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by chekosan

サードプレイスを構想する ~『黒板とワイン もう一つの学び場「三田の家」』を読みながら


サロン的空間をやたら夢想していた時期があった。

家に収められない本を並べ、趣味の合う人と話したり食べたり音楽を聴いたりしたいなあ、
それもできれば雰囲気のあるちょっと古い建物とか、と。

建築士と家をつくり、その家を住みこなしていくことで自分の空間を持つ欲はいったん満たされた。
日々の仕事や家事育児に忙殺され、しばらく別宅サロン構想は頭から遠のいていた。

勤務先にも研究室を持つようになって、
本を収めたり、業務上・教育研究上の相談をしたりする空間には困らなくなった。

真夏の数日間、あああ避暑地に別荘が欲しい! 冷房のいらないところで知的活動をしたい! 
そこで人と小さな集まりをもったら楽しそう! と猛烈に別荘欲が募ることはある。

「第三の居場所」「サードプレイス」といった系の言葉や活動の事例にも異様に惹かれる。

が、空間としての、物体としての不動産を、自宅と別にどうしても私有したいのかというと、
どうもそれとは違うように思えてきた(余裕があれば持つことにやぶさかではないが)。

だいたい私は、人が少なすぎるところとか、何もないところとか、
車でないと行けないようなところにじっとしてはいられない。

そのくせ、よほどでないと人を家に招きたいとも思わない。
自宅は自宅として好きに過ごしたい。しかももともとが出不精。
なんだろう、この矛盾。

そんなことを、日々つらつらと考えて、ちょっと見えてきた。

欲しいのは、私的財産としての不動産ではなく、
半私的半分オープンな知的・美的な交流がはかれる「場」や、
もっと言えば「機会」なのではないか。


◇◇◇

「場づくり」「居場所」「サードプレイス」関係の本や記事はちょこちょこ読んでいる。

この本もその一つ。
熊倉敬聡ほか『黒板とワイン もう一つの学び場「三田の家」』(慶應義塾大学出版会 2010)


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慶應の先生方が、三田のキャンパス近くの古い一軒家を借り受けて、
学生、教職員、地域の方、卒業生などが集う「インターキャンパス」として活用した記録。
非常に多くの人が関わり、手を入れ、外に開き、交流した様子が見て取れる。

各曜日の「マスター」(慶應の教員)が、その曜日の運営を任される。
留学生と日本人学生の交流の場とする曜日もあれば、ゼミ活動主体の曜日もある。
学生や教員が企画する特別イベントを開く日もあれば、特に何も予定されない日もある。

普通の民家であることは、教室における学生や教員間の緊張を解く効果があるようだ。
マスターや料理好きな人が腕を振るい、おいしいものを一緒につくり、食し、片づけるなかで
教室では出てこない本音が聞けることもあるという。

ただ、そうした時間・空間を通常の大学の業務と別に運営することは、
刺激的で楽しい半面、負担や疲労も生じさせ、マスターが疲れてお休みする日もあったという。
そんな正直な感想も記されているところが参考になる。

(※「三田の家」は今はないとのことである)


◇◇◇

「三田の家」のこと、この本のことは、
東京でサードプレイスづくりを実践されている方から教えていただいた。

一年ほど前、冒頭に書いたような夢想を書いた本ブログの記事をその方がご覧になり、
その方が京都にお持ちの建物で、そうしたことをしませんかと声をかけていただいた。

以後、ほかの方も交えて、メールや現地でのんびりペースであれこれお話をしてきた。
最近は、オーナーたちと場づくりの参考になるところに見学に行くことも増えてきた。

見学先では、どうやって運営しているのか、誰を対象にしているのか、
収益は、所有者は、活動時間は、広報は、といった話もうかがうが、
それをきっかけにいろんな話題が飛び出し、
その人知ってますよとか、あら同じ大学の出身ですねとか、
○○もいいですよとか、××はステキですよねなどと話が弾み、
新しい世界や、新しい人たちと繋がっていくこと自体がまた楽しい。

実は、そのこと自体が既に、私の欲する「場」なのではないかと思うようになっている。

◇◇◇

と書くと、いやいやそれで満足してもらっては困りますよ、
建物そのものを活用してほしいんですよ、と言うオーナーの声が聞こえてきそうである。

わかっていますよ、空間を持っているからこそできることがありますよね。
建物や土地自体のもつ磁力が人を呼ぶことも、
そこを媒介として新たな出会いが化学反応を起こすことも楽しみですから。


というわけで、サードプレイスづくり、みんなであれこれあれこれ考えながら、
京都は衣笠の地で、夢想段階から計画段階、実行段階へと移りつつあります。





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by chekosan | 2017-02-15 12:01 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)