毎日新聞書評欄「2014 この3冊」より
2014年 12月 23日
(毎日新聞2014年12月21日より一部抜粋して編集しています)
辻原登氏選 (作家)
山城むつみ 『小林秀雄とその戦争の時 『ドストエフスキイの文学』の空白』 (新潮社)
先に『ドストエフスキー』でドストエフスキー作品に真向から取り組んだ山城むつみが、小林秀雄のドストエフスキーから戦中(戦場)、戦後の言語空間へと切り込む。批評健在の揺るぎない証明!
沼野充義氏選 (東京大教授・スラブ文学)
小林エリカ 『マダム・キュリーと朝食を』 (集英社)
放射能を光として見ようという志向性に貫かれた小説である。…「震災後文学」の最前線を切り拓く。
本田晃子 『天体建築論 レオニドフとソ連邦の紙上建築時代』 (東京大学出版会)
ロシア・アバンギャルドの建築を代表する独創的な才能を持ちながら、計画がほとんどすべて「紙上」のまま終わった特異な建築家に焦点を合わせる。収録された数多くの図版も貴重。
亀田真澄 『国家建設のイコノグラフィー ソ連とユーゴの五カ年計画プロバガンダ』
(成文社)
映画や写真を通して、旧ユーゴとソ連の政治宣伝を比較する。プロパガンダと国民的アイデンティティ、芸術とメディアの関係といった現代的問題を理論的に解明し、国際的にも類例がない独創的な研究になった。メディア論的に鋭い視点から導かれた結論が、通説を覆して鮮やか。
いずれもそそられますね。
私はやはりプロバガンダを扱った亀田氏の著作に興味津々です。