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by chekosan
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映画「サラエヴォの銃声」(タノヴィッチ監督 2016年)を観てきました

いやなかなか硬派で、密度の濃い作品です。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエヴォの「ホテル・ヨーロッパ」を舞台としたお話です。

第一次世界大戦勃発のきっかけとなった「サラエヴォ事件」から100年の記念式典が開かれるまさにその日、ホテル・ヨーロッパの従業員たちはストライキを計画します。冬季オリンピックのときにつくられ、多くの著名人をもてなしてきた格式高いホテルなのですが、実は2か月も従業員に給料を払えていないのです。

支配人は、EUからのVIPが多数揃う重要な催しを成功させ、その支払いで銀行への返済をはかりたい。2日待ってくれれば給料を払うからとストライキをやめさせようとします。従業員たちは、内外の注目が集まるその日にこそストライキに打って出て給料を支払わせたい。フロントの若き有能な女性スタッフは両者の板挟みになります。

屋上では、サラエヴォ事件100年特別番組の収録中。女性ジャーナリストが識者にインタビューをしています。3人目のインタビューの相手は、サラエヴォ事件の犯人とまったく同じ名前の男性です。何やら不穏な雰囲気。何者かよくわかりません。歴史認識をめぐって、ジャーナリストと激論になります。

ホテルのVIPルームにチェックインしたフランス人は、部屋にこもって、サラエヴォ事件やユーゴスラヴィア内戦を防げなかった欧州の責任を追及する演説の練習を続けます。

この大きく3つの話が同時進行していきます。フランス人VIPがホテルにチェックインしてから85分間の出来事を85分の映画にしたという形になっています。3つの話が一つになるときがクライマックスです。


映画「サラエヴォの銃声」(タノヴィッチ監督 2016年)を観てきました_b0066960_22362269.jpg



屋上でのインタビュー部分が長くてつまらないという感想も見ましたが、私はここが面白かったです。ボスニア・ヘルツェゴヴィナの過去と、いまも続く民族間の対立の根の深さ、深刻さの一端を知ることができる面白い構造になっていると思いました。

またフランス人VIPの演説は、実際のサラエヴォ事件100年の日に上演された一人芝居「ホテル・ヨーロッパ」を再現したものであるとのこと。この戯曲を原案として本作は作られたそうですが、もともとのお芝居も見てみたいと思いました。

スリルとサスペンスな要素も盛り込みつつ、こういう社会派な作品を作れる監督がいるのだなあ~、と思ったら、気になっていた「鉄くず拾いの物語」や「汚れたミルク あるセールスマンの告発」を撮った監督さんでした。どっちも観れてないのですが。

フランス人VIP役のフランス人俳優以外は、地元ボスニア・ヘルツェゴヴィナの俳優たちで、国際的には著名というわけではないそうですが、とても良かったように思います。

フランス人の場面以外はセルビア・クロアチア語です。この言葉もスラブ語の仲間なので、ほかのスラブ語と語彙や構文(というのか)が似ています。字幕があるからですが、うっすらとわかって嬉しかったです。そして、やっぱりスラブ系の言葉って、なんか音がかわいいです♡


 


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by chekosan | 2017-07-15 23:16 | 本、書評、映画 | Trackback | Comments(0)