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by chekosan

村上春樹『1Q84』をみんなで読んだ@同志社「特殊講義 ロシア・東欧の政治と社会」

この秋から、同志社大学法学部で開講している「特殊講義」では、
毎回、ロシア・東欧に関係する本を一作品読んで語り合っています。

まずは、ジョージ・オーウェル『動物農場』『一九八四年』とその関連本を読み
さて次はと相談し、4作目は村上春樹『1Q84』にしました。

当然、オーウェルを意識したもののはず、
しかもチェコの作曲家ヤナーチェクの曲がシンボルに出てくるというし、
こういう機会でもないと読まなさそう、ということで。

でも一応、科目のサブタイトルは「ロシア・東欧の政治と社会」なので、
あくまでこれは関連本ということで、一週で全巻終えることにしました。

学生時代『ノルウェイの森』を読んだときは性的なシーンが多すぎてうんざりし、
『つくる』を3年前に読んだときは入院中だったので印象に残ってなかったですが(笑)
簡潔な表現の単文が多くて、しかし語彙は豊富なことに今回気が付きました。
翻訳しやすいだろうと思います。世界で受け入れられるのがわかりました。


以下ネタバレありです。

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この作品、オーウェル『一九八四年』はもちろんですが、
思いのほか、ロシア・東欧に関する記述がちりばめられていました。

学生運動や左翼運動の活動家たちがつくったコミューンが重要な舞台になっていますし、
スターリン主義的な共産主義への批判的な視点も垣間見えます。

ヤナーチェクの曲は、その曲である必然性が今一つわかったようなわからないような…
だったのですが、作品全体で非常に重要な意味を持ちます。

チェーホフの作品『サハリン島』も重要な位置づけです。

さらっとドストエフスキーの作品中の人物も出てきます。
カフカの代表作の人物も単語だけですが、出てきます。

この2点に関しては、本文中に説明がないので、
知らない人にはなんのことかわからないと思います。

僕の読者はそれくらいわかって当然という感じなのかな。
もちろん、下手な説明は入らない方がいいと思います。


作品全体に関しては、こんな感じのことをみんなで語り合いました。

きちんと整理したり、緻密な確認はしていません。
また思い出したことを足して、整理しなおすかも…

ということで、引用するとか参考にするとかはご勘弁ください。(^^;)

・BOOK3は、BOOK1,2とは異質な作品になっている
・単なる恋愛ものっぽくなっていて残念な感じ
・それは狙ってなのか、間が空いたからなのか あるいは力尽きたのか

・他の作品同様、性的な行為の記述があからさまに頻出するのだが、
 単なる肉体的な習慣くらいの意味しか持たない行為のように描かれる
・かと思ったら、神話か!という域に達してしまう
・母性(的なもの)への思慕、執着、もはや信仰? 今作ではなんと処女懐胎まで!
・ハルキ氏の作品では青年がかなり年上の女性と結ばれる設定が多いのもそこか
・「父」たちの扱いのひどさと対照的?
・だけど、全体としては「父権」的な世界

・作品全体としては、神話的世界、運命を自らの意思で変える、
 アイデンティティを確立していく、 というテーマでありつつ、
 非常に神話的な進行、結末である

・強い女性たちが出てくるが、それも含めて、あくまで男性主人公目線ではないか
・でもハルキ氏の作品の男性主人公は、なんかボヤっとした印象
 → そうでないと話が展開しないから? 
 → この作品も、男性主人公の成長譚? 

・文庫版に使われている絵は、ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」
 これは当然、小説の世界をイメージしてのものだろう
 そして、各巻には登場人物の名前がデザイン化されている
 最終巻は、コレか! という名前
・これは授業では時間がなくて話せなかったのですが、
 「快楽の園」を研究された滋賀大の院生さんが面白い発見をされています。
 活字にされていない(?)ので詳しくは書けなくて残念。 

以上、とりあえずの覚え書きでした。


それにしてもハルキ氏の文学、音楽に関する造詣の深さに感嘆しました。
細かくメモを取りながら読む時間がなかったのはもったいなかったかな。
さすがにこのボリュームを2日ほどで読むのはきつかったです。(^^;)

語ることはいっぱいあったけど、この授業でもう一週読む必要はないか、
とみんなで結論づけ、次回からはロシア・東欧そのもの路線に戻ってミラン・クンデラです。

いやでも、面白い作品ではありました。
月を見上げるのが、ちょっとコワくなりました(笑)

以前に買っておいたハルキ氏と小澤征爾氏の対談本を発掘したので、
こちらも読もうと思います。^^
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by chekosan | 2016-11-21 15:34 | ロシア・東欧に関する授業@同志社 | Trackback | Comments(0)