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by chekosan
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読書メーター 2017年1月のまとめ

1月は冊数はそう多くありませんが、どの本もかなりていねいに読んでいきました。

三浦展さん、佐藤優さん、古市憲寿さんの本からは、授業や活動のヒントをたくさん得ました。
クンデラとハシェクは同志社の輪読ゼミで、学生と楽しくじっくり語り合いました。
ハシェクはまとめてこちらに →  http://chekosan.exblog.jp/26585240/ 

亀山早苗さんの本は、内容もとても興味深かったのですが、
同じテーマ(問い)をさまざまな学問から検討したという点でも新鮮でした。


2017年1月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:3059ページ
ナイス数:367ナイス

人間の居る場所人間の居る場所感想
「都会」や「都心」と「都市」とを区別し、「都市」を「都市」たらしめるものは人の交流であると定義する。だから、郊外でも、首都圏ではない地方でも、そこにいる人たちでそこにしかないこと(歴史や緑や営み)を大事にすることで、「都市」的な魅力に満ちた空間を創ることができると主張する。それを体現するような実験的な試みや先駆的な経済活動を具体的に紹介している。講演や対談などを集めたものなので、一冊の本としてのまとまりにはやや欠けるが、事例や文献の紹介など細部に参考になる点がいくつもあった。
読了日:1月4日 著者:三浦展



人はなぜ不倫をするのか (SB新書)人はなぜ不倫をするのか (SB新書)感想
書店で手にとるのにちょっと勇気がいったが、内容は至極まっとう。8つの分野の専門家が不倫をテーマにそれぞれの学問成果をわかりやすく解説する。この本の作りかた自体が面白い。読み進めるにつれ、これまで自分が持っていた人間の心理や生態への理解が、必ずしも正しいとは言い切れないものだったのだと感じた。年齢や人生経験によって捉え方は変わってくるだろうが、赤裸々な不倫の実態を暴くという類のものではないので安心して読むことができる。むしろそういうものを期待するとがっかりするかも。月イチ書評連載 https://www.kansai-woman.net/Review.php?id=201061で詳しく記述しました。
読了日:1月7日 著者:亀山早苗




小説の技法 (岩波文庫)小説の技法 (岩波文庫)感想
授業で学生と『存在の耐えられない軽さ』『冗談』『不滅』を続けて読んで、最後に復習がてらクンデラ自身の小説論で締めくくるつもりで選んだのだが、薄い本にもかかわらず本作が一番手こずった。クンデラは他の作家や哲学者や作曲家を引き合いに出すことが多く、ヨーロッパの精神や文化を継承し発展させるという意思を色濃く盛り込む人なので、ボーッと読んだりザーッと読んだりができない。その分とても頭を使った。ここはという箇所をブログに記録。http://chekosan.exblog.jp/26553773/
読了日:1月10日 著者:ミラン・クンデラ



君たちが知っておくべきこと: 未来のエリートとの対話君たちが知っておくべきこと: 未来のエリートとの対話感想
優れた能力と意欲を持つ若い人たちに健全に成長して活躍していってほしいというあたたかいまなざしを感じる。佐藤氏は灘高生たちに、自分とは関係がないと思えるようなジャンルもフォローし、物事を俯瞰するように説く。幅広い分野の本を読むこと、それも良いものを読むこと。よい先生につくこと、切磋琢磨できる友をもつこと、自分が競争が好きであることを認めること、でも友の特性や長所を認めて潰し合わないことを説く。学校の勉強を無駄だと思わないこと、無駄だと思うものは結局残らない、動機づけが重要なのだと説く。まったく同感。 詳細はブログに。http://chekosan.exblog.jp/26558044/

読了日:1月13日 著者:佐藤優 



兵士シュヴェイクの冒険 1 (岩波文庫 赤 773-1)兵士シュヴェイクの冒険 1 (岩波文庫 赤 773-1)感想
授業で輪読するため、20年ぶりくらいに再読。やっぱり面白い。シュヴェイク最高。ものすごいテンポ感で、登場人物たちの切れ目ないおしゃべりに乗せて、皇帝、帝国、聖職者、軍隊、警察といった権威や権力者、権力機構や、メディア、マーケット(例えばペット産業)のいいかげんさや俗物根性を徹底的におちょくる。さらっとブラックなユーモアも紛れ込んでいるので見逃せない。シュヴェイクの身の回りの世話をしていたミュレロヴァーさんなんて何もしていないのに強制収容所に連行されているし。1巻は絶版。復刊してほしいなあ。。。
読了日:1月14日 著者:ハシェク


兵士シュヴェイクの冒険 2 (岩波文庫 赤 773-2)兵士シュヴェイクの冒険 2 (岩波文庫 赤 773-2)感想
前線に向かうシュヴェイク。相変わらず適切なんだかわからない与太話で上官を煙に巻いてうまく切り抜けていく。土地勘がない読者には状況がややわかりにくい。また、長年の支配者であるドイツ人と被支配民族であるチェコ人との関係だけでなく、ハンガリー人との穏やかならざる敵対心がクローズアップされて、少しだけ緊張感が上がった感じ。それにしてもいいかげんな軍隊模様。もちろん誇張はあるだろうが、そう描きたくなるくらい非効率で俗悪で道理や筋の通らないことに満ちていたのだろうなあ。それを笑いに転化するこの文才、素晴らしい。
読了日:1月17日 著者:ハシェク



古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)感想
古市くんはいつまで「古市くん」でいくのか。『保育園義務教育化』で、少し新しい展開を見せてくれたように思うが、このあとどうしていくのだろう。12人の社会学者との対話はわかりやすくて勉強になった。小熊英二氏、上野千鶴子氏との対談が面白かったかな。古市氏が本田由紀氏や開沼博氏に逆に問われて答えた説明はスッキリ納得できた。曰く、社会学とは「「この社会がすべてじゃないよ」という別の選択肢や可能性を歴史、制度、意識の分析などいろんな手法によって見せてあげるもの」。ブログに詳細を記録。http://chekosan.exblog.jp/26576282/
読了日:1月20日 著者:古市憲寿




兵士シュヴェイクの冒険 3 (岩波文庫 赤 773-3)兵士シュヴェイクの冒険 3 (岩波文庫 赤 773-3)感想
前線へ移動するシュヴェイクたち。飲み食い女遊びにうつつを抜かし、肝心なことはいいかげんな将校たちに罵倒され、難題をふっかけられる。例によってうまく立ち回るのだが、いつもニコニコのシュヴェイクが、この3部では静かにキレる。どんな残酷なことも苛烈な状況も笑いに転じてきたこの長編のなかで、数少ない、いや唯一、シリアスなシュヴェイクが出現するシーン。そのあとも「話さえしていればどんな苦しいこともどうにか忘れられるのであります」というセリフが出てくるように、戦地の深刻さがにじんでくる巻。
読了日:1月24日 著者:ハシェク



兵士シュヴェイクの冒険 4 (岩波文庫 赤 773-4)兵士シュヴェイクの冒険 4 (岩波文庫 赤 773-4)感想
4巻は長編の『シュヴェイク』は三分の一ほどで、残りは長編に先立って発表された短編のシュヴェイクや、書簡、訳者解説など。短編のシュヴェイクは長編と比べると表現が直截的でユーモアに欠ける。長編のシュヴェイクの技巧のうまさ、面白さをあらためて確認。長編のシュヴェイクは作者ハシェクが病死して未完であるが、もしも続いていたらどうだっただろうか。訳者あとがきではハシェクの生涯についてかなり詳細に紹介。翻訳の苦労や工夫、こだわりもていねいに解説してあり、理解の助けとなる。
読了日:1月28日 著者:ハシェク

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by chekosan | 2017-02-01 20:31 | 読書記録 | Trackback | Comments(0)