中・東欧、ロシアのこと&大学教育のことを発信します


by chekosan

カテゴリ:読書記録( 140 )

2017年6月は、戦争、ジェノサイド、リトアニア、杉原千畝月間でした。夏休みにリトアニアに行って、そうした歴史の残る場所を見てきます。そういうわけで、7月、8月も引き続きリトアニア&千畝月間となります。


6月の読書メーター
読んだ本の数:18
読んだページ数:4043
ナイス数:371

娘と話すアウシュヴィッツってなに?娘と話すアウシュヴィッツってなに?感想
著者はフランスの歴史学者。第二次大戦とジェノサイドの専門家。自身も多くの親類縁者をアウシュヴィッツやドイツ人による殺害で亡くしている。タイトル通り、娘の疑問に答える形で、ユダヤ人大量虐殺についてわかりやすくまとめてくれている。薄い本だが知りたかったことが網羅されている。本書をベースに授業をした。これで地図があれば言うことなしなのだが! でもおすすめ。
読了日:06月01日 著者:アネット ヴィヴィオルカ


君の膵臓をたべたい (双葉文庫)君の膵臓をたべたい (双葉文庫)感想
学生のおすすめの一冊。今年はこの作家が人気。といっても4、5名だが。スレた大人には先が見通せてしまい驚きや感動は薄いのだが、ピュアな若者が惹かれるのはわからなくはない。それよりも、本を読まない設定の主人公の女の子が尊敬する人に杉原千畝の名を挙げていたのに驚き。千畝氏が学校教育や社会教育でどう取り上げられているかというのがこの夏の私のテーマなので、この女の子がどういう形で千畝氏を知ったのかが気になる。英語の教科書に載ってると聞いたが。あるいは映画の影響か。とマニアックなところに引っかかってみる。

読了日:06月04日 著者:住野 よる


ユダヤ人虐殺の森―リトアニアの少女マーシャの証言 (ユーラシア文庫)ユダヤ人虐殺の森―リトアニアの少女マーシャの証言 (ユーラシア文庫)感想
リトアニアにおける大戦中のユダヤ虐殺についてまとめた本。リトアニアといえば、日本の外交官杉原千畝氏がユダヤ難民約6000人にビザを発給した場所であるが、実は現地の反ユダヤ主義は大変苛烈で、ほとんどのユダヤ人が亡くなったという。本書は辛うじて生き残ったユダヤ人少女の証言を基にしたリトアニアの作家によるドキュメンタリー作品をベースにしているようなのだが、どこからどこまでが引用なのか、どの程度著者のオリジナルな著述なのかが判然としないのが残念。
読了日:06月05日 著者:清水 陽子


バルトの光と風バルトの光と風感想
リトアニアの部分しか読んでいないが、忘れないよう記録。著者は機械関係の営業をされてきた方。旅慣れているらしく、宿や現地で出会う人たちとの交流の記述の割合が多い。なお、本書は1999年夏の旅の記録なので、いまでは交通事情や物価その他は、かなり変化していると思われる。
読了日:06月07日 著者:河村 務



六千人の命を救え!外交官・杉原千畝 (PHP心のノンフィクション)六千人の命を救え!外交官・杉原千畝 (PHP心のノンフィクション)感想
児童向け。著者は27歳の頃から千畝氏を尊敬してきたということで、氏の功績を熱く讃えている。千畝夫人・故杉原幸子さんからも直接話を聞いているとのこと。千畝氏の生い立ち、当時の世界情勢、外交官としての仕事、千畝氏のビザで救われた人たちのその後など、バランスよく、わかりやすく、きちんとまとめられていると思う。なお、外交史料館勤務という職務柄であろう、誰をも批判しない、追及しない記述になっている。
読了日:06月07日 著者:白石 仁章


杉原千畝 (小学館文庫)杉原千畝 (小学館文庫)感想
唐沢寿明主演の映画のノベライズ。あっという間に読める。ヒューマニスト杉原千畝の面よりも、諜報活動の達人としての面をやや強調している。それはそれで面白いといえば面白いのだが、どこまで史実に忠実で、どこがフィクションなのか。映画のお約束、謎めいた美女は実在の人物なのか? 千畝氏のお子さんが存命なだけにひっかかる。既に、加藤剛、反町隆史主演の映画やドラマがあるので、差別化をはかったのか。3作品ともDVDも買ってあるので比較してみる。
読了日:06月07日 著者:大石 直紀


超<集客力>革命  人気美術館が知っているお客の呼び方 (oneテーマ21)超<集客力>革命 人気美術館が知っているお客の呼び方 (oneテーマ21)感想
月イチ書評連載@関西ウーマンで取り上げました。 先月も展覧会を楽しんできた兵庫県立美術館の実践がたっぷり。世界のおすすめ美術館紹介も。兵庫県立に限らず、最近の美術館博物館は、ずいぶん気軽に楽しく学べる場になっています。学芸員に対する残念発言がありましたが、いやいや逆、学芸員や司書やアーキビストといった職の専門性をもっと尊重すべき。存分に腕をふるって活躍していただかねば。
読了日:06月10日 著者:蓑 豊


水澤心吾の杉原千畝物語水澤心吾の杉原千畝物語感想
杉原千畝月間。どんどん読んでいます。こちらは滋賀県立図書館の滋賀県資料コーナーにありました。というのも、著者の水澤さん、写真家の寿福滋さんともが滋賀県出身だからです。水澤さんは一人芝居で杉原千畝を演じておられ、寿福さんは長年、千畝に関わる写真を撮っておられます。そんなわけで、本書は水澤さんの舞台の写真がたくさん載っています。その写真がとてもいいです。前半はお芝居の筋、後半は水澤さんがこの一人芝居をされるに至った半生が綴られています。
読了日:06月10日 著者:水澤 心吾


杉原千畝―六千人の命を救った外交官 (小学館版 学習まんが人物館)杉原千畝―六千人の命を救った外交官 (小学館版 学習まんが人物館)感想
杉原千畝月間。いつ頃から青少年向けの本や教材に千畝氏が取り上げられ、どのように描かれているかを検証すべく分析中。いかにも現代のマンガチックな表現に、うわぁと思ったが、これがなかなかバランスよくまとまっていた。巻末に資料や解説も載っているし、このコマのこの絵は、あの史料に基づいているなとわかるものもあった(日本人がユダヤ難民にリンゴを配っている絵。神戸で実際にそういうことがあった)。子ども向け伝記マンガおそるべし。ということは、他のコマのちょっとした表現も、出所が確かな史料がありそう。また精査してみよう。
読了日:06月10日 著者:稲垣 収,あべ さより


日常を生きる教育論日常を生きる教育論感想
数頁のみ参照。通読はしていない。我が県立図書館の蔵書検索では、書名のみならず目次に挙がっている言葉も拾ってくれる。杉原千畝に関する本を片っ端からチェックしていて見つけた。本書は著者が折にふれ書いた短文を集めたもので、リトアニアのカウナスに千畝を記念する植樹が行われた際、千畝が早稲田出身であることから早稲田関係者も出席したという話が収録されていた。また、このところの私のもう1つの関心事、シュテファン・ツヴァイクに触れたエッセーも収録されていた。なんという偶然と思ったが、著者はドイツの専門家。なるほど。
読了日:06月10日 著者:渡辺 重範


旅でみつめた戦争と平和 (母と子でみる)旅でみつめた戦争と平和 (母と子でみる)感想
杉原千畝氏のことが載っているので手に取ったのだが、ほかの項目があまりに衝撃的で、思わず一気読みしてしまった。著者は元高校教諭。10年余り作家・早乙女勝元氏らと戦争の傷痕が残る場所を訪ね、関係者に話を聞いてこられた。冒頭のフランスのオラドゥール村は、ナチスが村民を虐殺し、焼き払ったが、そのときの状態で丸ごと保全されている。ぜひとも行きたい。イタリアのパルチザンのこと、中国、韓国における日本軍、ベトナム戦争でのアメリカ軍による蛮行、虐殺の痕などについても収録。現場と証言と記録を残し、伝えることの重要性を確認。
読了日:06月11日 著者:重田 敞弘


新版 六千人の命のビザ新版 六千人の命のビザ感想
杉原千畝夫人・幸子氏による回想録。リトアニアでのユダヤ難民へのビザ発行のエピソードは冒頭の五分の一ほど。残りは、リトアニア赴任前のこと、リトアニアを引き上げた直後のプラハでもユダヤ人にビザを発行していたこと、ルーマニアで終戦を迎え、その後一年四カ月もソ連各地の収容所を転々とする日々を過ごしたこと、帰国後、外務省から辞職を勧告され、職を転々としたこと、杉原ビザで救われた人々との再会などが語られる。全編を通じて穏やかな記述が続くのだが、退職勧告の無念さや憤りについては率直に語られているのが印象的である。
読了日:06月11日 著者:杉原 幸子


子どもたちのアウシュヴィッツ子どもたちのアウシュヴィッツ感想
著者はテレジン強制収容所の子どもたちが残した絵を紹介する活動を続けている。アウシュヴィッツはじめナチスドイツの収容所から生還した人々への聞き取りも続けている。テレジンはアウシュヴィッツなどへの中継地として使われたチェコの町。文化人や芸術家、老人、子どもが集められ、一時期は教育・文化活動なども行われたが、結局ほとんどの人は生還できなかった。しかし絵を描くことで希望をもち、生きる気力を保ち続けた子どもたちもいた。本書では、そうした人たちの体験を伝えている。林幸子『テレジンの子どもたちから』と併せておすすめ。
読了日:06月12日 著者:野村 路子


アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)感想
短編集。神戸に来たユダヤ難民の話が出てくるというので手に取った。夫曰く「学生やったら赤入れて直したくなるけどな」という独特な文体。講談調というか。戦中戦後、少年たちは空腹のあまり盗みを働き、栄養失調で死んでいく。通勤電車で読んで朝っぱらから気が滅入るリアルさ。帰宅後思わず「どんなに飢えても母や弟の分まで独り占めせんように」と上息子(飢え息子)に言っておく。養母を慕う少年の話「プアボーイ」が後を引く。この後、2人はどうなっちゃうの⁉︎ 「アメリカひじき」はオッサン思考(嗜好)で、ちょっとヤダ。

読了日:06月13日 著者:野坂 昭如


命のビザ、遥かなる旅路―杉原千畝を陰で支えた日本人たち (交通新聞社新書)命のビザ、遥かなる旅路―杉原千畝を陰で支えた日本人たち (交通新聞社新書)感想
戦乱のヨーロッパから逃れてきたユダヤ難民の渡航の世話をした人々の功績を明らかにしたいという熱い思いで、ゆかりの土地(敦賀、神戸)や生き延びたユダヤ人の人々を訪ね歩き、証言や資料を集めたドキュメンタリー。最後に登場する客船の料理人の方の話が具体的で心打たれた。なお、本書刊行時には神戸におけるユダヤ難民に関する証言や資料はほとんどなかったようだが、神戸市の呼びかけで市民から情報が寄せられ、2017年春に神戸市史の紀要にまとめられた。こちらによれば、神戸の人々は同情的に受け入れていたように見受けられる。
読了日:06月16日 著者:北出 明


N女の研究N女の研究感想
NPOで有給職員として働く女性たちの経歴や働きぶりやその後を追ったもの。著者言うところの「スペックの高い」(難関大学出身、大手企業での実務経験ありなど)女性たち、かつNPOの代表ではない人を選んでいるからか、短期間で離職する人が多い。離職に至った背景は異なるし、「次のステージ」に進むという人もいるが、日本のNPOが自活できるだけの職業とするには厳しいということの表れでもある。であるからこそ、「~女」という表現は(販促のための戦略だろうが)、「一過性」「趣味的に熱中している女性」を連想させないかと危惧する。
読了日:06月20日 著者:中村安希


杉原千畝: 情報に賭けた外交官 (新潮文庫)杉原千畝: 情報に賭けた外交官 (新潮文庫)感想
著者は長年、杉原千畝を研究。本書では、作家の手嶋龍一氏に勧められて、ユダヤ難民を救った人道主義者杉原の情報のプロとしての面を明らかにする。勤務先の外交史料館で発掘した一次史料を駆使した貴重な情報に満ちているが、研究書のスタイルを採った方が、そのオリジナリティと価値がより明確になったように思える。
読了日:06月30日 著者:白石 仁章


読書メーター

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by chekosan | 2017-07-01 21:31 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
同志社大学の「ロシア・東欧地域研究」では、各自好きなテーマを選んで小レポートや期末レポートを書いてもらっています。そうすると毎年必ず登場するのが、この小さな可愛らしい謎の生き物です。

クマ? タヌキ? サル? そのいずれでもありません。オレンジの箱の中で寝てしまって、ロシアにやってきた南の方の正体不明の動物です。

1966年に発表されたウスペンスキー作の児童文学『ワニのゲーナとおともだち』に登場するキャラクター、チェブラーシカです。

当時のソ連では、スターリン時代ほどではないものの、表現活動に厳しい制約がありました。そのなかで比較的、創作の自由の可能性があったのが児童向けの絵本やアニメーションなどでした。チェブラーシカも実は社会風刺や隠喩を含む物語です。

先日、このお話の具体的な作品分析を、学生さんが発表してくれました。わかりやすく興味深い内容で、あの可愛らしいアニメにそんな含意がと他の学生たちも感心していました。

写真は、2012年の滋賀県立近代美術館を皮切りに5カ所で開かれた展覧会「チェブラーシカとロシア・アニメーションの作家たち」の図録です。ウスペンスキーの原作に付けられた何パターンかの挿絵や、アニメ版チェブラーシカのキャラクターデザイン画などが載っています。結構、画家によってチェブラーシカの造形が違うのが面白いです。

この展覧会が開催されていたのは知っていましたが、仕事に忙殺されていた時期で、逃してしまいました。当時はあまり関心がなかったというのも正直なところ。行っておいたら良かったな!

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by chekosan | 2017-06-18 21:59 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
「火垂るの墓」を読みました。

有名な作品ですし、学生のおすすめの一冊にも挙がっていたのですが、特に意味はなく後回しになっていました。先日手に入れた『神戸の歴史』26号に、この作品中に神戸に逃れてきたユダヤ難民についての記述があると書いてあり、とうとう手に取りました。



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件のくだりはここ。

「最後までケーキを出していたのは三宮のユーハイム、半年前にこれで店閉まいだからと、デコレーションケーキをつくり、母が一つ買って来た、あすこの主人はユダヤ人で、ユダヤ人といえば昭和十五年頃、清太が算術なろうとった篠原の近くの赤屋敷に、ようけユダヤの難民が来て、みな若いのに髭を生やし、午後四時になると風呂屋へ行列つくって行く、夏やいうのに厚いオーバー着て、靴かて両方左のんをはいて、びっこひいとんのがおった、あれどないしてんやろ、やっぱり捕虜で工場へ入っとんやろか」

ユダヤ難民の人たちが夏なのに分厚いコートを着ている様子は当時の新聞にも出ています。ほとんど着の身着のままだったのでしょうね。

それにしても、野坂氏の文章って関西弁でしゃべっているそのままを書き起こしたようですね。あるいは講談のよう?
独特な文体ですが、私はすぐになじめました。


と、本筋とは違うところを確認したくて手に取った本ですが、作品全体も面白かったです。短編集ですが、ほかの作品も戦中戦後の生活の厳しさ、特に子どもたちの飢えや病や死がリアルに描かれていて、通勤電車で読んでいて、朝っぱらからかなり気が滅入りました。当時は、いや、いまもですが、女性と子どもだけになると、一気にただ生きるだけでも大変になります。母親は子を救おうと必死で働き、食べ物を分け与え、病気になって衰弱していく。子も次々に弱り、死んでしまう。そんなことがゴロゴロ起こっていたと思うと。。。

こんな混乱の状況に陥ったら、果たして我が家は生きのびることができるんだろうか。私と子らだけになったとしたら、私や息子にそんな甲斐性はあるだろうか。庭を開墾して食べ物をと思っても、苗は、種はどうするの? 燃料は? 縁があるんだかないんだかわからない人が居候にきたとして、果たして自分は手に入った貴重な食べ物を、その人たちにも分けてあげられるだろうか? などと考えてしまったのでした。

最近はやはり文学などを読んでも「親」の目線になっているなあと思います。自分の子はもちろん、子どもたちがまっとうな生活ができる世でなければと心底思えるようになりました。

野坂兄妹が実際に暮らし、「火垂るの墓」の舞台のモデルとなった場所や防空壕跡が郷土史家方々により特定されました。野坂氏は、つらくて行けないと正確な場所は伝えなかったため、神戸の空襲から72年にして判明したそうです。(朝日小学生新聞2017年6月5日)




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by chekosan | 2017-06-14 16:16 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
字はたくさん読んでいたし、いろいろ勉強はしていたのだけど、いろいろ残念な感じの5月。


5月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:814
ナイス数:175

約束のネバーランド 1 (ジャンプコミックス)約束のネバーランド 1 (ジャンプコミックス)感想
子らが読め読め押し付けてきて読了。カズオ・イシグロ『私を離さないで』と山田悠介『スイッチを押すとき』を連想。世話係としか接触しない隔絶した小さな世界で育つ子どもたちの話。彼らが育てられている目的が明らかになって、そこから脱出しようとする。子どもたちがかわいらしく、昔のイギリスとかヨーロッパの孤児院風の建物、生活、図書室の感じも良いが、鬼が出てきた時点で残念感が… 新しくやってくる「シスター」にいろいろ語らせ過ぎなのも、ちょっと説明臭いかな~。でも続きが読みたくなる作品。
読了日:05月07日 著者:出水 ぽすか

約束のネバーランド 2 (ジャンプコミックス)約束のネバーランド 2 (ジャンプコミックス)感想
案外展開が速い。ちょこちょこ絵だけ出てきていた図書室が魅力的。この図書室で謎解き?が始まりそうで次巻が楽しみ。でも、若干、絵が雑になってきている気がする。これ以上、崩れなければいいけど。
読了日:05月07日 著者:出水 ぽすか



3万冊の本を救ったアリーヤさんの大作戦―図書館員の本当のお話3万冊の本を救ったアリーヤさんの大作戦―図書館員の本当のお話感想
2003年のイラク戦争(英米によるイラク攻撃)の際、英軍が突入したバスラ市街は大混乱に陥って、爆発、発砲、火災、盗難が頻発する。図書館が攻撃の標的になりそうだと見抜いて、司書と地元の人たちが、手作業で図書館の本を近くの民家に移す。図書館は大爆発して炎上してしまうが、彼らが運び出した本は3万冊にのぼったという。本を守った現地の人々の行動を讃えつつ、市民が日常生活を送っている市街地が攻撃され、多くの人々が犠牲となった事実もしっかり胸に刻みたい。
読了日:05月13日 著者:マーク・アラン スタマティー


弱いつながり 検索ワードを探す旅弱いつながり 検索ワードを探す旅感想
物事を相対化して見てみようと話す際の参考にできそうと再読したら、前回よりも、より実感を伴って読むことができた。本書や古市憲寿氏の本を読んでダークツーリズム決行を後押しされ、昨年久しぶりにヨーロッパに行き、あらためて現地に行く意義や効果を体感してきたからだろう。「観光客」として普段と違う場所に身を置くことで、新しい情報に出会うのではなく、「新しい欲望」に出会うこと。欲望と言っても物欲ではない。知りたいと思うこと、そしてそれによって別の視点を得ること。ということで、今年も現地に行くぞ。
読了日:05月18日 著者:東 浩紀


週刊奇跡の絶景 Miracle Planet 2017年30号 タリン・リガ・ビリニュスの旧市街 エストニア・ラトビア・リトアニア【雑誌】週刊奇跡の絶景 Miracle Planet 2017年30号 タリン・リガ・ビリニュスの旧市街 エストニア・ラトビア・リトアニア【雑誌】感想
この夏の私のテーマは「リトアニア・杉原千畝をたどる旅」。ということで、リトアニア本絶賛蒐集中。
読了日:05月27日 著者:




アドルフに告ぐ 1 (文春コミックス)アドルフに告ぐ 1 (文春コミックス)感想
神戸市史の紀要『神戸の歴史』で、明治から神戸にはユダヤ人が居住していたこと、大戦中は神戸のユダヤ人協会を頼って杉原ビザを持ったユダヤ難民が、敦賀→神戸と逃れてきたという事実を知った。そこに、この作品にも神戸のユダヤ人のことが書かれているというので初めて手に取った。てっきりドイツが舞台だと思っていたら。思いっきり神戸も舞台で驚いた。戦災や震災で当時の建物やまちなみはほぼないだろうが、痕跡を訪ねてみたくなっている。
読了日:05月28日 著者:手塚治虫

アドルフに告ぐ 2 (文春コミックス)アドルフに告ぐ 2 (文春コミックス)
読了日:05月28日 著者:
アドルフに告ぐ 3 (文春コミックス)アドルフに告ぐ 3 (文春コミックス)
読了日:05月28日 著者:
アドルフに告ぐ 4 (文春コミックス)アドルフに告ぐ 4 (文春コミックス)
読了日:05月28日 著者:
アドルフに告ぐ 5 (文春コミックス)アドルフに告ぐ 5 (文春コミックス)感想
全巻一気読みしたので途中の巻の感想は省略。いやなかなか面白かった。フィクションの部分も多いのだろうが、歴史的経緯や当時の神戸、大阪の雰囲気を知るのには良いのではないだろうか。最後の後日談の部分は辛い展開ではあるが、そう簡単にみんな幸せ、はい終わり、とはいかないのが手塚治虫。
読了日:05月28日 著者:手塚 治虫


読書メーター

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by chekosan | 2017-06-05 13:53 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)

昨年(2016年)、「第2次世界大戦中、外交官杉原千畝(ちうね)氏(1900~86年)が発給した「命のビザ」によってナチス・ドイツの迫害を逃れ、神戸にたどり着いたユダヤ人難民についての資料提供を神戸市が呼び掛けている」という報道を見ました。この春、その成果物が発行されました。『神戸の歴史』第26号です。

杉原千畝氏には前々から関心をもっていました。加藤剛主演の映画のテレビ放送を見て知ったのだったか。1990年代に岐阜・八百津町役場が開いた千畝展にも行きました(その後、八百津町には杉原千畝記念館も建てられていますが、こちらは未見)。滋賀で開催された、杉原氏に関する写真展にも行きました。下の写真は、2014年9月にあけぼのパーク多賀で開催された写真展です。


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杉原ビザで日本にたどり着いたユダヤ難民に関する記録は多くはなかったようですが、神戸市の呼びかけで市民から情報が寄せられました。『神戸の歴史』26号には、寄せられた情報や論稿、資料などが掲載されています。一般家庭で着物を着て記念撮影している写真などもあります。


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今年が私にはベストなタイミングに思えてきたので、この夏は、八百津町の記念館と、ユダヤ人がたどり着いた敦賀の「人道の港 敦賀ムゼウム」、そして千畝氏がビザを発行したリトアニアのカウナスの元日本総領事館の建物にある杉原千畝記念館を訪問することにしました。カウナスでは、杉原一家がリトアニアを離れる前に滞在したメトロポリスホテルに泊まります。



さて、『神戸の歴史』26号をざっとみたところ、手塚治虫『アドルフに告ぐ』に、当時神戸にユダヤ人が少なからず居住していた様子が描かれているという記述がありました。

ちょうど夫が実家から引き揚げてきた本の山の中に『アドルフに告ぐ』全巻がありました。めくってみたところ面白くて、そのまま一気に読んでしまいました。その様子を覗いていた小5息子も読み始め、親子で半日かけて読了してしまいました。


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史実を基にしたフィクションですが、面白いですね。本当にあったことのように思えて入り込んでしまいます。さすが手塚作品。そして、予想以上に神戸が舞台なのですね。てっきりドイツが舞台だと思っていました。

作品中、杉原千畝の名前こそ出てきませんが、ポーランドからリトアニアに逃れたユダヤ人たちをシベリア経由で日本に脱出させるという話が出てきます。この作品では、日本ではユダヤ人差別がなく、特に神戸ではコミュニティを形成し、土地になじんでいたように描かれています。

神戸に勤務するようになって3年目ですが、まだまだ神戸を知りません。戦災・震災で当時の様子を留めているところはそう多くないでしょうが、そのことも含め、「アドルフに告ぐ・神戸めぐり」もよいかもと思ったりもしています。








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by chekosan | 2017-06-04 10:50 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
今月はツヴァイク月間でした☆ 先月の「関西ウーマン 信子先生のおすすめの一冊」に取り上げた、町山智浩さんの『映画と本の意外な関係!』で紹介されていた映画「グランド・ブダペスト・ホテル」の関連本と、映画にヒントをもたらしたというシュテファン・ツヴァイク『昨日の世界』にどっぷりはまりました。ツヴァイクについては、稿をあらためてたっぷり書きたいと思います。(^▽^)/


4月の読書メーター読んだ本の数:8  読んだページ数:2476 ナイス数:150


無意味の祝祭無意味の祝祭感想 良く言えば削ぎ落とされ洗練された、しかし、チェコ時代の作品に惹かれる読者としては物足りない作品。クンデラといえば、歴史や国家や社会と個人の人生の関わり方を考え抜いた哲学的考察、登場人物の内面をこれでもかというくらい分析するところ、実験的な入り組んだ構成へのこだわりが面白かったが、この作品では、そういう深さや悩み、実験的な性格は薄れている。この作品は、壮年期の迷いや悩み、苦しみから脱した老年期のクンデラが投影されていると思う。もはや生々しい葛藤の渦中ではない人の書く小粋さを楽しむ小品と感じた。読了日:04月01日 著者:ミラン クンデラ

ユリイカ 2014年6月号 特集=ウェス・アンダーソン―『グランド・ブダぺスト・ホテル』へようこそユリイカ 2014年6月号 特集=ウェス・アンダーソン―『グランド・ブダぺスト・ホテル』へようこそ  読了日:04月09日 著者:ウェス・アンダーソン,レイフ・ファインズ,野村訓市,蓮實重彦,三浦哲哉



ボタン穴から見た戦争――白ロシアの子供たちの証言 (岩波現代文庫)ボタン穴から見た戦争――白ロシアの子供たちの証言 (岩波現代文庫)感想 第二次大戦のドイツ軍侵攻時に2,3歳から14,5歳くらいだった101人の証言集。白ロシアの村々はドイツ軍に蹂躙され、想像を絶する目に遭う。村に残ったお年寄り、女性、子どもたちが、見境なく焼かれ、銃殺され、吊るされ、自ら掘らされた穴に落とされて埋められる。予想以上に恐ろしい、残忍な話ばかりが続くが、孤児や小さな子どもたちを周りの大人やソ連軍やパルチザンが救って育て、なんとか教育を授けようとする姿には救いや希望を感じた。数字だけでは伝わらない、一人ひとりの体験の重さが迫ってくる。読了日:04月09日 著者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ

文化立国論: 日本のソフトパワーの底力 (ちくま新書)文化立国論: 日本のソフトパワーの底力 (ちくま新書)感想 大学の授業で、政治と文化、文化によるまちおこし、ソフトパワーとしての文化、サブカル外交といった話題をちょいちょい取り上げている。学生の関心が高く、食いつきが良い。かつて芸術系大学・学部で教えていたときは、実際に自治体の主催する催しに関わっている学生も多く、私の方が教えてもらうことが多いくらいだった。いまの本務校は留学生がとても多いのですが、日本のサブカルを通じて日本が好きになったという学生が多い。本全体としてはやや散漫な気もするが、授業ネタになる細かい事例や事実多数。備忘のためメモをブログにアップ。読了日:04月11日 著者:青柳 正規

未来食堂ができるまで未来食堂ができるまで感想 大学図書館の新刊コーナーでみつけて帰りの電車で一気に読了。ブログでの脱サラ食堂開業日記をまとめた本。企業を退職してから開業後一年ほどの生の感覚が伝わる。30代半ば大手企業のSE出身。だからこそのシステマティックさ。事業計画書からスタッフ用マニュアルまで公開するオープンソースな食堂運営。その手法や数々のアイディアが興味深い。ただし、どうやって実際にお店を一人で回しているのかという一番知りたいところはこの本だけではわからない。同店のまかないさんをして、実地で学ぶ人も増えている模様。読了日:04月12日 著者:小林 せかい

ウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテルウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテル感想 オーストリアの作家ツヴァイクの作品にインスパイアされた映画のメイキング本。もう新品は売っていないので中古で定価以上で買ったが、それだけの値打ちはあった。監督や主演俳優やスタッフへのインタビューその他たっぷり解説が読める。イラストや写真も豊富。オールカラー。ロケ地となったドイツの町ゲルリッツや、ホテルのモデルの1つであるカルロヴィ・ヴァリのグランドホテル・プップに近いうちに行きたい。ブログに詳しくメモした。読了日:04月16日 著者:マット・ゾラー・サイツ


昨日の世界〈1〉 (みすずライブラリー)昨日の世界〈1〉 (みすずライブラリー) 読了日:04月23日 著者:シュテファン ツヴァイク
昨日の世界〈2〉 (みすずライブラリー)昨日の世界〈2〉 (みすずライブラリー) 読了日:04月27日 著者:シュテファン ツヴァイク




『昨日の世界』は別途。


読書メーター

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by chekosan | 2017-05-01 17:18 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
関大「外国書研究」や、一般教養の「政治学」の講義では、
政治と文化、文化によるまちおこし、文化政策、
ソフトパワーとしての文化、サブカル外交といった話題をちょいちょい取り上げています。

日本人学生の関心が高く、身近に感じられるので、とても食いつきが良いです。
かつて芸術系大学・学部で教えていたときは、実際に自治体の主催する催しに関わっている学生も多く、
私の方が教えてもらうことが多いくらいでした。

いまの本務校は留学生がとても多いのですが、
日本のサブカルを通じて日本が好きになったという学生が多いです。

というわけで、この本も読んだのですが、このところ忙しくてなかなか記録できず。(-_-;)
以下は備忘のための軽めのメモです。まとまってません。


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著者は文化庁長官。国立西洋美術館長も務めた。
日本の伝統的な文化や習慣重視で、本書のサブタイトルは「日本のソフトパワーの底力」だが、
経済産業省が進める「クールジャパン」戦略については、
90年代にイギリスのブレア政権が進めた「クール・ブリタニア」を真似たもので、
やや新鮮味に欠けると冷めた評価である。

◇◇◇

2000年前後、「文明間の対話」の重要性が広く認識されるようになる。
これはグローバル化の進行、インターネットの普及の影響と背中合わせである。

言語のグローバル化に航路して、オックスフォード英語辞典は採録する英単語を世界中から集めるようになった。
英語圏以外のアジアや中東などで使われている英単語も含めているという。

◇◇◇

文化をソフトパワーとしてうまく発信しているのは「韓流」をひろめた韓国であろうと著者は言う。
韓流ドラマははじめから海外での放映を前提につくられており、放映料はきわめて安いという。
また、海外で放映する際、出演者全員の同意が必要な日本と違い、韓国はそのハードルが低いらしい。
そのため、「ドラマの出来、筋立ても上質とはいいがたい」ドラマではあるが、
海外のテレビ局にとっては、安くで一定の女性ファンを取り込める、ありがたい存在なのだと評している。

◇◇◇

著者の手本はフランスの文化立国戦略か。

フランスは自国文化の保護育成にたいへん力を入れている。
そのため、1993年、GATTウルグアイラウンドでは、カナダとともに、
映画については関税撤廃の対象から外すべきと粘り強く主張し、
映画やオーディオビジュアル分野について自由貿易における「文化的例外」が認められた。
これはハリウッド映画が映画市場を席捲することを避けるためである。

たしかに著者が引くフランスの文化政策、文化予算には驚嘆する。
過去の文化を保護、保存、活用することはもちろん、新しい文化を育成することにも力を入れている。
そのときに、これまでの予算額を分配するのではなく、上積みするところがすばらしい。

◇◇◇

ユネスコの「世界遺産」や「記憶遺産」「文化多様性条約」といった制度についても、
日本ははっきりと出遅れている。
著者は、「文化多様性条約」は保護主義を助長するようなことはなく、
むしろ文化や映像・音響作品の防衛の枠組みに恩恵をもたらしているとする。

◇◇◇

2012年6月のリオ+20会議「包括的豊かさレポート2012」は、
豊かさをはかるには、天然資源、教育水準、熟練した労働力、
整備された社会インフラや機械化などの総計で見る必要があるとしている。
そこで、自然資本、人的資本、人工物(物的)資本をストックと考え、数値化している。

日本の場合は、豊かさを維持するには、人的資本を増やすことにかかっている。
これには、多種多様な教育の機会を得ることと、文化の充実がきわめて重要である。

具体的には、自国語の尊重と海外における日本の普及、
日本の伝統文化の継承と浸透、ポップカルチャーに代表される現代文化の活力を増大させること、
異なる文化を受容すると同時に、日本文化を他の文化と相対化する柔軟性をもちうることである。

◇◇◇

本書後半は、さらに具体的な文化政策や地方自治体の取り組みが紹介されている。
そうした実際的な取り組みをもっと詳しく知りたいところだが、
それは各主体が発信していることだろうから、おいおい追っていきたい。

・「新・伝統工芸品」 … 南部鉄器への注目
・ヨーロッパのアーティスト・イン・レジデンス ※日本でも平田オリザさんが手がけている
・文化庁による「日本遺産」の創設 …「グループ化」と「物語性」を重視
・伝統文化をかみ砕いて伝える「インタープリター」の養成
・南イタリアの洞窟住居群の保全と活性化の事例
・イギリスの芸術文化支援 「アーツ・カウンシル」
 「アーム・レングスの原則」…政治と助成機関は一定の距離をおくべし
・イギリスの史跡保護 イングリッシュ・ヘリテージ
・ドイツの文化教育 具体的施策は地方にゆだねているが教育は連邦政府が力を入れている
・アメリカは寄付文化 寄付を促す税制
・フランスの造船業の町ナント 音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」で町おこし
 「ヨーロッパでもっとも住みやすい町」とまで
・スコットランドのグラスゴーも工業都市から文化都市へ変貌
・日本でも浜松市と鶴岡市がユネスコの「創造都市」に認定
・豊岡市「コウノトリ」の町へ
・富山県射水市大島地区「絵本の町」






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by chekosan | 2017-04-22 13:59 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
ノーベル賞作家、スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチの「ユートピアの声」5部作のうちの一つ。
ナチスドイツに侵攻された白ロシア(ベラルーシ)の子どもたちの証言を集めた作品。

ドイツ軍が侵攻してきた頃に、2,3歳から14,5歳くらいだった人々101人の生の声を集めています。
第2次世界大戦での一般人の被害者というとユダヤ人が真っ先に浮かびますが、
ソ連でも大変な数の人々が殺されたり亡くなったりしています。

白ロシアの村々はドイツ軍に蹂躙され、想像を絶する目に遭います。
この本での証言は、子どもだった人たちのものですから、戦闘行為ではなく、
村に残ったお年寄り、女性、子どもたちが、見境なく焼かれ、
銃殺され、吊るされ、自ら掘らされた穴に落とされて埋められた様子が生々しく伝えられます。

男性たちはみな出征していたり、パルチザンとなって戦っているので、ほとんどいません。
男性だけでなく、ソ連では多くの女性も兵士やパルチザンとなって戦っていました。

多くの子どもが亡くなり、生き残っても孤児になります。
年端もいかないうちから働き、戦火の中を避難します。

予想以上に恐ろしい、残忍な話ばかりが続くのですが、
孤児や小さな子どもたちを周りの大人が引き取って育てたり、
ソ連軍やパルチザンが救って育て、ありあわせのものでなんとか教育を授けようとするなど、
極限状態でも次の世代を守ろうとした人たちの姿には救いや希望を感じました。

「戦争での犠牲者 〇万人」という数字では伝わらない、一人ひとりの体験の重さが迫ってきます。


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by chekosan | 2017-04-13 17:01 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)

クンデラの新しい作品を読みました。『無意味の祝祭』です。

初期の作品からするとボリュームからして違うのですが、
それだけではなく、いろいろな意味で、良く言えば削ぎ落とされ洗練された、
しかし、チェコ時代の作品に惹かれる読者としては物足りない作品でした。

クンデラといえば、ストーリーで読ませるというよりは、
歴史や国家や社会と個人の人生のからみあい、関わり方を深く考え抜いた哲学的考察、
作家が小説のなかに出てきて登場人物の内面をこれでもかというくらいしつこく分析するところ、
実験的な入り組んだ構成へのこだわりが面白かったのですが、
この作品では、そういう深さや悩み、実験的な性格は薄れています。

文学作品は、その作品に書かれた世界だけで評価するべきという考えもありますが、
クンデラの場合、彼自身が小説に顔を出してメタな視点で語り始めるという形をとっているので、
彼自身や彼を取り巻く状況の変化が作品に投影されていることを抜きにしては語れないと思います。

この作品は、壮年期の迷いや悩み、苦しみから脱した老年期のクンデラが投影されていると思います。
それは登場人物の年齢設定云々よりも、作品全体に漂う雰囲気に表れています。
もはや生々しい葛藤の渦中ではない人の書く小粋さを楽しむ小品と感じました。




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クンデラ作品の読書記録はこちら。








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by chekosan | 2017-04-03 19:15 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)
くたくたな3月。テキスト刊行準備と、卒業入学準備、職場の新年度準備で予想外に忙殺。
読書も論文執筆も停滞しました。4月、長時間の電車通勤が復活すると、かえって読めるかな?


3月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1847
ナイス数:429

ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)感想
なんと6巻発行から2年! そうでしょうね、これだけ調査をするには2年でも短いくらいですね。このシリーズ、作品や作家、古書の流通のこと、実にていねいに書かれてましたね。5巻くらいからドロドロ度が増して、ちょっとうーん、、となりましたが。今後もスピンオフが出るとのことで、初期の面白さが戻ることを期待します。最終巻は途中で種明かしの予想がついてしまいました。残念。そして、去年、明星大学にいったときに、あの本を見てこなかったのも残念! そのときは現物を展示していたかわかりませんが。機会があったら今度こそ!
読了日:03月03日 著者:三上 延


シェア空間の設計手法シェア空間の設計手法感想
若い人向け共同住宅だけではなく、幅広い事例を取り上げている。図面には人や家具なども描き込まれているので、空間の使われ方が想像しやすい。写真は少なめなので、複雑な構造の建物は素人には若干わかりづらい。では、素人には参考にならないかというとそんなことはなくて、設計した人や施主(空間の運営者)の発言や活用事例からいくつか具体的なヒントや大きな示唆が得られた。日本人は無目的、多目的な場所は苦手」ということ、タイムシェアの事例、「ほのかなわれわれ性」という表現が面白い。詳しくはブログに記録
読了日:03月03日 著者:


アウシュヴィッツの図書係アウシュヴィッツの図書係感想
実話をもとにしたフィクション。舞台がアウシュヴィッツなので信じがたい残酷な情景も出てくる。耐えがたい苦しみや悲しみが主人公たちを襲う。それを和らげてくれたのが、家族収容所につくられた学校。主人公の少女ディタは、そこに極秘で持ち込まれた8冊の本を管理する「図書係」であった。禁止されている本を隠し持っていることがばれれば殺される。ディタは知恵を働かせ、命がけで本を守る。それだけ本は人々の心を救う大切なものであった。家族収容所での生活について詳細に書かれているという点でも興味深い。詳しくはブログに記録
読了日:03月07日 著者:アントニオ G イトゥルベ


ルポ 難民追跡――バルカンルートを行く (岩波新書)ルポ 難民追跡――バルカンルートを行く (岩波新書)感想
2015年、欧州に大挙して押し寄せた難民の大移動に新聞記者である著者が同行したルポ。ただし、記者は難民用の移動手段は使うことができず、取材対象者であるアフガンからの難民、アリさん一家とはぐれたり待ちぼうけを食わされたりする。その間の難民一家の移動や生活の様子がわかりづらく、記者の苦労談が印象に残ってしまった。ドイツの手厚い難民保護に対して極右政党が勢力を伸長するのもわからなくないという記述はひっかかる。弱者は徹底して貧しくあらねば、苦難を耐え忍ばなければいけないだろうか。ほか気になる点をブログに記録
読了日:03月09日 著者:坂口 裕彦


ヘンな論文ヘンな論文感想
あまりに面白くて、よそさまで書かせていただいている書評コーナーでも激しくおすすめ。トンデモ論文を集めた本ではありません。大まじめな論文をわかりやすく面白おかしく紹介しながら、学問、研究の楽しさとそれにかける研究者の情熱に敬意を払うものです。書評には盛込ませんでしたが、イラストがまた楽しいのです。タツオさんとこのイラストレーターさんで続編を激しく希望♫  ☆「関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊」でも取り上げました☆
読了日:03月12日 著者:サンキュータツオ



コルチャック先生 (岩波ジュニア新書 (256))コルチャック先生 (岩波ジュニア新書 (256))感想
コルチャック先生は、ポーランドの著名な作家、教育者、医者で、孤児院を創設し、1942年にユダヤ人の子らとともにトレブリンカ収容所に移送されて亡くなった。その生涯と、教育者としての思想や活動、ポーランド史、ポーランドにおけるユダヤ人について、よく理解できた。また彼らが運ばれた収容所の見取り図や、同収容所の数少ない生存者の証言、亡くなった人たちを追悼する石碑の写真や、亡くなった人たちの灰や骨の山の写真もある。コルチャック先生を知る数少ない生存者の貴重な体験談も紹介している。ワイダ監督の映画の感想はこちら。☆本書の詳しい感想はこちら
読了日:03月13日 著者:近藤 康子



映画と本の意外な関係! (インターナショナル新書)映画と本の意外な関係! (インターナショナル新書)感想
映画のなかに登場する本や意味深いセリフを紹介。幅広い教養や知識が惜しげなく開陳され、親しみやすい文体で面白かった。どちらかというとアメリカ映画中心、セリフ中心? ヨーロッパ関係の逸話に惹かれた。「グランド・ブダペスト・ホテル」ツヴァイク(第二次世界大戦前のウィーンの作家)がらみ。「ベルリン・天使の詩」ドイツの思想家ベンヤミンがらみ。「ソフィーの選択」タイトルだけは知っていたが未見。これは観なくては。でも全部わかってしまった…もちょっとネタバレ控えてほしかった… 詳細はブログにメモ
読了日:03月21日 著者:町山 智浩

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by chekosan | 2017-04-02 16:21 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)