楽、涙という共通点はありますが、時代が変わると若い二人の恋愛の状況や展開が変わります。悲劇もたくさん起こりましたが、和解も?と思わせる構成になっています。

それにしても、、、ユーゴの内戦の勃発と終結からもう20年経つのですね。それなのにいまだにボロボロに潰れた家屋が打ち捨てられたままの集落が残っているのです。そのことに愕然としました。

ところで、この映画、年齢制限は特に見当たらないのですが、生々しいシーンがわりとあります。映画に興味を持ち出した息子と行こうかとも思ったのですが、予定が合わず一人で行きました。一緒に行かなくて正解でした。(ノ▽〃)


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by chekosan | 2017-09-23 17:33 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
そんなアホな!(笑) という映画ですが、楽しく泣き笑いしながら観ました。

同志社の「ロシア・東欧地域研究」で受講生が教えてくれた映画です。アマゾンプライム特典で、無料で観ることができました。

かつてソ連のボリショイ管弦楽団の指揮者として名声を博した主人公は、体制に盾ついたとして音楽の世界から追放され、いまや清掃員で生計を立てています。それが、ある機会をとらえて、かつての仲間をかき集めてパリで管弦楽団として演奏をするという大博打を打つお話。

いやさすがにもう無理だろうという困難が次々立ちはだかるのですが、そこはコメディ映画、ありえない展開で乗り切ります。

ところで、主人公はフランス語もできるという設定なのですが、主演俳優さんはこの映画で初めてフランス語にトライしたとか! すごい。てっきりもともとしゃべれる人かと思って観ていました(フランス語の発音の良しあしはわかりませんが…)

以下、ネタバレあり。




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ハチャメチャ楽団と、美しきヒロインのヴァイオリニストとの演奏が始まるのですが、そこからはとにかく盛り上がります。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のとりわけハデハデな部分をダイジェストで繋ぎ、そこに美人ソリストの出生の秘密が重ねられて、これでもかこれでもかと畳みかけていきます。

俳優さんたちの指揮や演奏は音とずれていて、まあやはりそこは嘘臭さが残るのですが、吹替のヴァイオリン演奏の音がものすごい盛り上がりを見せるので、それも気にならなくなります。

特に、ソリスト役の女優さんがキレイで品があって、立ってるだけでも絵になるのですが、感極まって泣きながら熱演するのです。とにかく美しい~~~♡

その感動の演奏場面の間にも、ちょっと余計かなと思うようなコミカルなシーンがいくつか差しはさまれていくので、完全な感動モノにはならないのですが。(^^;

ユダヤ人の親子が本番直前までがめつく商売していたり、ロマ人たちが空港で偽造ビザを堂々と作ったり、団員たちがパリでいかにも田舎者くさい振る舞いをして現金をむしり取っていく姿なんかも、いくらコメディとはいえ、ちょっとやりすぎなんじゃないかとも思いました。

とまあ、いろいろツッコミどころはありますが、面白い映画でした。
ということで、しばらくチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調をリピートして聴くことになりそうです♪





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by chekosan | 2017-09-17 18:51 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
香港からの復路の機内で、アニメーション映画「この世界の片隅に」を観ました。

クラウドファンディングに参加されているSNSのお友達がいらしたので、その頃からほぉ??と見てはいたのですが、あの甘い絵柄にあまり食指が動かず。そのうちずいぶん話題になって、そうなるとまた観る気が失せておりました。あまのじゃくです。

機内の音がうるさく、しょっちゅう機内アナウンスやら食事のサーブやらで途切れ、冒頭しばらく話がつかめなかったのですが、主人公のすずさんが呉のお家にお嫁に行くあたりからは、ほぼちゃんと観ることができました。

ちょっとぼ~とした主人公、やさしい夫、あたたかく見守る家族や近所の人たちの、戦争中だけど工夫して衣食住を賄う日常がほのぼのした雰囲気で描かれていきます。わかりやすい「悪者」は出てきません。

戦局が厳しくなるにつれ、「ふつうの極み」のようなすずさんが「ふつう」でいられなくなります。そのあたりからは常時、つるつる涙が流れ落ちる感じ。特に、幼い姪と広島の孤児のエピソードは、子を持つ親にはたまらない場面でした。

でも最後には希望を感じさせる展開があり、明るく見終えることができます。

どうやら、そういう「悲痛さばかり苦しみばかりを過剰に押し付ける戦争映画ではない」「前半がほんわかとしているからこそ、後半の悲痛さや憤りが生きてくる」というところが評価されているようです。


しかしそのことをもって、あるいはこの作品だけを見て、「歴史に残る映画だ」と大絶賛するのには違和感を覚えています。





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by chekosan | 2017-09-10 12:58 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)
ポーランドの巨匠、アンジェイ・ワイダ監督の遺作となった「残像」を観てきました。

実在した画家ストゥシェミンスキ(1893-1952)の晩年を描いた作品です。第一次世界大戦で片手と片足を失ったストゥシェミンスキは、その後、美術を学び、画家として名を馳せます。美術館や造形大学の創設、興隆にも尽くし、学生に慕われ、周囲からの尊敬を受けていました。

ところが、ポーランドがスターリン主義に染まっていくなかで、あらゆる表現活動も「社会主義リアリズム」に基づくことを強制されます。それに抗ったストゥシェミンスキは、大学の職を奪われ、困窮し、病に伏して亡くなります。

救いのない、重い映画です。

いや、学生たちが、危険が及ぶとわかっていても、職を解かれたストゥシェミンスキの部屋に出入りして師事したり、無職となった彼になんとか職を見つけてきたり、彼の理論を口述筆記して本にしようとしたりと、ずっと慕い続けるところは救いと言えば救いです。映画パンフレットによれば、のちに口述筆記された本は地下で出回ったそうです。

大学での講義シーンや、学生たちが目を輝かせて話に聴き入るシーンは、映画「ハンナ・アーレント」を思い出しました。アーレントもアイヒマン裁判のレポートを書いたあと、激烈に批判を浴びるのですが、堂々と自説を講義します。それにうっとりと聴き入る学生たち。いいシーンでした。あとヘビースモーカーなところも被りますね。(^^;

◇◇◇

面白いと思ったのは、ストゥシェミンスキに作品の講評をしてもらおうとアパートにやってきた学生たちに対して、「どれもいい、オリジナルだから」「モンドリアンを真似しようと思うな」「自分の真似をするな」とアドバイスをするところです。

映画パンフレットにも使われている白と赤と黄色と青は、ストゥシェミンスキの代表作からのデザインですが、すごくモンドリアンと似ていると思うのです。

でも、ストゥシェミンスキの作品や理論は、どんどん進化していったようで、映画の中で描いていた2枚の絵は、モンドリアン的な画風とはずいぶん違っていました。常に自分で考え抜いて、自分の表現方法を追求しつくすことを学生に教えたかったのでしょうね。


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◇◇◇

映画では、主人公ストゥシェミンスキはもちろんですが、一人娘ニカの存在感が際立っています。父を愛し、父の体を案じながらも、母と離婚して一人暮らしの父の元に女子学生が足繁く通っていることに苛立ち、母が亡くなっても遺言だからと父に知らせず、病に倒れた父に心配させまいと友達から靴を借りて新しいものを学校の寮でもらえたと報告する、とても気丈な少女です。

とはいえ、14,5歳くらいで母と父を次々に亡くして、彼女はどうなるのだろうと心配になるのですが、無事成長し、精神科医となって両親に関する本も出版しているようです。

◇◇◇

映画のなかで、ストゥシェミンスキのデザインした美術館の部屋がペンキで白く塗られ、作品は取り外されます。彼が手掛けたカフェの壁面装飾も非情にもノミで削られてしまいます。最晩年の困窮した姿もですが、彼の作品が冒涜されるシーンが観ていてもっともつらかったです。

どんどんと彼の作品が葬り去られていくなかでイスラエルに移住するという教え子が、「我がユダヤの友へ」と題された連作コラージュ作品を預かって、皆が観られるようにしたいと申し出て引き取るというシーンがあります。どうやらこれは実話のようで、この作品はイスラエルのヤド・ヴァシェムに所蔵されているようです。(一部はクラクフの美術館に所蔵?)

他の作品はどうなったのでしょう。映画の中では、美術館の倉庫に隠されていましたが、今は一般公開されているのでしょうか。彼が手掛けた展示室は復刻されたのでしょうか。

◇◇◇

美術を学び、体制に与せず表現活動を続けたワイダ監督の最後の作品らしい題材だと思います。主人公のストゥシェミンスキは、知的で品があり、ワイダ監督と似ているようにも思えました。
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by chekosan | 2017-08-21 09:12 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)

有名な作品であることは知っていましたが、観たことがなかった「ショーシャンクの空に」。お友達から、モーガン・フリーマンが出ていること、刑務所の図書館の話が出てくることを教えてもらって、いつかは観たいなと思っていました。先日、リトアニア旅行からの帰りに観ることができました。


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妻とその愛人殺しの冤罪でショーシャンク刑務所に入れられた元銀行家の男性が主人公。自由な暮らしを取り戻すべく、決して希望を捨てずに、粘り強く刑務所の暮らしを多少なりとも改善していこうとします。

インテリで税の知識や資金運用力があることを買われ、特別な引き立てで図書館係になった主人公は、議会に毎週手紙を書き、6年かけて、ついに図書館の経費を獲得します。仲間たちと空間を整え、受刑者たちの高校卒業資格取得の世話もするようになります。

広くきれいになった図書館で、本やレコードを楽しみ、資格のために勉強する受刑者たちの様子が描かれる場面はとても明るく生き生きしています。

◇◇◇

刑務所の図書館といえば、もうだいぶ前に読んだ『刑務所図書館の人びと』も面白かったです。ハーヴァード大学を出て、ユダヤ教のラビになることを期待されていた秀才が、その道を進まず、刑務所図書館の職員になるという話です。実話なのか創作なのか、よくわからない不思議な雰囲気のある話です。




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アヴィ・スタインバーグ『刑務所図書館の人びと』(柏書房 2011年)

◇◇◇

日本でも、刑務所で本を読むことは権利として保障されています。昔の政治犯、思想犯が刑務所で読書に勤しみ、新しい言語を習得したというような逸話を何かで読んだ記憶があります。

ところが、戦時中のドイツやソ連の管理していた強制収容所では、読書や書き物は禁止されていて、数冊の本を命がけで隠し持ったという逸話があります。本を読むこと、学ぶことはそれだけ人の精神活動に重要であるいうことですね。

イトゥルベ『アウシュヴィッツの図書係』(集英社 2016)
感想はこちら http://chekosan.exblog.jp/26705653/


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今回のリトアニアでの旅では、ユダヤ人追放、虐殺の歴史について学べる施設にいくつか行きました。リトアニアでも、たいへんな数、割合のユダヤ人が迫害を受け、殺されています。そのような時期でも、ユダヤ人コミュニティは、なんとか文化・スポーツ活動、教育活動を維持しようとしていたという説明があり、強く興味を持ちました。詳しく調べてみたいと思います。










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by chekosan | 2017-08-13 16:06 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)